Blood&Guilty   作:メラニン

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と、取り敢えず、今日の連投はここまでにします・・・


次回は少し先です。(正直なところ、突貫で出来たのがここまでなので・・・)


では、どうぞ!


戦王の使者
戦王の使者編I


 

絃神島は常夏の島である。東京都の遥か南洋上に浮かぶため、気温だけではなく、周囲が海で囲まれている事から、湿度も1年を通して高く、慣れていたとしてもコレを不快に思う人物が殆どだろう。

 

 

そんな絃神島の港には周囲の景観とは不釣り合いな船が停泊していた。一言で言えば豪華客船である。いわゆるメガヨットと呼ばれるそれは、内装もそれらしく飾られており、甲板には豪奢な椅子が置かれている。そこに白いスーツに身を包んだ金髪碧眼の1人の青年が、グラスに注がれたカシス酒を片手で弄びながら洋上に浮いている月を見上げていた。彼こそ、この船――『オシアナス・グレイヴ』のオーナーである人物だ。彼はこの気候に大して汗を掻く事もなく、涼しげな表情を浮かべていた。

 

 

青年の名はアルデアル公ディミトリエ・ヴァトラー。第一真祖の支配する『戦王領域』の貴族である。そして、彼に背後から近付く人物がいた。その人物にヴァトラーは振り向きもせず、言葉を掛ける。

 

 

「やァ。僕の船へようこそ。大して歓迎もしないけどサ」

 

 

「………日本政府からの回答をお持ちしました、閣下。こちらを」

 

 

ヴァトラーの背後から現れた人物は封筒を渡すために前へ出ると、月明かりでその姿が照らされる。スラリとした長身に、整った顔立ちの美しい少女だ。髪はロングヘアで、後ろでポニーテールでまとめており、関西の方にある名門女子校の制服を着用している。ヴァトラーは彼女から封筒を受け取ると、中に入っている書類を確認した。

 

 

「………ふゥ〜〜ん、なるほど。『戦王領域』からの外交特使か。まァ、妥当なところかな。断られても勝手に上陸するつもりだったけどサ」

 

 

「はい。ただし、日本政府からの条件を呑んでいただければ、です」

 

 

「へぇ、その条件とは?」

 

 

「日本政府が派遣した者を帯同し、その監視下に入っていただきます。また、その際監視者の勧告には従っていただくのが条件です」

 

 

「つまりはお目付役か。で、誰だい?その監視役というのは?」

 

 

「僭越ながら、閣下の監視役は私が務めさせていただきます」

 

 

「ハハ!君みたいな美しい子を監視役に寄越すとは、日本政府も中々粋な計らいをするじゃないカ!まぁ、可愛い男の子だったらもっと良かったんだけどね」

 

 

ヴァトラーのフザけた調子に少女はピクリと眉根を動かす。

 

 

「………恐れながら、私は獅子王機関から舞威姫(まいひめ)の称号を名乗る事を許された攻魔師です。六式重装降魔弓(デア・フライシュッツ)の装備も許可されていますので、必要に応じて閣下の抹殺も許可されている事をお忘れなきように」

 

 

「ハハハ!いいネ!いいヨ、君!それくらい気骨のある子でないと側に居ても退屈なだけだ!……さて、君の名を聞いておこうか」

 

 

煌坂紗矢華(きらさか さやか)と申します」

 

 

「そうか。では、僕の事はディマとでも、ヴァトラーとでも読んでくれたまえ。閣下じゃ堅苦しいからネ」

 

 

「………では、アルデアル公と」

 

 

ヴァトラーは、いい性格してるね、などとゴチると、視線を遥か遠方の倉庫街へと向ける。吸血鬼の視力を持ってしても、数キロ離れた様子は完璧には視認できない。では、なぜヴァトラーは其方へと視線を向けたのか?それは、彼が生粋の戦闘狂だからなのかもしれない。遠方で起こっている戦闘の匂いを嗅ぎつけたのだろう。

 

 

「アルデアル公?」

 

 

「ふふ、流石は魔族特区。ここは様々な力が混在しているようだ。…………そう言えば、君たちが匿っている世界最強の吸血鬼はどうしているのかなァ?」

 

 

 

ヴァトラーはニヤリと口角を吊り上げる。その様子に紗矢華は警戒するが、それをなるべく悟らせない様に言葉を返す。

 

 

 

「………何のことでしょう?」

 

 

紗矢華の言葉にヴァトラーはその瞳を揺らめく陽炎の様に赤く染める。

 

 

