ゆり「吉丸さん、井上です」
吉丸「あら、やっぱり来てくれたのね。今日は雨だったから、きっと来てくれると思ってお茶の準備もしていたのよ。美秦ちゃんも喜ぶわね。あらあら、イケメンのお友達が2人・・・・・・お一人はやんちゃでもしたのかしら?」
錦「あっ、俺泥まみれだ! せっかく美秦さんのおうちにお邪魔するのに、こんな・・・・・・」
吉丸「いいのよ、来てくれただけでも嬉しいのよ。すぐにお風呂入れるから、入って行ってね。ほかのお二人は応接間に上がっていらして」
ゆり「はりきってますね、吉丸さん」
錦「お手間をおかけしてごめんなさい・・・・・・」
吉丸「世話を焼くのが大好きなのよ。焼かせてくれるくらいじゃないと私のテンションの行き場がなくて困るわ~」
ゆり「美秦、相変わらずですか?」
吉丸「そうねえ。いつもの時間に起きてはいたみたいだけれど、そうね、いつもの調子ね」
ゆり「では、このどろんこ瀬川くんをよろしくお願いいたします」
吉丸「よろこんで。さあ、いらっしゃい」
圭太「俺は」
吉丸「自己紹介も後々ねー。さあ、腕がなるわよーっ」
錦「おれ、無事に戻ってこれるかな・・・・・・」
ゆり「大丈夫、吉丸さんの、家政婦の腕は一流ですから」
錦「今、腕はって、限定したよねええええっ」
吉丸「瀬川くんはこっちよーっ」
錦「ぎゃあああっ」
圭太「錦、無事かな」
ゆり「あのテンションの吉丸さんには、何を言っても伝わらないから。やりたいように尽くしていただくしかできないのよ」
圭太「良い人だね、吉丸さん」
ゆり「22人目の家政婦さん」
圭太「よく覚えてるね」
ゆり「いつも美秦が数えていたから。それを聞いていたからですわ。錦くんが戻ってきたら、みんなでここにいないあの子を呼びに行きましょうか」
圭太「そうだね。・・・・・・ところで、一般男性の身長がない錦だけれど、どんな格好で戻ってくると思う?」
ゆり「・・・・・・あの制服では、戻ってこないでしょうね。吉丸さんのことですから、お風呂に錦くんを入れた後すぐに洗濯してくださっていることでしょうし」
圭太「美秦さんのお父様の服をお借りするとかとしても、だぼだぼになるのは目に見えているし、この家にほかに男の子はいないよね」
ゆり「さすがに、来客用の衣服一式であれば、この屋敷の規模なら用意があるのではないでしょうか」
圭太「お茶が冷めるのは勿体無いね。お先に頂いておこうか」
ゆり「唐突ですわね。でも良い提案ですわ。私たち、どうやら今想定外のことに直面する予感から動揺しているみたいですし」
圭太「今日はいつになく饒舌だったから、井上さん喉乾いてるでしょ」
ゆり「気配り上手なのは、そういう性格なのでしょうか。それとも・・・・・・」
圭太「え・・・・・・、と。そうだね、鍛え上げた性分だろうね。弟たちの面倒見たり、錦の行く末を見守ったりするとね。井上さんもそういうところ、ない?」
ゆり「私は、兄弟はおりませんし、美秦がいればそれで良かったですから、他にまで気を配る必要はあまり無かったのです。ですから、長谷川くんと私は、そういう点で決定的に異なりますわね」
吉丸「クッキーとカヌレ、どっちから食べたいですか?」
ゆり「クッキーが食べたいです」
吉丸「はぁい〜」
圭太「いつの間に!?」
吉丸「もうじき錦くんも上がってくると思いますよ。それまで先にクッキーまで食べ終えてしまいましょう。錦くんがきたら、カヌレで仕切り直しましょうね」
圭太「あの、錦のこと、いろいろありがとうございます、吉丸さん。なにか俺にも手伝えることはありますか?」
