錦と美秦   作:黒枝 芳乃

25 / 31
競歩、競走

 

 

 

美秦「ゆり、歩くの、速いよ・・・・・・!」

 

ゆり「今はっ、このくらいが、ちょうどいい風を、感じられるのっ」

 

美秦「体育祭の後で、この運動量・・・・・・、それがちょうどいい・・・・・・」

 

ゆり「美秦、もっと速く! じゃないと」

 

圭太「じゃないと、どうなるの」

 

ゆり「ひゃあっ」

 

圭太「わっ、ごめん」

 

美秦「ゆりっ」

 

 

 

錦「待てって圭太・・・・・・って、ぅおお、なんて体勢、ん、体制? 態勢?」

 

圭太「・・・・・・お前のその悩み、文字面見ないとわかんないって。そのレベルまで育ったことは認めよう」

 

錦「じゃなくて、・・・・・・二人とも、きつくないの、井上さん軽そうだけど、片手で抱えるのは圭太でもきつ」

 

ゆり「離してっ」

 

圭太「ごめんね、はい」

 

ゆり「あ、ありがとう、ございます・・・・・・」

 

圭太「俺がいきなり声かけたのが悪かったんだから、俺は謝らないといけないね。ごめんね、井上さん」

 

ゆり「・・・・・・!」

 

美秦「ゆり、耳が赤い・・・・・・」

 

ゆり「そん、なことないわよ!」

 

錦「おい圭太、なんで急に走り出したんだよ、こっちはいつもの帰る道とは逆だろ?」

 

圭太「ごめんね、錦。まさか何も言わずついてきているとは思ってなかったからさ」

 

錦「えー、俺ずっと追いかけながら声かけてたよ、どこいくんだよ圭太、待てよ圭太ってさ」

 

圭太「それ、声かけるじゃなくてかけ声の間違いじゃないの、走るリズムにそのうち合わせて言っちゃってたりとか」

 

錦「聞こえてたのかよ!」

 

圭太「全く聞いてないし、想像しやすくてね」

 

美秦「行っちゃう」

 

圭太「え」

 

ゆり「来ないで! 美秦、帰りましょう」

 

美秦「・・・・・・」

 

ゆり「・・・・・・美秦」

 

美秦「・・・・・・いや」

 

圭太(小さい子の反抗期みたいだ・・・・・・)

 

ゆり「なんで・・・・・・」

 

美秦「まだ、みんなでやっちまった、をしてないから、教室に、みんなのところに、行きたい」

 

ゆり「やっちまった? ああ、さっきの・・・・・・」

 

美秦「私も、いていいのなら、帰る必要はない・・・・・・?」

 

圭太「あらあら、クエスチョンマークが付いちゃった」

 

ゆり「・・・・・・いいに、決まっています。戻ろう、みんなのところへ」

 

美秦「ゆり・・・・・・」

 

ゆり「さ、また早歩きよ」

 

美秦「そんなぁ」

 

圭太「井上さん、さっきの」

 

ゆり「あああああ」

 

圭太「忘れていいから」

 

ゆり「あああ・・・・・・え?」

 

圭太「忘れて、無かったことにしていいから。こんなに逃げられるくらいなら、また同じ立ち位置に戻っていたほうが、お互いのためだし」

 

ゆり「・・・・・・長谷川、くん」

 

圭太「だから、逃げなくていいから、4人で一緒に、走ろう!」

 

ゆり「ええっ、走るのですか!? よくそんな元気が残っていますわね、頭大丈夫ですか」

 

圭太「学級委員をする程度ですよ~」

 

ゆり「~、そうでなくて、ですねっ!」

 

 

 

錦「なんだかよくわからないけれど、いつも通りになれるかな」

 

美秦「いつも通り・・・・・・が、いいの?」

 

錦「んー、誰かが辛そうな時は、いつも通りの、わいわいしている方が、俺はいいと思う!」

 

美秦「・・・・・・いつも、通り」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。