剣がすべてを斬り裂くのは間違っているだろうか   作:REDOX

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戦闘シーン難しすぎィ


巡る魂は今こそ吼える

 長髪のモンスターの懐に飛び込んだのも一瞬、白夜を振るう前に横に転がるように飛び退く。前を見ると私が立っていた場所に無数の髪束がすべてを穿つ槍となって突き刺さってきた。

 

「鋼の肉体に鋼の髪の毛、正に全身凶器というわけですか」

 

 まるで蛇のように灰色の髪が纏まり四方八方から襲いかかってくる。視界に映る灰の刺突の軌跡を【未来視(フトゥルム)】で視て避ける。視界外から襲いかかる並々ならぬ殺意でできた刺突の数々は、例え視界で捉えずとも手に取るように分かった。

 しかし、どこから来るか分かっていても避けられない攻撃は避けられない。刺突の包囲網を一部斬り裂きながら距離を取る。

 

「おまけに変幻自在な上無限増殖とはッ」

 

 包囲網を破るために斬ったが髪の毛が短くなっていることはなく、なんの支障もなく再び刺突の嵐が襲いかかってくる。見てみると斬り捨てた端から灰に変わっていた。回避行動を取りながら避けきれない髪の槍を斬り裂く。

 

「まあ地面をぶち抜いて現れた時点でただのモンスターの範疇ではないとは思っていましたが、これは少し凄すぎません?」

 

 しかも言葉を喋る知能があるということも脅威となる。通常のモンスターもある程度知能があるとは言え言葉を喋るほどではない。最悪の場合このモンスターは人間並みの知能と化物級の身体能力、そして驚異的な特殊能力を併せ持っているということになる。

 

「――――オオオオオオォォォォ!!!!」

「――ッ」

 

 槍の嵐を割りながらモンスターが豪速で迫ってくる。力強すぎた踏み込みは地面を砕き、速過ぎる動きは音を置き去りにし、振りかぶった拳はすべてを砕かんと放たれようとしていた。

 

「ラアアアアアアァッァァァァ!!!」

「うるさいッ」

 

 振り抜かれた拳は地面へと突き刺さり、口から放たれた衝撃波は直線上の木々をなぎ倒した。横に一歩動くことで紙一重で避けたにもかかわらず、拳と衝撃波の余波でその場から吹き飛ばされそうになるのを踏ん張って耐えながら白夜で相手の首を狙う。

 

「ヴンッ」

「なッ」

 

 その刃を相手は横から叩き弾いた。軌道が逸れた刃は肩口から灰色の身体を斬り裂くが、モンスターそんなことを意に介さず次の攻撃を繰り出してくる。右、次いで左、そしてもう一度右と三度の殴打からの回し蹴り。そのすべてが岩をも砕く威力、人に当たれば一撃で挽肉と化すであろう必殺の一撃だ。

 大きな違和感を覚えながらも、その違和感が私に活路を与えた。そのモンスターの繰り出す攻撃は()()()()()()。モンスターとの戦闘で最も神経を使うのがモンスター特有の攻撃だ。舌が伸びたり、炎を吐いたりと人間では通常ありえない攻撃をしてくることを最も警戒する。

 

 しかし、このモンスターの攻撃は何故か人間の動きをしていた。モンスターの動きより馴染みのある人間の動きの方が私にとって幾分も避けやすい。

 しかし、その人間のような動きがそもそもおかしい。三度の殴打には雑さはあったもののリズムがきちんとあり、殴打を防いだ相手の命を刈り取る回し蹴りは頭を狙っていた。あまりにも人間臭すぎる動きだ。

 

(知能があれば学ぶことも当然ということですか)

 

 ヘルメス様に聞いた話では下層へと足を踏み入れたパーティーが幾つか帰ってきていないということだ。それらの冒険者との戦闘の際相手の動きを盗んだというのが一番説得力のある説明だろう。

 

(面白い!)

