魔法少女隊R-TYPEs   作:SanDMooN

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これは彼女の物語。
偽りの仮面を打ち捨てられた彼女が、その仮面の意味を知るまでの物語。
己にあらざる二つの過去に、彼女が見たものは。

そして再び戦いの空に、人工の英雄、仮初の少女達が舞う。
その感情が、想いが、存在その物が。熾烈な光の渦の中で激突する。



第12話 ―本当の自分と向き合えますか?―③

「オリジナルのことを知りたい、か。何を言い出すかと思えば……まあ、いいだろう。

こちらも機体の修理にはまだしばらくかかる。そうすることで8号のコンディションが回復するというのなら、私が拒む理由は無い。彼女が保管されている場所の座標を送る。8号を1人でそこに向かわせるといい」

 

「――と、言うわけだ。スゥ=スラスターのオリジナルの方は話がついたよ」

「――行ってくるわ」

そして、ほむらは1人歩き出す。あの口ぶりからするに、オリジナルのスゥ=スラスターは今もまだ生きているのだろうか。だとしても、恐らく戦える身体ではないのだろう

そうでなければ、自分達が生み出されるはずもないのだから。それでも会いたかった。会って、話がしてみたかった。一体彼女は何のために戦ったのか、知りたかった。

 

シャトルに乗り込み、宇宙の海を一人で渡る。指定された座標は、火星の衛星―フォボスに建築された研究施設。その研究施設の最奥部に、スゥ=スラスターのオリジナルは居るのだという。

オートパイロットで約半日、それまでは、特に何をするでもない。仮眠を取るためのスペースもあることだから、少し眠ることにした。

仮設のベッドに身を預け、目を閉ざす。

寝つきは悪い方ではないのだが、今日だけはどうにも眠気がやってこなかった。代わりに現れたのは、いくつもの苦悩。

自分の存在が徹底的に破壊されて、自分が何なのか分からなくなった。仲間に支えられて、それを見つけるために動き出した。

けれど、だとしたら。今の自分が持っている記憶は、スゥ=スラスターとしての記憶はなんだったのだろう。全てが作り物なのだとしたら、何故その記憶の中の英雄は、ああも必死に戦っていたのだろう。

その記憶は、やはりどうしてもリアルで、思い出すたび原始的な恐怖を抱かせるものだった。

記憶は、思考は更に遡る。幼体固定を受ける以前の記憶はどうだったのだろう。今まで考えたことも無かった。考える必要も無かったのだけれど、そこに思考を向けた途端。

――意識が、ぽっかりと抜け落ちた。

 

「……そう、か」

そんな記憶は、どこにもありはしないのだ。そもそもにして与えられてもいないのだろう。きっと以前の自分であれば、それを不思議に思うことすらできなかった。

そういう風に、自分の記憶は作られていたのだろう。

「本当に、愕然とするわね。……だからこそ、確かめないと」

静かに、自分の心の中を打ちのめしていったその記憶の欠落。それを静かに受け止めて、ひび割れた心を繋ぎとめて、ほむらは目を閉じた。

今度は、静かに眠ることが出来た。

 

「ん……」

電子音声が、目的地に到着したことを告げる。その声に目を覚まし、軽く寝癖のついた髪を払う。そして、操縦室へと入る。

そこからは手動で船を進ませ、管制官の誘導に従って基地へと着艦させた。待っていたのは、研究者然とした男の姿。その男に促されるまま、施設の奥へと導かれていく。

何重にも張り巡らされた通路を抜けて、厳重なロックをいくつも超えて。たどり着いたのは、壁一面に巨大な水槽が作られた部屋だった。

 

その場所で、その水槽の中で不思議な色をした液体に浸かり、その全身にいくつも管を通されて、たゆとうように1人の少女が浮かんでいた。

「スゥ=スラスターのオリジナルは、電界25次元においてマザーバイドを撃破した後、地球へ帰還した。ここまでは、お前も知っている事実だ。その後、帰還を果たしたスゥ=スラスターはこの基地へと収容され、そこで戦闘データの解析を行っていた。その時はまだ元気だったのだがね」

目を見開いたまま、溶液の中にたゆとうスゥ=スラスターの姿を眺めるほむら。聞こえているのか居ないのか、構うことなく男は言葉を続けた。

「人知を超えた異層次元での戦闘と、幼体固定手術の副作用が重なったんだろう。彼女の身体は、急激に崩壊を始めた。それを防ぐためにさまざまな処置を施した結果、これだけ大きな入れ物が必要になった。今の彼女は、少しでも身体が外気に触れれば崩壊してしまう。それほどに不安定な状態だ」

 

意識などとうになくなっているのだろう。縦しんばあったとして、自分の身体がこんな有様になることに、耐えられるはずが無い。

人類の未来のために戦って、戦って、戦い続けた英雄の末路がこれか。余りの事実に愕然として、ほむらはその場に崩れ落ちるように膝を付いてしまった。

「そして、崩壊する前の彼女の体細胞をベースにお前たちは作られた。この事実は、極々一部の人間にしか知らされていない。まあ、知らせられるはずもないがな」

「なんて……むごい、ことを」

生きていれば、もしかしたら話くらいはできるのではないかと思っていた。死んでいたのならそれはそれで、その生きてきた軌跡を知るくらいはできるのではないかと考えていた。

けれどこれは、余りにも惨かった。自分の意志で生きることも出来ず、死ぬことも許されず。肥大した生命維持装置に繋がれて、今なお実験台としてその命を弄ばれている。

 

男は、呆然と佇むほむらを一瞥してから、踵を返し。

「この部屋には、知りうる限りの彼女に関するデータも蓄積されている。見たければ閲覧しても構わない。……くれぐれも壊すことだけはないように」

言い残して、部屋を出て行った。そして取り残されたほむらが、1人打ちひしがれたまま佇んでいた。けれど、いつまでもそうしても居られない。

向き合うと決めたのだから。余りにむごい事実からも、目を背けてはいけないのだ、と。

水槽に浮ぶ英雄の姿を一瞥。それは確かに、ほむらと同じ姿形をしていた。本当に自分がスゥ=スラスターのクローン体なのだということを実感させられた。

水槽から視線を外して、並んだ端末の一つに触れる。いくつも積み重ねられた、スゥ=スラスターに関するデータを一つ一つ閲覧していく。

 

スゥ=スラスター。A.D.2146生。

学生時代にパイロットとしての素質を見出され、16歳の時に地球連合空軍に入隊。その後、R戦闘機のテストパイロットを経て太陽系外周防衛部隊に配属となる。5年の任期を経て地球圏へと帰還、その直後、バイドの襲来によって太陽系外周防衛部隊は壊滅。

彼女自身の強い希望もあり、第3次バイドミッション、作戦名-THE THIRD LIGHTNING-のメインパイロットとして選定され、R-9Ø――ラグナロックを駆り、空間座標――3681119:銀河系中心域、マザーバイド・セントラルボディの破壊に成功した。

 

その後、漂流していたところを回収され当基地に収容され、データ回収と研究を行っていたが、高々次元における異層次元航行による影響と、幼体固定処置の副作用によって身体の崩壊が始まる。崩壊は精神領域にも及び、被験体の生命が危ぶまれるため生命維持装置に接続。これ以上の実験の続行は困難と推測されたため、クローン体を作成しこれを用いて実験を継続する。

