ユキの目の前に聳える一機のMS。それは憎しみを越え戦友となった者と共に造り上げた機体だった。
「ν……ガンダム」
RXー93νガンダム。シャアが率いるネオ・ジオンとの戦いに備え、ユキとアムロが共同設計したニュータイプ専用のガンダムだ。
「おれを呼んだのはお前なのか?」
まさかと、逸る気持ちを抑えずにユキはνガンダムのコックピットに取りついた。
外部からハッチを開ければ見慣れたコックピットが姿を現す。アームレイカー式のコックピットは当時の最先端方式のコックピットだった。
コックピットは無人だったが、何か手掛かりはないかと機体にアクセスする。データベースも生きていた。しかしパイロットのパーソナルデータを遡って行っても、ユキが欲しい情報に辿り着く事が出来なかった。
「アムロ……」
機体を調べてわかった事は、このνガンダムは間違いなく自身とアムロが設計し、アナハイムで製造された機体だと言うことだ。
つまり自分と同じ様にこのνガンダムも虹の向こう側へと渡ってしまったということだ。
世界が違うのならいくら探しても見つからないわけだ。
「お前はこちら側に居ないのか……? アムロ」
かつては愛する人を殺されて恨んだこともあった。しかしその人が――ララァがアムロを赦しているのだから自分が恨み続けることも出来なかった。その当時はグリプス戦役も真っ只中で、あのアムロ・レイの力も必要だったからだ。
そしてロンド・ベルに誘われてからはアムロとは、シャアを止めるという共通目的があってもそれなりに付き合える仲にはなれたと思っている。少なくとも背中を預けて戦えるくらいには。
そんな戦友の機体がこんなところにあった。可能性は限りなくゼロに近い。あの時、地球に落下するアクシズでシャアとアムロの魂はララァが虹の向こう側へと連れていってしまった。
しかし、だが、もし、アムロが生きてこちら側にいるのならかならず生きているはずだ。アイツが――彼が――あの人が、ライバルを置いて死ぬような様を晒す筈がない。
「シャア……」
自分の憧れ、自分の夢、自分の指標。自分の生きる意味だった人。
シャアに盲信している相変わらずの自身に笑いが込み上げるが、悪くないと思っている辺り、やはり自分は束博士の想いを受け取れるような人間ではないということだ。
νガンダムのデータベースにアクセスしながら炉に火を入れる。修理が完璧な辺り、この小惑星に関わる組織は少なくとも量産型νガンダムを修理した博士と同等の技術力を持っているとなる。いや、袖付きが関わっているのなら世界が違えどもMSを修理するくらいは訳がないのかもしれないと思う辺りフル・フロンタルの危険性を改めて認識した様な気さえした。
「いずれにしろこの機体は頂いて行く」
元々自分が造った機体の上、νガンダムはロンド・ベルの所属機で自分はロンド・ベル第一艦隊旗艦ラー・カイラムのMS部隊の隊長だ。所有権を主張する理由にはなるはずだ。
キーボードを叩いてνガンダムの設定を自分に合わせていると奇妙な気配を感じた。
「なんだ……?」
ハッチを閉め、ハンガー脇のウェポンラックからビームライフルとバズーカ、シールドを装備する。さらにはフィン・ファンネルすらも完備する完璧な修理に舌を巻くが、今は有り難く使わせて貰うだけだ。
ビームサーベルを抜き、隔壁を切り裂く。通路はおあつらえ向きにMSが通れる広さがあった。
「面倒が起こる前に離脱する!」
バーニアに火を入れ、フットペダルを踏む。量産型νガンダムよりも乗りの良い加速。少しばかり羨ましく思ってしまった。かと言って量産型νガンダムが悪い機体というわけではない。3年も命を預けた相棒を無下にする気持ちはなくとも、ワンオフ機と量産型の違いを久しぶりに噛み締めただけだ。