吉丸「そういっていただけると、家政婦冥利に尽きますね。では、このお皿をそちらへ運んでいただけますか? わたしは紅茶を淹れなおして参りますね」
圭太「わかりました」
ゆり「飲み終えたカップはこちらでいいですか?」
吉丸「あら、ゆりちゃん、ありがとう。助かるわ」
圭太「気配り、できてるんじゃないの」
ゆり「吉丸さんは美秦の理解者ですから。私も何かして差し上げたいと思うのは至極当然なことではありませんか?」
圭太「わかってるよ。だから、自分の可能性を自分で制限かけるようなこと、軽々しく言ってはいけないよってことを伝えたくて」
ゆり「そんなこと、私がいつあなたに申しましたかしら」
圭太「舌の根も乾かないうちだよ。俺とは決定的に違う、自分は美秦さんだけで良いとか、言ったよね」
ゆり「言いましたわね・・・・・・」
圭太「そんなことを言う井上さんのこと、美秦さんは喜んでそばにいてくれると思う?」
ゆり「なぜそのようなことを聞くのですか」
圭太「美秦さんのことを言い訳にして、自分の世界や可能性を狭めるのは、失礼なことだし、何より、井上さんのことを知っている人たちからしたら、悲しいことだから、して欲しくないんだよ」
ゆり「それを、なぜあなたに言われなければならないのですか。私は、頑張って気を張って、あの子を守って・・・・・・」
圭太「そうだね。井上さんがそうしてくれていたから、美秦さんはここまで心が崩れることなく、優しい人になった。
これからは、井上さんがいなくても、立っていられるようになるよ。きっと。そうなったときに、今度は美秦さんが井上さんのことを心配することになるよね。それは、井上さんの本望かな?」
ゆり「そんなこと、嫌・・・・・・」
圭太「井上さんも、ゆっくりでいい。いいから、世界を広げてもいいんだ」
ゆり「心のどこかで、わかっていたんです、けど、わからないふりをしないといけないと思っていたんです。まだ、美秦はまだだから、って・・・・・・」
吉丸「私もいるんですけれどね」
圭太「あっ、すみません。忘れてないですけれど、今伝えないといけなかったんで」
吉丸「そうですね。うんうん、わかりますよ」
ゆり「吉丸さん・・・・・・!」
吉丸「でも、子どものうちは、いっぱい悩んでぶつかり合って大きくなっていって欲しいですからね。私たち大人は、その触媒になったり、陰で支えたり、ああ忙しいわぁ」
圭太「・・・・・・吉丸さんは、本当に懐が広いというか、大きくて柔らかい存在感がありますよね」
吉丸「あらあら、長谷川くんは、人のことをよく見ていて、褒め上手ね」
圭太「錦や弟たちは、褒めて育ててきましたからね」
吉丸「あら、私も2人の子育てを終わったばかりなんだけれど、ここでまた子育ての延長戦をしてみてもいいかもね」
ゆり「そのテンション、危険ですわね・・・・・・」
ずっとご無沙汰しておりまして、お待たせして申し訳ありません。亀よりも遅く歩いております。
ずっと見ていてくださる方がいらっしゃると気付いて、舞い上がり尽くして、練り続けた人物設定をさらに掘りすすめる意欲が湧き上がりました。みなさんのおかげです。本当にありがとうございます。
皆さま読者さまがいないと、錦たちは動きません。
これからも、更新した際はできる限り忘れない限り、ツイッターで呟こうと思いますので、気長にお待ちいただけると幸いです。
いつも読みづらい文体で申し訳ありません。ああ、謝ってばっかりだわ。きっと圭太くんあたりに怒られますね。では、このあたりで今回は失礼いたします。
あ、本日日付変更時に合わせて、番外編みたいな話を予約投稿しております。
(予約投稿久々にしたので、仕様確認のようなところも兼ねています。)