やっぱり失踪した!と思った方もいるやもしれません。
お仕事の都合で、7月2週目くらいから自宅を離れ、2週間ほど前に戻ってきました。
離れた先でも書けないこともなかったのですが、流石にラノベを持っていくような環境でもなかったので…
仕事もだいぶ落ち着いたので、ペースは落ちますが少しずつ更新を行っていこうと思います。
ではどうぞ。
豊饒の女主人。
西のメインストリート沿いに建つ建物の中でも一際大きな造りの酒場。
夜は冒険者が集い賑やかな酒場だが、昼間は冒険者でない労働者や退屈を持て余した神達をターゲットとしたカフェになっている。
そのため、夜に冒険者が汚した店内の清掃はもちろんのこと、賑やかな酒場から静かなカフェに模様替えが必要となっている。
午後より開かれるカフェと、夜の酒場のための料理の仕込みなど、やることはたくさんあるのだ。
朝一番にメイド総出で清掃を行っている最中、カランカランと音を鳴らしリューは買い出しより戻ってきた。
「ただいまもどりました」
「リュー、おかえりにゃー。しろーとのデートはどうだったかニャ?」
「えっ、アーニャなにそれ?!リュー、あのシロウくんとのデートだったの?!いいなー!」
「冗談ニャ。いくらしろーがいいやつでも、リューが初対面のヒューマンに惹かれるわけないニャ。
……リュー、その顔…
ちょっと赤いニャ…本当にしろーに?禁断の三角関係ニャ!?」
「いえ、店内に入る前に少し駆け足になっただけです、アーニャ。
それにシロウとはデートではありません。ただ買い出しに付き合ってもらっただけです」
昨晩士郎と話して人となりを知っているアーニャは早速リューをからかう。
まだ士郎と話していないメイとルノアは、凛がいつも嬉しそうに話す士郎に興味を持っていた。
「リューがそのくらいで息を切らすわけないにゃ!しろーとリュー…これはもしかするともしかするのかにゃー?」
「会ったばかりの彼にもしかするも何もない。アーニャ、ミア母さんにこれを」
「あ、はいニャ」
同僚のからかいに気を止めることもなく、頼まれた用を済ませるリュー。
メイド達は話しながらも手を止めず動いているあたりは流石である。
手を動かさずに話していたら鉄拳が落ちてくるので、それを恐れてのことでもあるのだが
そこに、もう一度カランカラン、という音が鳴り響いた。
「まだ準備中ニャー。そもそもうちはこんな朝早くからやってるわけ、って、しろーニャ」
「お?おお!君が噂の!」
「すみません、お邪魔してしまって。衛宮士郎です。遠坂から聞いているかもしれませんが、寝ている間お世話になりました。
外から掃除をしているのが見えたので、手伝おうと思って」
「それはしゅしょーな心がけにゃ!それじゃあテーブルを拭くのをお願いするにゃ。
ミャーはお母さんに渡してくるニャ」
「あ、そっちはもうすぐ終わるよ!えっと、あっちの方のテーブルは拭き終えてるの。
この後は床のモップがけだから、先に椅子をテーブルに上げてくれると嬉しいかな。
それから、私の名前はルノア。君と同じヒューマンね!」
「わかった。ルノアさん、よろしくな」
「ルノアでいいし、敬語もいらないよ!じゃあお願い、私もすぐに手伝うから!」
元より夜には酒場の従業員として、冒険者達の相手をしていることもあり、物怖じなど一切ないメイド達。
加えて凛から話を聞いていたこともあり、彼女達はシロウに興味津々だった。
最近の楽しみといえば、凛から惚気話を聞き出すことだったのだ。
「シロウ、何も手伝うことは…」
「いえ、いいんです。部屋代を遠坂に出してもらっていた話を聞いて、遠坂に働いてもらうばっかりっていうのも気がひけるので。
さっきも言ったように、なんでも使ってください」
そこへ、女将さんに買い出しの品を渡したアーニャも戻ってくる。
「それならニャーの仕事もお願いするにゃ!食器洗いに、洗濯にー」
「ほおー。アーニャ、その間お前は何をするんだい?」
「そりゃあ、優雅にお茶でも飲みながらー…というのはもちろん冗談にゃーさーお掃除お掃除…」
いつの間にかアーニャとともに厨房から出てきていた女将さんがそこに立っていた。
とはいえ、店の奥から厨房の方を向いていた士郎は気付いていたのだが。
「偉くなったもんだねぇアーニャ?バカなこと言ってないで掃除を終えな!
それから坊主、シロウって言ったかい。掃除を手伝ってくれるんだって?
