魔法少女隊R-TYPEs   作:SanDMooN

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最後に残ったたった一つの尊い奇跡。
折れざる意志が、繋がれた希望が導いた本当の奇跡。
それは一人の少女の為に。ひいては遍く人類の為に。

――そして、全てのRの名の下に、大団円は舞い降りる。




悪夢を吐き出す魔人の心臓に、今、とどめの一撃を。


第19話 ―終わる、一つの物語―⑤

英雄であることを望まれた少女は、戦い続けた。人知れず、遥かな次元の彼方で。

悪しき異星人の謀に、その翼を引きちぎられて尚。千切れた翼ももげよとばかりに、死に挑んで羽ばたき続けた。戦い続けた。

だが、それは最早無意味な抵抗。反撃に移る余裕などなく、ただ迫り来るフォースの間をすり抜け続けることしかできなくて。そうしている内にバイドは既に体勢を立て直し、砕けた外殻を修復してしまっていた。

ギガ波動砲の直撃すらも退けるそれは、先のフォースの暴走の攻撃のデータを既に学習し、その攻撃にすらも耐えうるほどの、更なる頑丈さを獲得していたのだった。

 

そんな更なる力を得たバイドに対して、抗う少女は余りに無力。力を振り絞り、魂を燃やし尽くし。その命の最後の一片までもを輝かせんばかりに飛び続ける。

けれどその身体には無数の傷が刻まれ、メインブースターも一基を残して沈黙している。

その姿は最早、動いているのが不思議なほどで。

 

まさにその状況が指し示すのは絶望。遠からぬ敗北と死。

けれど、少女は。

 

「……負けない、負けないっ!負け……なぃっ!!」

スゥは咆哮する。その意志は挫けることはなく、それはラストダンサーへと伝播する。まだ抗う。それでも戦う。未来は分かりきっているはずなのに。未来はもう、決まってしまったはずなのに。覆せるはずなどないのに。

きっとスゥ自身、希望を信じていたわけではないのだろう。それでもただ、負けられない。負けたくないという思いだけが頭の中を埋め尽くす。負けたくない。目の前の敵に、忌まわしき企みに。そして避けようもなく襲い来る、過酷なる運命に。

 

 

それはただの意地。けれど強く途切れざる意志。

きっとこの世界に本物の奇跡というものがあるとするのならば、それは。

そんな意志を、最期の最期まで貫き通し得た者の元に、舞い降りるものなのかもしれない。

 

カーテンコールは、鹿目まどかは遥かな距離を、23の次元を一足飛びに跳躍した。そして、少女の戦場に。琥珀色の空間の只中に、その姿を現したのだった。

 

「R戦闘機……一体、誰が」

機体機能の低下に伴い、スゥの身体たるラストダンサーは感覚さえも衰えていた。けれど、最新鋭の機器によってもたらされていたその感覚を補うほどにスゥの感覚は研ぎ澄まされていた。

その研ぎ澄まされた感覚は、その空間に新たに現れたR戦闘機の姿を即座に知覚していた。そして、続けざまに飛び込んできた声はスゥを驚愕させた。

 

 

「助けに来たよ、スゥちゃんっ!!」

「…………まどか?」

その声に、スゥは驚愕した。何故ここにまどかがいるのか、それが理解できなかった。

その声に、スゥは困惑した。こんなところにまどかが居るはずがないと、インキュベーターの手に落ちていたはずなのにと。

その声に、スゥは安堵した。けれど、まどかは今ここにいる。聞き間違えるはずがない。

 

そしてその声に、スゥは憤慨した。何故、まどかがR戦闘機に乗っているのかと。一体誰が、彼女をこんなところへ追いやったのかと。

 

「ぁ……っ」

そしてそんな激しい感情の大波は、容易に張り詰めていたスゥの心を乱した。

動きを止めたラストダンサーに迫り来るフォース。回避行動を取るも、その動きは哀れなほどに緩慢だった。そしてフォースは、ラストダンサーの機体後部をごっそりと抉り取り、ついにラストダンサーは、その身を保つ術の全てを失った。

 

火花を撒き散らし、爆炎と共に墜落していくラストダンサー。

熱に歪んだスゥの視界には、それでもまどかのカーテンコールが映し出されていた。

 

「こんなところで、終わり?……嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だッ!まどかが居るんだ!あそこにっ!!死にたくない、まどかっ!もう一度会いたい、触れたい。話したい……まどか、まどか…まどかぁぁぁっ!!」

叫ぶ。けれどその声を外部に伝える機能は、もうラストダンサーには残されていない。湧き上がる炎に包まれ、火だるまになりながら、ラストダンサーは琥珀色の湖面へと落ちていく。

 

そして、まどかは。

 

「っ!スゥちゃんっ!今、助けに行くからっ!!」

叫び、そして再びカーテンコールは光に包まれ消える。

 

