魔法少女隊R-TYPEs   作:SanDMooN

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かくして英雄はそれぞれの戦場へと向かう。
再会の暁、誰もが皆変わってしまった。
けれどそこには変わらないものもある。

その魂と、結ばれた絆は決して変わりはしない。


―Epilogue of Homura Akemi―

「これで全ての準備は完了。……長かったな」

赤いリボンで髪を結んだ、黒髪の少女が静かに、そして感慨深げに口を開いた。その言葉を受け止めたのは、同じく黒髪を左右でみつあみに結った少女。

その二人は同じ顔をして、同じ声をして。けれど異なる心を宿し、異なる道を行くこととなる二人の英雄であった。

「本当に、思いがけず長くなってしまったわ。でも、どうにか間に合ったから」

みつあみを静かに揺らして小さく笑い、暁美ほむらは言葉を返す。髪を縛ったリボンにそっと触れ、スゥはその言葉を受け止める。

そして、二人が見つめる視線の先には二機のR戦闘機があった。かたや、人類の救世主たるグランドフィナーレ。力を使い果たしボロボロになったかつての姿は既になく、まるで新品のように磨き上げられていた。

そしてその隣にはもう一機、グランドフィナーレとよく似た姿のR戦闘機があった。確かにその姿はよく似ているけれど、その各部には人類の手が加えられたような痕跡が見て取れる。

その機体の名は、R-102――ファラウェル・ギフト。グランドフィナーレを解析し、その性能の再現と更なる追求を目して作られた機体であり、TEAM R-TYPEが生み出した、最後のR戦闘機でもあった。

そしてこの機体はまさしくその名が示す通りに、TEAM R-TYPEにとっての餞別ともいえる機体だったのだ。

 

それはバイド戦役終結直後、グランドフィナーレと共にほむらとスゥの二人が地球に帰還した後の出来事である。ほむらは、完全に機能を停止したグランドフィナーレを、TEAM R-TYPEへと提供した。

バイドを討つという意志の結晶たるラストダンサー。R戦闘機そのものの系譜たるカーテンコール。この二つが融合して生まれたグランドフィナーレは、まさしく真の意味で究極のR戦闘機である。

その存在は、間違いなくTEAM R-TYPEにとっては非常に興味深いものであると同時に、どうしても許しがたい存在でもあったのだ。

究極のR。それを生み出すという偉業が人類の力によってなされたものではなく、魔法や奇跡といった代物によって為されてしまったことは、酷く彼らの矜持を傷つけたのである。

だからこそ彼らはグランドフィナーレを徹底的に解析するために、そしてそれを越える機体を生み出すためにほむらの申し出を受け、機能を停止したグランドフィナーレを引き取るのだった。

 

彼女が出した条件は二つ。

その一つはほむらとスゥの身柄の保護。そしてもう一つは、ありとあらゆる手を尽くし、鹿目まどかの救出に協力するというものだった。二つの条件は二つ返事で受け入れられた。そして、最後のR戦闘機の開発が始まった。

地球至上主義に染まった地球連合軍により、遠からずTEAM R-TYPEは解散の憂き目を見ることとなるだろう。だからこそその前に、彼らの常軌を逸した行為の証を残さんとして、彼らはその力を余すことなく発揮した。

そして太陽系を巻き込む動乱を尻目に、半年の時を経て二つの機体は完成することとなる。

 

「これでいよいよ、まどかを迎えにいけるんだ」

スゥはその目を爛々と輝かせてグランドフィナーレを見つめた。それがどれだけ過酷で長い旅になるかは誰にも分からない。それでも、スゥは迷わない。まどかに会いたいと、もう一度言葉を、想いを交わしたいと、生身の身体で触れ合いたいと。ただそれだけのひたむきで強い思いが、スゥの胸中を埋め尽くしていたのだから。

「そうね。……スゥ、まどかのこと、頼むわよ。まどかは……私達の大事な友達だから」

隣に並んで、ほむらはスゥを見つめて言った。共にまどかを助けに行けたらと、そう思う気持ちは確かにあった。けれどそれはできない。ほむらには、この太陽系でやらなければならないことがあったのだから。

「任せて。まどかの魔力の波長はグランドフィナーレに記録させてあるから。後は、それを辿ればきっとたどり着ける。……どれだけの距離が、どれだけの時間の隔たりがあったとしても、必ず」