「今さら隠さなくてもイイじゃないか。それに僕が、愛しい我が親愛なる第四真祖の事を知らないとでも?」

 

 

「………敢えて、第四真祖の存在は否定はしません」

 

 

「なるほど。ぜひとも、会いたいものだ。それに、楽しみも増えたしネ」

 

 

「楽しみ、ですか?」

 

 

「ああ。君たちが匿っているもう一人の存在の方サ」

 

 

ヴァトラーは振り向きつつ紗矢華の表情を確認するが、何も変化は無かった。それを見てヴァトラーは肩を竦める。

 

 

「やれやれ、お堅いなぁ、君は。ま、とにかく『ジョーカー』とまで呼ばれる存在に興味があるのさ。ジョーカーとは切り札になるカードだ。だが、一体何に対しての切り札になるのか、興味をそそるじゃ無いカ!」

 

 

「………私如きでは、アルデアル公のお考えには及びもつきません」

 

 

「はー……本当に君は堅いなァ。まぁいいサ。どちらにせよ、いずれ会う事になりそうだし」

 

 

そこまで言うと、ヴァトラーは椅子から立ち上がり、遥か遠方の倉庫街を見る。様子を視認できる訳がないが、戦いの空気を愉しむ様にヴァトラーは目を細める。

 

 

「ふふふ、ジョーカーとは2枚存在するものだ。一体もう1枚は何処にあるのやら……」

 

 

洋上に浮かんだ船の上でヴァトラーの声が静かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絃神島のアイランド・サウスに存在する暁家のマンションの一室。リビングにはこの家の住人ではない少年が1人、この家に住む少女から出されたコーヒーを飲んでいた。眠たげな目に、窓から刺さる朝日は眩しく、段々とだが意識をハッキリと覚醒させていく。だが次の瞬間、彼の意識は一気に醒める事になる。

 

 

「こ、古城君!?何やってんのーーーーーー!!!」

 

 

突如響くこの家の住人の悲鳴に一瞬ビクッと反応し、一気に意識が覚醒した。そして、少ししてからゴンッ、という鈍い音が聞こえ、さらに扉が乱暴に閉められる音がした。暫くすると、フラフラと鼻を押さえた色素の薄い髪色の少年がリビングへと出てきた。

 

 

「おはよう、古城。…………また随分とハデにやられたね。はい、ティッシュ」

 

 

「さ、さんきゅー、桜満」

 

 

古城は集からティッシュを受け取ると丸めて鼻に詰めていく。

 

 

「つつ………姫柊のやつ、多分加減なしで蹴ったな」

 

 

「ま、仕方ないんじゃない?着替えを覗かれたら」

 

 

「の、覗いた訳じゃねえよっ!………ってか、何で桜満がウチに居るんだ?」

 

 

「昨日、凪沙さんから頼まれてたからね」

 

 

「頼まれてたって、何をだ?」

 

 

「衣装の感想」

 

 

「衣装の感想?ん?」

 

 

古城は分からないといった様子でオウム返しで集に聞き返す。集はおそらく古城が忘れていたのだろうと当たりを付けて、教えておく。

 

 

「そろそろ球技大会があるでしょ?それの応援に使うチア服のだって。古城には昨日言ってあるって凪沙さんが言ってたよ?」

 

 

「え、あーー………寝る前にそんな事聞いたような……」

 

 

「はぁ………まぁ、蹴りで済んで良かったんじゃない?もし、雪霞狼で突かれでもしてたら……」

 

 

「お、おい、怖え事言うなよ……」

 

 

古城は雪菜と2人きりの時ならば、やり兼ねないと、その場面を想像してしまう。その光景を頭に思い浮かべて、古城は冷や汗を流す。と、古城が何かに気が付いたように集の顔を見る。

 

 

「ん?桜満、クマ出来てないか?」

 

 

「え」

 

 

集は古城に言われてサッと目元に手を運ぶ。そして、カップのコーヒーの液面に顔を写すと、確かに薄っすらクマがあった。

 

 

「ホントだ…」

 

 

「夜更かしでもしてたのか?」

 

 

「えーと………うん、まぁね。ほら、コッチの世界の映画って見るの初めての物ばかりだから、ついつい……」

 

 

「ああ、確か前は現代映像研究会ってのに所属してたって言ってたな。その影響か?」

 

 

「そうかもね……一応、趣味の一つだし」

 

 

「へぇ、因みに何の映画――」

 

 

古城が言いかけたところで、その言葉は新たにリビングに入ってきた2人の声で遮られた。

 

 

「じゃーん!お待たせー!ほら、どう?集さん」

 

