短編 性転換物   作:3442

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ハロウィンパーティー3

 私たち夫婦の下にハロウィンパーティーの招待状が来た。

 なぜ来たのかわからなかったが、何故か、行くべきだと思い、私たち夫婦は、行く事にした。

 私たち夫婦には、一卵性の双子の娘がいた。

 9年前、姉の有花(ゆか)が、妹の有実(ゆみ)のストーカーに、有実と間違われ、刺されて亡くなってしまったのだ。

 有実は、あの日、朝、しっかり起きて、有花と一緒に学校に行っていたら、有花は死ななかったと、自分を責め、精神的に病んで、学校を辞め、その翌年に自殺を図り、亡くなってしまった。

 私も有実に責められた。

 有実と有花は、朝が弱かった。

 それを知っている有花は、「有実を起こさなくていい」と言って、一人で、日直だったため、早めに家を出た。

 有花は、通学途中に、有実のストーカーに腹を刺され、亡くなった。有実が、人だかりを見つけ、様子を見たら、有花が腹を刺され、倒れていたと言っていた。ストーカーは、自分も刺し、有花の上に倒れていたという。傷が浅かったのか、犯人は、助かって、逮捕されたと聞いている。

「あの日、私も起こしてくれていれば、有花は、死なずに済んだ」と有実に責められた。

 

 ハロウィンパーティー当日

 私たち夫婦は、会場の片隅に座った。

 会場には、何名かいた。

「いらっしゃいませ。有実さん家族には、悪いことをしたと思い、今日、招待したんじゃ」と店員らしき人が声をかけた。

「有実がここに来たんですか?」と私は言った。

「来たよ。姉となった、本来の有実さんをストーカーしていた男も有実さんの後に入ってきたよ」と店員が言った。

「ここは、何の店なんですか?」と私が尋ねた。

「わしは、何でも願いが叶うと噂されているラーメン屋の店主じゃよ」と店員が言った。

「何でも願いが叶うラーメン屋に有実とストーカー男も来たんですね」と私が言った。

「え?有花が、有実の元ストーカー?どういうことですか?」と夫が店員に尋ねた。

「有実さんは、『ストーカーの男に、ストーカーされる恐怖を味あわせたい』と願った。ストーカー男は、『有実さんと一緒になりたい』と願い、お付き合いしたいという意味合いで言ったんだろうけど、有実さんの願いと合わせて、有実さんの双子の姉の有花にして、ストーカーされる恐怖を味あわせるつもりだったんじゃ」と店員が言った。

「そんな事があったんですね」と私は言った。

「因果応報というが、その翌日に、元ストーカーの姉の有花さんは、ストーカーに刺され亡くなってしまったんじゃ。儂もそこまでは、想定はしておらんかった。そして、有実さんが自殺するのも想定しておらんかったんじゃ。だから、すみませんでした」と店員が頭を下げて言った。

「すみません。あなた達って、もしかして、山岸有花さんと有実さん姉妹のご両親ですか?」と20代くらいの女性が声をかけられた。

「え?あ、はい。そうですけど」と私は言った。

「何じゃ、お主、山岸有花、有実姉妹の知り合いか?」と店員が声をかけてきた女性に言った。

「はい。中学時代、有実さんのクラスメートで、何度かお(うち)にお邪魔している山根南といいます」と山根南と名乗る女性が言った。

「山根南さん?娘達(有花・有実)の葬儀の時に来てくれた」と私が言った。

「はい。早いですね。有花さんがストーカーに殺されたのが、高二の時ですから、9年ですか?有実さんが精神的に病んでしまって、学校も中退して、自殺を図ってから8年ですから、月日が経つのは、早いですね」と山根南が言った。

「そうですね」と私は言った。

「あなたは、今、何をされているんですか?」と夫が尋ねた。

「今は、白百合総合病院で看護師をしています」と山根南が言った。

「店員さん。今日は、ハロウィンパーティーですよね。山岸有花と有実を今日だけ生き返らせることって、出来ませんか?」と山根南が言った。

「今日だけなら出来るが…」と店員が言った。

「この会場に居る時だけ家族四人で過ごさせてあげて欲しいんです。ずーっと、有実は、『私が一緒にいかなかったからだ』と自分を責めてましたから、有実も有花に謝りたいだろうから。お願いします」と山根南が頭を下げて言った。

