1 後輩ちゃんと木場君の恋愛事情について
今日も滞りなく授業が終了し、放課後の喧騒があちらこちらで聞こえるようになった頃、
「祐斗先輩!」
少女の声が廊下に響いた
「栞さん。」
落ち着いた少年の声が少女に届いた。
「ごめんなさい。図書委員の仕事が長引いてしまって…お待たせしてしまって申し訳ありません。」
少女は本当に申し訳なさそうに深々と頭を下げる
「気にしなくていいよ。栞さんがしっかり仕事をする人だって分かってるから。それに、今回は僕の用事だからね。むしろ急がせちゃってごめんね。」
逆に謝り出す少年、二人して謝りあって、思わず
「「ふふ/あは」」
笑い合う。そして
「じゃあ、付いてきてくれるかな?」
「はい。」
二人は歩き出す。肩を並べて。
「ここ…ですか?」
連れて来られたのは、今は使っていないはずの、旧校舎の部屋の前。扉にはオカルト研究部と書かれた、可愛らしいプレートが掛けられている。
「うん。今日はお誘いを。
ようこそ、オカ研へ。」
開かれた扉の先は…オカルトチックだった。
「きゃあ!」
驚きのあまり、飛び上がる。そして肩が触れ合う。気付けば、腕を組み合っていた。
「もしかして…こういうの苦手だった?」
「はい。実際に目で見るのは…」
「ごめんね。でも、中に入れる?」
「はい。大丈夫です。なんとか…」
「後、腕を。」
「え?…あっ、その…ご、ごめんなさい!」
顔から火が出るのではないか、というぐらいに顔を真っ赤に染めて、サッと離れる。
「こちらこそ、ごめんね。」
学園の王子様である彼も男だ。平均より明らかに大きな後輩の胸部が腕に押し付けられては、流石に動揺せざるを得ない。しかし
「?何で先輩が謝るんですか?」
可愛く首をかしげながら、問われる。
「ううん、何でも。」
そして、彼は部屋に入った。疑問符を浮かべる彼女を促しながら。
部屋に入ると、目についたのは、お菓子を食べる少女、お茶を入れる女性、そして紅い髪の毛をした、何か資料を見ている女性だった。
「部長、この子が僕の後輩で、宮森栞さんです。」
紅い髪の毛の女の人、グレモリー先輩が答える。
「そう、この子が例の…」
紅い瞳に見つめられ、少し驚く。
「あの…祐斗先輩、どうして私をここに連れてきたのですか?」
この場にいるのは場違いだ、そう感じて問いかける。ここにいるのは、目の前の先輩をも越える、全生徒の憧れである、グレモリー先輩と姫島先輩の二大お姉様、自分と同学年で、小柄で可愛いと評判の搭城さん、そして、王子様である木場祐斗先輩。そんな四人の中に入って、萎縮していた。
「栞さん。」
真剣な表情。何時もの優しい笑顔ではなく、本当に真剣だと感じられる表情で言われた。
「部活に入ってほしいんだ。僕らのオカルト研究部に。」
「…はい。」
目の前の、彼の真剣な表情から、とても大切な事だと察し、嬉しさと戸惑いが有りながらも、しっかりと答えた。
「ようこそオカ研へ。歓迎するわ、宮森栞さん。」
グレモリー先輩の言葉で、締め括られた。
その後、姫島先輩や、搭城さんと自己紹介及びに、どういった活動をしているか、どれだけの頻度で活動があるかなどの質問をした。分かったのは、ほとんど部活の時間はお茶をしているだけで、みんなはグレモリー先輩の紹介で始めたアルバイトで、たまに居ないときがあるかもしれないということだった。
「でも、どうして私をこの部活へ?みんな、この部活には入れないと言っていたのですが?」
「それは、部長が気に入った人しかこの部活に入れないからです。」
塔城さんはそう言った。しかし
「私、グレモリー先輩とは、本日初めて会ったのですが?」
そう、グレモリー先輩とは会ったことがない。会ったことのあるのは、祐斗先輩と同じクラスである塔城さんだけだ。
「それはね、祐斗が珍しくお願いしてきたからなの。」
「ええ、本当に珍しく。」
お姉様方がそう言った。つまり
「祐斗先輩が?」
「部長!朱乃さん!」
祐斗先輩は赤くなっていた。正直、初めてのことが多すぎて分からなくなってくる。
「つまり、例外で、祐斗先輩の推薦する宮森さんを部活に入れた、そういうことです。」
塔城さんはそう言った。
「小猫ちゃんまで!?」
何故か焦っている祐斗先輩、だが、それよりも気になることがあった。
「あの…皆さんは一体どういった関係なのでしょうか?普通の部活友達とは違いますし。もしかして…」
不安だった。ただそれだけだった。
ふっと、笑われた気がした。
「私は、祐斗の姉のようなものよ。」
苦笑しながら言われた。恥ずかしい。
「私は、祐斗君の彼女ですわ。」
………
「冗談はやめてください、朱乃さん!栞さんが信じてるじゃないですか!」
