勇次君と付き合い始めて初めての大晦日。勇次君からラインで明日、一緒に初詣行こうと誘いが来た。
もちろん。オッケーを出す。
母に、「明日、勇次君と初詣行くことになったから、私抜きで初詣に行って」と伝えると。
「あら。よかったじゃない」と母親。
「じゃあ。あれを着ないとね」とお姉ちゃん。
あれ?と疑問に思っていると、
母は、着物と草履を出してきた。
「え?これで行けと言わないよね?」と私が言うと、
「何言っているの、これ着ていくに決まっているじゃない。ねぇー」と母と姉。
「いつもと違う優奈を見せて惚れ直させるのよ」と姉。
「あと、勇次君のお母さんに、あなたに、私の着物着せていくと伝えたから」と母。
「え?いつ?」と私。
「さっき着物取りに行った時に」と母。
「勇次君のお母さん、勇次君にお父さんの着物着せるって言っていたよ」と母。
「じゃあ。なおさら着物じゃないと釣り合わないわね」と姉。
「何か、着物着ていくようにどんどん外堀埋めてない?」と私が文句を言うと、
「だって彼氏が着物で彼女が普段着って釣り合わないよね?逆なら分かるけど」と姉。
「分かった。着ていけばいいんでしょ。着ていけば」ともうやけくそになる私。
どこかに電話する母。
「あ。お義母さん?今から、うちに来れますか?優奈に試しに着物着せたいので。サイズ合うかなどの調整で。わかりました。あ。お義父さんも来る?お待ちしています」と母。
電話をきり、「おばあちゃん、着付けに来てくれるって」と母。
「え?もしかして、今も着るとか言わないよね?」と私
「着るに決まっているでしょ。サイズ合わせないといけないし」と母。
「明日でよくない?お昼に行くわけだから」と私が言うと、「明日じゃ遅いの。髪のセットとかもあるし」と母。
「明日、朝イチで、おばあちゃんたち来るって言うから」と母。
そして、本当におじいちゃんとおばあちゃんが来たのだった。
2人は、美容師をしている。
「どんな髪型にする?」と母に聞くおじいちゃん。
いろいろ髪飾りを持ってきていた。
おばあちゃんはというと、私に淡々と着物を着せていく。「ちょっと長いわね。ここらへんね。ねえ。縫っちゃっていい?」とおばあちゃんが母に聞く。
「ええ。優奈にあげるつもりだから、大丈夫です」と母。
「じゃあ。いったん脱いで。ミシンある?」とおばあちゃん。
「今、お持ちします」と母。
着物の丈を直している間、おじいちゃんが髪飾りを刺す。
「これがいいと思うけど、どうだ母さん」とおじいちゃん。「いいんじゃない」とおばあちゃん。
「よし、あとは、ウィッグで髪を盛ってと」とおじいちゃん。
「母さん。こっちは、出来たぞ」とおじいちゃん。
「こっちも裾直し終わったから。じゃあ。着物着つけるから、あなたは、あっち行っていて」とおばあちゃん。
「出来たわよ。入って来て」とおばあちゃんがおじいちゃんに声をかけた。
母がさりげなく写真をスマホでパシャリ。
「この写真を勇次君のお母さんにこの姿で行きますと送信と」と母。
「ちょっと。まだ着物で行くなんて、言ってないのに、何勝手に送っているのよ」と私。
「さっき了承したよね。ほら」とスマホでさっき私が発言した内容を再生する姉。
〈分かった。着ていけばいいんでしょ。着ていけば〉と流れた。
「何さりげなく録音しているのよ」と私。
「女に二言はないよね」と姉。
「それ男だから」と私は即突っ込む。
「おばあちゃん。少しお化粧したほうがいいんじゃない?」と姉。
「そうね。目立たないくらいにお化粧しましょう」とおばあちゃんが、なぜか化粧道具まで持参していた。
前日のはずがなぜか、当日感が凄かった。
「ねえ、このまま、午前零時前に行っちゃえば。着物着たんだから」と姉。
「未成年だけで深夜行かせるのは、危ないから無理ね」と母。
「あ。勇次君のお母さんからラインだ。あら。勇次君も似合うわね」と母
優奈のスマホに勇次からラインが届く。
〈明日の初詣、優奈の着物姿楽しみにしている〉との内容だった。
「これで完全に明日、着物確定じゃん」と私
正月の買い出しから帰ってきた父。
「あ。父さん、母さん来てたんだ。懐かしい着物だな。付き合って間もない頃、初詣で着ていたやつだよな」と父。
「ああ。邪魔しているよ」とおじいちゃん。