 

元気よく入って来たのは、チア服姿に身を包んだ凪沙だった。全体的に白を基調にしており、下はミニスカートであり、スパッツを着用している。上はやや腹部が露出される様にできており、袖や裾などにはアクセントとして淡い水色のラインが入っている。

 

 

「うん、よく似合ってると思うよ。凪沙さんは大抵何着ても似合うだろうけど、本当によく似合ってると思う。凪沙さんのクラスの男子も、これで応援されたら頑張るんじゃないかな?」

 

 

集の屈託のない賞賛に、まさかここまでの好評価を得られると思っていなかった凪沙は、少し恥ずかしそうに顔を下げ、ほんのり紅潮した顔を伏せる。そして、照れ隠しとでも言わんばかりに、未だに廊下で立ち往生して、顔だけしか出していない雪菜の背後に回り背中を押す。

 

 

「ほ、ほら!雪菜ちゃんも!」

 

 

「な、凪沙ちゃん!?わ、私は別に……」

 

 

「い、いいから!ほらっ!」

 

 

「わっ」

 

 

無理矢理にリビングへと押し出された雪菜はスカートの裾を抑えつつ、伏目がちに古城たちの方を見る。

 

 

「あ、あの……ど、どうですか?」

 

 

傍観を決め込んでいた古城に、集は一撃を入れると、古城は叩かれた場所を摩りながらも、シゲシゲと雪菜のチア服姿を見る。

 

 

「あー……うん、なんだその………に、似合ってるんじゃないか?えーと、馬子にも衣装?って言うんだっけか?」

 

 

その古城の言葉に、雪菜、凪沙は冷ややかな眼差しに変わり、集も苦笑いするしか無かった。

 

 

「うわ、古城君サイテー」

 

 

「………そうですか、馬子にも衣装ですか。そうですか」

 

 

「え、え?俺なんか間違ったこと言ったか!?」

 

 

困惑する古城に対して、雪菜と凪沙は踵を返す。

 

 

「では、馬子にも衣装なコレを着た私は、制服に着替えてきます」

 

 

「………古城君のバカ!」

 

 

「え、えぇ!?」

 

 

未だに訳が分からないといった古城は当惑するしかなかった。

 

 

「………なぁ、桜満。俺なんか間違えたのか?」

 

 

「えーと、取り敢えず古城はもう少し言葉の勉強をしようか」

 

 

「………おう」

 

 

妹達の態度に傷ついた古城は、その後集に言われて鞄を持ち、自宅外で凪沙たちを待つために待機していた。今日も今日とて、第四真祖などという強大な力を持ったとは思えない、暁古城の生活が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーん、なるほどねぇ。そんな事があったのか。ま、古城らしいな」

 

 

彩海学園高等部1年B組の教室。教室の前方では、浅葱が古城と勝手にバドミントンのダブルスを組まれた事に対して、築島倫に不平を言っており、クラスメート達は遠まきにその様子を見ている。一方、登校を終えた集は教室の片隅でホームルームが始まるまでの間、今朝あった事を基樹に話していた。

 

 

「はは、確かに。にしても、藍羽さんと古城のダブルス、提案したのは基樹でしょ?」

 

 

「はっはっ、ナイスアシストだろ?」

 

 

基樹はいい笑顔でそう言った。実際に浅葱が古城に想いを寄せているのは、ほぼ周知の事実であり、むしろクラス内に於いては、知っているのが当たり前という程に知れ渡っている。この事実を知らないのは、本人達くらいなものだろう。

 

 

「…………ふぅ、顔色が優れないのは、那月ちゃんのバイトの件か?それとも、兄貴のPCから得た情報のせいか?」

 

 

「っ!?」

 

 

急な不意打ちとも言える話題の振りに、集は言葉を詰まらせる。だが、基樹から視線だけは離さなかった。当の基樹は開いた窓に寄っ掛かり、天井を見上げる。

 

 

「済まなかった。実は東條さんから集が兄貴のPCから情報を得たっていうのは聞いててよ」

 

 

「………はぁ、あの人、口が軽いなぁ」

 

 

「はは、まぁ俺らの事を思ってだそうだぜ。ま、信じる信じないは、お前に任せるが、俺もあの人が情報を秘匿してたのは、つい最近まで知らなかった。だが、直接俺の口から言う事も無かったと思う」

 

 

「………それは、基樹が覗き屋(ヘイムダル)と呼ばれる存在だから?」

 

 

集の言葉に基樹は一瞬驚くが、情報の出所に見当がつき、皮肉気な笑みを浮かべる。

 