νガンダムが宇宙に出た所で、センサーが警報を鳴らす。
「高熱源…!?」
しばらくMSには乗っていなかったが、17年間握り締めてきた操縦捍を無意識の内に動かし、ペダルの踏み込みもまた同様だった。
難なく回避したνガンダムを襲ったのはもはや戦場で見慣れたビーム攻撃だった。
「機動物体反応、この機動力と大きさはISか!」
νガンダムを向き直らせ、迎撃態勢を取る。
漆黒の宇宙で見る事は難しいが、サイコフレームが敵の居場所を教えてくれる。
さらには意志がある相手をニュータイプである自身が感じ取れない筈がない。
「速い……」
数は二機だが、片方のISは後続の3倍のスピードで此方に迫ってくる。しかし相手がフル・フロンタルではない事は既に確信していた。
ビームライフルを向け、エネルギーをチャージする。
アムロに出来て、自分に出来ない筈がない。超長距離狙撃。最近はISでのクロスレンジからミドルレンジの戦闘が多かったが、自分の得意分野は機動戦の他にも射撃戦、クロスレンジからロングレンジが自分の距離だ。そしてサイコフレームで増幅されたニュータイプの感応力と直感はオーバーロングレンジへの狙撃もこなす事が出来る。
「そこだ!」
引き金を引き、漆黒の宇宙を切り裂く閃光。それが向かう先に敵の姿がある。
「避けた? 中々やりそうだな」
しかし手応えはなかった。お返しとばかりにビームの閃光が此方に向かってくる。
「一機は長距離を砲撃出来るタイプか」
しかしたった二機で自分を止められる相手は早々居るわけがない。青春を戦争とMSに捧げて来たのは伊達じゃない。
先行の一機が有視界範囲に入る。その姿を確認して無意識にアームレイカーを握る手に力がこもる。
「赤い……ガンダム!?」
白い四肢に胸部と頭部が赤くカラーリングされたガンダムタイプ。しかもISはMS型と同じく全身装甲タイプであるためパイロットは何者なのかは直接問わなければならない。
赤いガンダムはまるで会話する気もないようにνガンダムへとビームマシンガンで攻撃してくる。
ISとMS、しかも大型になるU.C.0093年の最新鋭MSであるνガンダムであるが、その様な差は無意味だと言わんばかりにビームマシンガンから放たれるビームを回避する。
それが気に食わなかったのか、赤いガンダムの攻撃は熾烈になるが、それに当たってやれる様な腕はしていない。
「マシンが良くても、パイロットがその性能を引き出せなければ!」
反撃に頭部のバルカン砲を放つ。相手はIS、こちらはMSだ。ビームライフルやビームサーベルではパイロットごと殺してしまう可能性が大だ。
襲って来たことといい、ガンダムタイプのISといい、その所属を問わねばならない。
90mmバルカン砲はMSの装甲でさえ撃ち抜く威力のある弾丸だ。ISに向けて撃つのにも十分なはずだ。
「調整が甘いか。今なら直撃していたはずだ」
攻撃のタイミングは完璧だったが、赤いガンダムへ掠めた程度で直撃はしていなかった。それでも赤いガンダムはより激しくビームマシンガンを撃ち放ってくる。
「感情を表に出しすぎる。それでは」
サイコフレームが過敏に赤いガンダムのパイロットの意識を拾ってくれる。まるでヒステリックでも起こしたかのような激情を感じる。
「相手は女だったな。そういえば」
基本的にISは女にしか動かせない。姿がガンダムとあってそんなことすら忘れていたらしい。
赤いガンダムは腰のグレネードランチャーも撃ち放って、νガンダムの進路を制限しようとする。頭に血が上っていても戦闘のいろはは忘れていないらしい。
「それに援護も的確だ」