 

 

 

そして、奇跡は起こった。

 

 

 

カーテンコールが消失したその刹那、炎の中に消えていくラストダンサーが光を放つ。それは余りに眩く強く、あらゆるものを塗りつぶしていく光。

そしてその光の中心で、とても大きな力を宿した何かが一つ、力強く脈打った。

 

それは奇跡、されど必然。

まどかはスゥの元へと行こうとした。ただそれだけを考え、自らの魔法を行使した。それは触れ合う距離よりももっと近く。完全なる同一座標上に、その身体を転移させた。

当然そこにはラストダンサーがいる。カーテンコールはラストダンサーに重なるように

まるで二つが一つの機体であるかのように、現れたのだった。

 

 

 

それは、先のアークでの出来事の最中。インキュベーターが思い至った一つの事実。鹿目まどかの特異性。

彼女の持つ能力は、余りに広大かつ強力。それを自在に操るに足る精神は、とても人間という未熟な生物の枠には収まりきらないものだった。そう確実に断ずることができるほどに、恐ろしい進化をまどかの精神は遂げていたのだ。

それほどの恐るべき進化が、突如として一個体に現れることなどあるだろうか?可能性は0ではなかろう。それでもそれは、何らかの外的要因を疑わせずにはいられない。

 

考えれば、それはすぐにでも思い至る。

その能力に身体を精神を苛まれ、苦しんでいたまどか。彼女を救ったのは、スゥの存在とその願い。スゥに出会い、まどかの精神は均衡を取り戻し。そしてスゥが魔法少女となった願いによって

まどかの身体は、その能力を受け止めるに足るものへと変わった。だとすれば、まどかにその恐るべき進化をもたらしたのは、スゥの願いに他ならない。

進化を促す願い。その願いが生み出す魔法とは何か。恐らくそれもまた、進化を促す力だったのだろう。だが、その魔法は今まで一度として発現することはなかった。

それも当然である。その願いは、まどかの為にあったのだから。その魔法も、まどかがいて初めて力を発揮するものだったのだ。

そして今、まどかがそこに現れた。全てのR戦闘機のデータを内包したカーテンコールを携えて。

 

戦うために生み出された究極の力――ラストダンサー。

そして、ラストダンサーすら持ちえぬバイドの因子。それすらも飲み込み組み上げられた、人類の英知、そして狂気の結晶――カーテンコール。

その力をもってしても尚足らざる巨大な外的要因、そしてもたらされた更なる英知。積み上げられた戦いの経験値。そして、進化を促す魔法。

 

 

そう、それは必然とも言うべき奇跡だったのだ。

 

 

光が薄れ、そこに佇んでいたのは一機のR戦闘機。

ラストダンサーではない、カーテンコールでもない。今までのR戦闘機とは、全く異なる姿をしていた。

 

「これ……は」

その機体の中で、驚いたように周囲を見渡しながらスゥは呟いた。

「スゥちゃんの機体と、私の機体が……一つになっちゃった」

そしてその声に答えて、まどかもまた呆然と呟いていた。

 

「っ!?まどか?……そこに、いるの?」

声が聞こえて、さらに驚きスゥが問う。

「うん、私はここにいる。きっと今は、スゥちゃんと一緒にいるはずなんだ。だからスゥちゃん、手を伸ばして。きっと届くから」

まどかは答え、言葉を返し。そして手を伸ばす。それは現実には在らざる手。けれどまどかは手を伸ばす。そして、スゥもその手を伸ばした。

 

在らざる手と手は、結ばれた。

 

 

 

「本当に……まどかを感じる。まどか……ぁぁ、まどかっ」

 

 

 

――次元を越えて差し伸べられた手と手は。

 

 

 

「私も感じるよ、スゥちゃんの手を。スゥちゃんの暖かさを。……そこに居るんだね、スゥちゃん」

 

 

 

――もう放される事は無い。

 

 

 

「もう、絶対に離さない。絶対に」

 

 

 

――もう解ける事は無い。

 

 

 

 

それは、ラストダンサーがカーテンコールを取り込み進化した姿。まさしく最終最後の、そして究極のRの姿がそこにあった。

 

手を握り合い、身を寄せ合い、生まれ変わった機体に二人の魂を宿す。

結ばれたその手が、そのまま操縦桿を握るイメージ。体中に、はち切れそうなほどの力が渦巻いていた。

 

「あの時から、ずっと考えてたんだ」

驚いた様に動きを止めていたバイドが、その活動を再開した。再び吐き出されるフォース。それを尻目にまどかは囁く。

「私は、このまま守られ続けてるだけでいいのかなって。マミさんやさやかちゃん、ほむらちゃんや杏子ちゃんに、スゥちゃんにも。私は、守られてるだけでいいのかな、って。考えて、考えて……そして分かったんだ」

