pipipi,pipipi,pipipi
「ぅ~ん………」
朝だ………。いつも通り、登校時間に合わせる様にセットした目覚ましを止める。
でもなんだろ……いつも以上に眠い……。あと一時間は寝たい気分だ。
けど、今日も学校はある。グダグダ言ってられない。
「…………………………あれ?」
今気づいたけど………僕、いつの間にベットに入ったっけ?
確か昨日はマッツーの家に行って、終わったからイッセーと別れて帰る途中で………
? 帰る途中で………なんだっけ?
記憶が曖昧になっている。いつ寝たのかどころか、いつ帰ってきたのかすら思い出せない。
「う~ん………あ」
気がつけば、あまり時間も無い。
ちょっと急いで身支度を始める。あまり大きくない制服を着て、リビングに行く。
「おはよ~………って、誰もいないか」
リビングで朝の挨拶をするけど、それに答える人はいない。
今は両親が出張中。一週間したら帰ってくるって言ったけど、少しの間は一人暮らし。
時間がないから、今日の朝食は菓子パン三つ。
メロンパン、焼きそばパン、アップルパイを取ると、袋を開けて食べ始め―――
ピンポーン
―――ようとしたらインターホンが鳴った。
「………誰だろ?」
一旦皿において、玄関近くのモニターへ向かう。
映っていたのは黒髪の女の人に、白髪の女の子。
二人とも僕の通う学園の制服を着て、玄関先に立っていた。
でも僕は、こんな二人を知らない。向こうが僕のことを―――嫌われてる方で―――知っているかもしれないけど、僕自身は初対面だ。
「えと………どちら様……ですか?」
『あ、おはようございます。根島君』
「え? えと……おはよう……ございます……」
黒髪の人が挨拶してくる。そして画面越しだというのに頭を下げてしまった。
………見られてないけど恥ずかしい。
「あの………もう一度言いますけど……どちら様……ですか?」
挨拶されたけど、名前は聞いていない。僕は戸惑いながらも、もう一回尋ねる。
『申し遅れました。私、三年の姫島朱乃と申します。こちらは、一年生の塔城小猫ちゃんです』
『………どうも』
ペコリ、と軽くお辞儀する黒髪の人……姫島さんと、白髪の子……塔城さん。
名乗ってくれたけど、その名にも覚えは無い。
「えと……ちょっと……待ってて……ください……。……すぐに……支度……するので……」
『わかりました』
僕は会話を切って、すぐに開いてるパンだけ食べる。
残りは昼ご飯の分と一緒にかばんに入れた。
かばんを持って、家を出る。誰も家に残らないから鍵はちゃんと閉めとく。
「あ……お待たせ……しました」
玄関先にいる二人に頭を下げて、向かっていく。
「いえいえ。では、参りましょうか」
「えと………あ………はい」
「………」
参りますと言われて一瞬わからなかったけど、学校のことだとわかって歩き出す。
………あ。一応、自己紹介しとこうかな………。さっきやったけど、やっぱりちゃんとやるべきだよね?
「えと……改めまして………二年の根島響……です……友達からは……ヒビキと呼ばれて……ます……」
「あらあら。では、よろしくお願いしますねヒビキ君」
「………」
……ぅぅ、そういえば女の人に名前で呼ばれるの………初めてかも……。
姫島先輩はニコニコ顔で、塔城さんは無表情で、僕は………少しだけ顔が熱いと感じながら自己紹介をする。
なんか、いつもより間が広がってる気がするし……。
だって、美人さんと美少女ですもん! いつも思うけど、なんで家の学校って綺麗な人とか、可愛い人がこうも多いのかな!?
う~ん、僕は女の子と一緒になることが少ないからね………。女の子に対しての免疫落ちたのかな? 女の子多い学校で……。
あ、そんなことより
「それで………なんで僕の家に………?」
とりあえずこれが不思議だった。
やっぱり面と向かって会ったけど、僕はこの二人を知らない。会ったら絶対に印象に残ってるはずだもん………。
僕が言い出すと、二人は目を見開く。
塔城さんは判り難いけど………心拍数に乱れがあったからね………。たぶん、驚いてるのかな?
「昨夜のこと……覚えていらっしゃいませんか?」
「……………へ?」
昨夜って………
「えと………いつの間にかベットの上だったので………わかりません………」
僕は正直に答えた。
すると二人がお互いの顔を向き合うと、また僕に視線を向ける。
ぅぅ、やっぱり視線とか受けると、嫌だな。いじめを思い出しそうで……。
「………なにか……あるんですか?」
記憶が曖昧なのは今朝もわかってたけど………でも、なんでなんだろ?