未だ姿が見えないロングレンジからのビーム攻撃を避け、ビームライフルでグレネードを撃ち落とす。ISに向けては撃てないが、敵の攻撃に対してなら関係はない。
νガンダムに乗っているからか、何時もより冷静に物事を考えて戦場の推移を把握できている。サザビーで赤い彗星を演じるなら、今の自分は白い流星とでもいうところか。
「そこっ!」
赤いガンダムの動きを見切り、シールドのミサイルを放つ。バルカンより強力だが、バズーカでないだけ有り難く思って欲しい。
赤いガンダムはビームマシンガンで迎撃するが、一発を撃ち落とした所で弾切れを起こし、別の一発のミサイルをその身に受け、大きく吹き飛ばされて行く。
「後方が動いたな」
赤いガンダムの救援に後方から砲撃で援護していた機体が接近してくる。牽制のビームを放ちつつ近づく敵にビームライフルを向ける。
「当たれ!」
狙いを定めるもなく、いつものようにトリガーを引く。ライフルから放たれたビームは漆黒の宇宙を切り裂き、まだ有視界範囲外で小さな爆発の光を生む。
それと同時に怒り猛った赤いガンダムが此方に向かって猛進してくるが、アポジモーターを噴かし、その場で横に側転する様に回避し、上下が入れ代わるが宇宙では上下の入れ換えなど些細なことでしかない。そのままシールドライフルを放ち、赤いガンダムのビームマシンガンを撃ち抜く。
怯んだ隙を突き、νガンダムを急接近させマニュピレーターで掴もうとした所に、横合いからビームが襲ってくる。
肩のキャノンを損壊させながらビームライフルを向けるのはまたガンダムであった。
白い四肢に胸部が青いガンダム。やはり見たことのないガンダムタイプだ。赤いガンダムよりもよりガンダムらしい色と二対のアンテナは、その姿がRXー78ー2ガンダムを彷彿させる。
「なに? 通信だと?」
どういうわけか、青いガンダムの方から光無線で周波数の指定がされてくる。
攻撃をしておいて今更通信要請となれば、いくらか可能性は考えられるが、先に攻撃したのはこちらだ。通信に応じるのが礼節だろう。
指定された周波数に合わせると通信が繋がる。ISでの通信機能で合わせているため、互いにウィンドウが現れる。とはいえ、あちらはガンダムフェイスでこちらはヘルメットを被った姿だろう。
「素晴らしい腕前ですわ。まさか私たちを鈍足なMSでこうも退けてしまうとは。あなたの噂は予々、フル・フロンタルから聞き及んでいますわ」
ガンダムフェイス越しに聞こえるのはやはり女性の声だ。フル・フロンタルを呼び捨てにするとはそれなりの地位に着いている可能性はあると見た。
「どうでしょうか? あなたのその腕前を我々に貸しては頂けませんか?」
まさかの勧誘とは面食らってしまった。攻撃を仕掛けてきたのはまさかこちらの実力を測るためだとでもいうのか。
「おれがお前たちに協力した所で、何かメリットはあるのか?」
「ええ。あなたと共に居る篠ノ之束博士の身柄の安全では不服でしょうか?」
「それは博士が世間から逃げ隠れを必要としない。という認識でいいのか?」
「必要と望むのなら、時間は掛かりますが果たしてみせましょう」
顔は伺えないが、その声には底知れぬ自身に溢れている。
世界中がその身を追う彼女を身を隠さずに匿える程の組織力があるということなのか。しかしガンダムタイプのISを作れるほどだ、甘くは見ない方が良いだろう。
しかしフル・フロンタルのやつ、余計な事まで喋る。
「お前たちは袖付きか?」
「…袖付き。それは我々の組織の一派閥。異端者の集まりでしかありませんわ」
「異端者?」
袖付きという言葉に、まるで小バカにするような笑みを携えながら相手は続けた。