動かない二人に、フォースが再び降り注ぐ。それを真っ直ぐ見据え、まどかは力強くそう告げた。

 

「未来は、希望は、皆で一緒に掴むものなんだ!だからもう、スゥちゃん一人を戦わせたりしない。私も……一緒に戦うからっ!!」

言葉と同時に、二人の機体が掻き消えた。次の瞬間、降り注ぐフォースから離れた場所に機体の姿が現れた。まどかの魔法は、その身体を新たな機体としてさえも尚、その力を誇っていたである。

 

「……まどか」

涙が零れてしまいそうだった。胸がいっぱいだった。涙を零す瞳など無いのに、視界は何かで揺らいでいた。

ずっと一人で辛かった、誰かに一緒にいて欲しかった。この辛さを、生きる事、戦う事の苦痛を分かち合える、仲間が欲しかった。それが最高の形で叶った喜びが、スゥの胸中を埋め尽くしていた。

 

「行こう、今ここで、全てを終わらせようよ!」

そんなスゥに、まどかは力強くも優しく促した。

どこか笑ってもいるような、そんなまどかの姿に導かれるようにして。

「行こう、まどか。これで終わりにするんだ。今度こそっ!」

スゥもまた、力強く決意の言葉を放ち、そして。

 

「もう一度だけ力を貸して。ラストダンサー……いいえ」

僅かな、ほんの僅かな沈黙の後に。

 

 

 

 

「――グランドフィナーレっ!!」

 

 

 

 

それは、まさしく終焉を告げるもの。人とバイドの戦いの歴史に終止符を討つもの。その終わりの姿の望むべき形が、そのまま機体の名前となった。

そう、願わくば最高の大団円を……と。

 

そして今、誰一人知らぬこの次元の彼方で、人類の未来を賭けた最後の最大の戦いが、始まろうとしていた。

 

 

波動砲のチャージを開始しながら、グランドフィナーレがバイドへ向けて突き進む。行くフォースの群れが次々に吐き出され、グランドフィナーレを叩き落そうと迫る。

けれど、そんな攻撃に今更何の意味があると言うのか。最強の乗り手にして英雄たるスゥの前に、究極のRたるグランドフィナーレの前に、そんな攻撃などは、もはやあってないようなものでしかなく。

グランドフィナーレは一切速度を落とすことなく、迫り来るフォースをすり抜け突き進む。

だが、追い詰められたバイドもまた、抵抗を諦めるつもりはないらしい。琥珀色の液面から、グランドフィナーレの侵攻を阻むかのように何かが突き出してきた。

それは巨大な塊。無数の機械が寄り集まってできた壁。それがそのまま、グランドフィナーレを押し潰そうと押し寄せる。バイドはこれほどの巨大な物質を生み出す能力さえも備えていたのかと、ほんの僅かに驚愕した。

 

だが、それでもグランドフィナーレを止めることはできない。

 

「まどか。お願い」

「任せて、スゥちゃんっ!」

機械の塊がグランドフィナーレの存在していた空間を押し潰す。それが通り過ぎていった後、まどかの魔法が転移させたグランドフィナーレが再び姿を現し、バイドへと向けて突き進んでいく。

グランドフィナーレの性能と、スゥの卓越した技量。更に緊急回避的に用いられるまどかの魔法が合わさり、最早彼女達を止められるものは何も無い。グランドフィナーレは悠々と波動砲のチャージを完了させ、バイドへ向けて打ち放った。

 

放たれるのは光の奔流。最大最強のギガ波動砲。

波動砲そのものが強化されたわけではなかったが、それでもグランドフィナーレは、ギガ波動砲の最大の弱点たる長大なチャージ時間を短縮させ、通常の波動砲程度までそれを縮める事に成功していた。

だが、その威力はギガ波動砲のそれと変わらない。つまりは、激しい光の奔流を受けて尚、バイドは傷一つ負うことなく健在だったのである。

 

「やはり……駄目ね」

そしてそれは、スゥにとっては予想の範疇。先ほどバイドの装甲を破った時とて、フォースのエネルギーを最大開放し、更にギガ波動砲のフルチャージをあわせて、それでどうにか破ることができた程の相手である。ギガ波動砲が通用しないことは十分に予想していた。

では、どうすればいいのだろうか。。

 

「もう一回、試してみようよ。スゥちゃん」

「何かいい手があるの?まどか」

「うん。大丈夫、きっと上手くいくから。だから、私に任せてくれないかな」

戦いの場に臨み、まどかは自らの力をどう使うべきかを考える。最早そこには、無力に嘆き、戦いを恐れていた少女の姿は欠片もなかった。そんなまどかが、今や頼もしくすらも感じられるスゥだった。

 