自分のことなのに………思い出せない。
「あらあら。これは………」
「………朱乃先輩、部長に相談しましょうか?」
僕を余所に、二人は何やら話し始める。
勿論、耳栓をしていない僕には嫌でも聞こえてくる。距離は1メートルもないんだし……。
部長に相談って………何の話だろ? 会話から来る単語からはうまく状況がつかめない。
「ヒビキ君、今日の放課後に教室で待っていてくれますか? 兵藤君にも伝えてあるので」
すると姫島先輩はそんなこと言いだす。
兵藤君って、イッセーのことかな? イッセー以外にあんま聞かないし………。
「え~っと………まあ、はい……わかりました………」
そんなこんなで、正門に到着。なんか、いつもより通学時間が長く感じた。
ボーっとしてたら着いてたってのが当たり前だったからな………。
で、さっきから周りから受けてる視線…………ぅぅ、やっぱり嫌だ………。
しかも―――
≪お、おい、こんどはあいつだぞ!≫
≪しかも今度は姫島先輩と塔城さんだぞ!?≫
≪ていうか、ありえねぇ!≫
≪アイツって学園の暗い奴ランキング一位だったよな!?≫
≪いや、気持ち悪い奴ランキングでも四位だったぞ!≫
≪そ、そんなありえないわ!≫
≪朱乃お姉様、なんであんなやつと!≫
≪塔城さんがあんな根暗な奴と!≫
………ぅぅぅ、泣いていいですか? 泣いていいですよね!?
こんな聞きたくもないことが聞こえちゃうし、というか僕そんな物で上位取ってるんですか!? 始めて聞きましたよ!
はぁ、早く教室に着いてほし―――ん?
≪お前は我々と同じモテない同盟の同志だったはずだ!≫
≪一誠、とりあえず理由を聞こうか。俺と別れてから何があった!!≫
≪……松田、元浜……おまえら、生乳を見たことあるか?≫
……………変な会話も聞こえてきたよ………というかイッセー、君に一体何があった?
◇ ◇ ◇
すごく騒がしかった朝からしばらくして……放課後です。
「やあ。どうも」
……僕とイッセーの前には金髪の男子が居た。
イッセーは半眼で訪ねてきた男子を見ている。それは仕方ない。だって相手がイケメンだもん……。
彼この学校一のイケメン、二年C組所属の木場祐斗君です。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、性格完璧と言われている―――みたいです。
ホントかどうか知らないので。あ、最初のは本当だとわかっています。
同じ学年なので顔を知っているぐらいですけど。
それと他のことは女の子たちが喋っているのを聞いてしまいまして………。
爽やかスマイルで話しかけてくる彼。
すると教室どころか、廊下からも黄色い歓声が沸いてくる。
うん、人気者だね………。
イッセーは女の子たちの声で「うぜぇ」って思ってる顔になってるけど。
「で、何の用ですかねぇ」
面白くなさそうに、むしろ嫌味っぽくイッセーは返す。
イッセー……いくらなんでも失礼だよその態度は。
でも木場君は表情を崩さずに続けてくる。
「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」
「っ!!」
「??」
イッセーの表情と心拍数に変化が起きる。
これは驚いてるよね……でも何に?
イッセーと……グレモリー先輩に何か関係があるのかな?
「あ、それと根島君もね」
―――へ!?
今度は僕が驚いた。だってグレモリー先輩と何も関係ないし、会話したことすらないんだもん。
見たことはあるけどさ……。
でも使い? え、木場君て執事か何かやってるの?
「え、ヒビキも!?」
「君は姫島朱乃先輩から聞いているよね?」
―――あ。そういえば。
今朝イッセーと待っててって言われたね……。
こういうことだったのかな?
「………はい………それで……なんでしょう……?」
「僕についてきてほしい。二人ともね」
「……まあ……了解です」
「ハァ………わかったよ」
僕らは了承して立ち上がり、木場君の後ろをついていく。
イヤー!!
………女の子たちの悲鳴が教室に響き渡る。
と、突然やられたから……み、耳が……。
「そんな、木場君とエロ兵藤と根島君が一緒に歩くなんて!」
「汚れてしまうわ、木場君!」
「木場君×兵藤なんて………あ、でも木場君×根島君なら!」
「いえ、ここは兵藤×根島君よ! そこへ木場君が根島君を……!!」
………素で聞こえてますよ皆さん。でも何の話なんだろ………?