 

 人でありながら人を越えた力を持つ私と、怪物でありながら人の技術を扱うモンスター。私達は似ているようで似ていない、それどころか正反対のような存在だ。果してどちらが勝つのかと考えたら笑みが深まった。

 

「ヴゥゥンッ!!」

 

 モンスターが地面に身体を縫い付けるように中段の構えをとる。それだけで地面が陥没し衝撃が足元を揺るがす。

 

(ならば、私もお見せしよう。私の怪物()を)

 

 モンスターの腕の長さを考慮し後ろに距離を取りながら白夜を振るう。すべてを斬り裂くという私の根源を強く願いながら、自身の深淵から湧き出る力を引き出す。心臓から脈打つ熱が腕を伝い刃へと流れこむ。

 その願いは世界を侵蝕する。その夢は現実を塗り替える。その想いは理を越える。

 

――その斬撃はすべてを斬り裂く

 

「ヴォアアアアアアァァッァッッ――――!!」

「はぁぁぁぁッ!!」

 

 目に映る景色が横一閃に割断される。広場を囲っていた結晶(クリスタル)も生い茂っていた木々も18階層の壁もすべてを斬り裂いたその斬撃は、目の前にいたモンスターも問題なく斬った。首から上、そして蛇のように伸びていた髪の毛もすべてを斬り捨てていた。

 

「――ぐっ」

 

 腹部に鋭い痛みを感じ、見てみると相手の拳から伸びた髪の毛の槍が刺さっていた。中段のパンチが当たらないと分かるや髪の毛を拳に纏い攻撃範囲を広げたようだ。しかし、私が素っ頓狂な声を出したのはその事実に対してではなかった。

 腕が、そして髪の毛が()()()いた。

 

「――――嘘だろッッ」

 

 生きているのかと私が口にしたのと刺さっていた髪の毛がまるで脈動するかのように蠢いたのはほぼ同時だった。その直後刺さっていた槍が伸び、私を巻き込みながら森へと突き進んでいく。

 

「あぁぁぁっぁぁぁぁッ!!」

 

 凄まじい勢いで木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、左右上下が分からなくなるくらい転がりまわって漸く私は止まった。木を破壊するほどの速度がなくなり、中途半端に背中を強く樹の幹に激突させ肺の中の空気がすべて吐き出される。

 身体のどこを負傷したのかすら定かではなかったが、取り敢えず全身に痛みが突き刺さり身体が悲鳴を上げていることが理解できた。

 

「な、ぜ」

 

 確かに斬ったはずだ。胴体から首を切り離しても生きているとは露程も思っていなかった故の油断だった。髪の毛が再生するのはまだ理解ができた。トカゲは尻尾を切り離して再生できると聞くし、魚の中には歯が何度も生える種類もいると聞く。しかし、脳がある頭がなくなっても活動を続ける生き物がいるとは誰も思わないだろう。

 モンスターが他の生物とは大きく違うと分かっていても、やはりどこか常識にとらわれていた。

 

「は、はははッ」

 

 禍々しい存在が徐々に近づいてきているのが感じ取れた。肌を突き刺すような殺気を、私は以前どこかで同じものを浴びせられた気がした。

 今まで戦ってきたモンスターが霞むほどに、その怪物が化物らしかった。

 

「ハハハハハハッッ!!」

 

 木を背にしてなんとか立ち上がる。気合を入れても笑ってしまう膝を叩きながらなんとか地面に直立する。腹には風穴ができていて、そこから大量の血が地面へと流れ落ちる。穴が空いてしまった上着を脱ぎ捨て、改めて自分の身体の状態を理解した。

 髪によってできた傷だけでなく、吹き飛ばされた時に突き刺さった枝、地面や木に衝突してできた切り傷や打撲、呼吸をする毎に痛みを発する肋骨は恐らく折れてしまっている。内蔵にも多大な被害が及んでいることは誰が見ても明らかだった。

 

「ああ、なんで世界は私に休みをくれないのか」

 

 痛みに耐えながら身体に突き刺さっていた枝を抜いた。

 籠手の裏に収納してあった試験管型の容器を取り出す。その中には赤い液体が、注がれた時と変わらぬ生々しさを保ちながら入っている。

 

「まあ、欲しいとも思っていませんでしたが」

 

