ダンジョンで暴れたいと思うのは間違っているのだろうか   作:冬月雪乃

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第3話

——怪物祭。

ガネーシャ・ファミリア主催のお祭りである。

開催の理由は冒険者の心象を良くするとかなんとか聞いた気がするが、どうなんだろうか。

まぁそれはいい。

今日は怪物祭当日である。

先程クレープ片手にいちゃつく弟分とその主神様を見た気がしたが、くっそリア充爆発しろ。【軍神招来】も辞さないぞ!

 

「ユー君。あれ食べたいな」

 

まぁ、俺もツクヨミと屋台めぐりをしているわけだが。

ツクヨミの小さな指が指し示すのは一つの屋台。あまり人がいないようだが。

なになに……?

 

(うお)チップス……?」

 

焼いただけならダメなのか? とは思うが、ほぐし身を執拗に叩き潰されて丸く形を整えられたそれは確かに食べやすくはあるだろう。

魚が苦手な子供とかなら食べやすそうだ。

 

「三枚で900ヴァリスだよ」

 

明らかに高いが、お祭り価格というやつだろう。

出せない金額でもないし、三枚入りを一つ買う。

 

「あむ……」

 

小さく頬張る。

見た目より柔らかい。……まあ、ほぐし身を潰して整形しただけのようだし……。

 

「んむ……美味しい」

「……さいですか」

「ユー君お魚さん嫌い?」

「可もなく不可もなく、といった具合かねぇ。醤油があれば」

「それは分かるなぁ」

 

【察知】に反応がある。

これはただの人間——?

 

「ユウキさん!」

「んぁ?」

 

振り返ると、ピンク髪の女性が走ってきていた。

顔には焦燥感が張り付いている。

何かあったのだろうか。

 

「ユー君に対する用事は、私を通して」

「か、神ツクヨミ……えぇ……」

 

チラ、と俺を伺う女性に気付いたので頷きを返す。

 

「えっと、私はギルド所属のルカといいます。【ツクヨミ・ファミリア】に依頼があります。現在、街にガネーシャ・ファミリアが持ち込んだモンスターが複数体脱走している模様です。既にロキ・ファミリア及びガネーシャ・ファミリアが解決に向けて動き出していますが、人手や街の大きさから見て、機動力のあるユウキ・スサさんに話を持ち込んだ次第です」

 

考え込むようにツクヨミは唸りだした。

これでもツクヨミは神格者でもある。断ることはないだろう。

と、俺は思ってる。

 

「ふぅん……。ユー君。私を背負ってくれないかな?」

「……は? いや、ツクヨミ、何言ってるのさ」

 

案の定、ツクヨミが発したのは断りではなく、解決策。

 

「だって、その方がユー君強いでしょ?」

「…………その通りだが……。ツクヨミ、怪我するぞ」

「ユー君なら、私を守りきれるでしょ」

 

疑問形ですら無かった。

断言。信頼の裏返し。

確かに俺のスキル【守護願望】は背後に守るべきものがいる限り効果を発揮するものだが……。

それでもツクヨミは連れて行きたく無かった。

怪我されたら困るし、悲しい。

 

「ささ、ほら、悩んでる暇はないよユー君」

「お、おい……!」

 

悩んでいる間に背中によじ登られた。

 

「ごー!」

「あぁ! もう! しっかり捕まっててな! ルカさん! 【ツクヨミ・ファミリア】は事態の鎮圧に向かいますんで、よろしくですよ!」

 

半ばヤケになりながらルカさんに叫び、跳躍する。

【察知】にかかる敵性は……十一体。

すぐに八体になった。

誰だろうか。

ともかく、一番遠い場所にいる敵性に屋根から屋根に飛び移って向かう。

 

「おぉー! ユー君すごぉい! 景色がびゅーんってするよ!」

「何のんきなこと言ってるんだよツクヨミ! 【浮遊】!」

 

腰にかけていた八本の刀を浮かばせ、近くにあった剣を四本買っていつものスタイルにする。

ガネーシャ・ファミリアは公式では中堅だが、その実は実力派ファミリアでもある。

平気で深層の希少モンスターを連れてきている可能性も否めないのだ。

 

「ユー君! あっち!」

「もうやってる!」

 

深緑の鱗、二階建ての家ほどの体長。

ずらりと並ぶ鋭い牙。たくましい尾。大きなかぎ爪。

退化して小さくなった翼。

見たことがないモンスターだ。新種だろうか。

 

「なんだあいつ!?」

「んま! 強そう!」

 

見た目的には翼が退化したドラゴンといった具合だ。

カドモスの親戚か?

