天馬と楓が、話をしているころ、帝国学園では・・・
「佐久間、これ、頼んでもいいか?」
「鬼道・・・ああ、全然大丈夫だ。資料・・・聖帝に提出か?」
「あぁ。そうしてくれるとありがたい」
「じゃあ、そうしておくな。じゃあ、お先に失礼します。総帥」
「あぁ、また明日」
帝国学園総帥・鬼道有人が、1人でパソコンに向かって資料を書きあげていた。キーボードを打つ、カチャカチャという音だけが、誰もいない、無駄に広いように感じる部屋に、響く。
その時、鬼道の携帯が鳴った。ディスプレイには、「山吹楓」の文字。電話の相手をしっかり理解して、電話に出た。
「楓か。中学校生活1日目はどうだったか?」
「はい、楽しかったです。面白いことも起こりましたよ」
「なんだ?それは」
「フィフスセクターが、動き始めました」
「なんだと?シードを投入してきたのか」
「はい。私と、私と同期の河原翔、それに、剣城京介の、3人です。しかし、皆の前で、公表しているのは、剣城だけです。また、久遠監督や、春奈さん・・・音無先生達には、影響を及ぼしていません。安心してください、お兄さん」
「あぁ、春奈が無事だと聞いて安心している」
「やっぱり、いくつになっても、お兄さんはシスコンですね。まぁ、上司としては、尊敬しますし、これからも、以前と変わらず、誠実に仕えてまいります」
「そう言ってくれると心強い。で、他にも何かあったか?」
楓は、一瞬間をおいて、不敵な笑みを浮かべた。そして、話し始めた。
「はい。剣城以外にも、雷門中サッカー部キャプテンの、神童拓人が、化身を出しました」
「なに?化身を?」
鬼道は、びっくりした。化身を出す者は、雷門中では、初めてだったからだ。
「はい。しかし、本人は覚えていない模様です。おそらく、まだ、目覚めたばかりなのでしょう」
「そうか・・・ならば、引き続き神童拓人の監視を、よろしく頼む」
「はい、分かっています」
「・・・楓には、フィフスセクターにも潜入してもらい、シードとして雷門中にも潜入してもらい、本当にありがたいばかりだ」
「いえ、私も、本当につながってはいませんが、形は、お兄さんの血縁者です。身内の力になるのは、当然だと思い、今までも、これからも仕えていきます。では、失礼します」
「あぁ」
鬼道は、楓からの電話を切り、息を、ふぅー、っと吐いた。最近、自分の従妹に当たる、楓には、命がけで様々な事をしてもらい、自分に忠実に仕えてもらっている。
そんな楓を、自分はとても頼りにしている。
こんなに、頭がとてもよく、運動神経もよく、リーダーシップもある子供が、この世のどこにいるだろうか。こんなに、1人の人に忠実に仕える人が、どこにいるだろうか。
鬼道自身、楓の事を、とても気に入っていた。
一方楓は・・・
「さぁ、次は聖帝に連絡しなくては・・・」
また、携帯を取り出し、今度は「イシドシュウジ」と書かれた番号を押した。正直言うと、聖帝に電話をするのは、乗り気ではなかった。
所詮は、形だけの「仕え」
おそらく、組織の中で、こんな形でしか仕えていないのは、自分くらいだろうと考えながら、なかなか動かない手を、無理やり動かした。
自分は、聖帝の正体を知っている。
聖帝は、自分が本当に仕えている、鬼道有人の親友・豪炎寺修也なのだ。
だから、従兄の有人に電話をした後だと、電話がしにくい。
本当に、裏切ってしまったようで・・・
だから、毎日
「もう、裏切ってるんだからいいの」
と自分を、奮い立たせてから、電話をする。
「もしもし、山吹です」
「山吹か・・・今日の様子はどうだった?」
「はい・・・
楓は、鬼道に話したことを、そのまんま話した。