この後、アニメとは違う世界線を進んでいくAqoursはどう結成されるのか、きっかけはなんなのか?
楽しみにしていただけるとうれしいです!
ではどうぞ!
#1 『赤い転校生』
春風が吹き抜ける、浦女の校門。
そこに佇む2つの影があった。
オレンジ色の髪をした少女と、茶とも銀ともとれる髪を携えた少女。
彼女たちはこの春、この浦女で2年生に昇級した女生徒。
高海千歌と、渡辺曜の2人だった。
「行こう、曜ちゃん!」
「そーだね!」
伝説となった9人に出逢ったあの日から。
千歌には目標があった。
高校2年生になったら、μ'sみたいなスクールアイドルをやりたい―
スクールアイドルとして、そしてガンプラビルダーとして。
μ'sのように、輝ける存在になりたい。
そう思っていた。
そしてそれを、昔から仲がよくなおかつガンプラの知識も持ち合わせていた曜と、もう一人の幼馴染は応援し、協力していた。
「千歌ちゃん、メンバーって他にいるの?」
「うーん…まだ!」
相変わらずの千歌に曜があはは…と少し呆れ笑いを浮かべつつ教室に向かう。
その途中のことだった。
「…あれ、誰だろ」
「へ?」
曜が歩みを止める。
千歌も目線を曜と同じ方向に向けると、そこには、赤い長髪の見慣れない女生徒がいた。
「千歌ちゃん、知ってる?」
「いや、初めて見るよ…?」
1年も経てば、決して多いとは言えない自分の学校の生徒にも見覚えのある顔がだいぶ増えているはずである。
ましてやあんな目立つ特徴の生徒であれば…
しかし2人とも知らないとなると―
「もしかして、転校生?」
千歌の大きな独り言が、相手の耳に聞こえるのは明白だった。
「…私?」
赤髪の生徒は、千歌たちの方を向いてどこか不安そうに訪ねる。
「あ、うん!
ごめんね急に…あはは」
曜が千歌がまたやった…というような表情で女生徒に話しかける。
「…そうです。
この春、東京の秋葉原から引っ越してきた、桜内梨子っていいます。
2年生なんですけど…
あ、リボンの色が一緒ってことは、あなたたちも?」
少し声が穏やかになった転校生―梨子は、2年生。
つまりは1クラスしかない千歌たちのクラスの転校生だった。
「…もしかして、秋葉原からって…
音ノ木坂学院からだったり…しないかぁ」
「音ノ木坂を知ってるの?
私、音ノ木坂から転校してきたの」
「…!」
千歌の中で、何かが弾けた。
「奇跡だよ!!」
口をついて出た言葉はそれだった。
自分たちがスクールアイドルを始めようとしているその時に、まさか音ノ木坂から転校生が来るなんて。
そんな奇跡があるなんて…。
そして次に千歌はこう尋ねた。
「梨子ちゃん…だよね?
私たちと…
スクールアイドル、やってみない?」
「…はぁ〜…
断られちゃったぁ」
「まあ初対面の相手にあんなこと言われてはい!って言える人なんてほぼほぼいないよ…」
結果は惨敗。
きっぱりと断られてしまったのだった。
そんなことをしている内に、2年生登校初日はさっさと過ぎ去ってしまったのだった。
「千歌ちゃん、今日はいくの?」
「もっちろん!