「私達も二人に会いたい」と私は言った。

「俺も有花に謝らなきゃいけないことがあるんだ。俺が、駅まで車で送っていればと何度も後悔しました。だから、お願いします。二人に合わせてください」と夫が頭を下げた。

 夫が頭を下げたので、私も「お願いします」と頭を下げた。

「わかりました。少し待っていてください。ただ、有花さんが有実さんの元ストーカーという記憶は、二人には、ありませんので、有花さん、有実さんは、うちで、『有実をつけ狙うストーカー男を逮捕してほしい』と願ったことにしているから、話している時は、注意してください」と店員は、言って、店の奥に下がって行った。

「わかりました」と山岸夫婦が言った。

「じゃあ。私は、これで。家族四人で楽しんでください」と山根南は言って、私たちの元を離れていった。

 

 遡ること数分前

「あれ?あそこにいる二人、何処かで」と店の奥の窓側にいる夫婦を見て、山根東が顎に手を当てて言った。

「店の奥にいる二人がどうかしたんですか?」と山川兜が言った。

「あ。山岸有花、有実姉妹のご両親だ」と山根東が言った。

「山岸有花、有実姉妹って?」と山城勇気が言った。

「山根南としての中学時代の友達と姉の名前なんです。二人は、一卵性の双子で、姉は、友達と間違われ、友達のストーカーに殺され、友達は、姉が死んだのは、自分のせいだと自分を責めて、自殺を図ったんです」と山根東が言った。

「そんな事があったんですね」と山川兜が言った。

「ちょっと、俺、挨拶してきます」と山根東が言って二人の方に歩き出そうとした。

「待ってください。山根さん。その格好で行くつもりですか?女に戻ってから行かないと、あの夫婦は、あなたが山根南だとわかりませんよ」と山崎貴が言った。

「あ。そうだった。じゃあ、着替えてくる」と言って、山根東が言って、更衣室に向かった。

 山根南に戻った山根東は、夫婦のもとに向かった。

 しばらくして、山根南が戻って来た。

「あれ?着替えないんですか?」と山川兜が言った。

「友達が()()()と言うから、挨拶してから戻るつもり」と山根南が言った。

「亡くなったって言っていたじゃないですか?()()()ってどういうことですか?」と山崎貴が言った。

「今日だけ生き返れるみたいだから、家族団らんを邪魔できないから、軽く挨拶と世間話をするだけ」と山根南が言った。

 そんな話をしていると、山岸夫妻の下に聖愛の制服を着た女子高生と同じ顔をした女性が店員に連れられて現れた。

「剛。あの制服、聖愛のだよな」と谷口裕樹が、清水剛に言った。

「そういえば、僕達の担任の先生、『聖愛の出身で、同級生が、ストーカーに殺された』と言っていたけど、彼女なのかな?」と清水剛が言った。

「谷口さんと清水君、もし彼女達と話したいなら、私のように着替えてきなさい」と山根南が谷口裕樹、清水剛に言った。

「剛、俺達も着替えて、彼女たちに会いに行こう」と谷口裕樹が言った。

「え?僕、女の時、幽霊とか駄目だから、遠慮しておきます」と清水剛が言った。

「そうか。じゃあ、俺だけ会いに行くよ」と言って、谷口裕樹は、更衣室に向かった。

「じゃあ。私、先に言っていますから」と山根南は、谷口裕樹に行った。

「わかりました」と谷口裕樹が言った。

 