「わかったよ、まどか。タイミングはまどかに合わせるから!」

スゥはまどかに力強く答え、再びバイドへと肉薄する。

迎撃は更に苛烈になり、ついには生み出されたバイドがそのままグランドフィナーレに襲い来る。迫り来るフォースが逃げ場を奪い、その隙を縫ってバイド群が生み出す弾幕がグランドフィナーレに降り注ぐ。

 

だが、それすらも無意味。

ほんの僅か、機体一つ分の隙間を見つけてはそこに機体を滑り込ませ。、時には放たれるフォースすら盾にして、グランドフィナーレは飛び続けた。

どれほど濃密な弾幕も、どれほど大量の敵でさえも、それを止めることはできなかった。。

 

「どうしてかな。こんなに敵だらけで、すごく怖いはずなのに。……今、すごく嬉しいんだ。私」

ほんの少しの戸惑いと、隠しきれない喜びをその言葉に滲ませて、まどかが言った。その思いはきっと、自分が感じているものと同じなんだろうとスゥは思った。

「私も、まどかと一緒に居られることが嬉しい。一緒に戦えるのが嬉しい。まどか……もう、絶対にこの手は離さないから」

それは在らざる手と手。けれど固く強く結ばれた手と手。その繋がりが確かに強く感じられて、それだけでいくらでも羽ばたくことができる。いくらでも、身体に力が湧いてくる。

全身に漲るこの全能感は、それが決して過信ではないことを教えてくれる。

 

「波動砲チャージ完了、いつでも行けるよ。まどか」

「私もいつでも大丈夫だから。行こう、スゥちゃんっ!」

どちらとも知れず頷きあって、そして。

「食らえ……っ!」

カーテンコールが光を放つ。その光がそのまま機首へと収束する。けれど、放たれるはずであったギガ波動砲の光は放たれず。収束したその光も掻き消えた。

次の瞬間。脈打ちながらバイドを吐き出し続けていたその心臓が、更に激しい光に包まれた。脈打ちも更に激しくなり、それはまるで苦しんでいるかのようだった。

 

「一体何が……まさか、まどか?」

「きっとあのバイドは、外からの攻撃は全然通用しないんよね。だから中から攻撃したら、効果があるんじゃないかなって思ったんだ」

そう、まどかの能力は機体にのみ発揮されるものではなかった。

放たれようとするギガ波動砲を、解放されて荒れ狂う力そのものを、直接バイドの体内へと転移させていたのである。

原理で言えば、それは炸裂波動砲に近いものであっただろう。バイドによる空間干渉さえもものともしないまどかの魔法は、その上位互換とも言えた。

いかなその装甲が強力だとは言え、それが守るものまでもがそうかと言えば、違う。逃げ場のない閉鎖空間内で荒れ狂うエネルギーは、長時間に渡りバイドにダメージを与え続けていた。

 

「効いてるわ。……これなら、勝てるっ!でもまどか、貴女は大丈夫なの……魔法は」

勝機を目前に、スゥの思考に一抹の不安が宿る。

魔法少女の魔法がいかなるものか、それを使いすぎたときに辿る末路がなんであるのか。スゥもそれを知っていた。まどかは絶対にそうさせるわけには行かなかった。

「……大丈夫だよ」

まどかの力の源は、人類の絶望から希望への相転移によって生まれたエネルギー。それは確かに膨大なものではあったけれど、26次元への転移もまた多くのエネルギーを必要としていた。

恐らく、そうして生み出された力は全て使い切ってしまったのだろう。となれば後は、まどか本人が持てる力でバイドに立ち向かうしかなかった。

今すぐどうなるとは思わない。けれど、そういつまでも戦い続けられるものでもないだろう。

 

「私なら大丈夫だから。今はバイドをっ!」

「どっちにしても、急いで片付けないと。……もう一撃、次で決めるわ」

「任せて、私はいつでもいけるからっ!」

なんにせよ今、バイドにダメージを与える術はこれしか考えられない。そしていかなバイドが強大であれど、逃げ場のない空間で荒れ狂うギガ波動砲に、そう何発も耐えられるはずなどない。

今度こそ終わらせるのだ。そう覚悟を決めた。

 

ギガ波動砲のチャージを再度開始する。

敵もダメージは大きいらしく、バイドやフォースの生産が停止している。絶好の好機。今度こそ、これで全てを終わらせることができる。

 

バイドとの戦いに終止符を。全ての人類に、平和な未来と希望を。そしてせめて、戦い抜いた少女達にささやかな平穏を。

願いを乗せた引き金を、二人のその手を重ねて握る。狙いを定め、引き絞る。

 

「これで……」

「終わりだよっ!」

再び輝くグランドフィナーレ。そして放たれたギガ波動砲。直接中枢にその一撃を叩き込まれ、異形の心臓が激しく明滅する。そして、ついにそれが弾けた。

異形の心臓が纏う光は途切れ、堅牢であった装甲にも次々にひびが入っていく。ひび割れた隙間から、荒れ狂うエネルギーの奔流があふれ出していた。

 

