【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
新学期から一週間ほどがたち、落ち着いた頃に事件は起きた。
優は応接室に向かっていた。また電話で呼び出されたのだ。
何度かご飯などをツナに誘われ、夏休みが終わる頃には更に親しくなることが出来た。が、夏休みで変わったのはツナとの関係だけではない。
雲雀との関係も進んだのである。だが、一般とは少しずれた進み方だった。
優の知らぬ間に合鍵を作られていて、雲雀が自由に優の家を出入り出来るようになった。どんどん雲雀が優のプライベートを侵食していくので、優が雲雀に取り繕う回数は減っていった。……面倒になったとも言う。
そのため電話で「えー」と1度文句を言ってから、今日も優は応接室にやってきたのだ。
視界に入った応接室の扉を見て優は首を傾げる。いつも閉まってる扉が開いていたのだ。だが、もうノックすることにも緊張しなくなっている優は、そんな些細なことで止まることはなく入っていく。
「失礼しま……す」
何とか言い切った優だが、目の前の状況にかなり驚いている。ゆっくりと視線を向ければ、山本と獄寺が倒れている。更にツナがパンツ一丁。トドメに雲雀とリボーンの武器が交差していた。
(原作きたーーーー!)
優は雲雀の初登場シーンをしっかりと覚えていたようだ。
(ってか、この後って……爆弾やだーー!!)
唐突に身の危険を感じ、優の顔が強張る。
「ゆ、優!?」
「……ツナ君」
「逃げて、優! オレらのことはいいから!」
ツナに強い口調で言われ、優は狼狽する。もうツナの死ぬ気モードは解けている。否、解けているからこそ優は狼狽したのだ。普段のツナが優を守ろうとしているのだから。
「……君の知り合い?」
「は、はい! 友達です!」
雲雀の声で我に返り、反射的に答える。
「ふぅん。今日はこれで見逃してあげるよ。次はないからね」
「……ありがとうございます?」
見逃されたのはツナ達であって優ではない。そのため、疑問系になってしまった。
気を取り直し、優はツナに駆け寄る。
「ツナ君、大丈夫?」
「う、うん。優、どういうこと……?」
チラっと雲雀の顔を見てからツナは言った。どんな関係か知りたかったのだ。
「後で話すよ。今は先に……」
最後まで優は言わなかったが、ツナには通じた。雲雀の気が変わらない内に出て行ったほうがいい、と。
獄寺と優はあまり仲良くないことが互いにわかっているので、おのずとどちらが誰を担当するか決まっていく。
優は山本に駆け寄り、ユサユサと肩を揺らす。
「ここは……?」
目が覚めたことにホッと息を吐き、すぐ簡潔に説明する。
「急いでこの部屋から出て行った方がいいと思う」
ハッと思い出したように山本は起き上がり、雲雀が黙って立ってる姿を見て状況はわからないが、優の言うとおりだと理解する。
一方、ツナに起こされた獄寺は「あの野郎」といいながらダイナマイトを持っていた。それでもツナの必死の頼みで、渋々出て行くことに納得した。
ツナ達が出て行く流れで、優も一緒に付いていこうとしたが、雲雀が許すわけが無く……。
「どこに行くつもり?」
「……ですよねー」
心配そうなツナに大丈夫という意味で笑って手を振り、扉を閉めたのだった。
「さっきの赤ん坊、知ってる?」
「リボーン君のことですよね? ツナ君の家に住んでるみたいです」
「ふぅん」
話しすぎたかなと思いながらも、風紀委員が調べればわかると考え、優は気にするのをやめた。
「……君のいう友達って、さっきの男のこと?」
優は軽く首を傾げた。この時にリボーンに興味を持つのは知っていたが、ツナにも興味を持っているとは思っていなかったのだ。
「そうですね」
「ふぅん」
目をパチパチと繰り返す。少し前の「ふぅん」と今の「ふぅん」は全く違うからだ。最初は機嫌が良くて、今のは悪い。経験で優はわかったのである。
「ツナ君がどうかしましたか?」
「……別に」
