錦「(茂みにしゃがみこんで)俺は、平常心だ。大丈夫だ」
圭太「何を言い聞かせてるんだか。第一、美秦ちゃんにお誘いの声かけはしたのかい?」
錦「?おさそい・・・・・・」
圭太「まさか」
錦「イメトレでのお誘いを実行してなかった・・・・・・」
圭太「はあ・・・・・・。錦、ちゃんとするところはちゃんとしないといけないよ」
錦「お兄さんかよ」
圭太「そうだね、俺はみんなのお兄さんだからね。お兄さんが必要なあいだ、俺はその人のことを見守る存在であり続けるんだよ」
錦「んなこと語るなって・・・・・・恥ずかしいから」
圭太「えええ、人の好意は受け取っとけって」
錦「うーざーいー」
錦「はああ~・・・・・・。あんなことは言ったけども・・・・・・。やっちまったよなぁ。お前の行くあてが無くなっちゃったな、バレンタインチョコさんよ」
美秦「そんなところに、誰? リンちゃん?」
錦「ひっ・・・・・・!! しししししし清水美秦、さん!?」
美秦「喋った・・・・・・。誰?」
錦(誰って、こっちこそリンちゃんって誰だよ! 願ったり叶ったりだがここからいつ出れば良いんだろう!?)
美秦「・・・・・・泣いているの?」
錦「・・・・・・なんで、俺が、泣ぐんだよ・・・・・・」
美秦「これ、あげるから、元気だして」
茂みの中からチョコクッキー出現。
美秦「本当はリンちゃんにあげるつもりだったんだけど」
錦「・・・・・・リンちゃん、て、誰ですか(聞いてしまったーーーーっ! 自分への大ダメージ確実であろう情報を、どうして思わずこの口は・・・・・・!)」
美秦「リンちゃんは、この学校に居着いている三毛猫のリンダのこと」
錦「猫だったのかよっ!!(立ち上がってしまい茂みから丸見えになる)」
錦、赤面。美秦、目を真ん丸にしてびっくりする。
美秦「ひと・・・・・・、 リンちゃんじゃ、ない・・・・・・!」
錦「しししし清水、さん、その、えーと、ネコには、チョコやクッキーは食わせちゃダメだ。うん、だめだ」
美秦「そう、なの・・・・・・!」
美秦、ショックで持っていた袋を落とし、中のチョコレートクッキーをぼろぼろとこぼす。
錦、慌てて拾い集める。
錦「あああああ! もったいない! ・・・・・・じゃない、リンちゃんが、食べたら大変だから、これ俺が食べていいかな」
美秦「でも、地面に落としてしまった・・・・・・」
錦「いや! 3秒ルールでセーフだっ」
茂みから少し離れたところから。
圭太「やるなあ錦。さりげなく美秦さんのチョコ、ゲットしちゃったなぁ」
ゆり「美秦ぁっ! リンちゃんにはチョコレートクッキーダメだってわからなかったなんて・・・・・・。いいえ、それよりも、よくも知らない男の子にそんな大事なものを軽々しく与えてはだめよ」
圭太「おや、清水さんのところの井上さんですね」
ゆり「あら、3年生のお兄さんこと、長谷川くんではありませんか」
圭太「・・・・・・」
ゆり「・・・・・・」
圭太「あれは、美秦さんのあれは、天然小悪魔ちゃん、なんだよね」
ゆり「・・・・・・あれとは何のことかしら」
圭太「猫にチョコレートクッキーはNGだって、子どもでも知っていそうなことを知らなかったと言いつつ、ショックにかまけて錦がそのクッキーを食べているという、一番単純かつ意味深な事実に気づいていないようだけど」
ゆり「あれ、は・・・・・・、ただの、天然なのよ」
圭太「・・・・・・。いや、知っていたけどさ。さすがにこれは度を超えたことが重なりすぎててね」