そして、ついに。

激しい光を全身から撒き散らしながら、異形の心臓を抱えた大樹が弾け飛ぶ。高まる内圧に耐えかね、激しく吹き荒れる光の中に、その全身が粉々に砕け散っていった。

 

 

 

「……終わったの、かな」

砕けた破片が、次々に琥珀の液面に散らばっていく。その光景を見つめながら、呆然とまどかは呟いた。思いがけなく呆気ないと、ちょっとだけそんな風にも考えながら。

そう、事実バイドという敵はそこまで甘くはない。そのことを、スゥはしっかりとその心に焼き付けていた。

「バイド反応増大……まだ終わりじゃない、まどか!気をつけてっ!!」

言葉と同時に、琥珀色の液面が揺らぐ。その液面を突き破り、現れたのはバイドの大樹。先ほどと変わらぬ異形が、再びグランドフィナーレの前に立ちはだかっていた。。

 

「そんな……確かに倒したはずなのに!」

「きっと再生したのね。さすがバイドの中枢。まさかこれほどの再生能力を持っているなんて」

それは恐ろしいまでの再生能力。打ち砕かれ、完全に粉砕されたはずのその大樹がすぐさま復活を遂げている。

「どうしよう、スゥちゃん。何回でも倒せばいいのかな……でも」

持久戦を挑むには、この方法は余りにも消費が大きすぎた。グランドフィナーレ自体は問題ないだろう。けれど、まどかの魔力は有限なのだ。

 

「それじゃ無理だと思うよ、まどか。あいつはきっと、この空間そのものからエネルギーを取り込んでる。そして、自分さえも再生させている。だとしたら……その元を断つしかない」

今まで繰り返してきた戦いから、スゥは一つの推測を得ていた。恐らくこの琥珀色の液体は、バイドにとっての重要なエネルギー源なのだろう。それを取り込むことであのバイドは、バイドの生産や自らの再生を為しえている。

それを遮るためにはどうするべきか。そのエネルギー源自体を断ち切るしかない。すなわち、破壊しなければならないのはこの空間そのものなのだ。

 

「……じゃあ、私は何をしたらいいの、スゥちゃん」

スゥは、ほんの少しだけ考える。グランドフィナーレが持つ可能性を、そしてまどかのことを。まどかを危険に晒したくはない。けれど、それでもまどかは戦うと言ってくれたのだ。一緒に戦ってくれるのだと。だから、それを信じようと思った。

「最低限の機体維持以外の全てのエネルギーを、波動砲ユニットに回す。グランドフィナーレの全エネルギーを放出して、この空間に叩き込んでやるの」

実際問題、どれほどの余剰エネルギーがあろうとも、ギガ波動砲というデバイスの限界を超えて多量のエネルギーを放出することは難しい。というよりも不可能だ。だが、その不可能を可能にする術ならばこの手の中にある。

 

「だからまどかは、その間グランドフィナーレを守っていて欲しいの。多分、ほとんど身動きが取れなくなると思うから。……大丈夫かな、まどかは」

ためらいがちに尋ねたスゥに、まどかは力強く応えるのだった。

「任せてよ!絶対に、スゥちゃんを守り抜いてみせるから」

自分はもう無力ではないと、できることがあるのだと。自分のこの手で、大切な人を守ることができるのだと。そんな自信に満ちた声で。

そんなまどかの声に、スゥは自らを恥じた。今のまどかは、守ってもらわなければならないただの女の子ではないのだと。今のまどかは、命を共にし戦いあう戦友なのだということを、実感した。

 

「ありがとう、まどか。……ねぇ、まどか」

そんなまどかの力強い姿に、スゥの胸がどきりと跳ねた。鋼の機体に宿した心臓が、その鼓動が一つ、上がったような気がして。溢れ出る感情を、抑えることができなくなった。

在らざるものの、それでも繋がるその手の暖かさが、胸の内に染み入って、戦いの最中だというのにスゥはもう、そうせずにはいられなかった。

その思いは、まどかとの再会を果たしたそのときからずっと、はち切れそうに膨らんでいたのだ。それが今、胸中を埋め尽くした思いが、溢れ出してしまった。

 

「こんなこと言ったら、変だって思われるかもしれない。でも、抑えきれないんだ。好きなの。……まどかのことが、大好き」

胸の中に宿った小さな思い。打ち明けることもなく、理解されることもないであろう小さな思い。けれどそれは、長い別離の時を経て、どんどんとスゥの中で大きくなっていった。

会えないからこそ会いたくて、会えないからこそ恋焦がれて。

その思いは、どこまでも途絶えることがなくて。ついにそれは、スゥの心から溢れ出してしまった。それはそのまま口をつき、素直な言葉になって表れてしまうのだった。

 