 

「あぁ……さっきの集の言葉に同意する。本当にあの人、口が軽いな。あれか?この前の夜に、無理矢理スナイパーとして引っ張り出した意趣返しか?」

 

 

2人は顔を見合わせ、互いに苦笑いを溢す。

 

 

「…………ま、今回ばかりは、その口の軽さに救われたか」

 

 

「はは……本当だね」

 

 

「………なぁ、集。お前はこれでもまだ、『友達』でい続けるのか?」

 

 

「………じゃなきゃ、基樹とペアは組まないんじゃない?」

 

 

そう言って集は未だに浅葱と築島倫が何やら言い合っている黒板の方を見る。そこには、男子ビーチバレーの欄に、集と基樹の名前が並んでいた。それを基樹が確認したのを見ると、集は自分の席に戻っていった。窓際残された基樹は外を見て、燦々と照り付ける太陽の光に目を細めながら呟いた。

 

 

「………ったく、どうしてこうも友達付き合いのいい連中ばっかりなんだかねぇ」

 

 

その声には何処と無く喜びも混じっている様にも聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩海学園からやや離れた場所に建つ商業ビル。その屋上ではジーパンにTシャツといったラフな格好の、非番の特区警備隊(アイランド・ガード)の隊員が学園の様子を覗き見していた。

 

 

「………んー、雰囲気的に大丈夫、か?」

 

 

双眼鏡を顔から退()け、顔を顰めつつ言葉を漏らす。メガネを掛けた偉丈夫であり、いい大人が学園の様子を覗いてたなどと知れたらニュースで報道され兼ねない事案である。

 

 

「ま、これでアフターケアは完了か。昨日、御曹司に言っといて良かったぜ」

 

 

「何をやっている、東條?」

 

 

「うおっ!?那月ちゃ――ぐへぅ!?」

 

 

「上司を"ちゃん"付けで呼ぶな!で?何をしていた?」

 

 

東條は突如現れた幼女にも見間違う華奢な体つきをしたその人物にド突かれ、苦悶の声を上げる。そして、患部を押さえ蹲る東條を見下し、尋問を続ける。

 

 

「な、何って……この前、貴女がやった事へのアフターケアでしょうが……あの2人、下手したら友人じゃ居られなくなってたんですから」

 

 

「………それについては、少しは反省している」

 

 

那月は腕組みを崩さないまでも、反省しているのは本当らしく、珍しく普段の表情を崩した。

 

 

「ったく……大体、高校生相手に大人気なかったんじゃないか?いきなり、『私の下に来い』なんて」

 

 

「だから、一応は未だに公社に所属させているだろうが!」

 

 

「それにしたって、いざとなれば南宮攻魔官の側に付くように約束させてたじゃないですか」

 

 

「公社の連中に生徒を好き勝手にされたらたまらんからな。その為の保険だ」

 

 

「はぁ………まぁ、御曹司には一応はその事を話しましたけど、報告する気は無いそうですよ。現状維持ってのが本人の望みみたいですから」

 

 

「ふん、矢瀬ならそうだろうな。そもそもあいつと、あの兄はさほど仲がいいわけでも無い。それよりは、今居る友人を取るだろうさ」

 

 

「…………これで、桜満君は実質的には2重スパイって事になった訳ですか。けど、ここまでする必要があったんですか?わざわざ、取ってきた情報からも、エコーから聞いていた情報以上の事は分からなかった訳なんだし」

 

 

「まぁ、その通りなのだがな」

 

 

 

東條の問いに那月は表情を曇らせる。決して東條を信頼していない訳ではないが、それでも話せば巻き込まれる可能性があるからだ。それを察してか、東條は那月に声を掛ける。

 

 

「今さら、何を悩んでるんですか、貴女は。毒を喰らわば皿までって言うでしょ」

 

 

「はぁ、まぁいい。それだけ言うのなら覚悟があっての事だと判断させてもらうぞ?…………なぁ、東條。公社の連中がなぜ桜満集を『ジョーカー』などと言うと思う?」

 

 

「さぁ?俺は専門家ではありませんから」

 

 

東條の投げやりな言葉に那月はイラっとし、小さく舌打ちするが、会話を続ける。

 

 

「ここから先はあくまで、推測の域を出ないから、他言は無用だぞ?……桜満の居た世界では魔術に関わる全てが無かった。そう言っていたな?」

 

 

「まぁ、そうですね。俺にとっちゃ異世界人ってだけでも信じられない話だが。……けど、別に異世界っていうなら、不思議は――」

 

 

