本編で少しだけ語られた、真姫の過去とは…
「これはストライクガンダムっていってな。
パパの大好きなガンダムなんだ」
「かっこいいね!」
「そうだろう?
パパが手間暇かけて作った、渾身のガンプラさ」
ラブライブ!×ガンダムビルドファイターズ
外伝 1年生編Ⅰ
『父へ伸ばす手』
ちっちゃい頃から、ガンダムは私の身近にあった。
大好きだったパパはガンダムをよく見ていたし、ガンプラだってたくさん飾ってあった。
ママは少し呆れてるみたいだったけど…
そんな中でも、パパが一際大事にしていたガンプラ。
それが、ストライクだった。
「パパ、なにしてるの?」
「ちょっと今のお前には難しいかもしれないが、筋彫りって作業をしてるんだ」
机に向かうパパの背中を眺めているのが、私は好きだった。
今でこそ1/144のガンプラに筋彫りをするのがいかに難しいか、私にもわかる。
当時はなんにもわからず覗き込んだりしてたけど。
そうやってパパのストライクは少しずつ、でも確実に完成に近づいていった。
「ついに完成したぞ…!」
「うわー!かっこいい!!」
私が3年生になる頃には、長い間作っていたパパのストライクもついに完成して。
うちにバトルシステムが置かれたのもこの頃だった。
パパのストライクは見た目のディテールやスタイルはもちろん、今になってわかるその性能は折り紙つき。
そんなパパと、私は初めてガンプラに触れた。
「パパ、これは?」
「ガンダムアストレイ レッドフレームだよ。
ストライクが主役のガンダムSEEDの外伝、アストレイの主人公、ロウ・ギュールが乗るガンダムさ。
色もぴったりだろ?」
「うん!
これ、作る!」
私の作ったレッドフレームは、パパのストライクには遠く及ばない性能だった。
当たり前だって言われたらそれまでだけど…
でも、楽しかった。
パパと一緒にガンプラを動かす、ただそれだけで。
「ねぇパパ、ガンプラしないの…?」
「…最近忙しくてな。
ごめんな」
私が5年生になった頃だったっけ。
パパがガンプラを触らなくなったのは。
私は無理矢理自分を納得させた。
パパが忙しいのは仕方のないこと……
そう自分に思い込ませた。
反面、ガンプラを触りたい、システムを使いたいという欲は止まらなかった。
レッドフレームを小改造しては一人システムに向き合って動かしてみた。
やはり、足りない。
一人では…
そう思ってからついこの間まで、私はバトルはもちろん、ガンプラも触っていなかったのに。
μ'sのみんなと、9人で足並みを揃えてガンプラをしていると…
なんだかあの頃に戻れたかのような、それでいて新しい不思議な感覚に包まれて…
真姫は一人、静かにそんなことを考えて物思いに耽っていた。
そんなとき、ケータイが鳴る。
着信の主はにこだった。
にこ『今フリーバトルルームにいるんだけど…
1試合、やらない?』
真姫は
『やる』
とだけ返信し、ガンプラをもってフリーバトルルームへ向かった。
ルームに到着すると、確かににこは待っていた。
しかしその手にはユにこーンではなく、別の機体が握られていた。
真姫「…」
にこ「なによ、面食らったような顔して」
にこが持っていたのはシャア専用ザクだった。
にこ「機体のこと?
それならアンタもいつもと違うみたいだけど?」
真姫「えっ…?」
ルージュが改修中なのを忘れ、カバンからいつも通りガンプラを取り出した真姫が持っていたのは…
あの時のレッドフレームだった。
真姫「こ、これは…!」
にこ「逆にいいじゃない?これなら。
試合を気にしないで、お互い思いっきりやれるわよ」
真姫「…確かに、そうかもしれないけど」
真姫はなんとなく昔の思い出に傷をつけるような気がして。
すこし躊躇った。
にこ「真姫、アンタこれを使いたくないんでしょ?」
真姫「そ、そんなこと…」
にこ「嘘言わないで。
明らかに躊躇ってたもの」
真姫「…そうよ。
思い出のガンプラだから…」
にこはやれやれとため息をつき、そして言った。
にこ「思い出のガンプラだから、使ってあげなきゃなんでしょ。
ガンプラは傷ついたり壊れたりするかもしれない。
でもそれは直せる。
それに、思い出は壊れたりしない…
ずっと心にある限り、その思い出はガンプラにも積もっていく。」
真姫「にこちゃん…」
にこ「さ、どうするの、真姫。」
真姫「私は…私はっ…!!」
戦場には、シャアザクとレッドフレーム、2機の赤い機体が佇んでいた。
にこ「いくわよっ!」
真姫「来なさいよっ!!」
ザクが振りかざしたヒート・ホークを、レッドフレームのガーベラ・ストレートが受け止める。
普段とは違う、実体のある武器同士のつばぜり合い。
ギリギリと刃が擦れる音が暫し響き、一度離れた時、真姫は妙な満足感に包まれていた。
真姫「…誘ってくれてありがとう、にこちゃん」
にこ「なによ急に…」
真姫「なんだか…
言葉にしにくいけど、一歩踏み出したような気分」
にこ「意味わかんない…」
にこはふざけて、わざと真姫を煽る。
真姫「こっちは真面目なのにぃ…!」
でも、2人は笑顔だった。
刃を重ねる度、その機体にかすり傷がつく度、どんどんバトルにのめり込んでいく。
そして…
にこ「取った!」
紙一重の隙を突き懐に入り込んだザクが、レッドフレームの腹部にヒート・ホークを力一杯振るう。
真姫「どっちが!!」
対するレッドフレームは、近づいたザクの脳天めがけ、ガーベラ・ストレートを逆手で突き刺す。
両者、システムダウン。
いつもと違うバトルは、引き分けでその幕を下ろした。
にこ「引き分け…」
真姫「だなんて…」
ふぅ、と一息つく真姫に、にこはお茶のペットボトルを投げた。
真姫「…ありがと。」
にこ「気にしないで。
…楽しかったわね。」
真姫「…ええ。ほんとに…」
脳裏によみがえる、バトルの瞬間の記憶。
にこ「たまにはいいでしょ?
思い出に浸るのも」
真姫「え?
にこちゃん、まさかわざと…」
にこ「あったり前でしょ!
にこを誰だと思ってるのぉ?」
これが真姫にかかるプレッシャー、そして昔の思い出を振り切るためのバトルだったことに真姫が気づいたのは、バトルがおわってからだった。
思い出は大切だ。
でも、思い出ばかりを見ていたら。
今、この瞬間しか見ることができない大事な一瞬を、見逃してしまうかもしれない。
思い出と同じくらい、もしkしたらそれ以上に大事な一瞬を。
真姫「…見てて、パパ。
私……
頑張る、から。」
思い出の詰まったレッドフレームを見ながら、真姫は今度こそストライクルージュを手に、試合へ向かったのだった。
外伝
1年生編Ⅰ
完
いかがでしたでしょうか!
少々短いですが、書きたいものは詰め込んだので個人的に満足です。
次回予定は3年生編Ⅱ、絵里にメロメロなあるファイターの出現に、希が闘志を燃やす…?