…冗談?冗談…良かった、本当に良かった。思わず、出た言葉に惑わされたが、冗談で良かった…
「私も祐斗君の姉のようなものですわ。うふふ。」
微笑ましいものを見るような目で見られている。とても恥ずかしい。
「私は祐斗先輩の姉です。」
「いや、小猫ちゃんも乗らなくていいから。」
普段は無口な塔城さんの冗談、いつも優しい笑顔の祐斗先輩の慌てた顔や、動揺した顔。
「なんだか、とても楽しい部活ですね。」
本心から、そう思った。
「もうこんな時間。今日は終了ね。お疲れ様、みんな帰っていいわよ。」
グレモリー先輩、部長の許可を得て、帰りの支度をする。
「あらあら、もう暗くなっていますわ。祐斗君、栞さんを送ってあげては?」
え?それはもしかして…
「ええ、そうするつもりでした。」
祐斗先輩と一緒に帰ることになった。…姫島先輩ありがとうございます。
「今日は、その、楽しかったです。祐斗先輩のおかげです。」
帰り道、普段とは違った状況で、戸惑いつつも、会話を続ける。
「いや、僕の方こそ、楽しかったし、嬉しかった。ありがとう、部活に入ってくれて。明日から図書室に行けないでしょ?本とかも持ってきていいからさ。」
気を使ってくれているのだろうか?私は…
「いえ、先輩と、先輩方や塔城さんと一緒にいるのが楽しいので。」
そう答えた。はっきり言えない、そんな自分が情けない。
「そっか。」
沈黙。だが、先輩との沈黙は苦ではない。むしろ心地よい感じがした。好きな時間だ。夕日に向かい、肩を並べて歩いた。
「ここが私の家です。」
「ここが…栞さんの…」
大きな武家屋敷、それが目の前にあった。
「えーと、ご家族はどんな仕事を?」
「父は、地域の正義の味方らしく、部下のお仲間さんと一緒に、色々守っているそうです。母は、父の後ろについていますが、時々、お仲間さんにお願い事をしていたりしますね。」
「…そうか。ありがとう、教えてくれて。」
お礼を言われた。祐斗先輩は律儀な人だと思った。
「あっ、あの!よろしければ、送って頂いたお礼にお茶でもいかがでしょうか!」
言ってしまった。
「おい、家の前でなにを…お嬢!何を…」
門が開き、人が現れた。
「お嬢…まさか……野郎共!お嬢のお帰りだ!それと…第1次警戒体制をとれ!!」
その言葉と共に、多くの足音が地面を揺らし、10秒しないうちに、強面の人の列が作られた。
ただいま帰りました。竜さんを初め皆さん、ただいま。
「「「「「おかえりなさいませ、お嬢!!!」」」」」
そして、
「あの…先輩、ダメ、ですか?」
上目遣いで言われた。周りからは、凄い視線の嵐が。
「ご迷惑でなければ、お邪魔しても?」
パァ、と明るい笑顔で
「はい!」
と返事をされて、手を引かれて家に入っていった。
「おかえりなさいませ、お嬢様。ようこそおいでくださいました。」
和服の女性が、礼儀正しく迎え入れて来た。
「どうもはじめまして、木場祐斗と申します。本日は栞さんを送って来ました。」
「後でお茶の用意をお願いします、清水さん。」
「かしこまりました。それから、旦那様と奥様が、お二人をお呼びです。速やかに、来るようにと。」
「分かりました。」
「え?」
「先輩こちらです。」
腕を引かれ、連れていかれた。
襖をあける。中には、二人の人がいた。
「ただいま帰りました。お父様、お母様。」
凛とした姿の後輩を見て、
「失礼します。」
二人の対面になるように置かれた、座布団に腰を下ろす。話の先人を切った
「木場祐斗と申します。栞さんとは…」
「少しいいかね?」
遮られた。
「彼と二人で話がしたい。菫、栞、少し出ていなさい。」
「栞、此方へ。」
「はい。先輩失礼します。」
気付けば、後輩の父親と二人っきりになっていた。」
「木場君だったかね?」
「はい。」
「娘は…元気にやっているかね?」
「…はい。今日も僕らの部活に入部していただいて、楽しそうに過ごしておられました。」
「そう固くならなくていい。…そうか。…ありかどう。」
「え?」
「自分の娘のことだからな。いつも本を読んでばかりのあの子が、友達、それも、男を連れ込んでくるとはね。よっぽど、君を気に入っているのだろう。」
「いえ…そんな…此方こそ栞さんには、お世話になっていて…その、いつも元気をいただいています。」
「ふむ、それで?」
「それで、とは?」
「娘を奪っていくのかね?」
「…はい。将来的に、そうしたいと思っています。」
「そうか。いいだろう。」
「…え?いや、あの、いまはまだ、先輩後輩の関係で…」
「いや、目を見れば分かる。君の目と、娘の目をね。」
「あの、僕に…僕に娘さんを、」