解析と開発の最中、まどかの救出のための術も確かに研究が進められていた。とは言え、まどかと別れた場所は遥か26次元の彼方である。最終的に通常空間に帰還できたということだけは分かっているが、その座標は分からない。それどころか、この宇宙と同一の時間軸にまどかが存在しているのかどうかすら定かではなかった。

けれどスゥは諦めなかった。そしてついにどれほどの距離も、どれほどの時間さえも飛び越える力をグランドフィナーレは宿したのだった。

 

「……必ず、また会いましょう。スゥ」

「うん、その時はまどかも一緒に。皆で会おう。……ほむら」

互いにその手を重ねて握る。同じ姿であったはずの手に刻まれた異なる時間。それは、二人の手をほんの僅かに異なる姿に変えていた。

 

かつて、二人の間には大きな隔たりがあった。

ほむらは自らの出自を知らず、スゥとてそれを知っているからこそ知らぬほむらを恨むことしかできず。それでも、ほむらは本当の自分を知った。スゥは一度全てを失い、それでもまどかと出会うことで新たな自分を確立することができた。

そして今や、二人の距離はずっと狭まっていた。まるでそのありようは、仲のよい姉妹のようでもあった。

その成り立ちだけを切り取れば、二人はまるで同じ存在。そしてただの英雄の複製品でしかない。けれど二人は確かな生を受けた人間で、その生の軌跡は、紛い物でもなんでもない。

互いがそれを理解し、認め合うことができて今、ようやく本当の意味で二人は一人の人間となったのだろう。そして、忌むべき同胞たるもう一人の自分をあるがままに受け入れることができたのだ。

 

「ほむら、貴女の仲間達にもよろしくね。それと、太陽系をお願い。私とまどかの帰ってくる場所を、ちゃんと守っていてよね」

「私一人に何ができるかなんて分からないけど、あそこには私の仲間達がいる。今も、彼女達は運命と戦ってる。私は、絶対に彼女達を助けて見せるわ」

力強く握った手を、ゆっくりと離して。互いに互いを見つめ合う。同じ姿の同じ瞳、そこ刻まれた思いは違えど、その強さはどちらも同じ。

 

「貴女の旅路に、幸多からんことを」

「貴女と貴女の仲間たちに、どうか幸運を」

静かに言葉を交わし、掲げたその手を打ち合わせた。

ぱしりと一つ、乾いた音がして。それにはじき出されるように、二人は各々の機体へと駆けていく。スゥはグランドフィナーレへ。ほむらはファラウェル・ギフトへ。

そして、それぞれの戦場へと向かう。スゥは遥か時空の彼方、そしてほむらは魔法少女隊の待つゲイルロズへ。

二人を待ち受けるは恐らく再び過酷な運命。それでも、決して負けはしないだろう。その翼は折れはしないだろう。

なぜならば、その瞳は進むべき道を逸らさず見つめていたのだから。なぜならば、その翼は常に希望へ向けて力強い羽ばたきを続けていたのだから。

 

そしてほむらは木星を抜け、ゲイルロズへと至る。いかに地球連合軍が木星圏以降への人の動きを見張っていたとしても、相手はたった一機、それも最高の性能を持ったR戦闘機である。

そして、それを駆るのも最高の魔法少女である。その動きを捉えられるはずもなく、ほむらは悠々とゲイルロズへと辿り着くのだった。

 

「そこのR戦闘機、ここは我々グランゼーラ革命軍の施設である。許可なき接近は認められない。貴官の所属と目的を報告されたし」

そしていよいよゲイルロズに近づくと、ほむらの接近に気づいたゲイルロズからの通信が入る。ほむらは機体を停止させ、小さく一つ息を吐き出し、こう告げた。

「魔法少女隊所属、暁美ほむらよ。……私は、私の仲間達を助けるために来たわ」

ゲイルロズの管制官は、その言葉に僅かに息を呑んだ。しばらくの沈黙の後、ゲイルロズはほむらとその機体を収容した。

 

「……ほむら」

「ただいま、さやか、杏子」

「ほむらっ!ほむら……本当に、ほむらだっ!よかった……生きてて、くれたんだ。ほむらぁ……」

機体を降りたほむらを待っていたのは、二人並んで立っている、さやかと杏子の姿だった。ほむらが帰ってきたと聞いて、持ち場を放り出してまでここへ迎えに来たらしい。

呆然としたように呟く杏子に、ほむらは小さく笑って答えた。そうするや否や、さやかがほむらに飛びついた。そのまま抱きつき、何度も何度も名前を呼んで。いつしかその声は涙声へと変わっていた。

