衛宮夫妻と迷宮都市   作:灰色企業戦士

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メイドの帰還と

数日振りの食事を終えて、一息つく。

目が覚めてから後、ゆっくり考えることができていなかったが、あの後どうなったのだろうか。

 

 

順を追って考えよう。

 

 

遠坂が去る前に聞いた話をまとめると、あの爆発で俺と遠坂は二人とも意識を失ったようだ。

1日後、遠坂が目覚め、その5日後が今日。

 

発見し、介抱してくれたのは『酒場の人』である、と言った。

つまり、シルやアーニャ、もしくはその同僚が俺たち二人を介抱してくれたのだろう。

そこはいい。

 

問題は場所だ。

俺たちは確かに時計塔であの爆発に巻き込まれたはず。

 

では、なぜ今 時計塔の外に運び出され、介抱されているのか。

 

『時計塔』は広大である。

時計塔はロンドン郊外に位置した街であり、40を超える学生寮、100を超える学術棟がある巨大な学園都市だ。

魔術を行使する以上、失敗もある。

失敗時の負傷者を医療する場所も当然あるのだ。

 

魔術は隠匿するものである。

魔術によって負傷したのであれば、魔術協会の息がかかった施設で治療したほうが色々と()()()()()

敷地内で怪我をしたのであれば、敷地内で治療するのが当然であるし、そうしない理由がない。

 

 

そのはずなのだ。

 

 

しかし、窓から見える街並みにはまるで覚えがない。

無論、広大である時計塔を全て見て回ったとは思っていない。

通っていない通りもあるだろう。知らない店だってあるだろう。

時計塔の全てを知っているわけではない。

 

 

それでもここは時計塔ではない。

明らかに空気が違う。

 

 

 

「明確に何が違うって、言えないんだけどなぁ…なんだろうな…

 それにしても賑やかだ。本当どこの街なんだ…ろ……?」

 

 

街並みは窓からの風景でしか見ていなかったこともあり、喧騒を直に見ようと窓に近付いた。

 

初めに気付いたのは、通りを歩く人の格好だった。

 

 

「…コスプレが流行ってるのか?アーニャは猫だった。あの人は犬、あっちは…狸、か。

 そういうイベントでもやってるのかな…」

 

 

それもやけに手が込んでいる。どのコスプレも尻尾があるのだ。

ただの付属品には見えない。

 

感情によって楽しそうに動いていたり、悲しそうにしている者は垂れさがったりしている。

感情と同期しているようにしか見えないのだ。

 

「…ってことは、やっぱり魔術か?変身魔術…全員が変身魔術を使えると考えるのは早計か。

 あるいは幻影が見えるような結界?でも結界を張っているような空気はないんだよな…

 …だめだな考えてもわからない。遠坂に話を聞いたほうがいいな」

 

「私がなんだって?」

 

「遠坂、終わったのか。おかえり。お疲れ様」

 

「ん。ただいま、士郎」

 

そう言って士郎の後ろから抱きつく。

存在を確かめるように。そこにいることを確かめるように。

 

「遠坂?」

 

「ん…もうちょっと。もーちょっとだけ…」

 

「…悪かったな。心配かけた。ただいま、遠坂。」

 

「なによ士郎のくせに…おかえり、士郎」

 

振り返り、抱き合う形で凛を抱きしめる。

 

「…士郎、あたま」

 

「はいはい。…お疲れ様、遠坂」

 

「んっ…そう、私は頑張ってきたの。もっと労いなさい」

 

尊大な口調ながら、声色は甘えていた。

大きな怪我ではなく、いずれ目覚めると分かっていてもやはり不安だったのだ。

 

「…入れない。入れないにゃ。シル、早くあれ止めてくるにゃ。にゃー(独り身)の目には毒にゃ…」

 

「わ、私だって無理だよ!シロウさんと仲良くなったアーニャが止めてきてよ!…でも凛さん、幸せそう…いいなぁ」

 