 

A.D.2170/01/14追記

作成したクローン体にパイロット適性が確認された。中でも特に能力の高かったクローン体8号及び13号を、オペレーション・ラストダンスのパイロット候補として推薦する。

 

A.D.2170/02/02追記

最終候補選定に際し、クローン体における自由意志の必要性の有無が再検討されることとなった。その事例を検討するため、8号にオリジナルの記憶を一部与え、自由意志による行動を一定期間観察することとする。

期間についてはオペレーション・ラストダンスの進行状況に合わせ、期間経過後に8号と13号による戦闘を行い、勝利したものをオペレーション・ラストダンスの候補として推薦することとする。

 

 

「……そういうこと、だったのね」

ある程度予想は出来ていた。そして示されたデータは、それを確信へと変えるものだった。

「そう、それがお前と私の全てよ。No.8」

もう一つの声。聞き覚えのある声。それは自分と同じ声。弾かれるように振り向くと、そこにはもう1人の同じ顔が立っていた。

思わず身構えるほむらを手で制して、彼女――13番目のクローンである少女は告げる。

「ここでお前と戦うつもりはない。私達の戦いは、空でつけなくてはいけないものだから」

「……そう」

信用はできないが、それでもここは間違いなく監視下。何かあればすぐに止めに来るはずだろうと、一応の警戒は解いた。

「それで、貴女は何をしに来たの?……13号?」

資料で見たとおりならそれであっているはずだと、皮肉交じりに呼びかけた。その言葉に、目を見開いて怒りを顕わにする、彼女。

 

「その名前で呼ばないで。お前に呼ばれると……イラつきが抑えきれなくなる」

「なら、他に名前は無いのかしら?」

更に目を見開いて、歯を食いしばる彼女。どうやらほむらの言葉は、彼女の逆鱗に触れてしまったようで。

「そんなもの……あるわけがないじゃないっ!お前が名前を身分を与えられて、仲間とぬくぬく過ごしている間も、私はこの場所でイカれた実験の毎日だったんだ。物扱いされて、名前すら与えられずにッ!」

少女は怒りを顕わに歩み寄り、力任せにほむらの胸倉を掴んで引き寄せた。怒りに震える自分の顔、初めて見たその姿にほむらは半ば圧倒されて。

「お前を殺せば私は英雄になれる。もう物扱いされることだって無くなる。……だから、私はお前にだけは絶対に負けない」

ぎらぎらと、怒りと恨みに燃える瞳を近づけ睨みつけてくる。澱み、濁り、それでもなお真っ直ぐで力強いその瞳、その圧力に耐えかねて、ほむらは目を逸らしてしまった。

 

「……ふん」

そんな弱弱しいほむらの姿に気勢を削がれたのか、掴みあげたほむらを投げ捨てるように突き放して。

「それでも、お前の状況にも一応同情はできる。……今の今まで、何も知らされなかったんだもの」

突き放されて、膝を突いて座り込むほむらの耳元で、彼女が囁いた。

「聞くところによると、お前は戦うのが嫌で逃げ出したそうね。それがどこまで本心かは分からないけど。そして私は英雄になりたい。お前を倒して、私は英雄になってみせる」

彼女は更に顔をほむらの耳元に近づけて、声を潜めて囁いた。

「……わざと負けるつもりはない?そうすれば、貴女を生かしてあげる。貴女は仲間と一緒に戦い続けることができる。私は英雄になれる。……どちらにとっても、いい取引のはずよ」

囁かれた言葉に、ほむらは目を見開いた。確かにそれは魅力的な提案だった。

ここで負けて、そして生還することができたのならば、英雄の身代わりとして過酷な戦いに駆り出されることも無いだろう。

 

「答えは空で聞く。……これ以上お前と一緒にいると、うっかり殺してしまいそうだから」

再び彼女は冷たい口調でそう告げて、足早に部屋を後にした。残されたほむらは、何も答えることが出来なかった。心の中で渦巻く迷いに、答えを見つけることが出来なかったのだ。

 

「やあ、ほむら。オリジナルには会えたかい?」

研究施設を発ち、シャトルで宇宙空間を駆けていたほむらに通信が入る。声の主はキュゥべえで。

「……ええ、一応は」

「歯切れの悪い返事だね。まあいいさ、暁美ほむらの親族の住所がわかった。そちらに転送するから、そのまま向かってくれても構わないよ」

送られてきたのは、地球上の座標。都市部から離れた、今尚自然が多く残る地域であった。それを眺めて、ほむらは軽く目を伏せて。

「行ってくるわ。……長くなるかもしれないと伝えておいて」

「できれば早く戻って欲しいところだけどね、わかったよ」

そしてシャトルは火星を発ち、地球へと舞い戻る。その帰路の最中、ほむらはずっと考えていた。

スゥ=スラスターは、何を思って戦っていたのだろう。順当に考えれば、太陽系外周防衛部隊の仲間を殺された復讐なのだろう、とは思う。もしそれだけが理由なら、きっと自分はそうはあれないだろうと思う。

激しく身を焦がす憎悪、それが最大の力になるというのなら、それをきっと持ち得ないものだろう、と。

そもそも死んでしまった人間が何を思っていたのかなど、分かるわけがないのだが。ただそれでも分かったことは、得られたことは多かった。

まず第一に、自分の記憶はオリジナルのものであるということ。きっと、妙な記憶を植えつけられたりはしていないのだろう。それはすなわち、戦うことを拒んだのも、それでも戦おうと思ったのも全て自分の意志であるということ。

 

それが分かっただけでも、少し胸のつかえが取れたような気分だった。

 

シャトルは空港に着陸し、そこから目的地へと向かう。

都市部からは外れた場所で、まずは空港に併設された駅から列車に乗って最寄の駅へ。更にそこから歩いて30分程はかかるのだという。

この時勢に、随分と不便な場所に居を構えているものだ。

エア・ランナーを借りていこうかと思ったが、返すのが面倒なので止めておいた。外を眺めると、雪が降っていた。寒い盛りは過ぎたはずだが、雪の勢いはかなり強い。

日もまだ短い時分、夕暮れ時はすぐに夜へと変わるだろう。

「……宇宙には、季節はなかったものね」

空港の中はまだ暖かいが、この薄着では外に出るのは恐らく堪える。手近なところで、コートの一着も用立てることにしよう。

荷物らしい荷物なんて、初めから持ってはいない。買い物もクレジット一つで事足りる。それだけをポケットの中に突っ込んでそそくさとほむらは用意を始めた。急がなければ、着く頃には夜になってしまう。

 

白い厚手のコートを着込んで、ついでに暖かな手袋と帽子も一緒につけて。口の上手い店員に押し切られて、うっかりとマフラーまで巻いてしまって。まさしく防寒具の完全装備といった出で立ちで、ほむらは列車に揺られていた。

列車自体が、この時代の移動手段としては既に時代遅れなものとなっていたこともあり乗客はまばら。ほむらは1人、静かに窓の外を流れる雪景色を眺めていた。

ガタンゴトン、なんて音を立ててレールを走る列車はもう一世紀以上も前の遺物でしかない。この時代の列車は全て、とっくにリニアカーへと挿げ替えられてた。

もっとも、本当に急ぐというのであれば高高度旅客機がある。太陽系全域に生活圏を広げた人類にとっては、地球という場所はすっかり狭いものとなってしまっていたのだ。

 