勘弁してほしい。

しかし、そこには逃げ遅れたらしい母子がいた。

今にも食われる寸前だ。

背中に刃を立てながらドラゴンらしき何かの前に降り立つ。

生臭い息をかけて俺を覗き込むように睨みつけてくる。

背後にいる親子は、母が子を庇う構図で俺の登場には気付いていない。

 

「ツクヨミ。あの人達の誘導をお願い出来るか?」

「任せてよユー君」

 

するすると背中から降りると、母子に話しかけようと小走りでツクヨミが走る。

ドラゴンがそれを咎めるように尾を振り、腕を振り上げるが、それは途中で地に落下した。

当然、俺が切り落としたからだ。

力がみなぎる。【守護願望】が効果を発揮し始めたようだ。

 

「おい、どこ見てんだ馬鹿ドラゴン。お前の相手は俺だぜ?」

「GOoaaAaAaAAA!!」

「吼えるなよ雑魚!」

 

足を縫い付けるように刀を投げつけ、同時に斬りかかる。

右の剣で鱗を削ぎ、左の剣で肉を断つ。

苦痛と怒りの声を上げてドラゴンがブレスを吐こうと口に炎を溜め込み始める。

 

「はン。カドモスの親戚かと思って警戒したけど、全くの損じゃねぇかよ」

 

言葉を解するかは分からないが、とりあえず煽る。

どうやら言葉は通じるようで——もしかしたら身振りで分かったのかもしれないが——完全にヘイトは俺に向いた。

そして灼熱のブレスを俺に吐き出そうと口を開いた瞬間、ドラゴンは強引に口を塞がれた。

下顎五本、上顎五本。

刀と剣で口を縫い付けたからだ。

そしてブレスは解放され——慌てたようにブレスをキャンセルしようとする涙ぐましい抵抗が一瞬見えたが無駄に終わり、頭が爆発した。

 

「おお、これが本当の頭がパーンか……」

「ユー君。避難終わったよって……こっちも終わってたか……あ、ドロップアイテム。牙かな? 二本か……」

「おかえりツクヨミ。なんだ、ドロップアイテムが欲しいのか?」

「うん。だめかなユー君」

 

大切そうに牙を抱きしめるツクヨミは不安そうな表情をしている。

全く問題ないので差し上げることを伝えると、不安は一瞬で彼方に飛び去り、消えていく。

 

「ありがとうユー君!」

「さて、と。ギルドに報告だけして帰るか。どうやらみんな片付いたみたいだしな。魔石は……と。あった」

 

こぶし大の魔石だ。非常に金になる。

あの程度でこれなら、まだまだいっぱい出てきてくれないだろうか。美味しすぎる。

 

「ユー君? どしたの? 行くよー?」

 

もはや背中は定位置らしい。

流れる様な動作でツクヨミは俺の背中に乗り込んだ。

いつも思うが、背中に幸せの柔らかいものが当たって中々……!

 

「しっかり掴まってろよ!」

「うん!」

 

跳躍。

行きとは違う、アトラクション的な動きを取り入れてギルドに向かう。

屋根から地面。時に洗濯されたものを引っ掛ける紐を走り、わざと転びそうになったり、空中で一回転したり。

背中では楽しげな悲鳴が笑い声と共に聞こえてくる。

あと住民の皆さんの苦笑混じりの苦情。

途中でボロボロのベルと、姫抱きにされたヘスティアを見かけた。どうやらシルバーバックにロックオンされたらしい。

不自然にも二人を執拗に狙ってきていたらしい。

明らかに人為的な匂いがした。

間違いなくあのビッチ女神な気がしてきたのでその場から退散。悪いなベル! 俺、あの女神は死ぬほど嫌いなんだ!

 




ユー君強すぎて原作に絡めないかなしみ
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