今回は三人のキャラクターが新たに登場します。
それではご覧ください。
温かい朝の陽ざしが窓から差し込み部屋の中を明るく照らしている。その部屋の壁一面は本で埋まっており、床のいたるところには本が散らばっている。どの本も立派な装丁をしており読みこまれた跡がある。本にあふれたこの部屋の主クリフはベッドから体を起こし、腕を上げ背伸びをする。そして、眼鏡をかけるとベッドから這い出て身だしなみを整え、黒を基調とした学院の制服に着替えた。
そのようにして、学院へ行く準備を整えたクリフは鞄を持ち自室から出て一階へと降りていった。
「おはよう、クリフ。」
「今日は早かったな」
一階へ降りるとすでに起きていたセルティとウェルデが朝食の準備をしていた。
「おはようございます。セルティ伯母さんには昨日話したのですが、今日は新しい学生
の案内を頼まれたのでいつもより早く学院にいかなくてはならないんですよ。準備手
伝います。」
「あぁ、母さんが前に言っていた家に下宿する子か。今日からなのか。準備はもう終わ
るから座って待っていて良いぞ。」
朝の挨拶を返し、いつもより早く起きた理由を話した後に準備の手伝いをクリフが申し出るが、既に準備が終わりそうだったのでウェルデが座って待つように促した。
クリフはその言葉に従い、店のカウンター席に腰を下ろす。そうするとセルティが朝食の乗った皿とコーヒーをクリフの前に置く。伯母に感謝の言葉を言うとクリフは「いただきます。」と言って朝食を食べ始めた。おいしそうに食べるクリフを大切なものを見るように静かな微笑みを浮かべながらセルティとウェルデはクリフのことを見ていた。
「それでは、行ってきます。」
「気を付けていってらっしゃい。」
朝食を食べ終えたクリフは開店の準備を進める伯母と言葉を交わし、扉を開いて新たな出会いの待つ学院へと向かった。
いつもより四十分ほど早い街の景色は普段よりも人が少なく静かで自分の足音よく聞こえた。
「おーい!クリフー!」
学院までの道のりの半分を過ぎたあたりで後ろから大きな声で呼ばれ振り返るとそこには逆立った赤い髪に同じ色の瞳をした背の高い男が手を振っていた。その横では、桜色の髪と翡翠の瞳が特徴的な女性がお辞儀をしていた。それに鞄を持っていない右手を挙げて答えると一組の男女が走ってきた。
「おはよう、イバン、エレン。二人はいつもこの時間は通学しているのかい?」
「おっす、クリフ。いや、今日は魔法の練習をしようと思って早くに起きたんだ。エレ
ンにはそれを見てもらおうと思って昨日お願いしたんだよ。」
「おはようございます、クリフ君。つまり、今日この時間に此処にいるのは偶然です
ね。クリフ君はいつもこんな時間に学院へむかっているのですか?」
「今日は特別だよ。昨日ミスト先生に頼まれたことがあってこの時間なんだ。いつもは
もっと遅いよ。」
「昨日呼ばれていた件ですか。てっきり資料整理とかを頼まれたのかと思っていまし
た。」
「日を跨ぐことって・・・。クリフ、何を頼まれたんだよ。」
「学院に着けば分かることだよ。きっと驚くことかな。」
「クリフが驚くことって言うくらいだから期待して待つとするかな。」
「そうですね、私もちょっと楽しみです。」
「僕が何かをするわけではないんだけど。」
偶然通学のタイミングが被った三人はそれから他愛もない話をしながら学院へと歩いて行った。
「クリフ君、イバン、何か歌みたいなものが聞こえませんか?」
三人で会話をしながら学院へと歩き、もう間もなく門が見えるであろうとこまで来るとエレンが突然言い放った。
「?何にも聞こえねえけど?」
「僕もなにも聞こえ「~~♪」いや、聞こえる。学院の方からだ。行こう。」
クリフが声をかけ三人は歩く速度を速め学院に向かった。
門の見える場所に着くと、門の前で学院の制服を着ている女性が腰までありそうな美しい銀髪を風になびかせ目を閉じ、歌を歌っていた。
その綺麗な光景にイバンとエレンの二人は言葉を失い、その場に立ち尽くしていた。
クリフはその女性を見ると一歩ずつ女性に近づいていく。クリフと女性の距離は徐々に縮まっていく。そして、ある程度の距離になると女性がクリフに気付いたようで歌をとめる。それを合図にクリフは立ち止まり女性に声をかける。
(あぁ確かにミスト先生の言った通り、綺麗な銀色の髪だな)
「おはようございます。ソフィア・グレイシールさん。」
「おはようございます。あなたが教務員室まで案内してくれるヴァイズマンさんです
か。」
ソフィアは風で顔にかかってしまった髪を片手で直し、笑顔でクリフの挨拶に答えた。
「はい。クリフ・ヴァイズマンといいます。グレイシールさん、お待たせしてしまい申
し訳ありません。」
実際は予定の時間よりも早くに着いているが、事実クリフは相手を待たせてしまったので、ソフィアへ謝罪する。
