【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
待ち合わせ時間に余裕をもって優は家を出た。すると、コソコソと隠れるような気配を感じる。いくら優が気を抜いたとしても、素人丸出しの怪しい気配に気付かないわけがない。
仕方なく、優は隠れてる気配がする方へ向かって歩く。慌てて逃げようとするが、やはり素人である。咄嗟に逃げることが出来ず、優に見つかる。
「あれ? みんな何してるの?」
偶然出会ったように話しかけているが、優の本心である。まさか犯人がツナ達だとは思わなかった。
「あっ、いや……その……」
口ごもるツナ。すぐに見つかると思っていなかったのもあるが、本当のことを言って嫌われたくない。
「今からみんなで出かけるのな」
山本は誤魔化してるというより、半分本気で思っていた。
「てめぇのことはどうでもいいんだよ! オレは10代目についてきてるんだ!」
半ばその反応は予想していたので優は驚かなかった。仕方ないと息を吐き、ツナ達に話しかける。
「よくわかんないけど……みんなで楽しんできてね?」
「う、うん」
仕返しとばかりにツナを手招きし、耳打ちする。
「京子ちゃんとイブに遊べてよかったね!」
「んなーーー!?」
ツナの反応に満足した優は、明日遊ぼうねと京子に声をかけてからツナ達と別れたのだった。
「おい、ツナ。風早が行っちまうぜ」
優の言葉で今の状況に幸せを感じ、ポーッとしていたツナだったが、山本に声をかけられ復活する。
「そうだった。どっち行ったの?」
「あっちっスね」
興味がないといいつつ、しっかりと見張ってる獄寺。変なところでノリがいい。
「ツナ君」
「な、なに?」
「優ちゃんの私服でスカート姿見たことある?」
服装に目がつくのはやはり女子である京子だ。
「……ないかも」
元の世界でおしゃれをしなかったことや、動きやすい服を好む優はズボンを選ぶ傾向にある。また急に雲雀に呼び出され、最近はバイクに乗ることも多い。更にツナと一緒にいるとなれば、子ども達の面倒がある。自ずとスカートはタンスの肥やしになる。数ヶ月に1回履けば良いほうだろう。
その優がスカートを履いている。デートという言葉が頭をよぎる。
「あの荷物も男に渡すんスかね」
追い討ちをかけるようにツナ達が気付かなかったことを獄寺は口にした。
ツナはどんどん足取りが重くなっていく。偶然にもイブと京子と過ごし幸せと思った気持ちもどこかへ行ってしまった。
「10代目、店の中に入ったみたいスよ」
「どうする? ツナ」
「どうしよう。ツナ君」
決断を迫られ、ツナは声を詰まりながらも「い、行こう!」と声をかけたのだ。
店内に入ったツナ達はなんとか優が見える位置に座ることが出来た。
「ここからだとあんま見えねぇな」
山本の言葉に頷く。見える位置だが、場所は良いわけではない。だが、今日がイブのことを考えると運が良かった方だった。
「……もう誰かいるみたいスよ」
「私もそう思う。誰かと話してそう」
ツナは驚きの声をあげる。いつ来たのだろうか。
「簡単なことだぞ。相手が先に来てただけだぞ」
「リ……リボーン!?」
ツナの思考を読み、答えたのは突如現れたリボーンである。そして、ちゃっかりと何か食べていた。
「お前! 自分の分は自分で払えよ!」
思わずツッコミを入れるツナ。
「サイフ忘れた。京子貸してくれ」
「うん」
「きょ、京子ちゃん! いいよ! オレが出すから!」
「そうか。ツナのおごりだな。お前らドンドン食え」
「んなーーーー!!」
リボーンの策略にツナはあっさりと嵌ってしまった。そして山本と獄寺も遠慮なく頼んでいくので、慌てて財布の中身を確認する。それを見た京子が心配し声をかけると男の意地で「だ、大丈夫!」と答えてしまう。
思わずツナは普段味方をしてくれる優を見る。ちょうど荷物を相手に渡してしまうところを目撃し、さらに落ち込んだ。
「どーしたんだ?」
リボーンに声をかけられ、少し迷ってからツナは口を開いた。
