本当は一話だったのですが、さすがに長かったので分割しました。この流れで唐突に一万字越えるのも……ねえ?
翌朝。
俺は夕飯を食べ終わった後そのまま実家に泊まることにした。無論、外泊許可はすでにとってある。
卒業してから所属先に配置されるまで多少は時間があるとはいえ、配属されればこうして家族水入らずの時間をとることなんて滅多にできなくなるだろうから今のうちに、ってね。
そんなわけで実家に泊まり、久々に妹の朝の目覚まし(ベッドダイビング込)を味わった俺は、腹に鈍痛を抱えたまま朝食をとり、着替えて出かける準備をした。まあさすがに、ここは割愛でいいだろう。男のシャワーなんざ誰得だって話だ。
そして今、全ての準備を終えて玄関で靴を履いているところである、なう!
「今日で訓練校が最後なんて、感慨深いわねえ。この間入ったばかりだと思っていたのに~。」
「いや、別に母さんが訓練校行ってるわけじゃないでしょ……。」
「もう、いいじゃない!親っていうのはそういうものよ?」
何故だか俺よりも感慨にふけっている母さん。前世では子供いなかったからわからないけど、親ってそんなものなのかな?そういえば前世の親もそんな感じだった……かな。
ていうか俺、前世に子供どころか彼女いねえじゃん……。
くそう。何かホントにくそう!
「お兄ちゃんどうしたの?頭痛いの?」
「……ああ、大丈夫。ちょっとつらい現実にぶつかっただけだから……。」
「?そうなの?いたいのいたいの、とんでけ~~!」
「ははっ、ありがとう。」
うちの妹が天使すぎる。
思わず頭を抱えてしまった俺の頭を背伸びして撫でている弥生。ああ、癒されるなあ……。
「ほら、もうそろそろ行かないと遅刻するわよ?」
「うげっ!ほんとだ!急がねえと!」
母さんに言われて時計を見るともう出発しなければならない時間になっていた。
危ねえ、我が妹の可愛さに思わず時間を忘れていた。弥生……恐ろしい子……!
って、こんなことしてる場合じゃないんだった。
「それじゃあ、行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい。頑張って教官倒してきてね~。」
「いってらしゃ~い!」
微笑みながら小さく手を振る母さんと元気に手を振る弥生見送られながら玄関を開け、家を飛び出す。
今日は士官学校の卒業式。三年間通った学び舎と別れを告げる日だ。
* * * * *
「……え~、今日の良き日に、皆さんが無事卒業できることをうれしく思います。思えば二年前、皆さんが入学してきた時にはーーー」
なんとか電車に間に合った俺は、時間に余裕をもって士官学校の体育館に着くことができた。
そして始まった卒業式、やっぱり校長の話が長いのはどこの世界でも共通だな。こういう時はボーっとしながら聞き流すのが吉。
「……では、皆さんが卒業後、次元世界を守る立派な管理局員として活躍することを願います。解散!!」
こう締めくくって、校長の話は終わった。そのまま流れで式は終了、俺たち卒業生は訓練場へと移動する。
―――さて、ある意味今日のメインイベント開始だな。
* * * *
というわけで、やってきました馴染みの深い訓練場。俺は到着するのが遅れてしまったが、先に集まっていた卒業生たちが友人たちと固まって思い思いに話をしている。
「おーい、悠斗~!」
訓練場に着いた俺に、ヨアンが手を振りながら声をかけてきた。その周りには、いつもの面子がそろっていた。
「もう、ユウト遅い!待ちくたびれたよ!」
「アーシアちゃん、私たちも、まだ来てからそんなに経ってないよぅ……。」
相変わらず、唐突に文句を言ってくるアーシアを、オドオドしながら窘めるカトリネ。そして、それを格好付けながら見ているエルマー。これもまあ、いつもの光景だ。
――――これを毎日見れるのも最後だと思うと、なんだか寂しくなるな。ふと心によぎったそんな感傷を無視して、二人に声をかける。
「無茶を言うなよ、俺最後尾にいたんだぞ?ところで、先生はまだ来てないのか?」
「……いや、今来たらしい。」
ふと声を発して俺の問いかけに答えたエルマーの視線の先を見ると、ちょうど教官たちが訓練場に入ってくるのが見えた。
その中から、タンクトップ姿のマッスルたくましいいかにも『私教官です』といっているような男が前に出た。
彼は俺たちの教導を担当した教官たちのなかのいわゆるリーダーで、たしか教官長?とかいう役職だったはずだ。俺たち生徒の間では、軍曹の愛称で親しまれている。
教導は厳しいが、情が深く涙もろい人である。
「全員、整列!」
軍曹の号令を聞くな否や、その場にいた生徒たちは一目散に駆け出し、彼の前に整列した。もちろん俺たちもだが。
「よし、全員揃っているな。ずいぶん様になったじゃあないか。」
軍曹は整列した俺たちを見渡して関心したように頷いた。そしてそのまま口を開いた。
「まず、卒業をおめでとう。2年間よく頑張った。君たちなら隊に配属されてもやっていけるだろう。なに、この俺が保証しよう。」
『『『はい!!』』』
全員が異口同音で返事をする。これも2年間の訓練の成果……かな?
