衛宮夫妻と迷宮都市   作:灰色企業戦士

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帰宅したらUAが1万を超えていました。
ありがとうございます。
稚拙な文章は向上するよう目指すとして、矛盾やキャラに違和感が出ないよう努めて書いていきたいと思います。

感想にもありましたが、お話はゆっくり進めていく予定です。
少なくともファミリアに入り、ダンジョンに潜り出すまでは。

それではどうぞ。


買い出し

 

二日目の朝。

 

士郎の目覚めから翌日。

まだ肌寒い早朝に士郎は目を覚ました。

 

隣の静かな眠り姫を起こさないようにベッドから抜け出し、階下へ降りる。

木でできた階段を軋ませながら1階に降りた後、洗面所に向かう。

 

オラリオでは、魔石が至る所で活用されている。

遠坂曰く、

『科学が発達していないこの世界に気付いた時絶望したけど、思ったより不便しない。

 困ったことは大体魔石が解決している』

だそうだ。

 

目が覚めたのは昨晩のことだが、もう十分にそのことは実感していた。

 

光を放つ魔石製品『魔石灯』の他、昨晩使用したシャワーに使われる水も、浄化柱と呼ばれる魔石製品で汚水から清潔な水に変えられているそうだ。

 

科学が発達していないこの世界では、生活を支えるのは科学ではなく魔石。

 

唯一の迷宮都市オラリオが発展するわけである。

全世界で需要があるのだ。

考えてみれば当然のことであった。

 

 

桶に汲んである水で顔を洗った後、外に出る。

目覚めた時間が遅かったこともあり、昨晩は外に出ていなかった。

その為、窓からの風景が全てだったのだが、外に出て周りの風景を見ても『異世界である』という実感は起きなかった。

 

 

 

しかし。それも街の中心にそびえ立つ()が視界に入るまでのことだった。

 

 

「……あれが…『バベル』か…」

 

高すぎて頂上が見えない。

まさに「天を貫く」と言わんばかりの光景に嘆息する。

 

まさかそのような建物があるとは想像もしていなかった。

 

神様がいる、そんな世界である以上、信じがたい事態も覚悟していたが、想像以上のインパクトだった。

 

 

そして、あの地下に『ダンジョン』がある。

 

恐怖を感じる一方で、この世界で見えた『正義の味方』への道に、僅かな衝動を覚える。

 

そして、よく見てみれば、武器らしきものを携行し、荷物袋を持つ人がポツポツと塔の方角へ向かっているのが見える。

おそらくあれが「冒険者」なのだろう。

 

 

「おや、あなたは」

 

 

カラン、という音と共に声がかかる。

振り向くと、初めて見るメイドさんがお店の扉を開けて立っていた。

 

 

「元気になられたと聞いていましたが…歩いても大丈夫なんでしょうか」

「えぇ、おかげさまで。遠坂の同僚の方でしょうか?」

「失礼しました。私はリュー・リオン。お察しの通り、シルとアーニャ、そして凛と同じこの酒場で働いています。

 リュー、とお呼びください」

 

 

綺麗な女性、が初めに出てくる感想だった。

白く透き通った肌、短く綺麗な金髪、澄んだ青色の瞳、そしてーーー尖った耳。

もしかして、と思うまでもなく、シャワーの後に遠坂から聞いた同僚の話と繋がる。

 

 

 

「衛宮士郎です。士郎、と呼ばれてます。好きに呼んでいただいて構いません。

 それで、あの……初対面のリューさんに尋ねるのは非常に失礼にあたるかもしれませんが……あなたはエルフ、ですか?」

 

「えぇ。エルフを見るのは初めてですか?」

 

「恥ずかしながら。ヒューマン以外の種族を見るのも初めてで」

 

「……驚いた。あなたはどこの生まれなのでしょう。極東とは聞いていましたが、極東にもエルフや亜人(デミ・ヒューマン)はいたはず」

 

 

即座に失礼であると思いつつも尋ねてしまったことを後悔する。

(…しまったな。昨晩のシルとの会話で遠坂が誤魔化してくれてることには気付いたっていうのに…)

