【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
2012年のクリスマス企画っぽい。
コソコソと優の後ろを歩く人影があった。
(……何がしたいんだろ)
チラっと優が振り返れば、慌てて隠れていた。
(まぁいいか。見られても困るもんじゃないし)
気にせず優は店に入って行った。
話は2日前の終業式に遡る。
HRが終わり、クラス全体が冬休みに喜んだ時だった。
「ガハハハ! ランボさん登場だもんね!!」
もう見慣れた光景なので誰も驚かない。
「ランボ!! 学校に来るなって言っただろ!!」
「優、今からオレっちと遊ぶ約束だもんね」
ツナはランボを叱ったが、優のところへ楽しそうに向かっていくので話を聞いている気配がなかった。
「ツナ君、ごめん……。今日一緒に遊ぶ約束をしてたんだけど、まさか学校に来るとは思わなかったんだ……」
「ゆ、優は悪くないよ!」
実際ランボが悪い。それでもツナに申し訳なく優はもう1度謝った。
「……あれ? ランボ君、イーピンちゃんは?」
ツナの家に遊びに行ったりもするので、可愛いもの好きの優はイーピンとも仲良くなっていた。だから今日は3人で遊ぼうと約束していたのだ。しかし、姿が見えない。
「知らないもんね」
置いてきたらしい。
「……ツナ君の家に1度行ってから公園に行こうね」
「ほーい」
ふざけながらも大人しく優に返事をするランボ。ツナとはまるで違う反応である。実は叱るより、言い聞かせたほうがランボはよく話を聞くのだ。……その分、根気もいるが。
「優ちゃん!」
帰ろうとランボを抱きあげた時、京子に呼び止められる。
「どうしたの?」
「クリスマスの予定ある? お昼に花と一緒に遊びに行こうって話してたの」
羨ましいというツナの視線を感じ、ツナも一緒にどうかと声をかけようとすれば……。
「女だけのクリスマスよ!」
優から距離をとりながらも、黒川が先手を打った。優の考えてることはお見通しだったらしい。ちなみに距離が離れてるのは黒川が子ども嫌いだからだ。優もそれを知ってるので、近づこうとはしない。
「25日のお昼だよね? 24日じゃないよね?」
「うん」
「じゃぁ大丈夫だよー」
日付を確認し、了承する。雲雀には先に報告していれば、呼び出してくることはない。あの一件で雲雀も思うところがあったのだ。
「その言い方だと24日は予定があるみたいね」
「15時ごろに……ちょっと……」
ぼかした言い方をした優に黒川は飛びついた。
「ははーん! デートね!」
「……えーっと、まぁ」
ピシッと音がするぐらい男子達が固まる。黒川も冗談で言ったのに、まさか肯定の返事がかえってきて驚いていた。
「ちょっと優! どういうことか説明しなさいよ!」
今すぐ詰め寄りたいが優がランボを抱きかかえているので、離れた距離から黒川は叫ぶしかない。
「遅いぞーー!」
ランボから我慢出来ない声があがる。
「ご、ごめん。またね!」
ランボが暴れ始めたので優は教室から逃げるように去っていったのだった。
優がいなくなった後の教室では、男子達がツナに詰め寄っていた。
「風早さんとデートするのはお前か!?」
「ちっ違うよ!!」
「ってことは……」
男子達に思い浮かぶのは体育祭でおきたあの光景。親密そうに話し、腕をひかれても嫌がる素振りも見せなかった。
ぐおおおお!と両手と両膝をつき嘆く者が大量に現れた。よく見るとウソだと壁に頭をぶつける者までいる。優は人気があるとわかっているツナでもこれには引いた。
「…………君、何しているの?」
突如現れた人物に、緊張が走る。だが、嘆いている男は気付かなかった。
「夢なら覚めてほしいんだ!」
「ふぅん。それで君は僕の学校を傷つけてるんだ」
ゴンゴンと頭をぶつけていた男がゆっくりと振り向く。目に入った人物をみて、本当に夢なら覚めてほしい。
「一生……目を覚まさないようにしてあげるよ」
死刑宣告をうけ、現実と知る。
「ちゃおッス、ヒバリ」
「赤ん坊かい? 今取り込み中だよ」
「聞きたいことがあるんだ。すぐ終わるぞ」
すぐ終わるなら良いかと雲雀はリボーンに目を向ける。もちろん動かないように男を睨んでからだ。
「ヒバリは24日に何してるんだ?」
「? 特に決めてないけど、風紀委員の仕事をしてると思う」
「優のデートの相手はヒバリじゃなかったのか、サンキューな」
ドカッ!とトンファーで咬み殺した音が響いた後、雲雀はすぐさま教室から去って行った。普段より音が大きかったのはきっと気のせいではない。
「京子も誰か知らねぇのか?」
「うん」
「きょ、京子! 先に帰るわよ」
雲雀が教室にきたことで、京子と一緒に居た黒川は後ずさる。そしてリボーンから逃げるように黒川は教室を出て行った。
「おめーらも知らねぇのか?」
「ん? ああ」
「興味ないスよ」
山本と獄寺にも確認を終えたリボーンは、ニッと笑いツナの顔を見る。