「……優の1番の友達はオレだと思っててさ。そりゃ勝手にオレが思ってるだけだし、優がどう思ってるのかわかんないよ。だけど、ずっとそう思ってたんだ。でも……オレ、何も知らないなって思って。よく考えるとさ、優ってヒントは出すことはあるけど肝心なことは絶対に自分から言わないんだ」
雲雀に会ってることも言わなかった。1人暮らしをしていたことも。だが、この時はちゃんと優はヒントを言っていた。風紀委員の人におにぎりを渡す、ご飯を作るから帰るなど。
それに気付いてツナが聞けば、答えてくれる。実際1人暮らしのことは教えてくれた。だが、見逃せばずっとわからないままだ。
もっと肝心なことはヒントすら出していないかもしれない。
「友達でも聞いちゃいけないこともあるからさ。優の場合はどこまで聞いていいのかわかんないんだ。優は……難しい」
仲良くなればなるほど、ツナが思ったことだった。そして、本音が出た。
「……だから、ヒバリさんがちょっと羨ましい」
雲雀は平気な顔で優のプライベートに突っ込んでいく。最近は優から雲雀のグチを聞かなくなった。優の中で何か変わったのだろう。
心当たりがあったのか、山本と京子は何も言えなかった。ガタリと獄寺が立ち上がる。
「……今から風早を絞めてきます」
「なんでそうなるのーー!?」
獄寺を止めるためにツナ達は慌てて優の元へ向かうことになった。
「おい!!」
「あれ? 獄寺君?」
不思議そうな顔をして優は獄寺は見た。もう隠れなくていいのだろうか。
「あら、獄寺君じゃなーい」
優に突っかかろうとした獄寺は目の前にいる人物を見て急に大人しくなる。
「お、お母様……」
「……か、母さん!? どうして優と一緒に!?」
「あら。ツッ君も一緒だったの? まぁ! たくさんお友達がいるじゃない!」
ツナの驚きに気づかなかったのか、ツナの母である沢田奈々は山本たちに挨拶し始める。説明してもらいたいツナは優に視線を送る。
「ツナ君のお母さんにお願いがあって、外で会う約束してたの」
「お、お願いって……?」
あけらかんと話す優にツナはなかなかついていけない。
「ランボ君達にクリスマスプレゼントを渡そうと思って。今日の夜に枕元に置いた方が喜ぶでしょ? だからツナ君のお母さんにお願いしたんだ」
「そうなのよー。ツッ君も昔はサンタさんが来たって大喜びしたじゃない」
まさかの展開にツナはフリーズした。
「……風早、今日はデートじゃなかったか?」
「へ? デート?」
デートという言葉を理解した途端、優は必死に首を振る。
「ええええ!? 私が!? そんな相手いないよ……」
「でも花に聞かれて返事してなかった?」
京子の言葉に首を傾げる。しばらくして、あ!と叫ぶ。
「ランボ君と一緒にいたから言えなかったんだ。夢を壊しちゃうでしょ? だから花の言葉にのったんだ」
「そうだったんだね」
「うん!」
ニコニコと優は返事をする。京子の可愛さに癒されたのだ。ふと視線を向けると、ツナがへたりこんでるので、優は慌てて立ち上がりツナに駆け寄る。
「ツナ君! 大丈夫!?」
「な、なんとか……」
「ははっ。オレ達の心配しすぎだったな!」
ツナを起こしながら、心配?と優は首を傾げた。
「……誰も相手を知らないし、もし何かあった時はどうするんだってリボーンが言って……。それで、オレ達心配で……」
優はまたも驚いた声をあげた。だが口元が緩んでもいる。ツナ達に心配され嬉しかったのだ。ただ気になることがある。
「リボーン君はこの話を聞いていたと思うんだけど……」
「なあ!?」
優はリボーンを子ども扱いしないので、直接渡すねと声をかけていたのだ。子ども扱いしないならいらないじゃないかと思うかもしれないが、優は可愛いもの好きである。その選択は初めからなかった。
「お前らの観察力を鍛えるのに、ちょうど良かったからな」
悪ぶりもせず、リボーンは言った。山本達は笑って許してるが、ヘトヘトになってるツナを見れば、優は罪悪感しか出ない。
