幻想の空を仰いで   作:トビウオ

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5、6話位は少々早めのペースで上げていこうと思います。
それではどうぞ。


第2話 怒り

狂い出す歯車。それは突然始まったーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上司、それとも友人か。そんな鴉天狗の事を考えながら白い耳で周りを警戒して走っているのは、白狼天狗の少女 犬走椛である。

 

「文さん、珍しく真剣でした、、、そんなに大切なものなんでしょうか?あの人が真面目になんて本当に珍しい、、、」

 

どうやら上司というより友人なのだろう。随分丁寧な口調で呟いているが、内容は結構失礼である。

 

彼女の言動から、これまでの射命丸文の行動が如何に自由なものだったかが伺える。そんな身勝手にいつも巻き込まれるのだろうか、彼女の顔からは苦労が感じられる。しかし、その割には疲れが見えない。今回も使いっ走りだと言うのに、嫌そうな顔は見せない。それはつまり、両者を信頼している証拠だろう。

 

犬走椛は思考を止めて、走る事に集中した。周りの警戒だけは怠ってはならないということを理解しているためだ。

彼女は千里眼も使い、あたりを見回す。特に変わったことはない。至って普通の山である。

 

しかし突然、凄まじい霊力が妖怪の山に出現した事を彼女は見逃さなかった。

 

「ーーっ!南東!」

 

方向を変え、凄まじい勢いで剣を抜く。その姿はまさしく獲物を追う「白狼」そのものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上を見上げると、遥か上空を飛行機が飛んでいる。空は澄み渡り、周りの紅葉を際立たせる。

そんな事を考えて彼ら2人は歩く。頬を撫でる風は心地よく、つい気が抜けてしまう。遠くには開けた広場が見える。あそこで一休みしようと2人で決める。横の立て札に0.4kmと書かれている。遠そうでどうやら近いようだ。30分もしないうちに見えてくるだろう。

すると随分と肌寒くなってきたのか、右側の彼はリュックからおもむろに上着を取り出した。

 

「なあ」

「ん?どうした?」

「お前寒くないのか?この季節の山に半袖は流石に、、、」

 

取り出した上着を片手に呆れた声で彼は聞いた。

 

「寒い」

「じゃあ上着くらい着ろよ」

「忘れた」

 

彼らがゆったりと歩いているのはとある山の森である。片方が半袖の格好という所を除けば、秋の山を登るに当たって必要な装備は完璧だろう。

 

「お前いっつもなんか忘れるよなぁ、、、ちょっとは気をつけろよ」

 

しっかりと上着を持ってきた彼の名は 号刀 倭登(ごうとう やまと)。非常に変わった名前であり、最初から彼の名を完璧に読めたものは数少ない。

 

「まあまあ、死にはしないから」

 

てきとうな事を言っているのは 小鳥遊 飛蕾(たかなし ひらい)。こちらも相当変わった名前だ。

 

2人は同じ大学の親友である。特段趣味や部活が同じだったわけではないが、自然と話があった。

そしてよくわからぬうちに友となり親友となった。

 

2人はまた黙って歩き出す。上も下も色付いておりついつい前を見ることを忘れてしまう。秋、カサカサと風で揺れる紅葉、サクサクと音を立てる落ち葉。やはり日本に四季があって良かったと思う。

 

「ーーあれ?」

 

不意に、また何か忘れたのか小鳥遊は間の抜けた声を漏らした。彼は横を歩く号刀には見向きもせずに辺りを忙しなく見回す。どうしたのだろうか。もしかしたら今度は何か落としたのかもしれない。

 

「おいどうした?」

「なあ、ここどこだよ?」

 

すると突然雨が降り出した。いきなりの出来事に2人は驚く。小鳥遊の質問を無視して号刀が呟く。

 

「山の天気は変わりやすいな、本当。カッパだそう、、、ぜ、、、」

 

気付いた。もう30分が経過している事に。なのに一向に広場は見えてこない。さっきまで無駄かと思う程にあった看板も面影ひとつない。

2人は顔を見合わせる。道に迷ったのだと思ったのだ。長いため息を吐いた。焦ってもいい事は無いと、2人共よくわかっているようだった。

 

しかし、後ろを見て驚愕する。

 

「、、、構えろ」

「わかってる、なんだあれ」

「知るかバカ」

 