 思い返してみると、最近死にかけてばかりだ。冒険者となって未だ二ヶ月程だが、オッタルとの二度の戦闘、ゴライアスとの一騎打ち、闇討ちされ毒殺されかけた。その度に運良く生き延びているが、毎度毎度そんな幸運が訪れるとは限らない。

 今回は死ぬかもしれない。

 

「だが、抗うことこそが生」

 

 死に抗い、神に抗い、人には到れないというその考えに抗い続けて私は剣を振るう。運命という言葉を用いる人々がいる。予め定まった道を歩んでいるのだと、昔の人々は思っていたらしい。神が定めた人々の運命を、その決まったレールの上を歩んでいるだけだと彼等は言った。

 しかし、そんな馬鹿なことがあってたまるかと私は今思う。例え神が私が死ぬという運命を定めたとしても、私はそれに抗う。死ぬという運命を、私は一振りの剣で斬り裂く。今まで生きてきた己を、振るい続けてきた剣を、磨き続けてきた剣技を愚直なまでに信じ続け、私は抗い続ける。

 

「私は――――まだまだ死ねないんだ」

 

 容器の栓を抜いて、中身を口に含む。何度かしか口にしていない血は、しかし慣れ親しんだかのように喉を通って身体へと取り込まれた。拒絶感などなく、忌避感すらなかった。

 それは、私には必要なものだから。

 

 湯気を上げながら身体の傷が再生されていき、身体の奥底から熱が溢れる。背中が灼熱の如く熱を帯びながら、身体に力が漲る。しかし、それも中途半端なところで塞き止められてしまう。私という存在を守るために発現してしまった【(グレイプニル)】というスキルだ。

 

「ここまで、ですか」

 

 強化の限界を把握し、前を見据えた。私が吹き飛ばされてできた道の向こう側から化物は歩いてきていた。蠢くような髪はその巨体をより大きく見せ、まるで禍々しいオーラのようにすら見えた。そして、怪物の頭は健在だった。本当に胴体と頭を切り離しても生きながらえ、果てには再生させたらしい。

 

「モンスターなら魔石を斬れば死にますよね」

 

 首を斬っても死なないモンスターでも、その存在の核となる魔石を破壊すれば死ぬだろう。人間でいえば心臓にあたる部分だ。まあ、人間は首を斬ったら確実に死ぬところが違うが。

 

 白夜を構えて敵を待ち受ける。無闇に飛び込んでも髪の槍に囲まれて逃げ場を失うだけだ。ならば答えは単純。包囲される前に一足で懐に飛び込み魔石を一刀で破壊する。幸い怪物の魔石は紅々と胸で輝いていて場所がはっきり分かる。

 徐々に近付いてくる強大な敵に対して心を落ち着かせていく。穏やかな呼吸、自然な心臓の鼓動、感覚の行き届いた手足。普段と何も変わらないよう努めていく。

 しかし、考えてみれば普段と今、何が違うのだろうか。

 

――私はただ斬る

 

 そうだ、何も難しく考える必要などない。例え敵が弱かろうと強かろうとすることは何も変わらない。例え死にそうでも怪我一つなくともすることは何も変わらない。

 生きることとは斬ること、過去も現在も未来もそれは変わらない。であるならば――

 

「――私に斬れないものはない」

 

 己を信じ続けろ。剣に傾けてきたその時間を、剣を振るい続けてきたこの腕を、走り続けてきたこの脚を、剣であると誓った己という存在を信じ続けろ。信じることとは、すなわち力となるのだから。

 一種の自己暗示とも言えるその信念は、私の感覚を研ぎ澄ませていった。目に映る景色は時間が遅くなったかのように流れ、肌で感じる風の流れで物の動きを捉え、微かな臭いだけでどこに何があるか理解できた。

 

「オオオォォォッッ――!!!」

 

 灰の怪物が衝撃波を放とうとした瞬間、私はもう走りだしていた。視覚だけでなく、触覚で感じ取った咆哮の攻撃範囲を最小の動きで避け、最短距離で相手の懐を目指す。私が衝撃波を避けたことをいち早く察知した相手は即座に髪の槍で迎撃を開始した。