スクールアイドルだって大事だけど、ガンプラもねっ!」
学校を出て沼津方面までバスに乗ると、周辺では唯一と言っていいガンプラバトルシステムが設置してあるおもちゃ屋がある。
ガンプラは世間一般の趣味として受け入れられているため、沼津周辺のビルダーはそこに集まってはバトルしたり、談笑したりしていた。
そのため少し寂れた外観ながら店内は活気に満ちていて、いつもガンプラファンたちの笑い声が絶えない店だった。
なにを隠そう千歌や曜もその内の一人である。
しかし今日は何かが違っていた。
「今日、お店静かじゃない?」
「うん…
いつもこのくらいの時間は、子供たちの声とかするのにね」
千歌たちが店のドアを開けると、店内の人たちの視線は、ひとつのバトルシステムに集められていた。
バトルしているのは、片方は千歌たちも見たことのある地元では有名な中学生。
そしてもう片方は…
「…梨子ちゃん…?」
中学生の対面、こちらには背を向けているものの、確かに昼間見た赤い長髪が揺れている。
とはいえ相手の中学生は、なかなかの実力者であることは千歌と曜もわかっていた。
「あの子と戦えるって…」
曜が驚きつつ呟く。
そして二人も、バトルに目を向けた。
「うおおおおっ!!!」
中学生のソードインパルスが、梨子のガンプラ…
イージスガンダムに、2本のエクスカリバーで切りかかる。
「…!」
しかしそれを絶妙な角度で受け流した梨子は、そのままソードインパルスの懐に突っ込む。
シールドを翳してタックル決めたイージスが、吹っ飛んだソードインパルスに変形しつつ突撃をかけた。
4本の脚をもつ異形の生命体のようなMA形態へと姿を変え、エネルギー砲『スキュラ』をチャージしつつソードインパルスに掴みかかる。
「…!」
万事休すか、と思われたが、インパルスは合体を解いてイージスの魔の手からからがら脱出する。
「今の一瞬だけでもすごいバトルだね…」
「うん…
梨子ちゃん、相当なウデの持ち主みたい」
千歌と曜も周りと同じく空気に圧されながら試合を見ている。
脱出されたイージスは即座にMS形態へと戻り、分離したインパルスにビームサーベルを発振しながら肉薄する。
「…とった!」
梨子が小声で囁くように言うが、インパルスは分離で宙に舞ったソードシルエットを遮蔽物に上手く距離を離し、再びMSに合体した。
「できる人…
でもっ!」
ソードシルエットを斬り裂き、残ったエクスカリバーを右手に握ったイージスが、今度はそれを翳してインパルスへの距離を詰める。
一方のインパルスは、残されたビームライフルを連射して応戦するが、イージスの勢いを殺すまでには至らず、次第に2機の距離は近づいていく。
「これはもうダメね…
まだ…まだ!」
イージスの翳したエクスカリバーが爆発し、イージスは爆風に包まれるも、依然として今度はシールドを翳し突撃する梨子。
さすがにインパルスを操縦する中学生も焦ったのだろう、ライフルを連射しつつ腰のマウントからフォールディングレイザー対装甲ナイフを取り出して、突撃への反撃を伺う。
2機の距離はさらに縮まり、もうあと少しでイージスの一撃が決まるという距離までイージスが近づく。
しかしそこでついに、イージスのシールドが限界を迎え、イージスはビームを被弾。
今度こそ爆発、バトルは決まってしまった…
かに思われた。
「まだやれる…
やれる…!」
次の瞬間だった。
爆煙の中に光が見えたかと思うと、インパルスの機体をビームが包んだ。
シールドが限界を迎えたのに気づいた梨子は左腕をパージしつつあえて爆発に巻き込まれ、煙のなかで変形することで相手に警戒されることなくスキュラの発射体勢に移行し、油断したインパルスを狙い撃ちにしたのだった。
BATTLE END
「ふう…勝てた」
バトル終了の合図が響くと、店内は見たことのない女子高生の登場にどよめいた。
負けた中学生も、悔しそうにするわけでもなく呆気にとられている。
「すっごぉい!!!!!」
そして、重ねるように店内に響く声。
声の主は千歌だった。
「高海…千歌ちゃん?」
昼の記憶と照らし合わせ、梨子が自信なさげな反応を見せる。
「梨子ちゃんガンプラやってたんだね!!
想像もしてなかったよ!
それにあぁーんなに強いなんて!!!!」
「あぁ…あり、がとう…」
千歌の発言に、バツの悪そうな、少し照れ臭そうな顔をして、梨子は視線を逸らした。
「となったら…やるしかないよね?
ガンプラバトル!!」
「え、そ、そんな急な…
それに他の人たちだってシステム使いたそうに待ってるし」
しかし周囲は、梨子と千歌のバトルに期待を寄せているようで。
口々に試合をしろだとか、見たい見たいだとか呟いている。
「みんなもこう言ってるし…
どうかな?
ここで会えたのもきっと縁だと思うんだ。」
少し困り顔の梨子に、今度は曜も問う。
「…わかった。」
曜にも言われて渋々…という感じではなく、納得して梨子は返す。
「それじゃあいくよ、梨子ちゃん!」
「…うん!」
広くはない店内にありったけの歓声。
そして千歌はふと思う。
『もしμ'sみたいになれたら、もっともっといっぱい歓声を聞けるのかな…
あの時の、決勝戦みたいな』
2人がシステムに対面で立ち、ガンプラを置く。
するとアナウンスが始まった。
Beginning Plavsky particul dispersal……
Please set your GP BASE…
Please set your GUNPLA…
そしてシステムに、プラフスキー粒子が満たされていく。
『高海千歌!!
デスティニーガンダム!!!』
『…桜内梨子、イージスガンダム!』
2人『いきます!!!』
こうして、この後起こることの全ての始まり。
記念すべき最初の一戦が、幕を開けたのだった。
次回、第2話
『溶け行く心』
に、続く!
いかがでしたでしょうか?
彼女たちのガンプラでの邂逅は、どんな変化をもたらすのか?
今後にご期待ください!