抱きついたまま震えるさやかを、ほむらも優しく抱きしめて。

「ったく、ピーピー泣きすぎなんだよ、お前は。……でも、本当に良く帰ってきてくれたよ。生きててくれたんだな、ほむら」

そんなさやかを茶化しながら、それでも杏子もほむらの肩を抱いて。

「一度どこか二度死んだわ。でも、助けられたのよ、私は。それは貴女のおかげでもあるわ。……ありがとう、杏子」

そしてほむらもまた、杏子の手に自らの手を重ね、優しく笑うのだった。

 

その後、ほむらはさやかと杏子の紹介で晴れて魔法少女隊の仲間入りを果たす。煩雑な事務手続きも終わり、ようやく落ち着いて話すことができるようになった。

そこでほむらは、彼女が見た全てを話すのだった。彼女の魂を蘇らせた奇跡のことを、そしてバイドとの激しい戦いのことを。その果てに得た勝利と、もう一度起こった奇跡。そして今尚宇宙の彼方にいるであろう、まどかのことを。

そしてそれを迎えに行くために、もう一人の自分であったスゥが旅立ったのだということを。

 

「じゃあ……まどかはきっと、帰ってくるんだよね」

「それがいつになるかは分からないけれど、きっと彼女はやってくれると思うわ。だから二人がいつか帰ってくる日まで、私は太陽系を守らなきゃいけない。彼女達が帰ってくる場所を、守らなくちゃいけないから」

さやかの問いに、力強くほむらは頷いた。大切な仲間を守るため、そしてもう一人の自分との約束を果たすために、ほむらはここまでやってきたのである。

「そういうことなら、あたしらだって協力するさ。いつまでも人間同士、争ってるわけにも行かないからな。まどか達が帰ってきた時には、平和な宇宙を見せてやらないとな」

「うんうんそうそう!その為に、あたしら魔法少女隊はいるんだから!……って、まあもうあたしと杏子は魔法少女じゃないんだけどさ」

そう言って、さやかはどこか苦笑めいた笑みを漏らした。

通常のR戦闘機でも戦闘経験も豊富な杏子とは違い、さやかは魔法少女としての経験しか持っていない。それ故の不安、足手まといになるのではないかという恐れが、ほんの僅かに透けて見えた。

だからほむらは、そんなさやかを静かに抱きしめて。

「たとえ魔法少女じゃなくても、貴女は私の大切な友達、大切な仲間よ。貴女に戦う覚悟があるのなら、私はそれを止めない。それに、貴女は一人で戦ってるわけじゃない。……一緒に戦い抜いて、生き抜いてやりましょう。さやか」

「なん……かさ、ほむら、随分印象変わったんじゃない?優しくなった、って言うかさ。接しやすくなった感じ?ちょっと見違えちゃったよ」

抱きしめられたまま、はにかむように笑ってさやかは答え、そして。

「髪型まで変わっちゃって。イメージチェンジってわけなのかな。……うん、でも良く似合ってるじゃん、みつあみもさ」

編みこまれた髪を、そっと掴んでさらりと揺らした。 

 

「そういえば……マミはどうしたのかしら。ここには来ていないの?」

話はどうにも尽きぬ中、ほむらが不意に問いかけた。時間は随分と過ぎていたが、マミの姿は尚も見えなかった。

「ああ……それは、ね」

「マミや他の魔法少女達はさ、まだ身体がないんだ。ゲイルロズが陥落したときに、一緒に失われっちまった。それをどうにか復活させる方法を手に入れるってのも、あたしらの戦う理由の一つなんだ」

「それじゃあ、マミとは話はできないのかしら」

そこまで深刻な状況だったとは、ほむらでさえ知る由はなかった。

身体を失い、魂だけになった彼女達は一体何を考えて生きているのだろう。魂だけになり、それでも生きるために戦い続ける彼女達。その生き様は、どれほどに過酷なのだろうと。思わずそんな想像が脳裏をよぎり、閉ざした瞼の裏に熱いものがよぎった。

 

「いや、それはできるんだ。っつーか一応みんなそれなりに暮らしてはいる。そうでもなきゃあ、こんなところにずっとなんて耐えられないしさ。ほむら、会いに行こうぜ。マミのとこにもさ」