後ろにいたのは巨大な剣を構える少女であった。真っ白な服装も耳も、アレは明らかに普通ではない。コスプレにも見えたし、はたから見れば少々「痛い」者として見られるかもしれない。

しかし、彼女の目がそれをさせない。

あの目は人を睨み殺すような目だ。そうあらわすとしっくりくる。

 

立て続けに起こる出来事に頭の処理が追いつかない2人だが、それでも落ち着いている。

本来の人間であれば刃を見るなり腰を抜かしてしまうだろうが、何故か2人共信じられないほど肝のすわった少年であった。

 

2人は喧嘩っ早い訳ではないが、気に食わないことには全力で歯向かったし、友人が傷付けられれば拳も使った。

彼らは幼い頃から自分の意志を曲げない性格だった。好きな物はすき、嫌いな物はきらい。周囲に流されることも無かった。

 

故に嫌われた。

 

人間は集団を好む。吸血鬼のような牙も、天狗の様な翼も人間は持っていない。そんな生き物が自然界を今日まで生きて来れたのは、その圧倒的知性と学習能力、そして「集団行動」を軸とした生活を守ってきたためだ。

 

「集団行動」をするにあたって最も重要なのは、周りと合わせる事だ。そして何より、「集団」は強い。

普段は森の王と呼ばれるカブトムシも、たった5mmのアリに命を奪われる。人間すら死に至る毒を持つオオスズメバチも、小さなミツバチに殺される。それは全て「集団」だからこそ成せた業である。

 

近年の人間は、その「集団」の強さに溺れている事に気付いていない。だから誰かがその「集団」から外れれば簡単に切り離すどころか、徹底的に痛めつける。それは、自分達は強いという優越感に浸りたいからである。

 

それを彼らは嫌った。故に群れることを嫌って、ひとりぼっちになった。そしてひとりぼっちだった彼らは偶然にも同じ大学に入った。同じ境遇にいる事を無意識的に感じた彼らは自然と意気投合し、初めて心から信頼の持てる友人を持った。

彼らが親友となったのは、実はこんな事があったためである。

 

だから彼らは動じない。彼らは何故か2人共喧嘩が強かった。動じないのはその為だろう。肝がすわっているというよりも、自分達の強さに自信があるというべきだろうか。

号刀は警戒しながら少女に話しかける。

 

「誰だ?そんなもの持って」

「誰ですか、だと、、、?」

 

少女の声はドス黒かった。見た目との差に2人は驚いたが、少女はそのまま話しかけてきた。

 

「おちょくっているのか?あれ程にまで山に侵入するなと言っていたのに!」

「おいおい、訳がわからないぜ。誰が決めたか知らないけど、『この山に入るな!』って何様だよ」

「貴様、こちらが下手に出たからと、、、!」

「いや、だから、、、」

 

小鳥遊は顔をしかめる。この山は小鳥遊の祖父の土地の山だ。どこの誰かわからない奴にそんなことを言う権利は無い。

彼らは全く持って心当たりがなかった。それはそうだろう。何せ彼らは何もしていないのだから。

 

しかしあの時、おちょくっていた訳では無いが、彼らは舐めていた。たかが少女1人、よくわからぬ玩具の剣で何が出来るのか、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前が突然真っ赤に染まる。

何だろうと横を向く。

ああ、なるほどと思った。

 

ーーー目の前を赤く染めたのは、号刀の血だった。

 

「後は貴方ですね、、、」

 

号刀は腹部を大きく斬られ、血を噴き出しながら地面に倒れた。

 

「ーー号刀?」

 

いつの間に近づいたのか。少女が言う。

しかしさっきまでの真っ白な少女はもういなかった。目の前にいるのは、真っ赤な剣を持った真っ赤な狼だけだった。

 

小鳥遊は大きく目を見開いた。信じられない光景に、思考が停止してしまっている。

 

「ーーー誰だ」

 

出てきた言葉はひとつだけ。彼の精一杯の言葉だった。

 

「お前は、誰だぁ!!」

 

「天狗を騙そうとはいい度胸だな」

 

赤い狼は再び剣を構え、静かに答えた。

 

「私の名は誇り高き白狼天狗、犬走椛。我が種族を愚弄した罪を、今ここで償ってもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました。意見等ありましたらどんどん送って下さい♪(
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