最初の頃は返事もバラバラで、その度に教官からドヤされ、罰として腹筋背筋腕立て伏せしてたなぁ……。今となってはいい思い出だ。
「うむ。まあ、湿っぽい話は置いておいて、ここからが本題だ。これから、教員を相手にした1対1の模擬戦を行う!」
おお~!という歓声にも似た声が上がる。
そう、これが今日のメインイベント、教員相手の最終模擬戦だ。
もちろん、模擬戦は今まで幾度となく行われてきたが、基本的には教えられた技術を実践して身につけるための戦闘がほとんどで、制限なしの戦いは少なかった。
そして、今回のそれは制限なし、何でもありの全力戦闘。まあつまりは、
(((今までの恨み、ここではらす!!)))
ということだ。我ら生徒の心は一つ、である。
「やはり皆気合い入ってるな。ではこれより最後の模擬戦を始める!各自、いつもの班に分かれろ!」
「「「はい!!」」」
全員で大きく返事をして、再び駆け出しそれぞれの実習班に分かれた。
ちなみに俺の班はいつものメンバーとほか3人、そして軍曹である。
どうしよう。ぶっちゃけ、教官の中で軍曹が一番強いんだよなぁ……。
「よし、全員準備ができたようだな。では各班それぞれで模擬戦を開始しろ!」
軍曹の声が訓練場に響き渡ると共に、それぞれの場所で模擬戦が開始され、戦闘音があちこちから発せられ始めた。
「俺たちも始めよう。まずはアイル、前に出ろ!」
「はい!」
っと、うちの班でも始まったな。
一番手はオーソドックスな杖を使うスタイルのようだ。
ちなみに軍曹も同じ戦闘スタイルなのだが、こちらは近距離では魔導杖(物理)を使うガチファイターである。
あっ、一番手君(仮)が杖でぶっ飛ばさた。
「つぎは俺だな。……行ってくるぜ。」
次の犠牲者は格好付け剣術使いエルマーのようだ。ヤムチャシヤガッテ……。
俺が無言で敬礼していると、隣で同じように敬礼しているアーシアが話しかけてきた。どうやらこれはあまりに暇だから俺と話して時間潰すつもりのようだ。
「ねえねえ、エルマーかなり気合い入れてるみたいだけど、勝ち目あるかな?」
フッ、全く持ってわかりきったことを聞きおってからに。あ、エルマーがまっすぐ突っ込んでった。
「かなり厳しいだろうな。あいつ、近接全振りだけど軍曹かなり堅いから。」
ちなみに、この堅いっていうのは物理的じゃなくては、近接も強くてはなかなか堕ちない、っていう意味な?
「まあ、そうだよねぇ……。あっ、場外ホームランで吹っ飛ばされた。」
「……マッスルだなあ。」
「……マッスルだねぇ。」
軍曹に杖でぶっ飛ばされ、壁に埋まった(比喩にあらず)エルマーに二人で敬礼していると、軍曹はアーシアを大声で呼んだ。出番らしい。
「あ、あたしの番だ!それじゃ、行ってくるね!」
「逝ってらっしゃい。」
「字が違うよう!?」
よくわかったな。俺はそっちにびっくりだよ。
とまあ、そんな感じでどんどん模擬戦は進んだ。
あの後アーシアはフィールド走り回って時々殴ってのヒットアンドアウェイで善戦したが逆に削り殺され敗北。
カトリネはこれまた派手な弾幕戦を展開したが、最終的に接近されて叩き落とされてしまった。端から見てると蠅たたきみたいで、思わず吹き出してしまったのは内緒だ。
名も知らぬ二人は遠距離戦を仕掛け、見事砲撃で塵となった。
ヨアンに至っては、始めは普通に撃ち合いしてたのに、なにを思ったか唐突に杖を投槍よろしく投げつけ、軍曹の拳骨を脳天にくらいダウンして、今も伸びてる。相変わらずの威力だな、恐ろしくて肝が冷えそうだ。
でとうとう俺の番が回ってきたわけだ。
さて、気合い入れていきますか!
第5話、いかがでしたでしょうか。
次回はこのまま軍曹との戦闘に入ります。
戦闘シーン書くのこれがほとんど初めてなので、ぶっちゃけすごい不安です。頭の中で構想考えるだけなら簡単なんですけどねえ……。
ところで、今回の校長のセリフですが、もっと威圧的な、それこそ教官みたいな感じの方がいいのでしょうか?
今更ながら不安になってきました。
もしそっちの方が 良かったら、そこだけあとで変えようと思います。
批評や感想、誤字脱字お待ちしてます。
あ、fortissimoやらなきゃ(唐突)