「私が早くについてしまっただけなので気になさらないでください。それとヴァイズマ
ンさん、私のことはソフィアで結構ですよ。」
「では、僕のこともクリフで構いませんよ。ヴァイズマンなんて呼びにくいでしょうか
ら。早速、教務員室の方へ案内したいのですが大丈夫ですか?」
「私は構いませんが、後ろのお二人はよろしいのですか?」
ソフィアの言葉にクリフは後ろを振り返り先ほどまで一緒に学院までの道を歩いていた友人二人を思い出した。
「二人?あっ忘れてた。少し待っていただいてよろしいですか。」
クリフの言葉にソフィアが頷きそれを確認するとクリフはイバンとエレンのもとへと戻る。
「イバン、エレンさん。僕は先生に彼女の案内を頼まれているから、また後で会お
う。」
「おっおう、クリフ。また後でな。」
「はい、クリフさん。ところであの方は?」
「今日から学院に通い始めるソフィア・グレイシールさんだよ。ミスト先生が担当して
いるようだから教室で会えると思う。じゃあ、練習頑張れよ、イバン。」
そう言うとクリフはイバン、エレンと別れソフィアの元へと戻り笑顔を浮かべながら彼女を教務員室まで案内していった。
「クリフが初対面の人と普通に話してるぞ。」
「それに笑顔を見せていますね。」
初対面の人間と言葉を交わし、めったに見せなることの無い笑顔を浮かべるクリフの背中をイバンは信じられないものを見るように眺め、エレンも驚きを隠せない表情をして見つめていた。
「着きました。此処が教務員室です。」
校舎へと入り少し歩いたところにある扉の前で止まるクリフ。
「入り口から近い位置にあるのですね。」
「ええ。改めて考えると案内は必要なかったかもしれません。」
校舎の入り口から教務員室が近いことに少し驚くソフィアに対し、クリフは苦笑いを浮かべながら答える。
「いいえ。とても助かりました。ありがとうございます、クリフさん。」
クリフの言葉を聞いたソフィアは微笑みながらクリフに案内のお礼をする。その言葉はお世辞のような色がなく、ただ本当に感謝している雰囲気を持ったものだった。そのことが分かったクリフは、それ以上は何も言わなかった。
「さて、中に入りましょう。担当の先生が待っているはずですから。」
クリフは教務員室の扉をノックし中へと入っていく。それに続いてソフィアも教務員室へと入っていった。
教務員室の中に入るとミストを含む数人の教師たちが、講義の準備やそのほかの仕事を黙々と進めていた。その空間にクリフの声が通る。
「失礼します。ミスト先生。ソフィア・グレイシールさんをお連れしました。」
それを聞いたミストは、仕事をしている手を止めクリフたちの居る入り口の方へ振りかえると腕に付けた時計に目をやり時間を確認する。
「あら、早かったわね。二人ともこっちに来てちょうだい。」
時間を確認すると予想よりも二人が来たことに少し驚きながら、クリフたちに自分のもとへと来るように促した。
二人が自分に割り当てられているデスクの近くに来るのを待ち、クリフたちが立ち止まると座っていた椅子から立ち上がりソフィアの方へと目線を向ける。
「アーテナム魔法学院へようこそ、ソフィア・グレイシールさん。私たちは貴女のこと
を歓迎するは。私はミスト・エーリュズあなたが所属することになるクラスの担任
よ。」
「はじめまして、ソフィア・グレイシールです。本日からお世話になります。よろしく
お願いします。」
ミストが名乗ると、ソフィアも自己紹介をし、お手本のようなお辞儀をする。
「ええ、よろしくね。それからヴァイズマン君、案内ご苦労様。」
ソフィアの挨拶を笑顔で受けたミストはクリフの方を見るとねぎらいの言葉をかけた。
「普段より早く家を出ただけですから構いませんよ。僕は教室の方に行ってもよろしい
でしょうか。」
クリフはミストからの言葉を受け流すと自分がこの場にいる必要があるのかミストに問いかける。
「ふふ、構わないわよ。また教室で会いましょう。」
「それでは、失礼します。ソフィアさん、また後ほど。」
ミストからの許可を貰うとクリフはそういって、先ほど入ってきた扉へと向かい教務員室を後にした。
「ミスト先生、今クリフさんが私に言っていた後ほどとはどう意味なのでしょうか?」
ソフィアは首を小さくかしげながらミストに問う。
「そういえば、言ってなかったわね。彼は貴女が所属することになっているクラス、A
クラスの学生なの。つまり、あなたのクラスメイトよ。」
ミストからこの学園に来て初めて知り合った男子学生が自分のクラスメイトだということを聞いたソフィアは少し嬉しそうな表情をするのだった。
読んでいただきありがとうございました。
間違い等がありましたらご指摘いただけると幸いです。
近日中に活動報告の方へキャラクターの設定を乗せる予定です。