「それでも、人の足にはまだ、世界は広い」

足元に積もった雪に足を取られそうになりながら、白く染まる空の下をほむらは歩く。30分程といったが、この悪路ではもう少しかかってしまいそうだ。

大自然の驚異すら克服したはずの超科学も、人々の生活の場に下りてくるまでは今しばらくの時間を必要とするようで。都市部に設置されているような波動エンジン直結の融雪用ヒーターや、無人稼動式除雪装置などはまだこの辺りには普及していない。

だからきっと、こうして辛うじて用意されている道は、誰かが雪を退けて作ってくれたものなのだろう。

どこまで歩いても、真っ白な景色は終わらないように見える。普段広い宇宙を縦横無尽に駆けているはずなのに、こうして自分の足で地球を歩いてみると、やはり地球は広いと感じてしまう。

宇宙で生まれ、宇宙しか知らない人々はこんな景色を見ることなく、地球の広さを知ることもないのだろうか。

なんだか、それはとても勿体無いことのようにほむらは感じた。

きっとこうして仮初にでも身分と存在を与えられなければ、自分も一生それを知ることはなかったのだろう。そう思えば尚のことだった。

 

 

「……ここ、ね」

日本様式の建物の前で、指定された住所と間違いが無いことを確認してほむらは呟いた。このような建築物はこの時代では珍しい、とはいえ存在しないわけではない。

技術継承はしっかりと行われ、おまけに最新の技術さえ貪欲に取り込んだ結果。古来よりの景観を損なうことはなく、居住性を高めた新古式住宅などというよくわからないものが今も建築されており、そこそこの人気を誇っているのだという。

「緊張するわ。……まったく、参ったものね」

はぁ、と白い溜息を一つ吐き出した。表札には、確かに暁美と書かれている。事前に渡された資料によれば、この家には暁美ほむらの母親が1人で住んでいるらしい。

呼び鈴を鳴らすと、インターフォン越しに女性の声が聞こえてきた。見慣れない来訪者に訝しげに尋ねる調子のその声に、ほむらは静かに脈打つ胸を押さえて、静かに言葉を告げた。

 

暁美ほむらと病院で親しくしていたのだが、彼女が亡くなったと聞いてやってきた。せめて、お参りだけでもさせてもらいたい、と。

そんなほむらの言葉を信じて、その女性はほむらを家に招き入れた。出てきたのは、線の細く、どこか弱弱しい印象を受けるような女性の姿だった。

「……お邪魔します」

こんな寒い中、大変だったでしょうと言うその女性に小さく頷いてほむらは家の中へと足を踏み入れた。広い家だった。たった一人で暮らすには、あまりにも広すぎる家だった。

掃除は行き届いているようだが、あまり物もなく、どこか殺風景な印象も受けた。

「まさか、あの子にこんな可愛いお友達がいたなんて。きっと、ほむらも喜んでくれていると思うわ。……お名前は、なんて言ったかしら」

言葉に詰まる。その女性の言葉が胸に突き刺さる。死んでしまった暁美ほむらと、今ここにいる暁美ほむらは本来何の関係もないのだ。ただ、その名を騙って存在しているというだけで。

「……スゥ。スゥ=スラスターです」

暁美ほむらを名乗るわけにも行かず、ほむらはその名を名乗った。自分がそうだと思い込んでいた者の名前を。

胸の奥が、ズキリと痛んだ。

「そう、スゥちゃん。どうぞ、上がってちょうだい」

促されるまま、家の奥へと進んでいった。

「失礼……します」

暗澹たる気持ちを心の底に抱えたまま、ほむらは進んでいく。自分を、理由を、すべてを偽ってここに居るのだ。果たしてそれが、本当に暁美ほむらに向き合うことになるのだろうか。

 

「ほむら、お友達が来てくれたわよ」

案内された一室は、しんとした静けさと冷たさが同居する部屋だった。子供用の学習机や、教科書の収められた本棚。小さな箪笥が壁に二段に積み重ねられていた。

おそらくそこが、暁美ほむらの部屋だったのだろうとわかる。丁寧に掃除がされていたのだろう。埃や汚れの類は見られない。もとより病床にあったこの部屋の主がここ居たことは少なかったのだろう。

更に部屋の主を失って久しく、その部屋は人が存在することが似つかわしくないほどに冷え切っていた。

 

その部屋の中に、ほむらはゆっくりと足を踏み入れた。

もはや用を為すこともないのであろう机の上には、小さな仏壇が置かれている。額に映し出されていた映像は、おそらく生前の暁美ほむらのものだったのだろう。中学校のものなのであろう制服を着て、嬉しそうに笑う少女の姿がそこにあった。

黒い髪を肩ほどまで伸ばして、その肌はまさしく病的に青白かった。目元に刻まれた小さな皺は、彼女が長きに渡って苦痛と戦い続けたのであろうことを暗に示していた。

やはりそれは、ほむらとは似ても似つかぬ少女の姿で。

 

「ここは、ほむらさんの部屋……だったんですね」

「そうよ。あの子は生まれつき体が弱くて、ほとんどここに居ることはなかったのだけれど」

女性の声は懐かしむようで。それでいてまるで瘡蓋を剥がすような、ひりつく痛みを堪えているような、そんな声だった。

「私は奥にいるから、しばらく好きにしていて。何かあったら呼んでちょうだいね」

「……はい」

静かに、どこまでも静かに言葉を告げて、扉は閉ざされた。

明かりに照らされた部屋の中。線香の匂いが静かに漂っていた。

 

机の椅子を引いて、そこに腰掛ける。目の前の仏壇には、この世を去った暁美ほむらの名と姿が映し出されていた。線香を焚き上げ、鉢をそっと鳴らして手を合わせ、黙礼。

「ごめんなさい、暁美ほむら」

伏していた目を開き、ほむらは本当のほむらに向けて静かに口を開いた。

「私は、死んでしまった貴女の名前を、身分を借りて存在している。そんな私がのうのうとこんなところに来るなんて、貴女からすればひどく不愉快かもしれないわ」

映し出された、暁美ほむらであった少女は何も言わない。その姿は何も変わらない。

「貴女と向き合えば何かが変わるかも知れないって思ったわ。けれど、全然ダメね。単に自分の罪深さを改めて認識してしまっただけ。……それでも、貴女には謝っておきたかったの。本当に、ごめんなさい」

死者は、何も答えない。いっそ責め立ててくれでもしたら、少しでもその罪と向き合ったことになるのかもしれないけれど。

やはり、死者は何も答えてはくれなかった。それが自分の罪と向き合うことになるのかどうかすら、ほむらにはわからなかった。

 

仏壇から視線を移すと、机の上に置かれた一冊のノートが目に留まった。花柄の描かれた、女の子が使うようなノート。

暁美ほむらの持ち物だったのだろうか。手にとって、それを眺めてみた。小さな、丸い文字で綴られていたそれは、暁美ほむらが遺した日記だった。

「………」

知りたい。そう思った。暁美ほむらという人間がどういう人物であったのか。

病に冒され病床で過ごす日々に、何を思って生き、そして自らの死に何を思ったのか。

気がつけば、ほむらは静かに頁を捲り始めていた。

 