「…シルも行ってくればいいにゃ。私も撫でてって」

 

「なっ!それはアーニャでしょ!シロウさんが撫で始めた時ちょっと声漏れてたの、知ってるんだから!」

 

「そ、そんなことないにゃ!にゃーは「シル?アーニャ?」

 

「「ッ!はい!」」

 

「…早く入ってきなさいな。何か用なんでしょ?」

 

そこには顔を真っ赤にして綺麗な笑顔を見せる凛の姿があった。

にっこり、と言った笑顔なのに恐怖を覚えるのはなぜだろうか。

 

しかし。

 

「…開き直るか怒るかどっちかにしてほしいにゃ。しろーは後ろからまだ凛を抱きしめてるし」

 

「いや遠坂が手を離してくれなくてな…はは…」

 

「……ずっと待ってたんだもの。付き合ってるんだし、いいでしょこれくらい」

 

部屋の中はピンク色に満たされているが、呼ばれたからには入らざるを得なくなった二人。

 

様子を見に来ただけだったのに、と大いに後悔するのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

離れて座る!異論はなしにゃ!と強い要望により、士郎と凛は並んでベッドに腰掛けていた。

 

シルとアーニャは、椅子を用意して座っている。

 

「…それで?しろーの体調はどうにゃ?」

 

「あぁ。おかげさまで。シルもありがとうな。ご飯美味しかったよ」

 

「いえいえ、お店の賄いみたいなものですから。お口には合いましたか?

 シロウさんは極東の生まれなんでしたよね?お味噌を使った料理が得意だとか」

 

「あぁ、初めて食べた料理ばかりだったけどどれも美味しかったよ。できればレシピをもらいたいくらいだ。

 生まれ…はそうだな。どっちかっていうと和食が得意だ。料理で手伝えることがあったらなんでも言ってくれ」

 

「士郎のご飯は美味しいから、期待してていいわよ。料理洗濯掃除と主夫スキル高いんだから」

 

「そうなんですか!明日の仕込み手伝ってもらおうかな。」

 

「にゃーは買い出し手伝ってもらうにゃ。しろーにはイジメられたしにゃー。ねーしろー?」

 

「…士郎?…浮気かしら?」

 

「待て、遠坂。誤解だ。アーニャも悪かったよ。買い出しでもなんでもするからからかうのは勘弁してくれ」

 

「…後で詳しく話を聞かせてもらうからね。」

 

「それじゃ、にゃー達は帰るにゃ。また明日にゃ、凛、しろー」

 

「そうね、お邪魔しちゃ悪いよね。またね、凛さん。シロウさん」

 

「えぇ、また明日ね。シル、アーニャ」

 

 

賑やかな二人のメイドは去り、部屋はようやく静けさを取り戻す。

 

「…さて、士郎。ちょっとお話をしましょうか」

 

「待て、遠坂。誤解だ」

 

「何言ってるのよ…私たちのことよ。士郎も気付いてるんでしょ?ここは時計塔じゃないってこと」

 

「あぁ…やっぱり時計塔じゃないんだな。それで、ここはどこなんだ?なんでわざわざここに?」

 

「私も正直把握しきれていないんだけど…まず初めに言うわね。

 ここは私たちの知ってる世界じゃない。結論からいうと、「平行世界」よ。おそらくね。

 なぜここにいるのか。理由はあの時計塔の「実験」が全ての原因でしょうね。…迷惑な話だわ。

 そして、今私たちがいる街の名前は「迷宮都市 オラリオ」。冒険者の集まる街よ」

 

 

 

想像していた以上にスケールが大きい。

事態は予想していた以上に深刻なことに陥っていた。

 




アニメfate/UBWの25話はもうご視聴済みでしょうか。
凛、甘えてます。膝でゴロゴロしてます。ぽかぽかしてます。
あれ見て実際に書こうと思いました。

基本的に二人の空気は甘いです。ピンク色です。
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