いい心がけじゃないか。助かるよ。
それから、掃除が終わったら凛を起こしてきな。掃除の後は朝食だよ」
「はい、女将さん」
「凛が言ってた通りなら足手まといになることもないだろうさ。
お前達もキビキビ動くんだよ!」
そう言って再び厨房の中に戻っていく。
そのあとは一言も会話が行われることなく、黙々と掃除が続けられるのだった。
ーーーーーーーーー
掃除も終わり、士郎は凛を起こす。
朝食の前にシロウの改めての自己紹介が行われた。
引き続き昼からの営業の準備等も終わり、ようやく時間が空いたのは正午まであと1時間というところだった。
女将さんに時間を取ってもらい、士郎、凛、
3人はテーブルを挟んで座っており、片方には士郎、凛。反対側には女将さんが座っていた。
「…さて。凛、シロウ。私に話があるんだって?」
「えぇ、女将さん。
まずは今日まで事情も聞かず私たちを置いてくれてありがとう。
本当に感謝してるわ」
「いいさ。凛にはよく働いてもらってるしね。部屋代の分以上に働いてくれてる。こっちが礼を言いたいくらいさ」
「それでも良くしてもらってることは間違いないの。本当にありがとう。
…それで、他でもない女将さんには事情を話しておこうと思って」
「ほう。いいのかい?知ってるかもしれないが、リューやアーニャを含めてここは訳ありの娘ばかり。
私からは無理に詮索するつもりもない。無論話してくれたら嬉しいがね」
「えぇ。それに、…話すことで助言も貰いたいのよ。私たちはこの世界についての知識がまだ浅すぎる」
「…この世界、ね。まるでつい最近この世界に産まれたような言い方だね」
「それはある意味間違ってないわ。
…信じられないかもしれないけど、私たちは別の世界からきたの。
この世界の理とは大きく異なる世界から」
「…それはまた突拍子もない話だね。なんでそう思うんだい?
オラリオが初めて、ではなく、『この世界が』なんだろう?」
「えぇ。確かにこの街の『バベル』にも、『ダンジョン』にも驚いたわ。
確かにバベルもダンジョンもこの街唯一だし、この街についてだけなら、世間知らずの田舎から拉致されてきた、って考えもできるかもしれない。
でも、女将さん。私たちが元いた場所とは決定的に違うことがあるのよ」
「ほう、それは何だい?」
「私たちの世界ではね、神様は降りてきてないのよ。この世界の『魔石製品』だってひとつとしてないわ。
同じ結果をもたらす
「……それは興味深いね。【モンスター】はいなかったのかい?」
「否、と言い切ってしまうには、
でも、【胸にある魔石が弱点】のモンスターなんていないわ」
「なるほどね… 化け物はいても、魔石が弱点のモンスターはいない、か」
「えぇ。明らかに別種なのよ」
「ふむ…だが、それだけではまだ弱いね。
もちろん全く信じないわけではないよ。この状況でそんな突飛な嘘を吐く理由もないしね」
「無茶なこと言ってる自覚はあるの。私が女将さんの立場だったら信じることなんてできないかもしれない」
「…全くのど田舎から何らかの理由でこの街に連れてこられた可能性はないのかい?」
笑いながら応える女将さん。
まだ半信半疑といった様子だが、それでも真剣に話は聞いてくれているようだ。
「生まれてから一度も故郷から離れたことがなかったなら、そのことも考えたかもしれない。
でも、もちろんそんなことはなかったの」
女将さんはいい人だ。
いきなり現れた私たちの話を真剣に聞いてくれていることがわかる。
元より分かっていたことだ。
この人は信頼できる人だ。
全てを打ち明けた上で協力を求めよう。
そう決意し、士郎に目を向ける。
昨晩のうちに話していたこともあり、通じたようだ。
私たちのもう一つの秘密を打ち明けよう。
「…そうね。やっぱり話した方が良さそうね。
女将さん、いえ、ミア・グランドさん。
私たちがこれから話すことは別世界から、ってことと同じくらい、いえ、それ以上に秘匿したいことなの。
他言無用でお願いできるかしら」
「……あぁ。構わないよ。何があっても喋らないと約束しよう」
「ありがとう。
…私たちは元の世界であることを極めようとしていたわ。
ちなみに士郎は私の弟子よ」
「…ほう?」
「…それが魔術。私たちは魔術師なの。
…といっても理解し辛いわよね。
ということで。じゃじゃーん」
「…それは…ガラスかい?」
「そう、ただのガラスよ。これを机の上に置いて、布をかぶせてっと…」
なんて懐かしみながら。
机の上に布をかぶせた上で、高く上げた拳を振り下ろす。
もちろん拳は強化して。
「はい。見ての通り粉々よね」
「あ、あぁ…凛、お前さん手を怪我していないのかい?お前さんは
「大丈夫。なんともないわ。じゃあ、見ててね。ひとつ取ってっと… よし。
ーーーーMinuten vor Schweisen」
ガラスの破片を1つ摘み、ぷつり、と指先を切る。
そして、割れたガラスに血を零した。
「……!これは…!」
すると、粉々に砕かれたガラスが元に戻る。
割られる前の綺麗な状態のガラスに。
「
…この世界の魔法にはガラス、物質を元に戻す魔法なんてあるのかしら…
3種類以上の魔術を見せたほうが納得しやすいかもしれないけど…どう?