「助けに来てくれて、会いに来てくれて……本当に、本当に嬉しかったの」

きっとその瞳からは、ぽろぽろと涙が零れていたことだろう。それを知ってか知らずか、その涙を拭う手があった。その手は優しくて柔らかくて、そして暖かかった。

スゥはその手を知っていた。それは、まどかの手の感触で。触れ合うほどに近しい魂だからこそ、在らざるその手は在らざる者に。スゥの心に触れることができていた。

 

「嬉しいな、スゥちゃんがそんな風に思っててくれたなんて。……スゥちゃんはね、みんなの英雄になるより前に、わたしの英雄だったんだよ」

仲間の死に、親友との離別に、失われた光に、世界の全てがまどかを打ちのめし、その心が壊れてしまいそうなとき。スゥはそんなまどかを助けてくれた。壊れかけた心を支えてくれた。

迫り来る悪魔の手から、まどかを守ってくれた。その世界に再び光を取り戻してくれた。まさしくスゥは、まどかにとっての英雄だったのだ。

「だから私は……もしかしたら、そんなスゥちゃんに一目惚れしちゃったのかもしれないな。……大好きだよ、スゥちゃん」

照れくさそうに、けれど嬉しそうにまどかは笑った。そして、スゥの手にその手をそっと重ねて。一つになるほどに近く、その魂を触れ合わせて。

 

「行こうよ、スゥちゃん。それで、さ。……帰ったらデート、しよ?」

「えっ!?……ぁ、ぇと」

悪戯っぽく言うまどか。スゥはすっかり呆気にとられて。けれど、それでも。

 

「………うん」

嬉しげに、けれど泣いているかのように、スゥは小さく頷くのだった。

 

 

「来るよ、まどかっ!!」

「任せて、スゥちゃんっ!!」

ついにバイドが完全なる再生を遂げる。敗北から学び、バイドは更に凶悪なる進化を遂げていた。

無数のフォースを、バイドを生み出し。更にはその身体からも無数のレーザーが放たれる。それは有機的に、ランダムに枝分かれしながらグランドフィナーレに迫る。

更に苛烈さを増すその攻勢。けれど、最早それは何の意味も持たなかった。グランドフィナーレは、攻撃を回避するつもりもなかったのだから。

 

「3番以降の全バイパスを波動砲ユニットへ接続。波動砲ユニット、全リミッター解除」

膨大なエネルギーを生み出し続ける、グランドフィナーレの全機関が唸りをあげる。そのエネルギーの大部分が、波動砲ユニットへと注ぎ込まれていた。

膨大すぎるエネルギーを一点に注がれ、グランドフィナーレが唸りをあげる。激しく振動する機体。それを制御するためのエネルギーですらも、波動砲ユニットへと注ぎ込まれていた。

故にグランドフィナーレは、完全に動きを止めていた。そこには敵の攻撃を回避する術は、全く持って存在していない。けれど何も問題もない。

グランドフィナーレが発光し、その光が広がり球となる。そうして生まれた球体へと、空間ごと埋め尽くすかのような攻撃が降り注ぐ。

けれどその全てが、まるで何も無かったかのようにその空間を通り過ぎていった。その後には、変わらず光球と化したグランドフィナーレの姿があるのみで。

 

まどかの魔法が生み出したその光球、それに与えられた役割はたった一つ。それに触れる全てのものを、球の向こうへと転移させること。

それはすなわち、まどかの魔力が持つ限りいかな攻撃もいかな干渉も、グランドフィナーレには届かない。全てを受け流す絶対なる守護の方陣。それが、押し寄せるバイドの攻撃の全てを無効化していた。

「すごい力……でも、大丈夫なの、まどか?」

「大丈夫だよ、信じて。……それに、私の心配をするなら、早くバイドをやっつけちゃおうよ!」

どうしてもスゥはまどかを心配してしまう。心配しなくてもいいようにするためには、やはりバイドを倒してしまうしかないのだ。

 

「……そうだね。まどか、もう少しだけ頑張って!」

覚悟を決めた。スゥは更なる力を波動砲ユニットへと注ぎ込む。内側で荒れ狂い、解放される時を待ち望むその力。それが更に激しく機体を揺さぶり続けた。

小規模な爆発が起こる。それはグランドフィナーレの内部から。制御可能な領域を超えたエネルギーに、ギガ波動砲のデバイスがオーバーロードしている。制御を失ったエネルギーは、ついにグランドフィナーレにすらも牙を剥き始めた。

「く……ぅ、暴れ、ないでっ……っ!」

必死に機体を制御する。けれどその為のエネルギーすらも波動砲ユニットに回されている。ろくに制御することもできず、衝撃に翻弄されてふらふらと飛び交うグランドフィナーレ。