「ニュータイプ等という空想の瞞しが本当に存在しているかの様に扱い、仮面を被る事でしか組織を率いる事が出来ない宗教団体の様な派閥なのですよ」
ニュータイプが瞞しか。確かに人によったら瞞しなのだろう。この世界の人間からすれば空想の存在でしかない。
だが、ニュータイプは確かに存在している。それが、その証が自分自身だ。
「我々は亡国企業。古来より世界の裏で生きてきた我々だからこそ、あなたや篠ノ之博士の手助けが出来ると思っているのだけれど?」
亡国企業――ハマーンから渡された資料にあった反体制組織のなかでも謎に包まれ全容の見えない危険な組織だという。最も古くは第二次世界大戦の頃ら世界の裏で死の商人として暗躍していた組織だという事だ。
さて、そんな相手からの魅力的な提案だが。正直これを受けるつもりはない。
博士も自分の腰は自分で据えるべき場所を見つけるだろう。それに今の自分はドイツ軍に席を置いている。
「魅力的な提案だが、悪いが先約が居るからな」
「そう。それは残念だった、わ!」
不意打ちでビームライフルが放たれるが、それを予めサイコフレームで感じていた身体は勝手に回避行動に移っていた。
「それとひとつ忠告しておく」
ニュータイプを瞞しだというのなら見せてやろう。
背中からフィン・ファンネルを二基外す。機体のサイコフレームが脳波を受信して蒼く光を放ち始める。
「ニュータイプは瞞しなどではない。この宇宙に確かに存在している。行け、フィン・ファンネル!」
切り離したフィン・ファンネルは各々意思を受けて別々の軌道を描いて飛び出す。
「ビット兵器!? くっ」
「そこだ!」
「なんですって!?」
フィン・ファンネルで牽制、こちらがファンネルを使えるとは思わなかったのだろう。青いガンダムに生まれた僅かな隙を突き、フィン・ファンネルが青いガンダムの四方八方からビームを放ち動きを止める。
「っ、ライフルが!?」
「戦闘能力は奪った。これ以上の戦闘行為は無意味だ」
パイロットを傷つけずに武器だけを破壊する。これがMS同士の戦闘なら容易くとも、ISが相手となるとかなりの神経を使わされる。
だが相手がISだということを失念していた。
「残念ね。武器はまだあるのよ?」
青いガンダムの各部に光が集まると、新たな装備に換装し、両肩からバルカンとビームを放ちながら急接近してくる。
拡張領域に武器を格納できるISだからこそ、戦場でも装備の換装に手間が掛からないのは魅力的だ。実際やられるとこの上なく厄介だが。
「フィン・ファンネル!」
フィン・ファンネルを呼び戻し、フォーメーションを組ませてIフィールド・バリアを形成する。展開したIフィールドはフィン・ファンネルから出力するメガ粒子がフィールドの防御をより強固にし、ビームと実体物もある程度ならば防ぐ事を可能としている。
機体の守りを確認し、コックピットを開ける。
「ユニコーーン!!」
ISの相手にMSでは神経を使うならば、同じ土俵に立てば良いだけの話だ。
全身を白亜の装甲が包み込み、コックピットの縁を蹴って一瞬フィン・ファンネルの展開するIフィールド・バリアを解除。なおも向かってくる青いガンダムの攻撃をユニコーンのシールドで防ぎ、Iフィールド・バリアを再展開させる。これでνガンダムの被害を気にしないで戦える。
「パイロットが乗っていないのに機体が動くだと!? バカな!」
「ニュータイプであれば造作もない事だ」
フォウ・ムラサメやプルツーがサイコミュを通じて無人のサイコガンダムやキュベレイMk-Ⅱを呼び寄せたり、バナージの呼び声にユニコーンが応える様に。サイコフレームを通じてフィン・ファンネルに命令を送っているに過ぎない。