 

 

「っと…ま、まぁ極東の中でも辺境の地でしたから…ははは…」

 

「…そうですか。いえ、詮索はよしましょう。聞かれたくないこともあるでしょうから」

 

詰まってしまった俺を見かねてか、助け舟を出してくれるリューさん。

 

 

 

「…大丈夫、というのもおかしな話ですが。豊饒の女主人(ここ)の従業員は訳ありな女性ばかりだ。

 かくいう私もその一人。私にも聞かれたくない過去があります。

 あなたや凛もまたそうだとしても、私たちは無理に詮索したりしない。安心してほしい」

 

「そうでしたか。…助かります」

 

「えぇ。それに私はそれなりに人を見る目はある方だと自負しています。

 あなたは悪い人間(ヒューマン)ではない。そのくらいわかります」

 

「…ありがとうございます」

 

遠坂の印象もおそらくあるのだろうが、それでも初対面の人から寄せられる信頼に暖かくなる。

 

 

「お礼を言われるようなことは何も。

 …それにしてもシロウは朝が早いんですね。凛は朝が苦手のようだ」

 

「えぇ。遠坂を起こすこと、朝食を作ることは俺の朝一番の仕事でした」

 

「ふふ…そうですか。あの凛が朝食を…いえ、失礼しました。

 仲がよいのですね」

 

 

…遠坂はもう朝が弱いのバレてるんだな…食べてないんだろうなぁ、朝食…

 

 

「…えぇ、まぁ。3年ぐらいの付き合いになるのでそれなりには」

 

「ご謙遜を。凛が目を覚ました時の慌てようをシロウにも見せてあげたいくらいだ。

 シロウ、あなたは愛されているようですね」

 

 

途端に顔が熱くなる。

遠坂はどんな反応をしてくれたんだろうか。

そして、アーニャと同じ流れでからかわれてしまったことに気付く。

酒場のメイドはどうしてこうからかってくるのだろうか。

 

 

「ッ!か、からかわないでくださいよ…まいったな。アーニャにも同じように言われたんですが」

 

「すみません、つい。凛があれほど嬉しそうに話す男性に興味があったので」

 

くすくすと笑うリューさん。

…遠坂のやつは一体何を…

そのとき後ろの扉が開き、大柄な女性が出てきた。

 

「リュー、外で何を話してるんだい。買い出しは、…ってしばらく前にシルとアーニャが拾ってきた坊主じゃないか。

 目を覚ましたんだね。体調はどうだい?」

 

 

リューさんの上司、だろうか。つまりは女将さん?

…女将さんと言うと確かにしっくりくるな。

シルが『お母さん』と呼んでいたのもこの人で間違いないだろう。

…シルとアーニャが俺たちを見つけてくれたってことも間違いなさそうだ。

 

 

「はい。おかげさまですっかり。部屋を貸していただきありがとうございました。

 あなたが『女将さん』でしょうか」

 

「そう、あたしがミア・グランド。この酒場の店主さ。

 部屋については気にするこたないよ。タダで貸してるわけじゃないんだ。

 凛に部屋代をしっかり払ってもらってるよ。あの子には後で礼をしっかりと言っておくんだね。

 

 それからリュー、ちょうどいい、坊主も連れて買い出しに行ってきな。

 街案内と荷物持ち、お互い得だろう」

 

「遅れてすみません、ミア母さん。しかし、それではシロウさんに悪いのでは?」

 

「いや、いいよ。行きます。元々街をゆっくり見て回るつもりだったので、女将さんの言った通りです。

 部屋を借りてる身ですし、何でも手伝います」

 

「今どきの坊主にしては殊勝なやつじゃないか!ほら、じゃあ行った行った!」

 

 

こうして威勢のいい女将さんに背中を押され、二人は中心部へ向かって行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

買い出しの目的地に向かう途中、オラリオのそれぞれのお店について説明を受けつつ向かう。

良いランニングコースはないか、と聞くと怪訝な顔をされたものの、メインストリートを走るのが迷うこともないのでそうした方がいいだろう、といった助言ももらうことができた。