「まだ、早いよ。それは、後に聞こう。」
「…はい。」
「君のご両親は?」
「…天涯孤独の身なので。」
「そうか…すまない。不躾な質問を。」
大人にこんなに丁寧に頭を下げられたのは、初めてだった。
「いえ!大丈夫です。養父のような人や育ててくれた人はいるので。」
「そうかね。ならば、いい。」
「君に、4つほど、条件を出そう。いや、約束ごとかな。」
「なんでしょうか?」
「一つ、明日から娘を帰りに送ること。
一つ、娘に悪い虫がつかないようにすること。
一つ、娘を守ること。
最後に、私のことは、お父さん、と呼びなさい。
いいかね?」
「あの…どうして…そこまで…?」
「娘が選んだ男だからだ。それに…私の若いときに似ている。迷っているな。」
「…はい。僕には果たさなければならない使命がある、恩のある人に恩返しをしなくてはいけない、やることだらけです。だから…」
「娘はそれについてなにか?」
「それは…」
「ねえ、聞いていいかな?」
「なんでしょうか、先輩?」
「新しく出来たやりたいことと、昔から決まっているやらなくてはならないこと、どちらを選ぶべきか、栞さんならどう決めるのかなって。」
「…えーと、先輩?」
「なにかな?」
「それは、どちらか一方だけなのですか?私は、どちらもやれると思うのですが…」
「え?」
「一方だけなら、やりたいことをやるべきだとは思いますが、これは祐斗先輩のお話何ですよね?それで、迷っている。ちがいますか?」
「うん、そう、だね。」
「なら、どちらかに絞るのではなく、どちらもやり遂げましょうよ。祐斗先輩ならできますよ。きっと。悩むより、努力です!」
「はは、栞さん、ありがとう。」
「え?いえ、その、こ、こちらこそ?」
「何それ。」
「はい。僕は諦めたくない。だから、すべてやり遂げてみせる!」
「そうか。なら、よろしく頼むよ。祐斗君。」
「あの、ありがとうございます。その、お父さん。」
「うんうん、よし話は終わりだ。栞を呼ぼう。まっていてくれたまえ。」
「あの、お母さん。」
「おいおい、栞、いい男持ってきたな。お前の彼氏か?」
「え?ち、違うよ!彼氏とか、そんなんじゃなくて…」
「好きなんだろ?」
「…うん。」
「そうか。なら、逃がさないようにしな。あいつはいい男になるぜ。若い頃のうちのにそっくりだ。」
「お父さんに?」
「ああ、何か抱えている男ってのはな、それだけでかっこいいが、その抱えてるもんすべてなくなったときに、すっげぇ輝くんだぜ?それを見た私は、現にこう、落ちてるしな。」
「そっか。」
「ああいうのは、総じてメンドクセェ。だがな、やりきった先には必ず良いもんが待ってる。だから、支えてやんな。」
「うん、うん!私、先輩が好きだから。頑張ってみるよ!」
「おう、がんばれ!」
「栞、お話は終わった。彼の相手をしてあげなさい。」
「はい。お父様!」
希望に満ちた顔つき、自分の娘の成長を垣間見た感じがした。
「私らの娘は成長してるよ。」
「ああ、何せ俺たちの娘だからな。」
「今日はありがとうございました。」
「また、何時でも来なさい。」
「はい、必ず。」
「栞、お見送りを。」
「はい。」
こうして、終わりを告げた。
「「「「「お勤めご苦労様です!!!」」」」」
そう見送られ、門の前、
「栞さん。」
「何ですか、先輩?」
「明日から、毎日帰りは送るよ。その、お父さんに頼まれてね。」
「え!…あの、父は春虎、母は菫です。」
「あ、うん。春虎さんに頼まれてね。色々。」
「何ですか!?色々って!」
「色々だよ。」
「うー、先輩は意地悪です。」
「ふふ、そうかもね。」
「な、なら、明日からご迷惑をかけるお詫びに、その、お、お昼のお弁当をつ、作ってきてもいいですか!その、先輩の分を。い、嫌なら別にいいんですけど!その、どう、ですか?」
「…なら、お願いしようかな。」
「いいんですか!?」
「うん。栞さんがいいなら。」
「なら、明日作ってきますね。どこでたべます?」
「僕が、迎えにいくよ。栞さんの教室に。明日は晴れらしいから、中庭に行こう。」
「はい!」
「じゃあ、今日は楽しかった。ありがとう、栞さん。また、明日。」
「はい!先輩、私も楽しかったです。また、明日。楽しみにしておいてくださいね?」
「うん。楽しみにしているよ。」
こうして、二人の物語は幕を開けた。
「あれ?先輩が来るって…それ凄く目立つ!?ど、どうしよう。」
こうして、幕を開けた?
栞さんは、ビブリアの栞子さんの容姿のイメージで、神器持ちです。木場くんは一目惚れ、栞さんは、優しい木場くんに惚れました。だいたいそんな感じです。次は決まっていません。できたら投稿します。