キャラクター設定などはもうしばらくしたら投稿します。
それではご覧ください
ソフィアの案内を終えたクリフは教務員室から退室した今、自分のクラスの教室へと一人難しい顔をして歩き始めた。現在、彼の頭の中には門の前でソフィアが歌っていた歌が響き続けている。今まで、何かの音楽を聴いても耳に残るという経験をしたことがなかったクリフは、今の自分に起こっていることについて戸惑いながらも、なぜ彼女の歌がこんなに頭の中で響いているのかを考えていた。
(彼女が歌っていた歌は、今まで聞いたことのある歌となんら変わらないものだったはずだ。それなのになぜこんなことが起こっているのだろうか。魔力を感じなかったから魔法の類ではないことは確かだ。・・・駄目だ。わからない。)
眉間に皺を作りながら解答の見つからない思考を繰り返していると自分のクラスの前に着き、扉の開いていない出入り口へ進むクリフ。そんな彼が額を扉に打ち付けたのは当然の結果だった。
額を打ったクリフは一旦、ソフィアの歌について考えるのを中断し、ぶつけた個所をさすりながら扉を開け教室へと入る。そこには魔法の練習をしていたはずのイバンとそれに付き合っていたエレンがそれぞれの席に座って会話をしていた。いや、イバンがエレンに叱られていた。
「イバン?魔法の練習に行っていたはずじゃないのか。」
クリフの声に叱られていたイバンは救世主を見つけたかのような表情をしてクリフの方へ振り返り、叱っていたエレンは怒っている表情のままクリフの方へと顔をむけた。
「それが・・・実はな。」
イバンが苦笑いをしながらエレンの方を向く。それにつられクリフがエレンを見ると、彼女は呆れた顔をしながらクリフへと事の次第を説明してくれた。それを聞くと、どうやらクリフと別れ練習場に着いてからすぐに練習を始めたのだが、一度、エレンがイバンを褒めたら彼が調子に乗って魔法の出力調整をミスしたということだった。イバン曰く少しだけ出力を上げようとしたら急激に上がってしまったという話だった。
イバンは少し大雑把な性格をしているために魔法の出力調整を時々失敗することがあった。それを知っていたクリフは、苦笑いをすると怪我をしていないか二人に確認した。
「またやったのか、イバン?二人とも怪我はしてないよな。」
「ああ、怪我はしてないぜ。」
「私もです。驚きはしましたけど、魔法の発動中、私はイバンから離れていましたから。」
イバンとエレンからどちらも怪我をしていないことを確認すると、クリフは安心したような表情を浮かべて「良かった」と言うと二人から離れ、自分の席である窓側の一番後ろの席へと向かった。
「そういえば、クリフ。校門に居た女子と歩いてるとき、やけに楽しそうだったな。」
自分の席に着いた後、朝起きたときに鞄へ入れた本を出そうとしていたクリフにイバンがニヤニヤと笑いながら近づいてきてクリフに話しかける。
「別に楽しくなんてなかったけど?なぜ、そんなことを言うんだよ。イバン。」
その言葉を聞いたイバンの顔がおかしな笑顔から驚きの表情へと変化し、その驚きを表すかのように大きな声を出した。
「楽しくなかった⁉初対面の人間が苦手なお前がその初対面の人と普通に会話して笑顔を向けていたのにか⁉」
「僕は笑顔なんて浮かべてないよ。会話だって案内をするだけだから会話というよりも事務的な説明をしただけだしね。」
「クリフさん、会話についてはそれで納得します。けど、笑顔は浮かべているのは私も見ています。無意識で笑顔になっていたのかもしれませんよ。」
クリフはイバンの出した大きな声に少し引き気味に説明すると、いつそばに来ていたのか、エレンはクリフが笑顔を浮かべていないと言った事を否定した。
「エレンさんも言うなら本当に笑顔になっていたのかもしれないな。理由は分からないけど。」
「俺が言ったときは否定したのに、エレンが言ったら肯定するのかよ~。」
「普段の姿勢の差じゃないかしら、イバン。」
エレンからの指摘を受け入れたクリフにイバンがふてくされ、エレンはそれを見て笑っていた。
時を同じくして教務員室ではミストがソフィアに学園の設備について説明をしていた。
「門を入って正面のこの建物が講義を行う教室や食堂が入っている一般棟。右手の建物が魔法の練習場や実験施設等がある実技棟。そして、左手にあるのがこの島にある遺跡について調査、研究を行っている研究棟よ。ちなみに遺跡の入り口は研究棟の中に在るわ。
建物の中に在る細かい設備は使う時に説明してあげるわね。基本的には一般棟と実技棟の練習場と調整室ぐらいしか使わないと思うけどね。何か質問はあるかしら?」
「いえ、大丈夫です。クリフさんが案内をしている時に細かい設備についても一通り説明してくれましたから。」