納得できないなら、女将さんが納得できるまでいくつか見せるわよ」
「…いや、十分だ。少なくとも私はこういう魔法を見たことがない。
十分だよ。お前さんのいうことを信じよう。
凛、確かにあんたは別の世界の住人のようだね」
「信じてくれてありがとう。ちなみに士郎もできるわよ。
…ふふふ、3年前はできなかったのにね?」
「そりゃ、時計塔で散々やったしな…初歩の初歩のこれくらいはできるさ」
「っとまぁ、こういう具合に別世界の魔術の理も習得しているのよ。
これでも私、優等生なのよ?
士郎もかなり尖ってるけど、おそらくこの世界にはない魔術を持ってるわ。
…それでね、何が言いたいかというと、ぶっちゃけ神様達に知れるとまずいと思うのよ。これ。
異世界の住人、ってだけでも神様のおもちゃになりそうなのに、
「そうさねぇ。あんたらの争奪戦が始まるだろうね。
ファミリアに入ったところで、生半可なファミリアじゃ、入った後に拉致もあるだろうさ」
「やっぱりそうよねぇ。あの人?たち、珍しいもの大好きだもの。
バレた時のことなんて考えたくもないわ…」
「ふむ。…なるほどね。初めに助言って言ったのはこのことだね。
お前さんたちのその込み入った事情はわかった。だが、私にここまで話す必要もなかったはずだ。
が、話したということは、そういう騒動を避けるために大きなファミリアに入りたい。
その仲介、もしくは心当たりを聞きたいってところかい?」
「…ご明察。ミアさんの慧眼には恐れ入るわ。
…ミアさんには本当に感謝してるし、隠し事したくないって気持ちはあるの。
でも、それは半分。
もう半分は今ミアさんが言った通りよ。
私たちが生きていく上で、どこかのファミリアに入ることは必須だと思う。
それも大きなファミリア。できれば入った後はどこも下手なちょっかいを掛けてこないような所がいいわね。
それなりに私たちは戦えるつもりだけど、
だから、私たちの立ち位置を知るためにも、強い冒険者がいる所がより好ましいわ。
大きくて、強くて、知名度の高いファミリア。
そんなファミリアを紹介して貰えないかしら。教えてくれるだけでも構わないの」
「…いいだろう。まだ坊主のことはよく知らないが、お前さんのことは短いなりによく知ってるつもりさ。
そんなお前さんが信頼している男だ。
いい男なんだろう?」
「えぇ。とびっきりのいい男なんだから。
…いくらミアさんだって、あげないわよ?」
「はっはっは!取ったりしないよ!
よしわかった!任せな。一人心当たりがあるよ。口利きをしてやろう。
多分あの神もお前さんたちのことは気に入るだろうよ」
「ほ、本当!?ありがとうミアさん!」
「ありがとうございます。女将さん」
ミアのことを知っていた凛だが、異世界から来た、とか、
一言で言ってしまえば、胡散臭い事情を話しても信じて貰えない可能性もあったのだ。
想定していた以上の対応をしてくれたミアに大いに感謝していた。
「いいさ。別に大したことをするわけじゃない。
常連の神にいい話を持っていってやるだけさ。
喜んでくれれば、今後とも贔屓にしてくれるだろうよ。
私にしたって美味しい話なのさ。
その神だが…そうさね、3、4日以内には夜に現れるはずさ。
その時に話をしておいてやるよ。
とりあえず今日は坊主と街を回ってきな。
坊主は昨晩起きたばかりで、まだこの街を見ていないだろう?
凛と二人で街をグルっと見てきな。
冒険者になるならギルドだとか、見ておいたほうがいい施設もあるはずさ」
「なるほど、そうね。私も見てない施設があるし、お言葉に甘えさせてもらおうかしら。
士郎、デート行きましょう。
お給金貰ってたし、今日は私の奢りで、ね」
「その代わりと言っちゃなんだが、夜はまた頼むよ。
凛を見に来る冒険者もいるみたいだからね」
「えぇ。任せておいて。恩は必ず返すわ。
…時間もいい頃合いね。お昼ご飯は任せておいて。
士郎が美味しい料理を作ってくれるわ」
「ここで俺か…いいけどさ。
女将さん、俺からももう一度お礼を言わせてください。
本当にありがとう。助かります」
「いいのさ。さっきも言ったように私にも益はある。
気にしなさんな。
…さて、昼食だが私も厨房についていこう。
料理が得意らしいが、異国の料理を見せてもらいたいしね」
「えぇ。任せてください」
信頼できる協力者を得て、二人とミアは部屋を出て行ったのだった。
相変わらず中の時間は大して進んでませんが、話はちょっと進みました。
もう入るファミリアも察する方もほとんどでしょう。
近況報告だけで記事を更新するのは躊躇われたので、更新することはありませんでした。
が、これほど長い間時間を空けるのもどうかと思うので、次回こういうことがあれば、活動報告を利用して報告を行うつもりです。(今日気付いた)
それでは、また。
遅くとも2週間に1回は更新したいと思ってます。