ポケットモンスター紺   作:ヒース

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第1話『旅立つ前に必要なのは…〇〇?』

 着替え…良し。食糧…良し。携帯テント…良し。日用品各種…良し。鏡で容姿をチェック…問題なし。最後にトレードマークの水空両用ゴーグルを首にかける。その姿はどこをどう見ても一人のポケモントレーナーだ。

「じゃあ、向かうとするかな」

 壁にかけている時計を見てみると集合予定時刻より1時間ほど早い。だがまあ構わないだろうと、父さんと母さんに出かけることを言いにむかった。

 

 

 居間に行ってみると父さんも母さんもいた。しばらくは会えないと思うと目頭が熱くなってくるが、意を決して話しかけた。

「父さん。母さん。ちょっと早いけどもう行くよ」

「ん…そうか」

「もう行くの? 近所の人と一緒に見送ろうと思ってたのに」

 そういうのは勘弁して欲しいと思う。現在の年齢は10歳だが、精神は前世も合わせれば30は超えるのだ。ご近所全員の人に見送られての旅立ちなんて、常識的に考えて嬉しいよりも恥ずかしい。

 …とそういえば。

「父さん。持っていきたいのがあるんだけど」

「なんだ?」

「―――なんだけど、いい?」

「ふむ…旅立ちの餞別にはちょうどいいか。どれがいい?」

 何がいいかと聞かれれば答える言葉はこれしかない。

「一番良いのを頼む」

 

 

 

「おはようございます。ポケモン貰いに来ました」

「なんだ。ネイビー君じゃないか。君も待ちきれなくて来たのかい。まあ遅刻してくるよりかはましだがね」

「あっ、おはよう。ネイビーも早いね」

 研究所につくともう2人来ていた。最初に話しかけてきたのが『シゲル』、もう一人は『クリーム』、ネイビーの近所に住む幼馴染たちだ。もう一人幼馴染がいるのだが…まだ来てはいないようだ。

「家で時間をつぶすのもアレだったからね。たぶん俺と同じように早く来ているのが一人はいると思ったし」

 シゲル、クリームともに優等生だから遅刻とは無縁だ。

「あと来てないのはサトシくんだけだね」

「まったく。サートシくんは緊張感が足りないね。晴れの舞台の日くらい早く来てもいいくらいなのに」

「あいつはなぁ…」

 ここに来ていない最後の一人『サトシ』。3人の友達で一言でいうなら熱血バカ。彼の兄みたいにポケモンマスターになるんだと豪語してやまない熱血バカだ。(重要な事なんで二度言いました)

「たぶん今頃旅立ち前日で眠れなくて夜更かししたあげく爆睡しているんだろうなぁ」

 その姿がありありと想像できてこまる。二人も想像したのか苦笑と失笑を漏らしていた。

 

 

 

「おお、ネイビー君も来たようじゃな」

 と、そんなこと考えていたらオーキド博士が来た。時計を見ると丁度約束の時間だ。結局サトシは間に合わなかった。

「おはようございます」

「おじい様。さっそくですが僕たちにポケモンを下さいませんか?」

「むぅ? 確か今日旅立つのは4人と聞いておったが。1人足りやせんか?」

「確かにまだ一人来てませんが、幸い他のメンバーはそろっています。遅刻者には残った最後のポケモンを渡せばいいと思います」

「良いのかなあ…」

「しょうがねえだろ。遅刻してくるサトシが悪い」

 クリームがネイビーに聞いてくるが、シゲルの言葉にも一理ある。彼も欲しいのは決まっているので取り合う相手は少ない方がいい。

「ならば、この4匹の中から選ぶといい」

 そう言うと博士は4つのボールを取り出して机の上に置いていった。ボールにはそれぞれのタイプを示す為なのかシールが張られている。それから考えるとネイビーが欲しいのは一番左のボールだ。

