♯03 「血涙」
(これはまずい…。)
今更になって女喰種は後悔した。無理にでも逃げておくべきだったと。
SSS級といえどまだ17歳の若い喰種。短絡的に行動してしまいがちなところがある。
ここは裏路地。甲赫の彼女には都合の悪い場所だ。
少しでも大振りに赫子を振るえば壁に突き刺さるだろう。捜査官達が刺さった赫子を引き抜くまで待つなんで馬鹿げた真似をする筈がないことは彼女も分かっていた。
「いきますよー。'姫騎士'さん」
鈴屋 什造が掛け声をかける。
コンクリートを蹴る音。
掛け声と同時に佐々木 排世も動く。
ズグ…
肉を鋭利な物が貫く音が生々しく響く。
「いっ…あ⁈動けな、…え?」
金色の鋭い赫子が2本、佐々木 排世の両脚のふくらはぎを貫いていた。
「どこから…。…あっ」
脚を貫くそれは地面から生えていた。
(灰は止めた。あとはボディステッチ!)
女喰種は『剣』を盾のように構える。
鈴屋 什造が逆刃になるように構えた『鎌』を振り上げる。
赤い刃と金色の赫子がぶつかり合い凄まじい音を立てる。
「くっ…!」
『鎌』の重い一撃を受け止めた衝撃で声が漏れる。
しかし女喰種は攻撃を真正面から受け止められ、鈴屋 什造の動きが止まったのを見逃さなかった。
「そこっ!」
赫子を縦に振り上げ、『鎌』を弾き飛ばす。
「ーハイセ、今です。」
鈴屋 什造が屈み込みながら言う。
「おおおぉぉぉっ‼︎」
佐々木 排世の叫び声と同時に腰の辺りから3本の赫子が発現する。
「なっ…、赫子⁈ しかもあの形状は鱗赫…⁈」
女喰種は『剣』を再び盾のように構え、衝撃に耐えるため体勢を低くする。
佐々木 排世は赫子の表面にある鱗のような棘を逆立てる。
「お返しですっ‼︎」
3本の鋭い赫子が金色の赫子とぶつかり、激しい音と火花を散らす。
ピシッ‼︎
「あ…、ヒビ入って…。」
(さすが鱗赫…。それにボディステッチの『鎌』。あれも鱗赫みたいな感じがする。)
女喰種は佐々木 排世の脚に突き刺さる赫子を収め、後ろに大きく跳躍した。
(後ろのもっと狭い路地に入ることができれば…!)
佐々木 排世が3本の鱗赫で追撃を仕掛けるが、女喰種は『剣』でそれらを切り落とす。
「…ここまでです。下がりなさい‼︎」
女喰種はそういうと左肩から再び赫子を発現させ、右肩の赫子と一緒に地面に突き刺す。
すると轟音とともに巨大な赫子の壁が現れ、捜査官と女喰種を隔てる。
「…まだ、死ねないの。ごめんなさい。」
そういうと、女喰種は去って行った。
「…行ったようですねぇ。久々にひやひやしました…。でも、'姫騎士'さん全然本気じゃなかったみたいです…。」
鈴屋 什造はそういうとクインケをセラミックケースに収めた。
「はは…。それでも強かったね彼女…。ここに不知君達がいなくてよかった。」
(まだ…死ねない…か。カネキ ケンもそうだったのかな…。)
佐々木 排世もクインケをセラミックケースに収める。
ー12月3日 2時30分 椎名家にてー
「ただいま…。」
いつもと同じ家。同じ玄関。同じ廊下。同じ部屋。
椎名 光はいつもと同じそれらが今はとても悲しく感じた。
闇に溶けるような黒いローブを脱ぎ、それを荒々しく床に放り投げる。
ベッドに仰向けに倒れ込み、布団の上で丸くなる。
「お父さん…お母さん…。なんで…なんで居なくなっちゃったの…。」
「寒い…暗い…。寂しいよ…。」
そういうと、椎名 光は大粒の涙をこぼして泣いた。
「ひっく…ひっく…ぐす。お父さん…お母さん…。会いたいよ…。」
右の眼が淡い赤色に染まる。
「ひっく…ぐす。 1人は…1人は寂しいよ…。」
右の眼から溢れる涙がほんのりと赤くなる。
「孝史…だい…す…き…」
そのまま椎名 光は深い眠りに落ちた。
♯03 「血涙」 END
今回は初めて戦闘シーンを文字で書き表わしてみました。
上手く表現できていない部分も多々あると思いますが、これからの努力で直していきたいとおもいます。