俺は、伯母の養子の楓に対して、「ママ」という言葉に対して、くわしく追及しようとしていた。聞くのに夢中になっていたため、楓が、困った顔をして、俯いていたことに、しばらく気が付いていなかった。気がついたときには、楓はもう泣きそうだった。
「あ・・・すまない。本当に、忘れてくれ」
「は、はい・・・」
「有人。帰るぞ」
いつの間にか、自分の家に帰る時間になっていた。おそらく、俺たちの家は、1度あったら、もう家に来ることはない。少なくとも、親も一緒ということはない。だが、個人で来ることは可能だ。だから、楓に、
「また・・・来れるといいんだが・・・また、いつか会おう。楓」
とだけ残して帰った。帰り際、楓が家の中から出てきて、
「有人お兄さん、さようならぁ~」
と見送ってくれた。そして、俺はリムジンに乗り込み、家に帰った。
「山吹・・・楓・・・か」
「有人は、いつもと違う態度を、楓くんに対してとっていたな。自分と、重ね合わせていたのか?いや、妹さんの方か?」
「いいえ、そうではありません。ただ・・・」
「ただ?」
「昔、あったことがあるような気がしただけです」
父さんの顔色がかすかに変わった。そして、1回深呼吸をした父さんは、また、口を開いた。さっきとは違い、重そうに・・・
「それは・・・影山総帥の・・・お孫さんの事か・・・?」
「父さん!・・・知っていらしたのですか、灯さんのこと・・・」
「あぁ。灯くんのことも、その娘の楓くんのことも・・・だ。全て知っている」
「父さん・・・」
「あと、この事は、楓くんが、理解できてから他の人に話しなさい。それまでは、誰にも口外しないことだ。いいな、有人」
「・・・はい。分かりました。あ、すいませんが、稲妻高の前で、降ろしてもらませんか?部室に用があって」
「はい、かしこまりました」
俺は、運転手に、稲妻高の前で降ろしてもらい、父さんと別れた。そこから、さらに歩いた。歩いている途中、河川敷のサッカー練習場を見た。そこでは、小学校のクラブチームが練習していた。その光景を微笑ましく眺めながら、目的地まで、まだ歩く。そして、目的地に着いた。
「懐かしいな・・・ここに来るのは、2年ぶりになるか・・・」
俺の目の前にあるのは、雷門中学校だった。そして、雷門中のグラウンドには、数名の人影が見えた。俺の顔が、自然とほころんだ。
「よぉ、円堂、豪炎寺。他の奴らはまだか?」
「「鬼道!!」」
「鬼道!久しぶりだな!2年ぶり・・・だっけ?」
「鬼道。この前の練習試合以来だな。元気だったか?」
「あぁ、円堂も豪炎寺も元気そうだな。久々に会えて、よかったと思う。最近は、学校が忙しくてな。帝王学も最近・・・入って来て、大変だ」
「俺もだぜ、鬼道!本当、疲れるぜ!なんか、夏未の特訓もきつくなってきたし・・・」
「アイツは、円堂の飼い主みたいだな。なぁ、鬼道?」
「そうだな。そういえば、春奈も、稲妻に入ることができた。おそらく、今日言うと思うがな」
「よかったな、鬼道。シスコンのお前にとっては最高だろう?」
「・・・俺、シスコンなのか?どちらかというと、豪炎寺の方がシスコンだと思うが」
「そうか?俺はシスコンじゃないと思うけど」
そんなこんなシスコンビの会話をしていると、3年前、FFIで一緒に戦った仲間が次から次にやってきた。しかし、秋だけは、小さな男の子を連れていた。もちろん、みんなの視線がその男の子に注がれた。
「ちょっと、皆!天馬が困ってるよ!」
「へぇ、天馬って言うのか!かっこいい名前だな!俺、円堂守!宜しくな!・・・で、秋。こいつとおまえは、親子か?」
皆が、笑いをこらえた。
「そっ、そんなんじゃないってば!この子は、親戚の子で、松風天馬君。今、6歳だよ。可愛いでしょ?お母さんたちが、仕事が忙しくって、今、私の家に一緒に住んでるの」
「そうなのか。天馬!宜しくな!」
「よっ!よろしくお願いします!」
「天馬は、初めて会った時の虎丸に似ていると思わないか?」
「豪炎寺!それ言えてるよ!」
「ちょっ、やめて下さいよ!もう!」
久々の再会に、皆が笑顔になっていた。
「そういや、冬花さんは?まだ来てないけど・・・」
ふと、春奈が質問した。俺は、確かに不思議に思った。
「確かに・・・なんかあったのかな・・・ふゆっぺ・・・」
「冬花さんは、確か、外国に留学したんじゃなかったかしら?確か・・・イタリアで・・・フィディオくんが、面倒見ているって・・・あ、でも、今日は来るって言っていたわね・・・どうしたのかしら・・・」
夏未のその言葉によって、さらに不安が大きくなった。
「よし!ふゆっぺを探すぞ!」
「「「「「おー!!!」」」」」
探し始めて、10分ほどたったころ、俺は、裏道で冬花さんが倒れているのを見つけ、急いで病院に知らせ、救急車に搬送されていった。
「冬花さん・・・大丈夫だろうか・・・」
「鬼道!ふゆっぺ、大丈夫か?!」
「あぁ。今、救急車で・・・」
結局、FFI同窓会は、来週に延長された。