「レディーファースト。クリームさん、お先にどうぞ」

「えっ、いいの?」

「かまいませんよ。僕はどのポケモンだったとしても使いこなして見せる自信がありますから」

 ネイビーのほうにも顔を向けてくるが、うなずいて則した。

「じゃあ………この子を貰います」

 クリームがとったのは右から2番目のボール。葉っぱのマークが張られているので『フシギダネ』だろう。

「おお。たねポケモンのフシギダネじゃな。その子は他のポケモンよりもずっと育てやすいぞ」

「はいっ! やっぱり最初のポケモンはこの子がいいと思いまして」

「…ほっ」

 フシギダネはカント―御三家の中で一番最終進化形態になるのが速い。それに序盤のジムは全部フシギダネには有利だ。初心者用には最もふさわしいだろう。狙っていたのが取られなかったのでネイビーは胸をなでおろした。

「あっ。そうだ」

「ん?………て、おい!?」

 何に気づいたのか、クリームはもう一個置かれていたボールを取る。それはネイビーが狙っていた物なので慌てた。

「はいっ。ネイビーはこの子だよね?」

「えっ?! あっ! おう。そういえば話したことあったっけな」

 びっくりしたがわざわざとって来てくれただけだった。ネイビーのこのポケモンに対するLOVEは周知の事実だった。シゲルも近くにいたオーキド博士もデスヨネーって顔でネイビーたちを見ている。受け取っても問題なさそうだ。

「じゃあ、僕はこのポケモンをもらおうかな」

 シゲルがとったのは水滴のマークが張られたボール。『ゼニガメ』で間違いないだろう。

「ちょっと出してみていいですか?」

「構わんぞ。自分の初ポケモンとあいさつするがいい。…一応言っておくがバトルはダメじゃからな」

 ダヨネー。ゲームだとここで初バトルになるのだが、普通に考えて研究所内ではしないだろう。精密機械いっぱいあるのでWBみたいになったら大変だ。

 

カチッ、カチッカチッ

 

 それぞれボールの開閉スイッチを押す。後は投げればでてくるはずだ。

「「「出て来い。俺(僕)(私)のポケモン!」」」

 ネイビーの炎のマークが張られたのから出てきたのは、前世からの相棒。彼がポケモンを始めたきっかけであり、全シリーズ全てのポケモンの中で最も『火竜』の称号がふさわしい存在。

「カゲーッ!」

『リザードン』の進化系最初のポケモン。とかげポケモンの『ヒトカゲ』。それがネイビーの初めてのポケモンになる。最も思い入れのあるポケモンが自分のになった事で内心浮かれきっていた。

「ヒトカゲ! これからよろしくな」

「カゲッ!」

 目線を合わせて固い握手を交わす。他二人もそれぞれ挨拶を交わしてる、初顔合わせはよさそうだ。

「ふむ。三人とも決まったようじゃのう。…正直このポケモンが選ばれなくてほっとしたわい」

 そう言って博士は残った稲妻のマークが張られたボールをポケットにしまった。あれはたぶん『ピカチュウ』だと思われるが、なんか問題でもあったんだろうか?

「これはワシからの餞別。ポケモン図鑑とモンスターボールじゃ」

 これが本物のポケモン図鑑か。モンスターボールも10個と気前がいい。

「三人とも…これからお前さんたちは様々な場所で、様々な人、様々なポケモンと出会う事になるじゃろう。それらすべてはお前さんたちの糧になるはずじゃ。まずは隣町のトキワシティを目指すといい。さあ、行ってきなさい」

 

 

「「「行ってきます!」」」

 

 

「じゃあ私はすぐにでも向かうけど、二人はどうするの?」

「僕は一度家に戻るよ。僕の旅立ちを惜しんでくれる方がたくさんいてねぇ。見送ってくださるらしいから出席しないと」

 シゲルは見送ってもらうのかよ、良く恥ずかしくないな。別に一緒に行かなきゃならないわけじゃないとはいえいきなりみんなバラバラとは思わなかった。

「ネイビーはどうするの?」

「ん? 俺はちょっと寄るところがあるから、それを済ましたら向かうよ。行こうヒトカゲ」

「カゲッ」

 ヒトカゲはボールの外に出しておくことにした。ピカチュウ版やHGSSであった連れ歩きをしたいのともっとヒトカゲと仲良くしたいからだ。もちろん雨の日とかには戻すけどな。