赤いガンダムがビームサーベルを抜き、凄まじい速度で肉薄してくる。その動きに何処か見覚えがあるのを感じつつ、ビームサーベルを抜き、赤いガンダムと交差する。
「な、に…!?」
「確かに踏み込みは凄まじいが」
それこそ並大抵のパイロットならば反応することも難しい速度だが。機動性に優れていても、攻撃の瞬間に速度を緩めたらそれは脅威的とは言えないものになっていく。
「シャアやフル・フロンタルはさらに上を行くぞ」
同じ赤い機体だからというわけではないが、あの憧れた背中と、それを模した器の攻めはこの程度ではなかった。もっと流れるように苛烈でありながら鋭い一閃を駆け抜けながら放ってくるのだ。
「ぐっあああああ!!」
赤いガンダムのビームサーベルの根本を切り裂き、そのがら空きの機体に蹴りを入れる。
蹴り飛ばした赤いガンダムと入れ違いで高機動パックに換装した青いガンダムが迫ってくる。
それをビームガトリングで迎撃するが、青いガンダムは減速もせず、機体をバレルロールさせながらビームガトリングの攻撃を避け、ビームサーベルを抜き放ちながら肩のビームキャノンによる牽制を加えてくる。
「ちっ、アムロの様な避け方をしてくれて!」
敵の攻撃に怯まずに避けながら駆け抜ける。それは戦場慣れしたエースパイロットでなければ出来ない事だ。
「そこだ!」
ビームマシンガンからビームマグナムに切り替え、青いガンダムに狙いを澄まして引き金を引く。縮退したメガ粒子の重低音と、薬莢の様にビームマグナムから吐き出されるEパックの機械音を横耳に、閃光の先を見据える。
「避けた!?」
自分の狙い澄ました本命打を避けて見せた青いガンダムの脅威度を引き上げる。自惚れでもなく、当たると確信した攻撃を避けられた時が初めて相手が並大抵のパイロットではないとする判断基準になっている。
「てんめぇぇぇええ!!」
「ちぃ、邪気が来たか!」
ビームサーベルを手に突っ込んでくる赤いガンダム。それを的確に援護する青いガンダム。一対一ならそれほどまで苦戦する事はないと思っていたユキだったが、赤いガンダムはともかく青いガンダムが手強い。そして青いガンダムの相手をしていれば空かさず赤いガンダムが襲い掛かってくる。
赤いガンダムの斬撃を受け止めれば青いガンダムの射撃。それを避けた先には再び赤いガンダムの接近戦。
それを退け、青いガンダムとの射撃戦に興じれば赤いガンダムの鋭い一閃が襲い来る。
「っ、何故だ。そんな筈があるわけがない!」
「墜ちろぉぉぉっ」
「ぐっ」
赤いガンダムの放った蹴りをシールドで受け止める。体勢を崩したところに青いガンダムが肩に担いだビームバズーカを放った。
予備のシールドを展開し、シールドのIフィールドがビーム攻撃を防ぐ。
戦い始め数分。2機のガンダムの動きに目が慣れ始めた頃。奇妙な事に気づいた。
ビームガトリングの弾幕を回避し、そのまま接近して来る青いガンダムの動きがアムロに。
ビームサーベルを手に肉迫する赤いガンダムの動きがシャアと被る。
攻撃の方法やタイミングというわけではない。それこそそれはフル・フロンタルの方がシャアとそっくりなまでの動きをしてくる。
2機のガンダムの動き、軌道が被る。
こちらの攻撃を先読みするかの様な挙動で避ける青いガンダムの動きはアムロの動きに重なる。
退けられてから復帰し、此方へ肉迫する赤いガンダムの機動がシャアの動きに重なる。
本命打を外す時、青いガンダムはアムロと同じ動きで回避する。凄まじい程の一閃はシャアと同じ動きで迫ってくる。
「どういう機体だ! 何故この動きが出来る!!」
ビームサーベルで赤いガンダムと鍔競り合い、横から撃たれたビームバズーカにIフィールドの展開が間に合わなかったシールドを弾き飛ばされる。