 

「ハァッ!」

 

 最後の一歩、その一歩にあらん限りの力をつぎ込み超加速する。髪の包囲網を食い破り私は相手の懐へと到達した。懐に入ってしまえば髪を使った攻撃は格段に減る。

 

「シィッ」

 

 まずは一刀、肩口から魔石を狙って袈裟斬り。しかし、文字通り人外の反応速度と身体能力で相手は刃が魔石に到達する前に身体を捻って回避。返し刀で再び魔石を狙うが、それも刃が魔石に届く前に身体を動かされ外れる。

 

「オオオオアアァァァァァッ!!!」

 

 怪物は己の特性を十全に理解している。頭を斬っても再生するほどの再生能力は、ただ斬られただけの傷など数秒で回復させる。どれだけ斬られても魔石さえ破壊されなければ相手は死なない。

 故に、力押しという戦法を怪物が取るのは当たり前だ。

 

 両手を振り上げ、ただそれを地面へと振り下ろす。たったそれだけの攻撃なのに、地面が割れ、地震と勘違いするほどの衝撃を巻き起こす。研ぎ澄まされた感覚でその衝撃の中でも私はなんとか姿勢を保っていた。

 切り傷程度では数秒で回復してしまうが、部位欠損ならもう少し時間を稼げるだろう。そう思い私は振り下ろされた腕を斬り裂いた。斬撃は地面すら斬りながら怪物の両腕を切り捨てた。

 

「オオオォォォ!!!」

 

 痛みなど感じていないのか、身体を大きく振り回して髪で巨大な薙ぎ払いが襲い掛かってくる。地を蹴って空中に身体を躍らせて私は薙ぎ払いを避けた。

 

「ジネェェェェ!!!」

 

 私の身体を影が覆い隠した。怪物の頭上を見ると、そこには巨大な剣が浮かんでいた。灰色の髪でできた巨大な剣だ。岩を貫くほどの強度でできた剣だが、形だけだ。それは正しく言ってしまえば剣ではなく鈍器だろう。

 しかし、私にはまるで審判を下す神の剣のように見えた。

 

(だが、私に剣で挑むという意味を知るといい)

 

 空中で身体を捻り、斬撃を飛ばす。それで振り下ろされる巨大な剣は半ばで斬り裂かれる()()だった。

 

 鉄と鉄が打ち合ったような音が鳴り響いた。灰色の巨大な剣は僅かに斬れたが、その刀身すべてを斬り裂くには程遠い結果だった。未だ健在の剣が、嵐を巻き起こすかの如く豪速で振り下ろされる。

 

「おおおおぉぉぉッ!!」

 

 飛ぶ斬撃で斬れなかったことには驚いたが、戦場で驚き呆けている暇はない。振り下ろされる大質量の剣を今度は白夜で直接斬るために刃を振るう。若干の抵抗を腕で感じながらも問題なく斬り裂いた。

 

「ゴロスッ、ゴロス!!」

「がッ!!」

 

 髪を動かしながら身体も動かせる怪物は私が髪の剣を対処している間に近付き、私の首を掴んで地面へと叩きつけた。肺の中から空気を強制的に吐き出され、視界が揺らいだ。咄嗟に血を首に纏い、なんとかそのままもがれるのを阻止したが締め付ける力は徐々に強くなっていく。

 

「ぐ、あぁぁぁぁ!!!」

 

 腕を無理やり振るい斬ろうとするも、瞬時に髪が腕に巻きつき地面へと縫い付けられる。脚も同様に地面へと縫い付けられまったく身動きが取れなくなった。地面に背中を打ち付けたせいで傷ができたのだろう、血だまりができはじめていた。

 

「ジネッ、シネッ!!」

「し、んで、たまる、か……」

 

 血の強度を上げようと首に意識を向けた瞬間、私はあることに気が付いた。怪物の手の感触に違和感があった。それは本当に些細な、取るに足らない違和感だったが、私が今まで感じていた既視感に答えを与えた。

 

 指が一本なかったのだ。

 