「ツナ! 24日に優をつけるぞ!」
「はぁーー!?」
「優はお人よしだからな。変な男と付き合ってるかもしれねーぞ」
ツナは否定できなかった。普段周りに関心がない優だが、ダメツナと呼ばれるツナと友達になるぐらいである。仲良くなってしまえば、コロっと騙されるかもしれない。
「優ちゃん、大丈夫かな……」
「京子ちゃん……」
ツナだけでなく、京子にも心配され始める優。普段から心配かけていることがよくわかる。
「でもよー、小僧。そういうのはやっぱダメじゃね?」
あまりの天然でツナを驚かせることが多い山本だが、やってはいけないことはわかっている。
「普通はな。でも相手を誰も知らねぇんだ。もしもの時、どうするんだ?」
黙りこむツナ達。自分のことになると優は途端に鈍くなる。身の危険を感じていない気がする。リボーンの言うとおり誰も知らない時点でおかしい。
「自業自得……」
ポツリと呟いた獄寺の言葉に京子の顔が真っ青になったのをツナははっきりとわかった。かくいうツナも顔色が悪い。
「優のデートの邪魔するのも悪いからな。問題なさそうだったらそのまま帰ればいいだろ」
リボーンの提案に乗りたい気持ちが強いツナだが、優に嫌われることが怖く、一歩踏み出せない。
「そうだね!!」
だが、まさかの京子がやる気になった。普段大人しい姿からは想像できない大胆な行動である。
「ツナ、いいのか? 京子だけだと、もしもの時危ねぇぞ」
結局、ツナと山本は心配だったこともあり、リボーンの案にのった。そしてツナが行くので、獄寺もついていくことになった。
そして24日の朝。
優は目をこすりながら洗面所にむかうと、リビングのソファーに雲雀が座ってることに気付く。
「おはようございます。ちょっと待っててくださいね」
優が1人で大騒ぎしてから雲雀は見ないようになったので、優はトタトタと歩く。
顔を洗って着替えを終わると改めて雲雀に挨拶する。
「おはようございます。雲雀先輩」
チラっと優の姿を見て、僅かに眉があがったことに優は気付いた。
「……似合いませんよね」
やっぱりと優は肩を落とす。クリスマスプレゼントで貰った服を着たのだが、いつもと雰囲気が違うので気後れしていたのだ。
「すぐに用意しますね。待っててください」
そういってキッチンに向かった優の後姿を雲雀はジッと見ていた。
「ねぇ」
ご飯を食べ終わり、お茶を飲んでると雲雀が口を開いた。優は肩の力を抜いた。今日はまだ一言も話してなかったので、優に対して怒ってる気がしていたのだ。
「はい。なんですか?」
「今日……出かけるの?」
「あ、はい」
スッと雲雀の目が細くなる。
(やっぱり怒ってる!? でもちょっと前に許可貰ってたよね!?)
「あ、あの……雲雀先輩……。1時間ほどしか出かけませんので……用があるなら呼んでくれても大丈夫ですよ?」
恐る恐る優は提案する。
「……1時間で帰ってこれるの?」
「は、はい。15時に約束してるので16時前には帰ってこれますよ。それほど時間がかかる用件ではないです」
少し機嫌が良くなったので優はホッと息を吐く。
「……赤ん坊」
思わず優は逃げる。とてつもなく、雲雀がリボーンに対して怒っているからだ。
「16時にくるから。それまでに戻っていないと……」
ゴクリと喉がなる。怖い。雲雀がすぐに言わないのは何を言おうか考えてるからだ。こういうときは優が絶対に帰ってきたくなるようなことしか言わない。
「……食べちゃうよ」
「えーー! せっかくのご馳走がお預けとか酷いです! そもそも作るのは私なのに!!」
半泣きになる優。前日から仕込みをしていたのを知ってるのに!と優は嘆いた。
「……冗談半分だったけど、これは酷いね」
「酷いのは先輩の方です! 半分本気じゃないですかー!」
優の言葉に驚いたような顔をする雲雀。そして何か考えるように雲雀が黙り込んだので、優は「え、気付いてなかったんですか」と口を開こうとしたところで待ったがかかる。
『……優、それは言うな』
(え? 神様、なんで?)
『これ以上言えば、本当に食われるぞ』
優は口を閉ざした。食事抜きは避けたい。
『わからなくてもいい。だけど、知ってろ。物事には順序があるんだ。追い討ちをかければ、暴走する可能性がある。ゆっくり考える時間をあげろ』
(んーわかった。雲雀先輩が何をそんなに考えるのかわからないけど、じっくり待つよ)
雲雀が真剣に考えてるのはわかっていたので、神の言葉を素直に聞き、優は新しいお茶を準備する。
コップを置けば音に反応したらしく雲雀が顔をあげた。
「温かいのをいれなおしたので、良かったらどうぞ」
すると、お茶ではなくジッと雲雀が優の顔を見始めたので優は首をひねった。
「雲雀先輩?」
バッ!と腕をつかって顔を隠し、立ち上がる雲雀。
「帰る」
「あ、はい。では夕方にお待ちしてますねー」
そそくさと去っていったので聞こえてたのかも怪しい。
「変な雲雀先輩」
ズズッとお茶を飲みながら、優は呟いた。