「いや、おかしいのは、ここからだ。本来異世界とはこちらの世界とは全く異なった文化や、文明が進んでいるものと私は考える。まぁ、多少の差異がある程度の物も存在はするのだろうが。だが、だからこそ、違和感を感じた。同じだという部分が多過ぎるのだ」

 

 

「ん?さっき多少の差異くらいあるかもって――」

 

 

「ああ、そうだ。だが、同じ物があるにしても、全く同一の物が存在するのは不可思議すぎる。強いて言うならば、この世界は『魔術』によって発展を促された世界と私は考えている。だが、向こうの世界では『魔術』が存在しないと言うではないか。此方の発展には魔術的要素が多く絡んでいる。だが、向こうの世界ではその源泉たる魔術が無いのにも関わらず、一部同じ文化や文明が栄えている」

 

 

「えーーと………うん?それの何処に問題が?」

 

 

「ええい!簡単に言う!つまり、魔術に由来する事で生まれた神話や伝承、文化などが、向こうの世界でも全く同一の物が存在しているという事実が問題なのだ!まだ、分からんか!?」

 

 

那月の熱弁に東條は余計に首を傾げる。東條は先ほど自分で言った様に、この手の話の専門家ではない。故に理解しきれていないのだ。

 

 

「〜〜っ!ここまで出来の悪い生徒は初めてだ!だから、私はこう考えている!途中までは向こうでも魔術かそれに準じる『何か』が存在したのでは、と。だが、今は魔術が失われている。そう考えれば、例えば、桜満の知っている宗教、伝承、文化、文明、神話などの一致に合点がいく。つまり、途中まで向こうの世界でも魔術は存在したかもしれないという事だ!」

 

 

「………それが、『ジョーカー』とどういう関係が?」

 

 

ここまで来ると、那月は青筋が明らかに浮かび上がり、ギコチナイ笑みを浮かべながら、怒りが頂点に達しそうになる。

 

 

「………先ほど、私は言ったな?『今は魔術が失われている』と。では、何故魔術は失われたと思う?」

 

 

「え、えーと………後継者問題、とか?」

 

 

「まぁ、それもあるかもしれないが、その程度で滅びるほど魔術というのは脆くはないさ。では、もう解答を言おう。桜満が言っていた『ダアト』という組織。歴史の転換点などに現れた存在だと、桜満は言っていた。そして、桜満の話では、人類を『淘汰』する為に現れた、と。つまり、魔術も連中に『淘汰』されたのではないか、という風に考える事ができる」

 

 

「おいおい、それにしたって、話が突飛すぎやしませんか?」

 

 

「まぁ、だが決して否定は出来ない。それを否定できるだけの材料がないからな。そして、『ダアト』という組織が『淘汰』する際に用いた力………それが、桜満の持っていた『王の能力』ではないかと考えた。つまり、桜満の『王の能力』というのは、潜在的ではあるが『魔術』の天敵になる得るのでは、と公社の連中も考えたのだろう。故に『ジョーカー』などとフザけた名など付けたのだろうさ」

 

 

「………つまり、『ジョーカー』ってのは、『魔術』に対する切り札って事か?」

 

 

「そう考えたから、公社の連中は桜満を欲しがり、留めておく為に情報の秘匿なんて真似をしたんだろうよ。実際に桜満は、第四真祖である暁古城の意識を奪った事があるからな。それが余計に信憑性を増しているんだろう」

 

 

「…………で?南宮攻魔官殿はその『王の能力』を持った生徒を抱え込んで何をなさるおつもりで?」

 

 

その東條の問いに那月は何時もの調子を取り戻した様子で、微笑みながら返す。

 

 

「さっきも言っただろう?生徒を好き勝手にされるのが、嫌なだけさ。さて、ではもう行く。ホームルームの時間だからな。お前も覗きなどするなよ?」

 

 

そう言うと那月は魔法陣を現し、消えていった。取り残された東條は消えた那月の居た場所を見つめつつ、ポツリと呟いた。

 

 

「………ったく、教育熱心な国家攻魔官な事で」

 

 

東條は双眼鏡や使っていたシートなどをバックパックに全て詰め込むと、屋上から去っていった。

 

 

 

 




バリバリ独自設定&独自解釈。


んでもって、ちょろイン(?)さんが登場。プラス、BL野郎も。因みに、冒頭で戦っていたのは分かると思いますが、那月と集が獣人とバトってましたw
(ごっそりカットしましたけど・・・)


では、次回はまた少し後になると思いますが、待っていただければ幸いです。


ではでは、アリーヴェデルチ!
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