ミストの説明を聞いたソフィアは、案内してくれたクリフがついでに色々と説明してくれていたということを告げ、設備を理解していることをミストに話した
「あら。彼、そんなことまで説明してくれたのね。珍しいこともあるのだわ。」
普段のクリフが親しい人以外に対して素っ気なく、初対面の人間とは必要以上に会話をしないことを知っているミストは、クリフがソフィアに教務員室までの案内だけでなく、学園の設備について細かい説明をしたことに表情を変えずとも驚きを含んだ声でそう告げた。その言葉にソフィアは首をかしげたものの深くは聞かなかった。
「さて、そろそろ教室に行きましょう。」
ミストは静かに立ち上がり必要な荷物を持つと教室へと歩き始め、ソフィアもそれに従った。
学生たちの声が聞こえる教室の前に着くとミストはソフィアに扉の前で待つように言って一人教室へ入っていく。すると聞こえていた声は消え静かになった。
ミストは教壇まで来ると自分のクラスの学生たちに声をかける。
「みなさん、おはようございます。色々と連絡することもあるのだけれど、先ずはあなたたちに新しい仲間を紹介するわ。入ってきて頂戴。」
ミストの話にクリフ以外の学生の視線が教室の扉へと向けられる。その扉がゆっくりと開き背筋を伸ばしたソフィアが銀糸のような髪を揺らしながら入ってきた。その姿に男女問わず多くの学生が溜息をついた。
ソフィアはミストの隣まで歩いてくると学生たちの方へ体を向けた。
「ルーラシアムから参りました。ソフィア・グレイシールといいます。得意な魔法は氷結系魔法と単体回復魔法です。仲良くしてくれるとうれしいです。よろしくお願いします。」
ソフィアは自己紹介をし、笑顔を浮かべながらゆっくりとお辞儀をする。彼女の姿に一人の学生と教師を除き、反応を忘れてしまっていた。
「えっと・・・。」
今日からともに学ぶ仲間達からの反応がない事に戸惑っていると一つの拍手の音が教室の中に響き、その音が学生たちの意識を呼び戻した。一つの拍手が広がり教室が拍手の音に満たされる。
「それじゃあ、グレイシールさん。ヴァイズマン君の隣が空いているからそこに座ってくれるかしら。」
ミストが話を進めるためにソフィアに指示をだすと彼女はその指示に従いクリフの隣にある誰も座っていない席に向かい腰をおろした。
「今日の予定を説明するわね。午前中は座学で午後は実技の時間になるわ。午後の実技は自分の魔導具を使っての訓練を行うから怪我をしないように気を付けるのよ。詳しい内容は授業の時に説明するわ。じゃあ、休憩をはさんでから授業を始めましょう。開始までには席に着いているように。」
そう言うとミストは教室から出ていった。
学生はそれぞれ講義の準備を始める。といっても講義で使う本などを机の上に置くだけだ。その簡単な作業を終えると教室にはソフィアの影響か普段とは違った空気が流れていた。ソフィアのことが気になるが話しかけにくいそういった雰囲気が漂っているのだ。その中にいるソフィア自身も苦笑いを浮かべている。彼女は意を決して隣の席で本を読んでいるクリフに声をかける。
「クリフ君、朝はありがとうございました。」
「いえ、先生に頼まれた事をやっただけですから。」
ソフィアが朝の案内に改めてお礼をするとクリフはソフィアの方も向かずに素っ気なく答え、読書を続けた。
「あっあの、朝一緒に歩いていた二人は友達ですか?」
ソフィアは朝とは違うクリフの態度に少し躊躇しながらも会話を続けようとする。
「イバンとエレンさんですか、そうですよ。
紹介しましょうか。」
クリフは本を閉じ、イバン達の元へ進み声をかけると二人を連れて戻ってきた。
「赤い髪の男がイバンで桜色の髪の女の子がエレンさんです。」
クリフは連れてきた二人を適当に紹介すると席に座り再び本を開いて先ほどの続きを読み始めた。ソフィアはその行動に呆気を取られてしまう。それを見ていたイバンとエレンはソフィアへの対応が普段、クリフが初対面の相手にとる対応だったので驚きと安心が入り混じった顔をしていた。
「ごめんな、クリフは初めて会った人にはいつもこんな感じなんだ。俺はイバン・バリュス。身体強化系統の魔法が得意だ。よろしくな。」
「私はエレン・バルツァーです。得意なのは範囲指定型の強化魔法と治癒魔法ですね。よろしくお願いします。」
イバンは小さく肩をすくめるとソフィアに自己紹介をした。その後にエレンも名乗るとソフィアは表情を戻し、彼らに改めて名乗り握手を交わした。その後、エレンが教室にかけられている時計に目を向けるともう間もなく講義が始まる時間だったのでエレンとイバンはソフィアにまた後で話そうと約束をし、自分たちの席へと戻っていった。
読んでいただきありがとうございます。
ストーリーのペースが遅いので何とかしたいところです。
誤字等があればコメントを下さるとうれしいです。