IS-虹の向こう側-   作:星乃 望夢

21 / 42
またまた話が進まない。とはいえキンクリするわけにもいかないような気がするからあと2話、3話は話が進まなそうな感じがする。


第18話ー黒い子ウサギー

 

 サザビーのフルアーマー化。追加アーマーとはいえ、サイコフレームを満載しているこの『ナイチンゲール』は正しくサイコマシンとなるだろう。

 

 今までνガンダムやサザビーしか扱って来なかったおれに、このサイコマシンを制御出来るのだろうか。

 

 いや、やってみせなければならないだろう。バナージやリディはやってみせたのだから、大人としての示しがつかない。

 

 しかし束はこいつをナイチンゲールと呼んでいるが、やはりサザビーと呼んだ方が良いのだろうか悩むところだ。

 

 まぁ、それは置いておこう。

 

 ただ最近、ドイツ軍で噂されるようになった自身にまつわる話。いや、別に悪いという訳ではないのだ。

 

 ただ性別を偽っている自身としては悪目立ちしたくないのだが。

 

「なにか用があるなら言えばどうなんだ? ボーデヴィッヒ」

 

「いえ。別にありませんので」

 

「こんなところで油を売っている暇があるのか?」

 

「今の私は暇人ですから。少佐から学ばせていただこうかと」

 

 おれの後ろを雛鳥の様に付け回すラウラ・ボーデヴィッヒ大尉。

 

 唯でさえハマーンの小飼の私兵みたいな扱いで噂されるおれに、かつては優秀な軍人で、見た目は人形然と整っていているボーデヴィッヒ大尉との組み合わせは目立ってしょうがないのだ。これでおれの階級が下手に低かったら突っ掛かってくる連中が居ても良いくらいに目立つのだ。

 

 それがわかっているからハマーンもおれに少佐なんて階級を渡したのだろうか。それにしても、ジオン時代の階級を渡すとは気の聞いた皮肉か嫌がらせに思える。

 

「おれから学ぶことなんてなにもないだろう」

 

 フル・フロンタルと戦った日のあとからこの銀髪人形少女はおれと四六時中行動を共にしようとする。さすがに一夏との訓練を見せる訳にはいかないから、その時はトレーニングメニューを言いつけて足止めしているが、律儀にそれをこなされるから下手なメニューを出せなくて、都合二人分を鍛えてしまう立場になってしまった。ハマーンには飽きられて手伝ってくれないから。

 

 しかし布団の中にまで、しかも全裸で入ってくるのはどうにかして欲しい。服を着せて寝かせても朝には脱いでいるし。幸せそうな顔で寝てるから毒気を抜かれて強くも言えないしで悪循環だ。似ている所為か、クロエに対する甘さが伝播しているとでもいうのか。

 

「いえ。私はあなたの持つ強さを学びたいだけです」

 

 そうは言うが、おれはそこまで強い人間じゃない。いつも見ていることしか出来ない弱い人間だ。

 

 ララァが死んだ時も、カミーユの魂が傷ついていくときも、シャアとアムロの最後の時も。

 

 いつも肝心な時になにも出来ない人間が強いものか。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 クラリッサ隊長に言って暇を貰った私は、しばらく少佐と行動を共にすることを日常としている。

 

 少佐の動き――重力という枷から解き放たれた宇宙を駆けるイメージをすることで、稼働率が落ちていたISも、少しずつだがまた動くようになってきた。とはいえ、まだ軽く動かす程度ではあるし、以前のような戦闘能力はない。

 

 だがそれがISの正しい動かし方ではないのかと最近思う。少佐の言葉を借りるならば、魂に重力を引かれているから、空を飛ぶイメージでISが満足に動くわけがないのだという。

 

「それが難しいのなら、水の中に浮くイメージでも良い。PICを使えば出来るはずだ」

 

 少佐の言葉は極めてテクニカルな助言だ。

 

 少佐が見せてくれた宇宙を知ってしまった私には、ISで空を飛ぶというイメージはしっくり来なくなってしまった。窮屈なのだ。息が張り詰めると言っても良い。

 