「スゥ……ちゃん?」

部屋から出てこないほむらを案じて部屋を覗き込んだ女性が見たものは。ノートの頁を開いたまま、嗚咽とともにぽろぽろと、涙をこぼすほむらの姿だった。

「っ……どうしたの、スゥちゃん」

駆け寄って肩を抱く女性に、ほむらは涙を流しながら振り向いて。

「ごめ……なさい。っぐ。……っぅ、ぁぁ。私、私っ……」

「落ち着いて、スゥちゃん。何があったの。落ち着いて話してごらんなさい」

堪えようとしても涙は止まらない。そんなほむらの背をそっと支えて、優しく女性は言葉をかけた。そんな言葉がまた、ほむらの胸に突き刺さっていく。

「私は……っ、ひく、っ。謝らなく……っちゃ。いけないんです。私は」

胸の痛みはますます強くなって。まるで、きりきりと締め付けられているようで。

立っていられなくなって、体を丸めて蹲る。

口を開けば嗚咽ばかりが漏れてしまう。必死に言葉を探して、繋いだ。

「違うんです。……私は、ほむらさんの友達なんかじゃなかったんです。っ……私、は。……私は、ほむらさんの名前を、借りていただけ……それだけ、なんです」

途切れ途切れに語る言葉。見るからにおかしいほむらの様子に、女性も戸惑っているようだった。

「……とにかく落ち着いて。ここに居たら体が冷えてしまうわ。暖かい部屋で、少し落ち着いてから……ゆっくり話を聞かせてくれないかしら?」

それでもあくまで声色は優しくて。ほむらは、静かにそれに頷いた。

 

そのノートは、暁美ほむらの日記だった。小学校の中学年頃、病状が悪化しほとんどの時間を病院で過ごすようになってからの、病気と闘う日々を綴った、日記だった。

ひらがな交じりの丸文字で、書かれていたのは不平や不満。普通の子供と同じように生きられないことへの鬱屈とした感情が、切々と綴られていた。

それが変わり始めたのは、暁美ほむらが中学校へと入学する頃からで。おそらく何かのきっかけで、自分の体が不治の病に侵されていることを知ったのだろう。

その命が、それほど長くは持たないであろうということも。

だんだんと字が綺麗になり、漢字も多く使われるようになり始め。この頃から、日記自体も大分長くなっていた。検査や治療の事の合間に、こっそりと書かれていたのは絶望と、死への恐怖。涙らしきものが滲んだ頁もいくつもあった。

 

あくる日、ついに暁美ほむらはその余命を宣告された。そして厳正で残酷な医療は、彼女に一つの選択を強いたのだった。

曰く、出来る限りの延命を行い、病魔と闘い続けていくか。それとも、本人が望むところまで生き、そのまま苦しまぬよう命を絶つか。

それは中学生の子供が背負うには、あまりにも重い。重すぎる選択だった。

 

その日からしばらく、日記は書かれることはなかった。ようやく次に書かれた日記が、彼女の最後の日記となった。

 

 

11月21日。

 

今日、主治医の先生とお話をした。

延命はしないで欲しいと、先生にそう言った。

 

理由を聞かれた。

先生は、ずっと私のことを診てきてくれたから、話そうと思った。

 

私は生まれつき体が弱くて、お父さんもお母さんも、すごく苦労したって言ってた。

お父さんは、そんな私を育てながら生活していくことは出来ないって言って、家を出て行ってしまったって聞いた。

学校でも、病院でも、たくさんの人のお世話になりながら、私はなんとか生きてこられた。

それはつまり、同じだけたくさんの人に迷惑をかけながら生きてきたってことで。

何よりも、お見舞いに来るたびに疲れた顔で笑うお母さんがつらそうで、そんな顔は見たくなかったから、早く楽にしてあげたいって思った。

お母さんが、お父さんが、病院や学校の人たちが、みんなが大好きだから。

だから、これ以上私のことでみんなを悲しませたり、苦しませたくなかったから。

だから、私は無理に生き延びようとしないことにした。

 

先生は泣いていた。

きっとお母さんも泣くと思うから、このことは秘密にしておいて欲しいと言った。

 

どうか、私のことを心配してくれた優しい人たちが幸せになりますように。

お母さんが、いつか心から笑ってくれますように。

世界中のみんなが幸せになってくれたらいいなって思うけど、きっとそれはとても難しいから。

だから、私がこれから背負う分の苦しみは全部、私が向こうへもって行きます。

その分くらいは、世界が幸せになってくれますように。

 

大好きなみんなへ、さようなら。

 

 

 

 

その前のページは破り捨てられていた。

けれど、おそらくよほど筆圧をかけてその頁には何かが書かれていたのだろう。

後ろの頁にも、その文字の跡が残っていた。

 

『死にたくない』

 

――と。

 

 

 

そして、とにかくほむらは涙をこぼし続けた。優しく背をさする女性の手が暖かで、心の中に染み入っていくようで。涙が止まらず、いつしか嗚咽は慟哭へと変わって。

その激しい感情が通り過ぎてしまってから、ほむらは赤く腫れた目元を擦って。

溢れ出した、言葉にならない感情に押し流されるままに、静かにほむらは話し始めた。

 

心に被せた鎧は剥がれて、剥き出しの心はとても柔くて脆かった。隠すことなどできなかった。理解されようはずもない、暁美ほむらとスゥ=スラスター。そしてそこから生み出されたモノ達の事を、ほむらは静かに語り続けた。

「……すごい話ね。本当に、信じられないくらい」

その全てを受け止めて、女性は呆然と息を吐き出した。

「信じられないのは、当然だと思います。……でも、それでも私は自分の罪に向き合いたかった。そして、貴女達に謝らなければならないと思って……それで」

「大変だったのね、貴女も」

優しい声は変わらなくて。その女性は、ほむらの言葉を受け入れた。確かに信じられない上に、理解もできないことばかりだけれど。

それでも、ほむらが自分の過去と向き合おうとしていることを知りそして、暁美ほむらの最期の願いを知ったのだということを聞いて、優しく言葉を告げるのだった。

 

「……あの子は、誰かに助けられてばかりだったから。だからきっと、誰かを助けてあげたかったんだと、そう思うの」

ほむらの肩にそっと手を触れ、静かに説く。

「だからきっと、あの子は喜んでいるんじゃないかしら。あの子の名前を使うことで、助かっている人がいるということに」

間近で合わせた女性の瞳は。潤んで揺らいでいるようだった。そこに湛えられていたのは、やはり憂いでもあったのだろうけれど。

「死んでしまった人の気持ちなんて、きっと誰にもわかりはしないわ。だからこそ、そう考えて少しでも、前向きに生きてくれたほうがいいと思うの」

ぎゅっと、肩に触れる手に力が篭った。

「けれど、もし貴女があの子の名前を名乗るなら、一つだけ約束してくれないかしら。貴女は、あの子の分まで生きてください。そして、人生を楽しんでください。戦えなんて言わない。もしも貴女が普通の人のように暮らしていけるのなら、 あの子が生きられなかった分まで、どうか平和に生きていてください」

その言葉に、跳ね上がるようにほむらは顔を上げて。再びその瞳が潤んで、涙がぽろぽろとこぼれてくる。

 

 

「うぐ……っ、うぁ、ぁぁ……うあああぁぁぁぁーーーっっっ!!!」

 

 

そしてまた、慟哭の音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、少女は再び空に舞う。

 

