巨大プロジェクトの、作戦会議が始まった日の夜。
鬼道と、神童と、楓は、3人でレストランで食事をしていた。その時、明日が剣城の、誕生日だということを、思いだした楓が、誕生日にまつわる思い出話を始めたため、今は、3人でそのことについて、話している。
「そういえば、サッカー部の皆が、部室とか学校以外で、初めて同じ場所に集まったのは、キャプテンのお誕生日・・・じゃなかったですか?」
「そうだったか・・・?あれは、とても思い出に残っているな」
「なんなんだ?その誕生日は?」
「あれはですね・・・9年前、私たちが2年生になった年の、キャプテンの誕生日・・・」
―9年前―
神童拓人は、悩んでいた。
キャプテンの仕事を、去年2年(当時1年)の松風天馬に、譲ったのだが、なぜか今年になってから、雷門のキャプテンマークが半分に切断され、片方を天馬が、もう一方を神童が持つことになってしまったのだった。そして、
「はぁ~」
とため息をついた。しかし、神童がため息をつく理由は、もう1つあった。
今日は、神童の誕生日なのだ。誕生日―普通なら、嬉しいことである。しかし、神童にっては憂鬱な日でしかなかった。
普通、誕生日の1番の楽しみといえば、プレゼントがもらえることだろう。しかし、神童はそれが一番いやだった。毎年もらうものは、物心ついたときから参考書ばっかりだった。大型財閥の1人息子であり、跡取りであるんだからしょうがない、そう毎年考えていた。しかし、小学校の高学年になったころから、皆がゲームを買ってもらっていたりするのがうらやましかった。それからは、誕生日が一層憂鬱だった。
気がつけば、またため息をついていた。
ふと窓の外を見ると、俺たちのクラスである3年1組の向かいの校舎で、2年1組が、勉強していた。見たところ、英語の授業らしい。(ちなみに、3年1組は自由な時間だった)2年1組のサッカー部の部員は、楓と剣城がいる。英語の授業でペアになって、2人は会話をしているようだった。また、ため息をつこうとしたその時、後ろから声がした。
「神童、何見ているんだよ?」
「霧野・・・いや、何でもない。ただ、2年は楽しそうだと思ったんだ」
話しかけてきたのは、親友の霧野蘭丸だった。
「そうだな。あ、あれは楓と剣城じゃないか?」
「そうだな。ここからなら、天馬や輝のいる3組も見えるな」
「確かに・・・みたことなかったから気がつかなかったな」
「信助は4組、空野さんと狩屋は6組だから、見えないが」
「そうだな。そういえば、楓が今日、財閥の教えをといてほしいとか言ってたけど、神童もすごいんだな」
「財閥の教え・・・あぁ、そういえば。でも、今日か・・・」
「何か用でもあるのか?」
そこまで言って、神童ははっとした。
自分は、こんな誕生日だから、誰にも誕生日を教えていなかったのだ。もちろん、親友である霧野にもだ。だから、ここで断ると、霧野に感づかれるかもしれない。だから、断ることはしてはいけない、そう考えた。
「いや、お父様に言っていなかったと思ってな」
「親父さんに・・・なら、今電話すればいいんじゃないか?自由時間だし」
「そうだな・・・」
そういうと、神童は、カバンから自分の携帯を取り出し、父親に電話をかけた。
その間に、授業は終わった。
そして、放課後・・・
「キャプテン、すいません。お忙しいのに・・・」
「いや、構わない。俺も、大きな財閥の力になれるんだ。うれしいよ」
「キャプテン・・・ありがとうございます」
「いや・・・で、なぜ剣城がいるんだ?」
「俺も、聞きたかったので、ついてきたんです」
「そうだったのか。そういえば、楓の家はとても広いよな」
「えぇ、まあ。噂によると、大統領の住むホワイトハウスよりも、大きいらしいです。総面積だったら、確実にうちの方が大きいですが」
「そんなに広いのか・・・俺は、家族で何度かお邪魔したことがあるが、そこまでとはな・・・」
「私自身、びっくりです」
「見えてきたけど?楓の家」
「うん。あ、でもあれは別館・・・」
「「別館!?」」
「はい。簡単に言うとはなれ・・・ですかね。サッカー塔くらいの広さしかありませんが」
「それを、広いっつーんだけど」
「そうなんだ・・・でも、キャプテンの家も広いですよね。霧野先輩から聞きましたけど」
「霧野は、しょっちゅうウチに来ているからな。いわば、第2のマイホームらしい」
「そういえば、最近うちにもよく来ます。第3のマイホームとか言ってますけど、そういう意味だったんですね」
「迷惑だな、アイツは・・・」
「いいえ、全然。ちかちゃんのいい話相手ですね」
「そういえば、サッカー部の新しいマネージャーが、1人増えたんだったな」
「はい。黒谷
くろたに
ちかちゃん、1年5組です。性格は、葵と茜さんを混ぜたような感じで、今年から入った1年生で作った、『サードチーム』のマネージャーです。ちかちゃんと、よく一緒に、ウチの別館にある、第2図書館で良く話しています」
「そうか。あ、今度は家だろう」
「はい。あれです」
「じゃあ、入るか」
「ここ、私の家なんだけど・・・」
「俺の、第2のマイホームだからな」
「剣城ぃ・・・」
「・・・と、なんだかんだで、ウチに入ることになったんです」
「ほう。それで、続きはどうなったんだ?」
「それはですね・・・」