冒険者になるんなら、肉体の鍛錬も増やした方がいいだろう、と思ってのことだ。

 

話を聞くと、リューさんも昔冒険者だったらしい。

詳しくは話したくないようだった。これが「聞かれたくない過去」なのかもしれない。

気をつけておこう。

 

…酒場の人の目につかないよう魔術(投影)の鍛錬もしておかないとな…

 

そして、買い出しの品を全て購入し終え、帰宅の途に着いた。

 

 

「申し訳ありません、シロウ。私の仕事を手伝ってもらって」

 

「いいえ、気にしないでください。街を見ておこうと思ったのは本心ですから。

 案内人がいてくれて助かるくらいです」

 

「…しかし、その両手の荷物は明らかに私より重いでしょう」

 

「んん?そりゃあ、そうでしょう。女性より軽い荷物を持たせるわけにはいかない」

 

「…さっきから言うように私は元冒険者だ。あなたも鍛えているのは知っているが、それでも私の方が腕力は強い」

 

「それとこれとは話が別です。渡しませんよ、この荷物。

 …ところで、鍛えているのは知ってる、とは。なぜですか?」

 

「失礼ながら、あなたを酒場の離れまで運んだのは私です。シルとアーニャがあなたと凛を見つけました。

 運んだのはアーニャと私です。…そのときにシロウの頭の怪我を診た後に、他に怪我がないか服を全て脱がせたので…」

 

シルとアーニャが見つけて、リューさんを呼んできたのか。

さっきの話が本当なら、俺や凛を背負うのも問題なさそうだ。

神の恩恵(ファルナ)ってのは本当にすごいんだな…

リューさんはさらっととんでもないことを言った気がするが、聞いてないこととする。

 

そして、それはともかくとして。恩人だったんだな。

 

 

「…そうだったのか… なら、尚更渡せないな。恩人に重い物なんて持たせられない」

 

「あなたも頑固な人だ……鍛えている、といえばシロウ。先ほど詮索しない、と言いましたが少し尋ねてもいいでしょうか」

 

「答えられる範囲であれば」

 

「あなたを服を脱がせたときに体を見させてもらいました。

 …シロウの体には恐ろしく怪我が多い。見るからに致命傷と思わしき怪我の痕も何箇所かあった。

 そして、凛曰くあなたは【冒険者】ではないという。

 では…あなたは一体…」

 

 

「…すみません、俺はまだそれを話すことができない。ただ、昔に命のやりとりをした、とだけ。

 そのときの怪我です」

 

「……あの日倒れていたのも、そのことが関連しているのですか?」

 

「あーいえ、違います。それとは全く関係ないです」

 

「そうですか。よかった」

 

 

ほっと胸をなでおろしているリューさん。

…この人も良い人だな。

見ず知らずの俺と遠坂を助けると決めたシルとアーニャにしても、このリューさんにしても。

 

人に恵まれている。

そう思わずにはいられなかった。

 

 

「さて、もうお店につきますね。ありがとうございました、シロウ。

 助かりました」

 

「いいえ、このくらいならいつでも。また呼んでください。

 それに俺もリューさんと話すのは楽しいですから」

 

リューさんの話し方はあの騎士王(セイバー)にどこか似ている、気がした。

厳しくも優しい女性のようだ。

 

 

「ッ!………あなたも悪い人だ。凛もさぞかし困っていた、いいえ、困っていることでしょう」

 

「え?」

 

「いえ、なんでも。それではシロウ、また後で。」

 

 

店に戻っていくリュー・リオンの耳は軽く赤くなっていた。

 

もちろん士郎は気付いていなかった。

 




ベルくんハーレムは崩しません。
リリ、シル、アイズは確定だと思ってるので、彼女たちは士郎に靡くことはないです。
ヘスティア様は言うまでもないですね。

誤字に気付いたので修正。

リュー→ミアの呼称の修正。(お母さん→ミア母さん)
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