眼下に海を眺める決戦場。

空を翔る、白い機体は彼女の身体。

日の光に輝く機体。そこに己が魂を載せて、少女は一つの機械となった。

 

 

「答えは見つかった?No.8」

 

再び向かい合う、黒と白の力。

 

「……ええ、見つかったわ」

 

それが、開戦の合図となった。

 

 

 

「そうか、それがお前の答えか……くく、くくっ」

言葉の端に隠しきれない狂気と狂喜を滲ませて、黒の機体を駆る少女、13号が微かに笑う。

激しい機動を交差させ、互いが互いを振り切ろうと、そして追い縋ろうと機体を走らせる。その様はまるで踊っているかのようで。様子を伺っているのか、まだどちらも本格的な攻撃を始めてはいない。

 

それでもこれから始まるであろう激しい戦闘を、さやか達は固唾を飲んで見守っていた。

「……どうなるんだろうね、ほむらは」

一時もモニターから目を離さずに、静かにさやかは呟いた。

「さあな。でも、帰ってきたあいつはやけに吹っ切れてた様子だったぜ」

やはり同じように、視線はモニターから移さないまま杏子が答え。

「負けて欲しくはないけれど、勝てば暁美さんは……きっと、ここには居られなくなってしまうのよね」

複雑な心境を抱えたまま、宇宙から戻ったマミが言った。

勝てば英雄。その言葉の意味はすなわち、バイドと戦うための旗印となるということ。まず間違いなく、今までのままではいられなくなってしまうということで。

そこはティー・パーティーの作戦室、今はもう、一人戦うほむらを見守ることしか出来なくて。

 

「……ほむらは、もしかしたらわざと負けるつもりなのかもしれないね」

椅子の上にちょんと座って、同じように戦闘の様子を見守っていたキュゥべえがそう切り出した。

「なんでそう思うわけ、キュゥべえ」

視線は逸らさないまま、さやかは尋ねる。

「ほむらは今回選択したフォースは、ただのスタンダード・フォースだ。戦闘力に特化するなら当然サイクロン・フォースを選ぶだろうし、そうでないにしても意表を突く、という意味でならシャドウ・フォースを選ぶだろう」

そう、モニターに移る白い機体が携えたフォース、それはラグナロックが装着しうる3種のフォースの内、最も古いもの。全てのフォースの祖である、スタンダード・フォースであった。

バイド係数も、放たれるレーザーの威力もこの時代に使用されているものと比べれば低く、この戦闘に持ち込むにはあまりにも力不足としか言いようのない代物だった。

「ほむらが何を思ってそれを選択したのかはわからない。けれど、わざと負けようとしていると考えるのが自然なんじゃないかな。彼女は元々、戦うことを望んでいなかったわけだからね」

もう一度激しく交錯する二機のラグナロック・ダッシュに視線を移して、キュゥべえは静かに言葉をつげた。

 

「お前の選択はわかった。なら、たっぷりと付き合ってあげる」

一見寄り添うようにすら見える機動を描いて飛び交っていた二機が、急にその機動を変える。機首を突き合い、ついに相手を撃ち落すための攻撃を開始した。

「存分に抵抗しなさい。そうでなければ、連中も納得しないだろうから。抵抗して、抗って、足掻いて、それで万策尽きた後に……撃ち落してあげるわ」

黒い機体がサイクロン・フォースを携え、鏃のようなスルーレーザーを放つ。対する白い機体は、スタンダード・フォースからリング状の対空レーザーを放つ。

互いに、正面への威力と突破力に優れたレーザー同士がぶつかり合って。

それは、間違いなく当然の結果だった。対空レーザーのリングは、鋭く強いスルーレーザーに切り裂かれ、空間にエネルギーを放出して消失。更に勢いを消さぬまま、スルーレーザーがほむらの機体に迫る。

フォースで受け止めるも、相殺しきれなかったレーザーが機体の下部を掠めて火花を散らした。

 

「約束は守る。殺しはしない。……だけど、お前には山ほど恨みがある。それをたっぷりと晴らさせてもらうわ、No.8ッ!!」

執拗に追い縋り、その背中にレーザーを叩き付けながら黒の機体が駆ける。ほむらはそれを交わしながら逃げ惑い、背後につけたフォースでそれを迎撃する。

しかしそれはいずれも有効な攻撃にはならず、ほむらの機体は小さなダメージをいくつも蓄積していった。

「ほら、どうしたのNo.8、仮にも私と同じなのならもう少し抵抗して欲しいわ。そんなことじゃあ物足りないもの、あまりにもつまらなさ過ぎて、本当に殺してしまいそうよ?」

ほむらは何も答えない。ただ黙って、静かに機体を巡らせるだけで。

 

「やはり一方的な展開だね、無理もない。ほとんど同じ力量を持つ者同士で戦えば、それは装備で上回るほうが勝つに決まってる。やはりほむらは……」

戦況は決した、とばかりにモニターから視線を外したキュゥべえに向かって、さやかは。

「いいや、絶対にそんなことない。だから、あんたも最後まで見てなさいよ」

疑いも揺るぎもない言葉で、まっすぐにモニターを見つめてそう言った。

「……なぜそう言い切れるんだい?客観的に見て、今のほむらに勝機があるとは思えないよ」

「なぜって、そりゃあ……なぁ?」

「そりゃー、ねぇ?」

呆れたように問うキュゥべえに、ちらりと互いの顔を見合わせてそしてなにやら目配せしあうさやかと杏子。

「まったく、わけがわからないよ」

なにやら勝手に得心している二人。ますますもって呆れるように、肩らしきものを竦めたキュゥべえに。

 

「信じているのよ、暁美さんのことをね」

隣に座っていたマミが、そう答えた。

「出撃するときの暁美さんの顔、見なかったのかしら?」

「出撃前のメディカルチェックでは、特に問題は見られなかったはずだよ」

これだから、とさすがにマミも呆れ気味に眉を顰めて。

「もう、どうして貴方はそう無粋なのかしら。……暁美さんは、すごく真剣な顔をしていたわ。きっと悩んで悩んで悩みぬいて、その末に何かを見つけたんだと思う。……もしも単に負けるだけのつもりなら、きっとあんな表情はしていないわ」

「表情なんて、単なる筋肉と皮膚の動きで出来たものに過ぎないじゃないか。そんなものが、一体どこまで信用できるっていうんだい?」

「できるんだよ、特にあいつの場合はな」

そこに杏子が割り込んで、言葉を次いで。

「あいつはな、隠し事なんて向いてる奴じゃないんだよ。特に、自分の気持ちを覆い隠そうとするってことには、徹底的に向いてない」

とても楽しいものを見るかのように、くすくすと笑いながら。

「だからきっと、ほむらは何かを見つけたんだ。……あたしがそうだったみたいに」

そして最後に、さやかが静かに呟いて。

 

「やっぱりボクにはわけがわからないよ。ほむらが勝てるわけがないとも思うしね」

不可解だ、と言わんばかりに小さく首を振りながら。

「ならせめて、ここで一緒に信じて祈ってなさい。……ほむらは、必ず帰ってくるよ」

モニターを見つめたまま、さやかは自然に手を合わせていた。祈るように、必ず勝って戻ってくるように。

「……ああ、どうせ今のあたしらに出来ることなんて、祈って待つくらいしかないんだからな」

杏子も、同じく手を合わせ、祈る。

「ほら、キュゥべえ。貴方も」

マミも、また。

 

