楓が、久々に雷門に来てから、1週間がたった。それ以降、雷門中学校サッカー部の話題は、楓をはじめとする、10年前の雷門中学校サッカー部のことで、もちきりだった。その光景を、円堂と、豪炎寺は、ほほえましく眺めていたが、鬼道は、少し違った。
もちろん、楓が、来ていないときには、2人と同じように、ほほえましく眺めることができたが、来ているときは、そのことを楓が聞くと、少なからず、嫌な思い出がよみがえってくると思ったからだ。
今日は、楓が、サッカー部の見学に来ている。
「楓先輩!化身って、どうやって出すんですか?!」
「俺でも出せるっすかね?」
「そうね・・・きっと出せるわ」
「なにが、根拠ですか?」
「サッカーが好き、という、その気持ちを、1か所に集めるの。その前に、1つ言っておくけれど、サッカーは、後々の人生で役に立つから始めた・・・なんて人は、絶対に、化身は出せない。ただ単に、サッカーが大好きだという、その純粋な心でいれば、化身は出せる」
「じゃあ、フィフスセクターの人は、純粋に、サッカーが好きなんですか?」
その質問によって、楓の顔色が、かすかに変わった。しかし、そんなことに気がつく部員は、ほとんどいない。なぜなら、楓は、ポーカーフェイスがうまいからだ。だから、部員はそんなことお構いなしで、どんどん質問をする。
「そうね、きっと、フィフスの人だって、サッカーが好きなのね。そんな純粋な心の持ち主を、サッカーによってけなすなんて、最低だわ・・・」
「本当だよ。最低です」
その時、声が聞こえた。皆が、楓が来たときのように、一斉に振り返った。そこには、30歳くらいの、暗めの青灰色でツンツンした逆毛の髪型の男性がいた。
楓も、グラウンドにいた選手も皆、不思議そうな顔をして、その男性を見ていたが、ベンチにいたブレイク組みは、顔を見合せて笑った。
「久しぶりだな!虎丸!」
「円堂さん!いたんですか?!」
そこにいた男性は、20年前、イナズマイレブンとして、一緒に戦った、宇都宮虎丸だった。おそらく今は、32歳のはずだ。
「虎丸か。久々だな」
「き、鬼道さんまでっ?!びっくりです」
「虎丸。夕香は元気か?」
「はい。俺の事をサポートしてくれる、とってもいい奥さんです!」
「えぇ?!虎丸、夕香ちゃんと結婚したのか?!」
「はい。あ、ちゃんと子供もいますよ?男の子で、宇都宮虎太郎
うつのみやこたろう
って言います!今、3歳です!」
「そうか~っ!まぁ、元気で何よりだぜっ!」
「円堂さん・・・そういえば、そこにいる女性は、誰ですか?」
「あぁ、こいつはな・・・」
「はじめまして、虎丸さん。私は、10年前、雷門中学校サッカー部だった、楓と言います。円堂監督をはじめとする、イナズマジャパンだった皆さんには、たくさんの世話になりました。これからも、よろしくお願いします」
「そうだったんだ。・・・じゃ、俺よりも、9歳も年下?!そうは見えない!。もっと、20代前半の人って、チャラチャラしているイメージだったから・・・」
「よく言われます。でも、やはり子供のためにも、こういう風な格好の方が、いいと思ったんです」
その言葉に、円堂が食いついた。
「楓!ちょっと待った!子供・・・いるのか?!」
「はい・・・って、言ってませんでしたっけ?円堂監督?」
「あぁ・・・豪炎寺や、鬼道はどうなんだ?!」
「俺は、知っていたな。親戚だからな」
「鬼道は知ってたのかよ!じゃあ、豪炎寺は?!」
「俺も、春奈から、そういうことは聞いたことがある。まぁ、噂程度だったが。だから、知らなかったに、等しい」
「だろ?!うひょ~!楓、母さんだったのか!で、子供の名前は?!性別は?!その前に、誰と結婚したんだ?!それから、それから・・・」
「分かっています、全て、お話しますから、円堂監督、落ち着いてください!」
「あ、あぁ。そうだな」
「では、お話しますね。子供は2人いて、上が剣聖。男の子で、今、3歳です。そして、下がみか。女の子で、今、2歳です。それで、夫は・・・」
「「夫は?」」
豪炎寺と、円堂が、2人で口をそろえて、聞いた来た。
「剣城京介・・・です」
「剣城か!びっくりだな!」
「まぁ、似合っている。2人とも、冷静だし、頭もいいしな。それと、子供が3歳なら、俺たちのところと大して変わらないな」
「俺も、最初聞いたときは、びっくりした」
「そんなにびっくりするなんて、こっちがびっくりします。あと、天馬と葵も結婚しましたよ。子供は、3歳の息子の健大(けんた)くんと、1歳の娘の優(ゆう)ちゃんです」
「は~っ。教え子に、子供が誕生すると、なんか、じいちゃんになった気分だな」
「早すぎだ」
「ははっ。そうだな」
そして、話しているうちに、サッカー部の練習は終わってしまっていた。