「そうだね、マミさんにも教えてあげなくちゃ、ほむらが帰ってきたんだって。さ、行こうじゃない、ほむらっ」

そして促されるままに、ほむらは杏子とさやかの後に続いた。

ゲイルロズの奥へ、魔法少女隊が管理する区画へと入ると、そこは底冷えのする空気に包まれていた。

「うー、相変わらず寒いね、ここは」

「置いてある物が物だからね、冷やさなけりゃならないのはわかるけど。こっちまで冷気が漏れてるのはいただけないよな。ほら、風邪引く前にちゃんと着込んでな」

厚手の上着を羽織り、更に奥へ。そこには不可思議な空間が広がっていた。

円状の広々とした部屋の中央に、特殊ガラスに包まれた巨大な機械が設置されている。無数の機械を継ぎ接ぎして作り出されたかのように、それは随分と歪な姿をした恐ろしさすらも感じるその機械の表面を、幾筋もの光がひっきりなしに這い回っている。

そしてその機械から伸びたケーブルは、ガラスの外に無数に設置された小さなケースへと接続されていた。

 

「何なの、これは……一体」

その異様はどこか、本能的な恐怖感すらも覚えさせるほどで。思わずほむらも、声が僅かに震えてしまうのを堪えられなかった。

「魔法少女の楽園……って言うには、ちょっと無骨すぎるか。マミや他の魔法少女達は、この中にいるんだ。みんなこの中で、データで作られた世界の中で暮らしてる。要するに、仮想現実、って奴だな」

「それで、あの機械はそれを生み出すコンピューターなんだってさ。すごい機械らしいけど、それだけにずっと冷却してなきゃいけなくて、それでこの部屋はいつもこんなに寒いんだ」

それは恐らく、ここに存在しているのが身体を持たない魔法少女のみだからこそ、これほどの低温であることが許されているのだろう。ソウルジェムにはこの程度の低温など、何ら影響を及ぼすことはないのだから。

 

「元々革命軍はさ、連合軍の連中と違ってそこまで実戦経験があるわけじゃないんだ。だから、それを補うために仮想現実での訓練が行われてたらしい。そのための技術の副産物なんだとさ、こいつらは」

「最初はさ、あたしもひどいって思ってたんだ。これじゃまるで、皆が機械の一部みたいだってさ。でもさ、すぐにそうしなくちゃ生きていけないんだってわかったんだ」

この部屋の、そして魔法少女達の現在の在り様を見るたびに、さやかと杏子の心のどこかに影が宿る。それを払うことができるのは、いつか全ての魔法少女達がこの部屋から解き放たれ、本当の人生を取り戻すことができた時だけなのだろう。

そして、その時はまだ遥かに遠かった。

「外からでも話をすることはできるけど、ソウルジェムがあるなら直接会いにだって行ける。だからさ、行ってこいよ、ほむら。あんたの身体はあたしらが見といてやるからさ」

「きっと、マミさんも待ってると思うから。行ってきなよ、ほむら」

躊躇う心はどこかにあった。この異様を前にすれば、それは当然とも言えた。

けれど、そこには仲間が待っている。会いに行く術は、この手の中に確かに存在している。ならば、躊躇う必要などはないはずなのだ。ほむらは静かに頷いて、自らの魂、ソウルジェムをさやかに託した。

そして僅かな時間の後、彼女の視界は暗転した。

 

 

「ここ……は」

気がつくと、そこはなぜか見慣れた空間だった。一面に白い内装、そしてどこか懐かしい調度品の数々。ほむらはそこで、自分が椅子に腰掛けているのだと気づいた。

テーブルの上にはおいしそうなケーキが、そして湯気の沸き立つ紅茶のカップが。そしてさらにその先へと視線を向けると、そこには懐かしい姿があった。

「……マミ」

「いらっしゃい、本当に久しぶりね。ほむら」

ほむらの記憶の中と寸分違わぬ姿のマミが、微笑んだまま座っていた。そこでようやくほむらも気がついた。この場所は、ティー・パーティーのマミの自室であると。

「ええ、本当に……っ、また、会えてよかった」

安堵の表情を浮かべ、静かに吐息を漏らしたほむらを、マミは静かに笑みを湛えたまま見守っていた。

それは果てしない戦いの末、ようやく辿り着いた再会だった。

なぜだろうか、先ほどさやかと杏子と出会った時よりも、なぜだか胸がいっぱいになってしまって、思わず言葉に詰まってしまうほどの感情で、ほむらの心は溢れてしまいそうだった。

 