「………祈ってどうにかなるものじゃない、現実はずっと非情だよ。キミ達だってわかっているはずじゃないか。……本当に、わけがわからないよ」

未だ理解できないという姿勢は崩さないものの、それに倣ってキュゥべえもその半透明の手を合わせて、モニターへと視線を移した。

 

「……一つ、聞いてもいいかしら」

「戦いながら口を開くなんて、随分と余裕ね」

海上を舞台に激しくぶつかり合う二機。レーザーが飛び交い、再び戦いの色に海を染め、湧き上がらせていく。

やはりほむらは劣勢。大きな損傷はないものの、機体へのダメージは蓄積している。

 

そんな戦いの最中、ほむらはようやく口を開いて尋ねた。

 

 

「スゥ=スラスターは、何故戦っていたのだと思う?」

「っ……何故、そんなことを聞く」

自分達のオリジナルである英雄、スゥ=スラスターの事について尋ねた。13号は、わずかに困惑の混じった声で返した。

「貴女はきっと、私よりもずっと彼女のことを知っているはず。貴女が彼女に対して、何の感情も持たなかったはずはないから。……だから、聞いてみたかった」

攻撃の手は一切緩めないまま、攻撃の意思も、剥き出しの牙も逸らさぬままに。13号はその問いかけに答えた。

「復讐よ。仲間をバイドに殺された事への復讐。きっとそれが彼女を戦いに駆り立てたはず。力を与えたはずなのよ。だから私も復讐してやる……見せ付けてやるわ。私を道具として扱ってきた連中に、私の事を見ようともしなかった連中にッ!」

激しい怒りと憎しみが込められた言葉は、まるでそれ自体が刃のように降り注ぐ。

 

「……本当に、それだけだと思う?」

「他に何があると言うの。そもそも、そんな事を考えて何の意味があるっ!」

激しい怒りに煽られて、攻め手が更に加速する。カプセルレーザーとスプラッシュレーザーを交互に使い分け、まさしく弾幕としか言いようのない程に恐ろしい攻撃を仕掛け続ける13号。

ほむらはひたすらに回避に徹する。対空レーザーも反射レーザーも、この状況では有効打にはなり得ない。

 

 

「私は、そうは思わない」

機体を急降下させ、そのまま水面ぎりぎりを走らせる。水面ごと吹き飛ばそうと打ち放たれるスプラッシュレーザーを、最大加速で振り切って。

「私は見てきた。スゥ=スラスターがどう生きたのか、私達がどう生まれたのか」

「私もそうよ。お前よりもずっと前から、ずっと長く、私はその事実と直面していたのよ!お前を倒せば英雄になれる。それが、私に残された最後の道しるべなんだっ!」

激しい感情が叩き付けられる。それがそのまま攻撃に転じたかのように、破壊の意思を込められたレーザーが執拗に降り注ぐ。

スプラッシュレーザーの爆風が機体を煽る。表面を焼き焦がし、機体が一瞬浮かび上がる。

「私は、オリジナルの記憶を一部だけれど与えられている。だとしたら、もしかしたら私が考えていることと同じ事を、彼女も考えていたのかもしれない」

浮かび上がった機体に更に迫る追撃を冷静にかわし。反射レーザーを放つ。発射角度を調節し、海面を透過するのではなく反射させ、13号の機体へと撃ち放つ。

「だから私は、彼女がただの復讐のためだけに戦ったとは思わない。そう信じることにするわ。……死んでしまった人の気持ちは、もう誰にもわかりはしないから」

相手もそれをやすやすと受けはしない。レーザーの間をすり抜けるようにかわし、そしてさらに迫り来る。

 

「だとしたら、それが何だと言うの。……他に、一体何の理由がある」

「……守りたかったんじゃないかしら」

双方の機体の動きが止まった。

「そう、守りたかったのよ。そして守るための力があった。だから、守るために戦ったのよ」

「守るものなんて、ある訳がないじゃない。それまでの生活も、自分の身体も全て塗り替えられて。まるで戦うための機械のようなものにされてしまったのよ!」

いつしか、撃ち合うその手も止まっていた。聞くべきだと、話すべきだと思ったのだろうか。交わされるのはただ、言葉だけで。

「見知らぬどこかの誰かを、その営みを、小さな幸せを……守ることは、できるわ。――暁美ほむらが、そう願っていたように」

「何を、ふざけたことを……っ」

再び満ち満ちる激情。それに身を任せて機体を突撃させる。これ以上、そんな言葉を聞いていたくなかったのかもしれない。

 

「暁美ほむらも、いずれ死ぬ運命にあったわ。けれど彼女はその運命に向き合った。きっと沢山苦しんで、嘆いたのだと思うわ」

再び激しく交錯する二機。やはり追い詰められていくほむら。またしても被弾し、ついに機体が黒煙を上げはじめる。

それでも、声は途切れない。

「そしてその末に、死すべき自分の運命さえも、誰かの為に使いたいと願った。そして私も願われたのよ。彼女の分も生きて欲しいと」

その願いは、ほむらが戦う運命を背負う事を望まなかった。それでも、ほむらは戦うことを選ぶ。その戦いが、多くの人を救い得るものだと知っているから。

きっとかつての英雄達も、それを望んで戦っていったと信じているから。それがきっと、暁美ほむらの願いを叶えることになるはずだから。

「仲間を、大切な人を、そして見知らぬどこかの誰かを。一人一人の営みを。その小さな幸せを。全てを、私は守ってみせる。そのために戦う。そのために……私は英雄になる」

それは、ありふれた結論なのかもしれない。英雄と呼ばれるものが背負った役割としては、あまりにもありきたりなものだったのかもしれない。

けれど、それはその意思が、言葉が軽んじられる理由には足りるはずもない。

 

「だからこそ、自分の為にしか戦えない貴女には……負けない」

そしてほむらもまた、覚悟を決めた。

 

 

「……ふざけるな。英雄になるのは、私だ。私が、私こそがっ!もういい、お前はここで死ね。殺してやる、私が、今すぐにっ!!」

「負けない。絶対に」

そして、双方の機体に火が灯る。ハイパードライブで、最後の決着を付けようというのだ。

「そんなぼろぼろの機体で、ハイパードライブの負荷に耐えられるかどうか。それに例え耐えたとしても、お前は絶対に私には勝てないのよ!」

「勝つわ。……その為に、私はここに来たのだから」

双方の機体に、溢れんばかりの力が満ちる。

損傷を受けたほむらの機体は、ハイパードライブの発射に際して警告を伝えてくる。機体耐久度の低下、機体温度上昇、ハイパードライブモードに移行すれば、オーバーロードすることさえ危ぶまれる。

機体の内で、見る間に膨れ上がっていく熱量。圧倒的な波動の奔流を溜め込んで、ほむらの機体は今にも弾け飛びそうになっていた。

 

「話にならない。そのまま爆散して……終わりよ」

「問題は、ない……わ」

機体表面が赤熱する。当然内部も灼熱に震え、コクピット内部の温度も急上昇する。恐らく、ほむらが常人のままであれば耐えられなかっただろう。こんな身体にされてしまったが、だからこそまだ戦うことができるのだ。