ただそれでも、まだまどかの魔法がその身を守ってくれている。それ故に、グランドフィナーレは一切の制御を失って尚、健在であった。

 

「やっぱりダメなの……このままの波動砲デバイスじゃあ、グランドフィナーレの全力に対応できない」

焦燥を滲ませ、スゥが言葉を放つ。

人類が持ちうる最強の波動砲。それを制御するためのデバイスでさえも、グランドフィナーレが持つ、余りにも強大すぎるエネルギーを制御することはできずにいた。

波動砲のチャージを示すゲージは、既に最大容量を突破していることを告げている。それでも尚止むことなく注がれ続けるエネルギーに、ゲージは激しい振動と明滅を繰り返す。

そしてついに、ゲージに大きな亀裂が走った。これが完全に砕けてしまえば、それは波動エネルギーの一切の制御が失われてしまうということで。これだけ膨大なエネルギーが制御を失ってしまえば、確実に暴走を引き起こす。

 

「いっそ暴走させて奴ごと道連れに……ううん、それじゃあ私達だって死んでしまう。それに、それで倒しきれるとも限らない……っ」

どれほど足掻いても、どれほど悩んでも事態は好転しない。その為の手段は、今のグランドフィナーレには存在していないのだ。だからどれほど手を尽くしても、今のままでは無為なこと。

「……もう一度、試してやる」

その不条理を無理やりにでも押し通す力を、少女達は持っていた。それは魔法と呼ばれた力。条理に寄らない事象を引き起こす、力。

けれどそれだけではなかった。人類の怒りと憎しみと絶望が、それに駆り立てられて生み出された英知が。余りにも最悪な復讐のための刃を、グランドフィナーレに用意していたのである。

 

「これは……何か、プログラムが……」

起動するプログラム。それは、遍くR戦闘機の根幹に組み込まれていたプログラム。少女達の脳裏に浮かぶ、プログラムの起動文。

 

 

―――F-W-C mode Activate―――

 

 

「何だ、これは……一体、何がっ!?」

困惑するスゥ、けれどそれを尻目に、走り出したプログラムは即座にグランドフィナーレを変貌させていく。

今にも暴走しそうなエネルギー。それを生み出し続ける機関が更に唸りを上げる。まさしく暴走としか言えないほどに膨大に、がむしゃらにその機関はエネルギーを生み出し始めた。

間違いなくこれほどのエネルギーに、グランドフィナーレの機体は耐えられない。

 

―――Final Wave Canon Ready―――

 

「ファイナル……ウェーブ、キャノン?」

浮かび上がった文字を、不思議そうにまどかが読み上げた。

機体の根幹に埋め込まれたロックが解除され、ファイナルウェーブキャノンの、最終波動砲の封印が解除された。封印が解かれたことにより、最終波動砲の情報が明らかになる。

それはまさしく、驚愕の事実であった。

 

最終波動砲。それは波動砲デバイスが損傷したR戦闘機に残された、まさしく最後の波動砲だった。けれどそれは波動砲と銘打ってはいるものの、その実まるで異なる性質を持った兵器だったのである。

全機関から最大限のエネルギーを発生させ、それをそのまま機体内部で波動エネルギーの炸裂という形で出力する。それに伴い、機体は対象となる敵へと突撃し、機体そのものを波動砲と化して敵を粉砕する。

まさしくそれは、兵士に特攻を強いる悪夢の兵器。そんなものが全てのR戦闘機の根幹に埋め込まれている。その事実の恐ろしさにスゥは戦慄した。R戦闘機はそれほどまでに、敵を殲滅するための兵器として完成されていたのだ。

 

「って!このままじゃあ私達、あれに突っ込んじゃうってこと!?」

「そうなるわ。……このままじゃ、良くて相打ちじゃない」

そんな事実は認められない。認めていいはずがない。それでもグランドフィナーレは、敵と認めたバイドへと機首を向け、自身を波動砲と化して突き進む。

機体の制御は失われている。そしてまどかの防御も健在。結果として何一つグランドフィナーレを阻むものはなく、最終波動砲の発動を迎えようとしていた。

 

「そんなこと……させないっ!!」

そして、まどかはそれを拒んだ。光が弾け、グランドフィナーレの姿が消える。次の瞬間には、再び離れた場所へとその姿が出現していた。だがしかし、再びグランドフィナーレは敵を認めて突き進む。

このままでは同じことの繰り返しである。いずれまどかの魔力が切れれば、その時は本当に終わってしまう。

 

「くっ……スゥちゃん、お願いっ!」

まどかの力では、訪れる最後を引き伸ばすことしかできない。だからまどかはスゥを頼った。きっとどうにかしてくれると、そう信じていたから。

「ええ、やってみるわ」

スゥは、全人類の、そしてまどかだけの英雄は、その言葉に答えた。

「これがわたしの魔法なら……もう一度、わたしに力を貸してっ!あいつを倒す為の力を、まどかと一緒に生きていく為の、力をっ!!」

強い意志を込めて願う。その願いは、意志は、再び彼女の魔法を発現させた。その魔法が導くのは進化。窮地を好機に変え、困難を乗り越える為の、力。

 