 たったそれだけの事実だったが、それだけで私は理解した。その怪物が何故私を探していたのか、何故こんなに強いのか。パズルの最後のピースが嵌った、そんな感覚。

 

(そうか、お前は)

 

 自分の中に更なる熱が湧き出ていた。何かに罅が入るかのような感覚が身体の中に響いた。しかし、私はその熱を受け入れもっと欲しいと願った。

 私の中にある感情は歓喜だった。

 

(お前は、また私に会いに来てくれたのか。更に強くなり、私を殺しに来てくれたのか)

 

 身体の中を巡る熱は体外へと漏れだした。地面に広がる私の血が脈動するかのように蠢いた。まるで歓喜に震えるように、私の想いに応えるように血が熱を帯びる。そして、地面から血の刃が生えた。

 

「ヴォアアアアアッッ!!」

 

 血の刃が怪物に突き刺さり、悲痛の叫びをあげた。予想外の攻撃に驚き、私の上に乗っていた相手は飛び退いた。血の刃が幾つも地面から生え手足に絡んでいた髪の毛を斬り裂いた。

 

「ハハ」

 

――灰色の身体

――灰色の長髪

 

「ハハハハハハ!!!!」

 

――恐ろしく力強く

――恐ろしく素早く

――恐ろしく硬い

 

「また、お前に会えるとは!」

 

――私を探していた怪物

 

「倒したはずだったが、まさか生き返ったとでも言うんですか」

 

――再生した手にすらなかった一本の指

 

「なあ、ゴライアス!」

 

 言葉など通じるか分からなかった。しかし、話すのだから理解もするだろうとは思った。そもそも会話しようなどとは思ってもいなかったし、必要とも思っていなかった。だが、語らずにはいられなかった。

 

「アカガミ、ケンシ、ゴロスッッ!!」

 

 灰色の髪の毛の奥で光る紅の瞳は憎しみを孕ませながら私を睨んだのが分かった。こんなにも私を求めていたというのに、私は今の今まで相手の正体に気が付いていなかったのだ。一度殺した敵が再び現れるなど誰が予想できようか。

 そもそもダンジョンが産み落とすモンスターに記憶があるなどという話も聞かないし、記憶を引き継いで産まれ落ちるモンスターがいるなんて夢物語のようだ。しかし、そんなことはどうでもよかった。

 恐ろしく強くて当然だ。本来は『灰色の巨人』と称される体躯に見合った力が人間大の身体に濃縮されたのだ。

 

「二度も私を殺しに来てくれたのです、名前を教えておきましょう」

「ナ、マエ?」

「ええ、私の名前はアゼル・バーナム。赤髪でも剣士でもない、アゼル・バーナムだ」

「アゼル、バーナム……アゼル、アゼルッ!!」

 

 最初からゴライアスは私のことを認識していた。そうでなければ私の真下から現れることなどできなかっただろう。しかし、名前を呼ばれると殺気が増したかのように感じられた。

 

「アゼル、ゴロス!!」

「ええ、私はお前を殺しましょう」

「ゴロスッ、アゼエエエェェェェェェルッ!!!!」

 

 憎しみが膨らみ、それがゴライアスの力の糧となった。隆起していた身体は更に膨らみ、禍々しい殺気はさらに膨れ上がり空間を軋ませた。殺気だけで冒険者を殺せそうなゴライアスを前に、やはり私の中にあるのは喜びだった。あるいは感謝の念と言ってもよかっただろう。

 更なる強敵となって再び相まみえることのができたことへの喜びと感謝だ。

 

 白夜を構える。それだけで吹き荒れる殺気が斬り裂かれ静寂へと還る。

 

「さあ、また一度死合いましょう。今度こそその命、私が斬り殺す」

「オオオオオオオオオオオォォォォォォォッッ!!!」

 

 自身の生きる意味である宿敵と本当の意味で相まみえることのできた化物はあらん限りの力で吠えた。




閲覧ありがとうございます。
感想や指摘等あったら気軽に言ってください。

早く10巻読みたい今日このごろ。
そして外伝6巻も早く読みたい……都市外の話早く読みたいです。

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