「寄るとこって、どこ行くの?」

「海」

 そういえばサトシの奴未だに来ないな。寝すぎだろjk。

 

 

 

「此処が海だぞヒトカゲ。お前は見たことあったか?」

「カゲカゲ(ふるふる)」

 やってきたのは南にある21番水道が眼前に広がる浜辺。『なみのり』が使えるポケモンがいればココからグレン島まで渡っていけるのだが、当然ネイビーは持っていない。そういえば前世で彼は『なみのり』で渡ってマサラに戻るってあんまりしなかった。そのころには『そらをとぶ』が使えるし。

 つい物思いにふけっていたらヒトカゲにズボンを引っ張られた。なんでここに来たのと目で訴えてくる。

「あははっ、ゴメンゴメン。実はここでね。水系ポケモンを捕まえようと思って来たんだ」

 ヒトカゲを選んだプレイヤーだったら誰もが思うことだが、序盤のジムがヘビィ過ぎる。岩も水も炎の弱点なうえに耐性持ち、特に最初の岩はノーマルにも耐性を持っている上、序盤の技の種類も乏しいことからヒトカゲだとマジで詰む。ここで心を折られた人は数知れない。

 ネイビーももちろん大変ではあったが、『レベルを上げて物理(タイプ一致)で殴ればいいんだよ!』この原則でゴリ押ししていた。そのため毎回お月見山に入る直前にリザードに進化していた。

 しかし、リアルでヒトカゲにゴリ押しさせる気にはなれなかった。ゲーム上ならポケモンがやられても『やべっミスっちまった』くらいの感覚しかないが、今ここに生きているヒトカゲでトライ&エラーをさせるなんてできるはずもない。当然タマゴ厳選なんかもしないと決めている。そんな廃人の考え方はピカチュウをモフモフした時にあっさり捨てていた。

「ここ21番水道にはメノクラゲが出るんだ。そいつをゲットしようと思ってね」

 正直トキワシティに出るニョロモとどちらにしようかと迷ってはいた。メノクラゲ…いやドククラゲは特殊受けに丁度いいステータスを持っている。リザードンはどうあってもスピードアタッカーにしかならないので、他の仲間に受けをやってもらわなければならない。ニョロトノもニョロボンも受けとして使えないことはないがドククラゲほど突出したステータスではない。

(それに…ニョロモ系はなんだか誰かと被る気がするんだ。誰とは言えないが…)

「初戦から不利な相手ですまないが、どうしても必要なんだ。頼むぜヒトカゲ」

「カゲッ!」

 ヒトカゲが力強く返事をしてくれた。ええ子や。ではこんな時の為に頂いておいた秘密兵器をご紹介しよう。

 

 

 

 その名も…『釣竿』だ!

 

 

 

 実はネイビーの父は釣り人なのだ。休日にはよく一緒にコイキング釣りとかに連れてってもらっていた。父の最高記録は怒りの湖で釣ったギャラドスだとか、前に魚拓見せてもらったので本当だろう、父さんマジパネェ。

 ちなみにこの釣竿はボロでもいいでもすごいでもない、あえて言うなら『ネイビーの釣竿』だ。性能は彼の手持ち以下のレベルのポケモンが釣れる…だと思いたい。もし高レベルのポケモンが釣れたら…ダッシュで逃げないとな。

「ヒトカゲは近くで待機していてくれ。メノクラゲが釣れ次第すぐ呼ぶから」

「カゲッ」

 

 

 

「それじゃあ張り切っていきますか!」

 

 

 

「でりゃっ!」

「コイッ!」

 

「このっ!」

「コイッ!」

 

「もいっちょ!」

「コイッ!」

 

「なんで!」

「コイッ!」

 

「コイキングしか!」

「コイッ!」

 

「釣れないんだよ!」

「コイッ!」

 

 

 

 あれから計十数回続けたが、釣果はコイキングのみ。どうやらネイビーの釣竿にはボロ級の性能しかないようだ。これだとまずい…コイキングが戦闘用に使えるのは特殊な例を除いてギャラドスに進化した後なので最低20レベルが必要。そのうえ水タイプの技を自力で覚えるのは30レベル以上。新人トレーナーがやるには苦行過ぎる。

(あきらめてトキワでニョロモ釣ったほうがいいか? でもまたコイキングしか釣れなk―――

「カゲッ!カゲッ!」

「たっ!?―――どうかしたか? ヒトカゲ」

 びっくりしてヒトカゲのほうを向いてみると、何かを見つけたらしく砂浜の一点を指さしている。ここから見た感じだと青いビニール袋だろうか?