赤いガンダムのビームサーベルによる猛攻を避け、バルカンを撃つが、赤いガンダムは最小限の動きで回避した。
「ハッ、ニュータイプだかなんだか知らないが、所詮はこの程度なんだろ?」
「なに!?」
青いガンダムから送られた通信周波数で別の女の荒々しい声が舞い込んで来る。
「答えろ! 何故シャアとアムロの動きが出来る!」
「ああ゛っ!? 知るかよそんなこと! このISにでも訊いてみな!!」
「ちぃっ」
こちらがあちらの動きを見慣れて来たのなら、向こうも同じことが言える。長期戦に成る程不利を知れば速攻をかける必要がある。
「ニュータイプという瞞しを、ニュータイプの戦闘データを基に作られたコンピューターを搭載したガンダムが滅ぼす。例えニュータイプが相手でなくても威力を発揮するこの擬似人格コンピューター。素晴らしいとは思わない?」
「まさか、シャアとアムロの戦闘データを持っているのか!?」
青いガンダムのパイロットから告げられた言葉は衝撃を受けるのには充分過ぎた。自分は間接的にシャアとアムロの二人を相手していたと言われた様なもので。
次に湧いたのは怒りだった。
「っ、貴様らごときがああああああ!!!!」
増大したユキのサイコミュ波を受けて、ユニコーンが姿を変える。
しかし露出したフレームの輝きは生命の蒼ではなく、殺戮の赤だった。
なんとしてでもこの2機のガンダムは破壊しなければならない。それは使命感としてユキを締め上げる。
シャアとアムロの戦闘データが戦い使われる。そんな事を容認出来る筈がなかった。
弾き飛ばされたシールドのサイコフレームもユキのサイコミュ波を受けて変形し、自律行動を取る。予備のシールドも合わせて二枚のシールドがユニコーンガンダムの周囲に浮かぶ。
「面白れぇ。始めようじゃねぇか、ガンダム同士の戦いってやつをなァ!!」
NTーDを発動させたユニコーンへ、ビームサーベルで斬りかかる赤いガンダム。
「っ、この程度は!」
その斬撃をビームサーベルで受け止めながら、背中から左手でビームサーベルを抜き放ち反撃を加える。しかしそれに邪魔が入るのはわかっている。故にファンネルと化したシールドで青いガンダムの攻撃を受け止め、横槍を入れさせない様にする。
しかし援護を貰えない赤いガンダムのパイロットも弱いわけでもなく、反撃に気づきいち速く離脱しながら腰のグレネードランチャーを放ってくる。
それをビームサーベルで切り裂き、爆炎を背に赤いガンダムへと猛追する。
「ぐ、コイツ!」
「はぁぁあああ!!」
此方を追い払おうと降り下ろされる赤いガンダムのビームサーベルを両手に握るビームサーベルで受け止める。そして受け止めたビームサーベルを頭上へと弾き飛ばし、両手に握るビームサーベルを捨て、赤いガンダムのビームサーベルを手に握り急降下。
そして降り下ろしたビームサーベルが遂に赤いガンダムの右腕を切り飛ばした。
「あっ、あがああああああああ!!!!」
ガンダムと言えどMSではなく相手はISなのだ。機体を傷つければパイロットにも被害は出る。
切り裂かれた腕を押さえながら悲痛に叫ぶ赤いガンダムのパイロットの声。
「これで!」
そしてビームマグナムを向け、止めを刺そうと引き金を引く瞬間、シールドのサイコミュの手応えが消え、生じた爆発に気をとられる。
「なんだ!?」
Iフィールドを搭載し堅牢な防御力を持つユニコーンのシールドを破壊する。その正体は肩や脚に放熱板を携え、両脇にキャノンを抱える青いガンダムだった。
「っ、数が増える!?」
高速で移動する青いガンダム。そしてセンサーに増える反応。
「これは、質量を持った残像だと!?」
青いガンダムの反応が増えて照準が定まらない。