まどかの魔法が輝くグランドフィナーレに、更なる光が加わった。それは黒く艶のある輝きで、グランドフィナーレを包み込む。それは闇にも似た光。そんな漆黒の繭の中で、グランドフィナーレは更なる進化を遂げていく。

その身が宿した膨大なエネルギーと、暴走しているプログラムの全てを飲み込み、新たな形に作り変えていく。

そしてついに漆黒の繭が割け、新たなる力を得たグランドフィナーレがその姿を現した。

 

「……やはり、消耗が激しい」

その機体の中で、スゥは苦々しく呟いた。

進化を促す魔法。それはやはり、スゥにとっては大きな負担となっていた。二度の魔法の行使の後、そのソウルジェムには多量の穢れが溜め込まれてしまった。恐らく、これ以上魔法を行使することはできない。

これで決めるしかない。

「すぅ……うんっ!」

ゆっくりと息を吸い、何かを自分の中に取り込んでいく。

そして、スゥは覚悟を決めた。

 

「これで本当に、最後の最後。……まどか、一緒に飛ぼう!」

再びその手は差し伸べられて、まどかはその手を強く握った。

「うん、一緒に世界を救おうよ、スゥちゃんっ!」

そして、グランドフィナーレは動き出す。

 

暴走する最終波動砲のプログラムは改変され、スゥは機体の制御を取り戻していた。けれどそのプログラムは消失したわけではない。あるべき姿へと、進化を遂げていただけで。

それは真なる最終波動砲。そのデバイスは、ギガ波動砲のそれよりも遥かに多くのエネルギーの制御を可能としていた。更には今討つべき目標、この空間そのものを破壊できるように、その攻撃範囲もまた広大なものへと化していた。

目に見える空間のみではなく、それに隣接する異層次元にまでも破壊の嵐を巻き起こす力を持つ、最強最後の波動砲がついに完成を遂げたのである。

 

最終波動砲は、機体の物質としての限界さえも超えたエネルギーを放出させる。間違いなく、撃てるのは一発が限度。

この一撃で、全てが決まる。

そして自らに終焉をもたらし得るものの存在に、バイドも気付いてしまったのだろうか。発狂したかのように、無数のレーザーやバイド、そしてフォースをばら撒いてきた。

その姿はまるで、何かを恐れているようにも見えた。けれど、それは全てグランドフィナーレの機動に、まどかの魔法に遮られる。

 

「恐ろしいかしら、バイド?これはわたし達がお前達に与えられ続けてきた恐怖よ。その恐怖の重さを知れ、その罪深さを知れ。お前は今、その報いを受けるんだ!」

「これは私達の希望と絶望が生み出した力なんだ。あなた達バイドが人類に与えた絶望がそれでも必死に抗い続けた人類が、苦しい戦いの果てに見つけた希望が、全てを終わらせるんだっ!」

最早、躊躇うことなど何も無い。ただありったけの力と意志を込めて、撃ち放つ。

 

「「最終波動砲……発射っ!!」」

 

 

放たれたそれは、まるで一つの太陽のように眩く輝きながら突き進み、その進行上にあったバイドを一瞬の内に消滅させた。更にその暴威は留まらず続き、炸裂し無数の光の雨と化した。

光の雨は琥珀色の海に降り注ぎ、その熱に海が沸き立ち蒸発していく。全てを消滅させる破壊の雨がとめどなく世界に降り注ぎ、全てを壊して掻き消していく。それはまさしく、この世の地獄とも言えるような光景だった。

その威力に、バイドの中枢たる、バイドそのものたるこの空間すらもついに消滅を始めた。

裂けてゆく空、砕けていく世界。その隙間からは星空が見える。最早バイドにもその空間を維持する能力はなく、その空間に蓄えられていた大量のエネルギーが解放されていく。それは空間の消失と同時に解放され、凄絶なる破壊をばら撒くだろう。

 

そしてそれでもまだ、最終波動砲の威力は衰えることを知らずに荒れ狂う。ついに解放されたバイドの空間に蓄えられたエネルギーと、最終波動砲のエネルギーが混ざり合い、琥珀色の海を、そこに存在するあらゆるものを薙ぎ払って、原子一つ残さず消滅させていく。

それは恐らくこの宇宙の歴史上、その開闢以来類を見ない規模のエネルギーの放出。その全てが過ぎ去り、全てが通常空間へと帰還したその時。そこには何も残されてはいなかった。

 

 

バイドも、グランドフィナーレも、何一つ残されてはいなかったのである。

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