「なんだ? 何か変な物でも入って―――はっ?」

 近寄ってみてみたらビニール袋じゃなかった。干からびてカサカサしているが、

 

 これはメノクラゲだ!

 

「なんでこんなところで干からびて………そういえば」

 リュックに入れてあるポケモン図鑑で調べてみると―――とっ!? 電子音声式だったとは―――何てハイテクな。いきなり声が出てきたからびっくりした。

 とにかく調べてみたら、メノクラゲは時々波打ち際に干からびた姿で発見されることがあるらしい。昔そんな記述を見た気がしたので調べてみたらビンゴだった。一昨日は満月だったのでそれでこんなところまできたのはいいが、潮の引きに取り残されてしまったんだろう。

「おい。生きてるか?」

「…メ………メノ」

 かすかだが声が聞こえたのでまだ生きてるっぽい。水につければ元に戻るらしいのでリュックからバケツを取り出す。道具をデータ変換して収納しているらしいが自転車やらテントやら放り込んで重さがほとんどないって、この収納技術はホントチートだよな。

「ヒトカゲ。俺は海水を汲んでくるからこいつが風で飛ばされないように見張っていてくれ」

「カゲッ!」

 ひとっ走り行ってきて、メノクラゲを傷つけないようにそっとバケツの中に入れる。あとは待っていれば復活するのだがここで気付いた。

(さっきの状態の時にボールぶつけていれば確実にゲットできたんじゃね?……いや……さすがにそれは外道過ぎるか)

「………メノッ! メーノッ♪」

「お、元気になったか」

「カゲカゲカ♪」

 あんなに干乾びてたのにもう復活とは、さすがは体の大半が水でできているだけのことはある。恩に着せる感じでちょっとあれだがネイビーは交渉してみた。

「メノクラゲ。俺たちの仲間になってくれないか?」

「メノ?」

「カゲ。カゲカ―――」

 なんかヒトカゲが代わりに説明してくれてる…この子ホント頭がいいな。別にバカだとか思っていたわけじゃないが、ネイビーの言葉をほとんど理解してくれてる。彼の相棒としてはうれしい限りだ。

「…メノッ(コクン)」

「仲間になってくれるのか! ありがとう」

 リュックからボールを取出しメノクラゲにボールを当てる。するとボールが開きメノクラゲが光となって吸い込まれていった。閉じた後手の中でしばらく震えたが、やがて動かなくなった。ゲットする瞬間ってこんな感じなんだな。

「メノクラゲGETっと。大変ではあったがバトルせずに済んだな」

「カゲ」

「お前がメノクラゲを見つけてくれたおかげだ。ありがとな~」

「カゲ~♪」

 頭をなでてやると嬉しそうな声で鳴いてくれる。実にカワイイ。

「じゃあ。改めてトキワシティに向かうとするか」

「カゲッ♪」

 バケツをしまい海に背を向け1番道路を目指す。事前情報から用意した釣竿だったが結局役に立たなかった。だが、目的の仲間が手に入ったから良しとしよう。

 隣を歩くヒトカゲを見ながら思う。旅立つ前に本当に必要なのは、

 

 

 

 

 頼れる『相棒』なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー! ゼニガメ! ヒトカゲ! フシギダネ! なんでもいいから待っていてくれーーーーーーー!」

 

 

 

 

 なんか背後からそんな雄叫びが聞こえた。遅すぎだっての。

 

 

 

 

 

 

 




マサラの南では他にトサキントやヒトデマン。金銀でチョンチー、FRLGではもっといろんな種類のポケモンが釣れますが、作中の理由とメンバーはできるだけ現地産(進化形は除く)で行きたいためメノクラゲとなりました。
 次回はトキワシティの話となります。
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