きっとそれは、この仮想現実の空間故なのだろう。ここにいる以上、誰もが剥き出しの魂で触れ合わなければならなかったのだから。

思わず咽び泣いてしまいそうだったが、なんとかそれを堪えるほむら。その様子がだんだん落ち着いてきたのを見計らって、マミは静かに口を開いた。

「色々と話したいことはあるけれど、まずは紅茶でも飲んで落ち着いて頂戴。実際にお腹が膨れるわけじゃないけれど、味はちゃんとわかるはずだから」

その位のことをやってのけるくらいには、この仮想現実は便利な空間だったのである。

事実、漂ってくる紅茶の香りは実にかぐわしく、一口頬張ったケーキはほろほろと甘かった。

二人きりのお茶会。言葉がふわふわと飛び交う中で、静かに紅茶とケーキを嗜みながら。ここに来られるのは魔法少女か、そうでなければサイバーコネクタ手術を施された者だけだろう。

それ故にさやかや杏子はここに来ることはできず、画面越しに言葉を交わすくらいのことしかできない。そんなことを、マミは少し寂しげに話すのだった。

 

「随分と……色々なことがあったわね、本当に」

「でもバイドとの戦いが終わったのに、今度は人間同士で戦う事になるなんて」

ほむらは知らなかったのだ。地球連合軍を蝕む狂気なる信仰の存在を。だからこそ不思議でならなかった。なぜ人類同士が争わなければならないのか。

その理由は一体何なのか。それを知るということも、彼女革命軍の本拠地たるゲイルロズを訪れた理由の一つだった。

「そう、確かに今のこの状況はおかしいわ。バイドとの戦いが終わったばかりだというのに、戦後の復興をさしおいてまで次の戦いを始めようとしている。こんなことを望んでいる人なんて、いないはずなのに」

マミは悲しげに瞼を伏した。バイド戦役を生き延びた猛者である魔法少女達の、そのリーダーである彼女ですら、やはり人間相手に戦うということへの躊躇いは、完全に打ち消せるものではなかった。

「それでも戦うのね、貴女達は?」

「……ええ、それでも私達は戦うわ。今の地球連合軍のありようは余りにも異常よ。それを正すためにも、そして私達が私達の人生を取り戻すためにも、私達は戦わなければならないの」

伏していた瞼が開かれる。そこにはやはり物憂げな色は浮かんでいたけれど、それでもそこには強い意志の光があった。

れどその言葉の端には、多くの魔法少女達の命を背負っているという責任の重さの現れでもあった。

 

「マミ。……貴女は、少し頑張りすぎていると思う」

「かもしれないわね。でも、休むのなら全て終わらせてからいくらでも休めるわ。今はもう少しだけ、頑張らなくちゃいけないじゃない」

気遣うようなほむらの言葉に、マミは少しだけ困ったように笑った。それでもほむらは、そんなマミの手を取って。

「……辛いのなら、頼って欲しい。私にできることなんてどれだけあるかわからないけど。それでも、私にできることならなんだって協力するから」

ほむらの言葉に、マミは僅かに目を丸くして。それから、くす、と笑みを零した。というよりも、堪えきれない笑いが溢れてきているようだった。

「くす……あはは、あぁ、もう……ごめんなさい、ほむら。別におかしかったわけじゃないのよ。貴女もさやかや杏子と、他の仲間達と同じ事を言うのね。って思ったら、なんだかおかしくなってしまって」

こんな風にお互いを思いやれる仲間は、きっと得がたいものなのだろう。こんなところまで自分を慕ってついてきてくれる仲間達が、どうしようもなく愛おしかった。

堪えきれない笑みをかみ殺して、目元に浮かんだ涙を払った。そしてマミは言う。

「大丈夫よ。私がこうしているのなんて、ただ私にそれが向いていたってだけだから。私にできないことがあった時には、遠慮なくみんなの力を借りちゃうんだから」

嬉しそうに笑いながら放たれたマミの言葉に、ようやくほむらも安堵の表情を浮かべた。

 

「きっと、これから忙しくなるわ。地球連合軍の侵略を防がなくちゃいけない。それと同時に、地球連合軍を蝕む敵を明らかにしなくちゃいけない。ほむら、きっと貴女の力も沢山借りることになると思うわ」

改めて、マミはほむらに手を差し伸べた。

躊躇いもせず、ほむらはその手を強く握って。そして頷いた。

 

 

その日、魔法少女隊は新たな仲間を得た。それは英雄のなりそこない。さりとてそれは英雄の同胞(はらから)。

彼女も、そして彼女の駆る機体もまたその呼び名に十分に足るほどの力を持ち、その力を僅か半月の後に現れたゲイルロズ攻略艦隊との戦闘において、まざまざと見せ付けた。

そしてその後も、多くの戦場で勇名を馳せたと言われている。

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