高速で移動する青いガンダムは両脇のキャノンからビームを放ちながら迫ってくる。
Iフィールドを搭載したシールドを破壊しただろう兵装に警戒を強め、全弾回避を選択。
一発でもくらえば大破どころか致命傷を負いかねない攻撃を回避し、ビームマグナムの銃口を向けるが、機械が宛にならない。
射撃に集中しようにもこの猛攻の前にはそれも難しく、牽制にビームマグナムを撃つものの、ビームが到達するところは既に残像だった。
だが機動にアムロの動きが含まれているのならば、それは却って手強くとも推しやすい動きをしてくれるという事だった。
アムロならこう避ける。
却ってそういう予測も立てられるということだ。
「残像が質量を持っていても、その残像の先を撃てば」
ビームマグナムの引き金を引き、撃ち出された閃光の先で青いガンダムは回避する。しかし一発だけでは終わらない。
立て続けにビームマグナムを牽制で放ちながら青いガンダムに接近する。
掠めただけでも機体を大破させる大出力のビーム。それを連続で回避し続ければ動きが大雑把になっていく。如何に機体やコンピューターの力が優れていようとも、生身の人間は機械に振り回されてしまうものだ。
装填された6発分のEパックを使いきったビームマグナムに新たにEパックマガジンを装填し、再び引き金を引く。
「くっ、この程度!」
青いガンダムのパイロットも少なくない場数を踏んでいる事が感じられる。少なくとも射撃の腕は自前のはず。正確な射撃は主兵装がビーム兵器でなければここまでダメージを受けずには済ませられなかっただろう。
「いいや。当たって貰うさ」
左肩にハイパー・バズーカを担ぎ、バレルロールで青いガンダムのビーム攻撃を避けつつバズーカを撃つ。
直進した弾頭が弾け、散弾をぶち撒ける。
「散弾!?」
遂に回避が間に合わなかった青いガンダムは、左腕のユニットからビーム状の光の盾を展開して散弾の直撃を避ける。
「これでえええ!!」
散弾を防御する為にビームシールドを展開した青いガンダム。しかしそれはユキにとって斬り込む隙を作る為の布石だった。
バズーカを放り捨てながら動きを止めた青いガンダムへ向けて左手で背中のビームサーベルを抜き放ち突き刺す。
「っ、ああああ!!」
ビームの刃はビームシールド発生装置ごと青いガンダムの左腕を貫いた。更に追撃にビームマグナムを手放しながら展開したビームトンファーで切り上げ、青いガンダムの左腕が宙を舞う。
赤いガンダムのパイロットに比べて悲鳴もそこまでではなく、青いガンダムの切り裂かれた左腕からは機械の部品のみが見え、火花を散らしていた。
体勢を立て直した青いガンダムは一直線に向かうと、機体を掴んで離脱して行く。追撃したいのは山々だったが、オリジナルのνガンダムを置いていくわけにもいかない。
「っ!? なんだ!!」
そして追撃をしなかった理由のもうひとつ。
νガンダムを見つけた小惑星基地の自爆による崩壊。岩塊によって出鼻を挫かれてしまったからだ。
νガンダムのコックピットに乗り込み、静止衛星軌道上にてスペースデブリとなった岩塊の中。地球からの迎えを待ちつつ取り逃がした2機のガンダムタイプのISの事を思い浮かべていた。
あの二人の動きを再現するシステムがある。それを思うだけで薄ら寒いものを感じた。
ISのパイロットの基準が未だにわかっていないユキであっても、あの二人の動きに着いていけるパイロットなど世界でどれ程居るのだろうか。
もしあんなものが量産でもされた日には世界のパワーバランスが崩れてしまうだろう。
「必ず次は仕留めてみせる」
地球から上がってくるシャトルを捉えつつ、ユキはνガンダムのコックピットで誓うのだった。
to be continued…