更に機嫌が悪くなったことに気付いたが、雲雀が話さないとわかったので、話を変える。
「それで、私ってなんで呼ばれたんですか?」
この時間ならば応接室でなく、屋上に呼び出されるからだ。今日は応接室で昼寝をするのだろうか。
「なにが?」
「えー。雲雀先輩が電話できてって言ったじゃないですかー」
「……ああ。君、頭が良いみたいだね」
優は今更?と思った。住所を知る前に、なぜそっちを知らないのだろうか。
「それ、やって」
机の上にある書類に優は頬を引きつらせる。これからは書類関係でも呼び出されるかもしれない。
「あの……風紀委員じゃないのに、なぜ私がその書類を?」
「何か問題でもあるの?」
圧力をかけられ、優はグヌヌと悔しそうな顔をする。が、ふと何かを思いついたように顔をあげる。
「さっきのお礼ってことで今日だけですよ!」
優は目の前にある書類に対して質問し、雲雀は問題があるのかと答えた。つまり他の書類については何も話していない。言葉のスキをついて優は遠まわしに他のはやりませんよ、と先手を打ったのだ。
「……僕が思っていたよりも頭が良さそうだね」
失敗した!という顔をした優を見て、雲雀は満足したのだった。
「なぁ! あいつとわざと会わせたぁ!?」
屋上でツナの声が響く。リボーンの差し金で雲雀と合う羽目になったと知ったのだ。
「キケンな賭けだったけどな。打撲とスリ傷ですんだのはラッキーだったぞ。後で優に礼を言っとけよ」
リボーンの言葉でツナはハッとする。確かに優が「友達」と言ったから、雲雀は見逃したのだ。
「……優、大丈夫かなぁ」
親しいのはわかったが、心配だ。雲雀は応接室に入っただけでトンファーで殴る男なのだから。
「大丈夫だろ。ヒバリが唯一気に入ってる人物だからな」
「ええ!?」
「わざわざ昼寝のたびに呼び出して、優の膝を枕につかってるぞ」
リボーンの言葉に、ツナだけでなく、雲雀のことを知っていた山本も驚いた声を上げる。
「雲雀が優に恋愛感情を抱いているかはわからねぇが、気に入ってるのは間違いねぇな」
「……そうなんだ。全然知らなかった」
「オレも最近知ったぞ」
それを聞き、ツナはホッと息を吐く。知ったのは最近だが、随分前からしているというは黙ってた方が良さそうだなとリボーンは心の中で呟く。
なぜならツナの中で優は特別だからだ。これはリボーンが来る前から自力で優と友達になれたことが関係している。ツナをボスにするためにスパルタで鍛えているが、リボーンはやりすぎてはいけないラインを超えないようにしている。
そして、リボーンの見立てでは、惚れている京子よりも優に気を配らなければいけなかった。
ツナ達と別れたリボーンは、今後のことで悩んでいた。
雲雀と優が繋がっているので、雲雀をファミリーに入れれば、優も巻き込まれることになるだろうとリボーンは考えていたのだ。
優が女子というのもあり、今まではツナの希望を優先させていたが、雲雀は何があってもファミリーに入れるべきだ。ツナには必要な人材である。だから、優が呼び出されたタイミングで仕掛けた。
それが、あの結果になった。
リボーンは逃げる対策として爆弾を用意していたが、あまり優のことは心配していなかった。入り口から入ってくるとわかっていたし、雲雀が優を庇うと思ったからだ。まさか雲雀が優のために楽しみを止めるとは思ってもいなかった。
リボーンが予想していたよりも、雲雀は優に甘い。
「ツナにはわりぃが、優から攻めた方が雲雀のファミリー入りは確実だな」
ツナを怒らせるラインを超えず、怖がらせずに頭のいい優をどうやって誘おうかとリボーンは考え始めたのだった。
次の日、優はツナ達に今までの成り行きを説明した。
「優はヒバリさんが怖くないの?」
怖い?と優は首を傾げる。確かに優も雲雀が怖いと思っているが、ツナが思っているような怖さではない。何を言い出すかわからない怖さなのだ。
悩み始めた優を見て、リボーンの言うとおり雲雀は優を気に入ってるとわかり、そこまで心配する必要はないとツナは思ったのだった。