「有実」と言って、山根南が山岸有実の肩を叩いて、声をかけた。

「え?」と山岸有実が驚いて振り返った。

「久し振り」と山根南が言った。

「あの。どちら様ですか?」と山岸有実は、わからない様子だった。

「酷いな。中学の同級生の山根南よ。有花の葬儀にも参列したでしょ」と山根南が言った。

「え?南ちゃん?久し振り。何か、大人びたね」と山岸有実が言った。

「そりゃ、そうよ。あなたが亡くなってから、八年が経つのよ。私、今、26よ。有花とは、九年ぶりね。有花も久し振り」と山根南が言った。

「南ちゃん。久し振り」と山岸有花が言った。

「ほら。有実、有花に謝らなきゃいけない事があるんでしょ」と山根南が言った。

「うん。有花がストーカーに刺された日、私も一緒に行けばよかったとずーっと後悔していたの。ごめんね。一人で行かせて」と山岸有実が、山岸有花に頭を下げた。

「俺もあの日、車で駅まで送っていればよかったと後悔していた。だから、俺もごめん。許してくれ」と山岸夫の方も謝った。

「お母さんもごめんね。『起こしてくれなかったのが悪い』って当たっちゃって」と山岸有実が言った。

「良いのよ。今日、謝ってくれたから」と私は言った。

「私と一緒で、朝弱いの知っていたから、お母さんに、『有実を起こさなくていい』と言ったのは、私だし、急いでいたのもあって、間違えて、有実のカバンを持って出た私も悪いし、お父さんも私が、有実と間違われて、殺されるとは、思っていなかっただろうから、謝らなくていいよ。でも、有実には、自殺なんてしないで、私の分まで、生きていてほしかったな」と山岸有花が言った。

「あの。すみません。聖愛の方ですか?」と高校生位の女の子が、山岸有花に声をかけた。

 聖愛の制服を着ているから声をかけられたと山岸有花は思った。

「ええ。()だけど」と山岸有花がクスッと笑って言った。

「私、聖愛に通う、16歳で、谷口優理と言います。私の担任が、聖愛の卒業生で、通学途中にストーカーに襲われて、命を落とした同級生がいると。そして、その後を追って自殺を図った、双子の妹がいたという話を聞きました。そして、先生は、こう続けました。『命は、一つしかないのだから、決して、命を無駄にしてはならない』と。山根さんから、有花さんは、ストーカーに殺され、有実さんは、自殺したと聞きました。先生から聞いた話は、あなた達の事ですよね。担任の名前は、橋本(はしもと)未来(みらい)と言います」と、谷口優理が言った。

「多分、私たちね」と山岸有実が言った。

「へーえ。未来ちゃんの教え子」と山岸有花が言った。

「先生しているんだ」と山岸有実が言った。

「未来ちゃんと私は、同じ部活で、クラスメートだったのよ」と山岸有実が言った。

「私達、テニス部だったの」と山岸有花が言った。

「そうだったんですか?橋本先生は、テニス部の顧問をしていて、私、テニス部に入っています」と谷口優理が言った。

「そういえば、南ちゃんは、何しているの?」と山岸有実が言った。

「私は、白百合総合病院で看護師をしているわ。あと彼氏がいるわ。私は、彼と将来的に結婚も考えているわ」と山根南が言った。

「へえ。同僚か何か?」と山岸有花が言った。

「ええ。私より四つ歳上で、看護師をしているわ」と山根南が言った。

「南ちゃんの彼氏、見てみたい。写真とか無いの?」と山岸有実が言った。

「見る?」と言って、山根南は、スマホを操作して、写真を二人に見せた。

「優しそうな人ね」と山岸有花が言った。

「お幸せに」と山岸有実が言った。

「話も尽きませんが、山根さん。そろそろ行きませんか?家族水入らず話したいこともあるでしょうから」と谷口優理が言った。

「そうね。有花、有実、じゃあね。おばさんたちもお邪魔しました」と山根南は、手を振って言った。

 山根南、谷口優理は、会釈して離れていった。

 その後、私達は、時間が許すまで、家族四人で話をした。

 

 別れ際、有花と有実は、私達に、「二人共長生きしてね」と言って、手を振った。

「二人に会えてよかった」と私は言った。

「ああ。来てよかったな」と夫も私の言葉に賛同した。

 私達は、店の扉の前で、手を振った。

 有花と有実は、「じゃあね。南ちゃん」と山根南に手を振って言った。

「じゃあね」と言って、山根南も手を振り返して一緒にいた六人の下に戻って行った。




 有花、有実の服装は、亡くなった時の物です。
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