垂直降下。機体下部を海に沈めた。膨大な熱量を受け渡された海水が、驚いたように悲鳴を上げる。そしてその身を沸き立たせて、膨大な水蒸気となって舞い上がる。

「海水による強制冷却……愚かね。そんなことをして、無事で済むと思っているの?」

「問題ない。そう言ったはずよ」

海水による強制冷却、確かにそれならば内部の熱を逃がすこともできる。ハイパードライブを放つこともできるだろう。

だが、それはすなわち内部機関への海水の流入を意味する。万全の状態であればともかく、傷ついた機体では海水の流入を阻むことは出来ない。間違いなく、遠からずほむらの機体は潰れるだろう。

 

それでも、その一撃に懸けたのだ。

 

 

「今度こそ、終わりにしてやる。No.8ッ!!」

「……ええ、これで終わりよ」

 

 

 

「「ハイパードライブッ!!」

水蒸気の中から飛び出して、白い機体が波動の光を叩き込む。それを待ち構えていたかのように、黒い機体も迎え撃つ。機首を向け合い、円環を描いて波動を放つ。

前回と同じ光景。唯一つ違うことは、ほむらの機体が黒煙を上げ続けていることだけで。

チャージを終え、オーバーロードの危険性はなくなったとはいえ、ほむらの機体は既に限界だった。今もこうして飛んでいることが、ほとんど奇跡と思えるほどに。

円環の中央で、幾度も弾けるエネルギーの奔流。その余波もまた、傷ついた機体に追い討ちをかけていく。ザイオングスタビライザーに損傷、制動を失った機体が激しく揺れる。

それを純粋な操縦技術で立て直しながら、円環を保ち波動を放ち続ける。

しかし、やはりそれだけでは決着には至らない。波動の光は相殺しあうばかりで、決定的な一撃は届かないのだ。

「結果は同じ。もうすぐハイパードライブも終わる。その後で、ゆっくりお前を始末してやる。No.8」

 

「……違う」

「何……?」

ハイパードライブが終わる、ぶつかり合う膨大なエネルギーの奔流がいまだに視界を白く染め続ける。このまま終わらせようと、その奔流が収まると同時に突撃していく黒の機体。

その音声回線を震わせて、声は轟いた。

 

 

 

 

「私は、No.8でも、8号でもない。私は――暁美ほむらだっ!」

 

 

 

光の壁を乗り越えた黒い機体の眼前に、立て続けに放たれる波動の光が迫っていた。

「なっ……何故、ハイパードライブが、まだっ!?」

チャージされたエネルギーは全て吐き出したはず。最早これ以上、ハイパードライブを継続することなど不可能なはずなのに。

だというのに、目の前に迫る光は本物で。回避することすら能わず、光の中に黒い機体は飲み込まれていった。

「仕様書にも存在しない、バグのようなものよ。これを知っていたのはきっと……スゥ=スラスターだけでしょうね」

爆発、そして火の玉になりながら海面へと墜落していく機体を眺めながら、ほむらは呟いた。

 

そう、それはラグナロックに隠されたバグのようなものだった。スタンダードフォースを装着した時にのみ現れる、ハイパードライブの発射時間が遅延するという現象。

それを、ほむらはオリジナルの知識から知っていた。それゆえに、スタンダードフォースを選んだのだった。

「たった、それだけの差だったのよ。貴女と私を分けたものは。おやすみなさい……13号」

燃え盛る火の玉を、その中に居るであろうもう1人の自分を想い、ほむらは呟いた。

 

ほむらの機体も限界だった。

ハイパードライブを終えた途端、高度を維持することすら困難になる。制御を失い、激しく揺さぶられながら海面へと落ちていく。

それでも勝ちは勝ち。ティー・パーティーに回収を頼むことにしよう。

ほむらが、一つ安堵の吐息を漏らしたその時。

 

「まだよ。お前だけは……お前だけはぁぁぁっ!!!」

火達磨となり、墜落していたはずの黒い機体が唸りを上げる。推進部からも炎を吹き上げながら、その勢いを持ってほむらの機体へと迫っていた。

最早心中としか言いようのないその突攻に、ほむらは為す術がなかった。炎を纏って迫る機体が、やけにゆっくりに見えた。

 

「死ぃぃねぇぇぇぇぇっッ!!」

(何か、何か回避する術は………っ!)

 

死ぬわけにはいかない。ゆっくりと流れているようにも見える時間の中、ほむらは必死に思考を廻らせる。

(駄目なの?そんな……みんな。――っ!?)

どうにもならず、ただ眼前まで迫った炎を見つめることしかできないほむら。死に瀕し、引き伸ばされた感覚はその動きをどんどんと遅延させていく。

 

 

そして、世界は静止した――。

 

 

 

ほむらは、まるで色を失ったような世界の中でゆっくりと自分の身体が落ちていくのを感じた。

見上げれば、微動だにしない炎を纏った機体。見下ろせば、波の一つ一つに至るまでもが静止した、まさしく静寂の海。

重力に絡め取られるがままにほむらの身体は落下していき、そして海面に打ち付けられた。

 

世界は色を取り戻し、海は騒がしい波音を取り戻す。空を駆ける炎は、喰らうべき対象を見失い。

「な……にが、っ、ぎああああぁァァぁぁっっッ!!!」

断末魔の叫びと共に、その身を炎に焼き尽くされて消えていった。ばらばらと、その破片が海に降り注ぐ、そして。

「……まったく、訳のわからないことばかりね」

今度こそ、ほむらはその勝利を確信した。

 

「では、暁美ほむら。君をオペレーション・ラストダンスのパイロットとして推薦させてもらう。上も他に優秀なパイロットのあてが無いようだからね、恐らく君が選ばれるだろう」

ティー・パーティーに戻ったほむらを待っていたのは、モニター越しに言葉を告げる科学者然とした男の姿だった。

「わかったわ。それで、私はこの後どうなるのかしら?」

その視線をまっすぐに受け止めて、ほむらは問う。

「……機密情報なのだがね、もうじき、オペレーション・ラストダンス遂行のため第二次バイド討伐艦隊が編成される予定だ。これには、太陽系内の全戦力の約30%が投入される。 君にはその艦隊に随行してもらい、我々が開発した究極互換機をもって作戦目標の破壊を行ってもらう」

第二次バイド討伐艦隊。その言葉に、その場に居合わせた全ての者の表情が硬くなる。

いよいよ近づくバイドとの最終決戦。それを実感し身震いしているさやか。そして、ジェイド・ロスが指揮を執った先のバイド討伐艦隊のことを思い出す杏子。全戦力の約3割。その途方も無い数字に戦慄するマミ。そして。

 

「それだけの戦力を投入して、太陽系内の守りに支障が出るのではないの?」

揺るがない表情で、既に覚悟を決めたほむら。

「それについては既に手を打ってあるそうだ。グリトニル及びゲイルロズ両基地の戦力増強、ウートガルザ・ロキ、アテナイエなどの広域殲滅兵器の改修及び建設が既に秘密裏に完了している。オペレーション・ラストダンスが完了するまでの間くらいは、バイドの侵攻を抑えることが出来るだろう」

さすがにこれにはほむらも驚いた。今まで地球圏で戦いを続けてきた間にも、太陽系内部では着々と最終決戦の準備が進められていたのだ。

 