「おかえり。そうよ。これ、私の母のお下がりで、孫に来てもらって喜んでいると思うわ」と母
「さすが父さん達だ。見違えるくらい綺麗だぞ」と父
「褒めても何も出ないわよ」とおばあちゃん。
「勇次君も驚くだろうな」と父。
「明日の反応が楽しみね」と母。
そんなこんながあり、なぜか、おじいちゃんとおばあちゃんが泊まっていくことになった。
「明日は、もっときれいにするぞ」となぜか手を合わせオーと言って張り切る2人だった。
「なんで皆、私の意見無視するの?」と私。
そんなこんなで、夜は、更けていった。
翌朝
なぜか、祖父母二人に朝早く起こされた。
しかも、もう二人来ていた。
母方の祖父母。
「あけましておめでとうございます」とあいさつする私。
台所には、おせちの準備、お雑煮の準備をする母と姉。
「あけましておめでとう」と母方の祖父母。
「なんでいるんですか?」と私。
「だって。優奈ちゃんが私の着物着ると聞いたら、見てみたいじゃない?」と母方の祖母。
「実は、あの着物、俺たちのお見合いの日に着ていた着物でな」と母方の祖父。
「おせち食べたら、準備に取り掛かるからね」と父方の祖母。
「え?行くのお昼すぎだよ。早くない?」と私。
「駄目だ。お前を綺麗にするためにいろいろ試す必要があるからな。髪飾りとか、髪型とか」と父方の祖父。
よく見ると、全身が映る鏡と椅子があった。
なんか、父方の祖父母二人に変なスイッチが入ってしまったようだった。
「これ、私がお見合いの時に着けた、髪飾りこれも候補に入れてね」と母方の祖母。
「あ。これ。私が初めてお父さんと初詣に行った時の髪飾り。まだあったんだ」と母。
「おせち作り終わったから、食べましょう」とテーブルにおせちとお雑煮を並べている姉。
並べられたお雑煮の数を数えると人数分ある。
朝ごはんが終わると、私は、姿見の前にある椅子に座らせられた。
「じゃあ、始めるぞ。まずは、ウィッグをつけて、髪をまとめるぞ」と父方の祖父。
違うところでは、姉、母、父、母方の祖父母、父方の祖母で髪飾りを選んでいた。
ここまで来ると逃げられないと悟った私は、流れに身を任せることにした。
「髪のセット終わったぞ。髪飾り決まったか?」と父方の祖父
「これがいいと思う」と父方の祖母。
「柄と一緒だな。じゃあ、刺すぞ」と父方の祖父。
「今のうちにトイレ済ませたほうがいいわよ。着物だと用をたすの大変だから」と父方の祖母。
「まだ早いから大丈夫でしょ。とお昼に勇次君、迎えに来るらしいから」と私。
勇次君が来る時間の1時間前に私は、無理やり着物を着せられ、化粧も施されるのだった。
そして、勇次君が来た時、親戚が大勢いることに驚いていた。
「あの。何かありました?こんなに人集まって」と玄関の靴を見て勇次。
「あけましておめでとう。勇次君。これ、優奈を綺麗にする大作戦に集まった人たち」と姉。
「そ、そうですか。あけましておめでとうございます。優理さん」と勇次。
「優奈。勇次君来たよ。早く出てきなさい」と姉。
「ねえ。本当にこれで行くの?草履絶対歩きにくいって」と私。
「何言っているの?勇次君待たせる気?誰か優奈連れてきて」と姉。
「お待たせ。勇次君。あけましておめでとう」と母が私の手を引っ張って玄関に連れて行く。
「あけましておめでとうございます。おばさん」と勇次。
「じゃあ。優奈をよろしくね」と姉。
「あけましておめでとう。優奈」と勇次。
「あけましておめでとう。勇次君」と私。
「似合っているじゃん。化粧の匂いするから、化粧しているのか?」と勇次
「うん。おばあちゃんに施された」と私。
「じゃあ。行こうか」と私の手を握って言う勇次君。
「う。うん」と言って私は、草履を履いた。
「じゃあ。行ってきます」と勇次。
二人の姿を見て、満足そうに見送る家族だった。
勇次君の歩くスピードが速いので、「ねえ?歩くスピードもう少し落としてくれないかな?着慣れない着物だから」と私が言うと、
「あ。すまない。そうだな」と少しスピードを緩めてくれた。
神社について、お参りを済ませ、おみくじを引いて、恋愛欄を見る。
私のには、〈早とちりに気をつけよ〉と書いてあった。
勇次君のには、〈誤解を招く言動に気をつけよ〉と書いてあった。
着物を着て初詣に行く2人
おみくじを見る2人