「……ツナ君、ごめん」
「優は悪くないよ……」
もう1度、優は謝ったのだった。
会計は全額ツナの母である奈々が払い、ツナはホッとしながら優の隣を歩いていた。
「優」
「どうしたの? リボーン君」
「ツナがヒバリを羨ましがってたぞ」
「バッ!」
ジッと優に見つめられ、ツナは観念したように肩を落とした。
「ツナ君が雲雀先輩をねー」
リボーンは全て話さなかったため、優にはそんなことがあるんだとしか思っていなかった。
「私はツナ君と雲雀先輩の良さは違うと思うんだ。雲雀先輩の場合は、火炎放射器って感じだよ。意地でも心を温かくさせる感じだからねー」
「……オレは?」
「ツナ君はろうそくかなー」
ガーンとショックを受けるツナ。雲雀と比べるとあまりにも小さい。
「小さいのに、消えないんだ。ポッと心の中に炎が灯り続けるの。ずっと温かいんだ」
ふふっと優が笑う。
「だから私はツナ君と一緒にいるのが好きなんだ」
自身に向けられた真っ直ぐな好意にツナは恥ずかしそうに頬をかいた。
リボーンは2人の様子を黙ってみていた。ツナが優のことで落ち込んでると気付き、今回の件を利用して発破をかけ、ツナの本音を無理矢理引き出し、優に励ましてもらう計画だった。
優はリボーンの予想以上の結果を出した。
励ますだけでなく、自信までつけさせた。ダメツナと言われ続け、自信がすぐにつかないツナを、だ。
優にはツナを……ボスの心を癒し、支える力がある。
「……ディーノが欲しがるのも当然だな」
ポツリと呟いた。
優は雲雀の姿を確認した後、時計の針を見る。
「時間ピッタリですね」
「当たり前だよ」
持ち前の精神力で復活した雲雀。先程の動揺がウソのようだ。
「今日はご馳走ですよー」
「知ってる」
「でしたね。んー、先に渡そうかな?」
そういって、優は雲雀に袋を手渡した。
「クリスマスプレゼントです」
雲雀は袋をとじているヒモに手を伸ばした。迷わずあける雲雀の姿を見て、優は恐竜の人形をギュウギュウと抱きしめる。
「……へぇ」
出てきたものを雲雀は興味深そうに見た。学校の校章が入っている。
「いや、その……雲雀先輩はプレゼントとか興味ないと思って、だからこういうのだったら嬉しいかなぁと……。一応、コースターなんです。思ったより難しくて、変かもしれないけど……」
「……君の手作り?」
「は、はい。すみません……下手で」
「ありがとう」
初めて雲雀から礼を言われ、優は喜んだ。だから口をスベらせた。
「余った毛糸で作ったので、本当はお礼を言われるものじゃないんですけどね」
「……ふぅん」
機嫌が少し悪くなった雲雀を見て、余った毛糸と言ったことが失敗だったと気付く。
「ご、ごめんなさい。ツナ君の家の子ども達の分しか買ってなくて……、あの、その……」
「もういい。わかったから」
優がガクリと肩を落とす。雲雀の言うとおりで、どんなに言い繕っても、余った毛糸という事実は変わりない。
「わかったから……大事にするよ」
優は人形で口元を隠す。だらしないほど緩んでる自覚があったからだ。
「……僕からは何もないから」
「大丈夫です」
優はキッパリと返す。元々、雲雀にそういう期待はしていない。それ以前に貰っても困る。
「それに私が渡したかっただけですしね」
話のキリがいいので優は立ち上がる。今日の料理は凝っているので早めに取り掛からなくてはならない。
「……服」
「はい?」
「似合ってる」
パチパチと瞬きを繰り返す。
「あ、ありがとう!!」
思ったよりも大きな声になり、優は逃げるようにキッチンへと向かった。
おまけ。
(神様ー、雲雀先輩が似合ってるって言ってくれたよー)
『当然だろ、俺が用意したんだ』
(えへへ。いつもと違ってスカートだから躊躇したけど、良かったー)
『優は何を着ても似合うぞ』
(そういってくれるのは神様だけだよ!ありがとう!)
『あいつもまだまだだな(ボソッ)』
(神様?)
『なんでもない。それより俺と話してて包丁で怪我するなよ』
(はぁーい)