太陽系最外周に位置し、準惑星である冥王星に建築された長距離ワープ施設を備えた軍事基地グリトニル。

木星-土星間に存在し、強固な外壁と大量の人員や資材、戦力を保持する要塞ゲイルロズ。

海王星外側、カイパーベルト宙域に存在する、1天文学単位の射程距離を誇る光線兵器、ウートガルザ・ロキ。

そして木星の公転軌道上に秘密裏に建造された、全身に無数の武器を構える人工天体アテナイエ。

 

いずれも常軌を逸する規模の軍事施設であり、超兵器でもある。これだけのものを用意したからには、間違いなく今度こそ地球連合軍は本気でバイドを掃討するつもりなのだろう。

そして何よりも、これだけの兵器をもってしても防衛ラインを維持するのがやっとであろうと推測されている。その事実が重くもあり、恐ろしくもある。

そして何より、負けるわけには行かないという使命感が胸中に渦巻いた。

 

これだけの大規模作戦。失敗すれば間違いなく、太陽系に未来はない。

 

「究極互換機の完成を持って、全ての装備試験艦の任務は完了となる。恐らくこの艦も解散となり、その人員はバイド討伐艦隊もしくは太陽系防衛部隊へと振り分けられることだろう」

「……それは、後どれくらいで完成するの」

「さてね、開発は順調に進んでいるはずだ、後はいくつか残った武装の運用試験が終われば、恐らくすぐにでも組み立ては開始されるだろう」

つまりそれは、この部隊に残された時間はそう多くはないということで。時が来ればほむらは英雄として、スゥ=スラスターとしてオペレーション・ラストダンスに駆り出されることとなる。

他の者達も皆、それぞれの場所でバイドとの戦いに身を投じていくことになる。もう、一緒に戦うことはなくなってしまうのだ。

「さしあたり君達に伝えられる事項はこのくらいだな。もちろんこれは機密情報だ、漏洩があれば我々としてもそれ相応の処置をとらなければならない。……では、作戦の詳細などについてはまた追って連絡があることだろう」

そして、通信は打ち切られた。

 

 

「ほむら……また、戦いに行くんだね」

通信の終了を確認してから、さやかは静かに呼びかけた。ほむらは振り向いて、うっすらと笑みを浮かべて。

「ええ、戦うわ。……そう決めたの」

「戦う理由は見つかったか、英雄?」

冗談交じりに、ほむらに軽く拳を押し当て杏子が問う。静かに視線を向けて、ほむらは小さく頷いて。

「守りたいなって思ったのよ。仲間を、友達を、そして見知らぬ何処かの誰かの幸せを。暁美ほむらは、それを願ったの。……ちょっと、青臭いかしら?」

何処か誇らしげに、少しだけ恥ずかしそうにそう笑っていた。

「青臭くて何が悪いんだよ。いいじゃんか、格好いいよ」

少し眩しそうにそんなほむらを見つめて、八重歯を見せて杏子は笑った。

 

「なんだか、長いようで短い付き合いだったわね。……やっぱり寂しいものね。でも、これが最後のお別れって訳じゃないものね」

仲間と戦えることの心強さ、心地よさを知ったマミは少し寂しげでそれでも、そんな寂しさを振り払って強く笑う。

「全部綺麗に片付けて、また会いましょう。そして素敵なティーパーティーをしましょう。……どうかしら?」

「……楽しみにしてるわ、マミ」

生きて帰れる保障なんて、あるはずがない。オリジナルでさえ、まともな身体で戻ることは出来なかったのだ。

それでも力強く頷いて、ほむらはマミの手をとって。その手に、さやかと杏子の手も重なって。

 

 

「ここまで来たんだ、ためらうことなんてあるわけない」

 

力強く杏子が宣誓する。

 

「ただ、みんなのために進み、目の前にバイドがいれば破壊するだけよ」

 

戦う意思を、守る意思をマミが継いで。

 

「バイドを倒して、世界を救うわ」

 

握ったその手に力を込めて、ほむらが言う。

 

「さあ――行ってやろうじゃない!」

 

さやかが一際高く声をあげ、ぐっと握り合った手を押し込んで。

皆の手に、確かな力と暖かさが伝わってきた。

 

 

「さあ、そうと決まればパーティーの準備をしましょうか。ティー・パーティーのお別れ会と、必ずいつか再会することを誓って、ね」

「いいですねーそれっ!あたしも手伝っちゃいますよーっ!」

「こんな時だしね、派手に騒ぐのも悪くないさ。ほむら、お前も手伝えよな?」

「ええ、当然よ」

これが最後、そう口に出せば何かが溢れてしまいそうだから。誓うのは再会で、考えるのは目先のパーティーのことだけで。姦しく騒ぎながら部屋を後にする四人、その背中を見つめる視線が一つ。

押し黙ったまま、ずっと通信や彼女達の話に耳を傾けていたキュゥべえが。

 

「……順調だね。ああ、これ以上ないほどに順調だ」

その唇の端を吊り上げて、とても嬉しそうに笑っていた。

その姿を見たものは、誰も居なかった。

 

 

 

 

 

地球軍の新型艦が此方に接近していた。

護衛の機体を叩き落され、その全身に無数の損傷を刻み込まれながらも、尚もその艦体を保持し、最後の突撃と言わんばかりの攻撃を仕掛けてきた。

その重量と速度、そしてばら撒かれる光学兵器やミサイル砲の前にその進路を阻もうとした味方の機体群が押しつぶされていく。

 

だが、此方も迎撃の準備は既に整っている。

最大の脅威である敵艦艦首の陽電子砲は既に沈黙しており、此方の艦首砲は既にチャージを終えている。爆炎を巻き上げながら迫る敵艦に向けて、私は艦主砲の発射を指示した。

放たれたフラガラッハ砲は確実に敵艦の中枢部を貫き、敵艦はようやくその機能を停止した。

爆散し、エネルギー反応が消失していくのを確認してから、私は残存する敵部隊を追討するよう指示を出した。

 

冥王星周辺の艦隊に勝利した。

現れた艦隊は歓迎するわけでなく、我々に対して攻撃を仕掛けてきた。

 

確かに我々は、バイドの本拠地へ乗り込み、バイドの息の根を止めたはずなのに。

それなのに地球の人々は我々を認めてくれない。

それに地球軍の中心に居たのは新型の宇宙船間のようだった。

 

しかしなぜか、今までの地球軍の艦艇としては違和感を感じる。

 

 

いずれにしろ、我々は太陽系に足を踏み入れたのだ。

 

地球に向かって出発しよう。

 

→帰還する

 

 

 

 

「こちら地球連合宇宙軍、第三方面軍旗艦、エンケラドス。グリトニル基地、応答せよ。繰り返す、グリトニル基地、応答せよっ!!」

 

 

魔法少女隊R-TYPEs 第12話

    『本当の自分と向き合えますか?』

          ―終―




【次回予告】
「グリトニルに続き、ウートガルザ・ロキまでも……」
英雄は、ついに現れた。
「そんな……それじゃああの人は、まさかっ!」
バイドとの最終決戦、オペレーション・ラストダンス。その火蓋が、ついに切って落とされようとしていた。

――我々は、帰ってきたのだ。

だが、その前に。

「後は任せて。大丈夫、必ず戻るから」


“彼”は、我々の元へと帰還した。


「ごめんなさい。……さよなら」


次回、魔法少女隊R-TYPEs 第13話
           『英雄は再び』
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