イッセーと木場君はなんかわかってそうだけど………聞かない方がいいのかな?
僕はこの後二人に聞いてみたら、やっぱり聞くべきでなかったと後悔した………。
さて、僕らが到着したのは校舎の裏手。
そこには旧校舎と呼ばれる、現在使用されていない建物がありました。
古そうな建物ですけど、取り壊しの予定とかも耳にはせず、学園七不思議のひとつ……だっけ?
そんな噂を前に耳にした……と思う。
「ここに部長がいるんだよ」
木場君がそう告げてくる。
部長―――今朝も姫島先輩が話してたけど……誰だろ?
名前までは話してなかったから少し気になる。
中に案内されて、階段を上がって、奥へと歩を進めていく。
そのうちに、木場君がとある教室? らしき扉の前で止まった。
戸にかけられたプレートを見ると……
『オカルト研究部』
「オカルト研究部!?」
イッセーの声が耳にくる。ちょ、近いんだからやめてほしいよ……。
でもこれは確かに変。というか、オカルト研究部なんて今時あったんだ。
「部長、二人を連れてきました」
僕らが首を傾けていると、それにお構いなく木場君が確認を取る。中からは「ええ、入って頂戴」とわずかながら記憶にある声が聞こえてくる。
たぶん、グレモリー先輩だ。
木場君に続いて僕とイッセーは室内に入ると、中の様子に驚く。
だって……室内、至る所に訳わかんない文字があって、中央には謎の円陣。
それらが教室の大半を占めて………ハッキリ言って、不気味。
………あ。
いくつかあるソファーの一つ。そこには今朝知り合った女の子……一緒に登校した塔城さんがいた。
今は無表情で羊羹食べてる。
「こちら、兵藤一誠君と……根島響君は知ってるよね?」
木場君が紹介してくれる。うん、僕も彼女とは会ってるから覚えてくれてる………はず。
塔城さんは今朝と同じようにペコリと頭を下げてくれた。
「ど、どうも」
イッセーも頭を下げる。それを確認したら、羊羹を食べるのを再開する。
………今朝もそうだったけど、この子無口なんだね。
人のこと言えないけど……。
シャー
………さっきから水が流れる音がしてたけど………シャワーが部室にありました。
なぜに部室にシャワー? と考えて見たけれど、すぐに視線を逸らす。
だって………女の人の………肢体が見えますから………カーテンで影が出来てますから!!
キュッ
そして水を止める音。
「部長、これを」
………あ、聞き覚えある声。
というより、今朝聞いたばっかりだし、塔城さんがいるからそうだよね……。
「ありがとう、朱乃」
はい決定。姫島先輩ですね。名前も一致したので。
聞こえてくる衣擦れの音からして、着替えてると思う……。
「……いやらしい顔」
ボソリと塔城さんが呟く。
え! 僕そんな顔してた!? ………あ、そういえばイッセーがいたんだ。
僕は少し望みを込めて確認すると……
うん、僕から見てもいつも通り、いやらしい顔のイッセーが居た。
ジャー
カーテンが開く。そこにいたのは制服を着込んだ紅い髪の先輩―――グレモリー先輩だった。
濡れたままの髪がすごく艶っぽい。
「ごめんなさい。昨夜、イッセーの家にお泊まりして、シャワーを浴びてなかったから」
………なぜ?
いや別に、シャワーを浴びることは不思議でもない。
でも……イッセーの家にお泊り?
嘘を言ってるわけでもなさそうだし……イッセーの顔も変態化してきてるから……これはホントかな?
勝手に思考しているうちに、僕らの前に黒髪の女性―――姫島先輩が来ていた。
今朝と同じニコニコスマイルで。
「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、お見知りおきを」
僕の時と同じ、ニコニコ顔で丁寧なあいさつ。イッセーに対してなんだと思う。
「ひょ、兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」
そして僕と同じように緊張してうまく挨拶できていないイッセー。
それを見て「うん」とリアス先輩は確認したかのように頷く。
「さあ、これで全員揃ったわね。兵藤一誠君、根島響君!」
「は、はい」
「………はい」
「私達、オカルト研究部はあなた達二人を歓迎するわ」
「え、ああ、はい」
「……………はぁ」
「悪魔としてね」
「………………………………………………………………………………はへ?」
僕はその言葉で理解が出来なかった。
何かが起こりそうな気がしますね………
今日は家庭事情があったため、遅くなってしまいました。
遅れてすいません。