 空にはまだまだ先があるのに、態々空の下だけで飛ぶことはないのだから。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 最近ボーデヴィッヒ大尉は少佐殿にご執心の様だ。いや、それが悪いこととは思わない。作戦会議以外は殆ど部屋を出ることもしなかったボーデヴィッヒ大尉が、少佐のあとに続いて歩いている姿は微笑ましく思う。

 

 以前は私たちの隊長であったボーデヴィッヒ大尉。ISとの適合性を高める擬似ハイパーセンサー、ヴォーダン・オージェの適合に失敗してからはすっかり昔の面影はなくなってしまった。

 

 それを変えたのが、ドイツの魔女と名高く恐れられているハマーン・カーンの部下とは思えない温かい優しさを持ったユキ・アカリ少佐。

 

 宇宙世紀出身の男性と言うのだから、普通ならばふざけているのかと笑い飛ばすだろう。

 

 だが、ISパイロットでは取らない軌道、出来ない機動が只者ではないことを語らせる。

 

 アリーナで彼と飛んでいるボーデヴィッヒ大尉にも手応えがある様だ。

 

 少し素っ気ない様に少佐は見えるが、甲斐甲斐しくボーデヴィッヒ大尉の面倒を見ていてくれる。それに応えようと必死だから、彼女がまた飛べる日も近いと私は思う。

 

 身体は子ども、頭は大人の合法ショタっ子と一日中一緒に居られるボーデヴィッヒ大尉が羨ましい。しかも睡眠まで裸で添い寝なんて、なんて羨ましい!

 

 困った様子で状況を事細かに話に来る少佐に相談される身にもなって欲しい。あ、少佐、私は何時でもフリーですので、疲れた時には私に甘えに来ても良いんですよ?

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「ッ!?」

 

「どうかしましたか、少佐」

 

「い、いや。変なプレッシャーを感じただけだから気にしなくても良い」

 

 なんだ、今の身震いする悪寒は。このおれがそう感じるなんて相当なものだぞ。

 

 サイコフレームが増えた分、余計なものも感じるようになったか?

 

 今のおれはファンネル・コンテナをシュツルムブースターに換装し、脚部と肩にスラスターを増設したサザビーに乗っている。差し詰めサザビー・フルバーニアンと言ったところか。

 

 取り敢えず出来上がった強化パーツを取り付けた状態だが、重MSのサザビーが高機動型MSと見違う程の加速性能はある。ファンネルはオマケと考えているからこそ出来る思い切った改装である。

 

 ファンネルが無い分、手数が減るが、あのフル・フロンタルを相手にするならば、機動力は必要になる。

 

 サイコフレームが増えたことでより戦場を感じられる様になり、敵の攻撃に対する反射速度もサザビーやνガンダムを扱っていた時とは比べ物にならない。

 

 軽くボーデヴィッヒ大尉に相手して貰ったが、敏感すぎて恐いくらいだ。普通の人間には先ず乗り回せない機体になっているのがわかる。これでも完成したナイチンゲールの80%の機動性しかないのだから、完成した時はどんな化け物に仕上がるのかが楽しみであると同時に、フル・フロンタルを相手にする難しさというものを改めて痛感する。

 

 シャアと張り合える技量。そこにシナンジュの性能が合わされば、並のMSとパイロットでは止められないのだから。

 

 1対1で戦って、バナージの力がなければおれは負けていただろう。

 

 コアユニットの無いネオ・ジオングがユニコーンとバンシィと戦う最中に、こっちは量産型νガンダムでシナンジュと戦っていた。

 

 機動力では勝ち目が無いからファンネルで追い詰めて戦っていたが、これでナイチンゲールが形になれば同じ土俵で戦える。

 

 どちらが赤い彗星の名を継ぐに相応しいか、決着を着けるのもまた一興だろう。

 

 赤い彗星の名は、そう易々とくれてやる訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

to be continued…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。