【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
「まずリボーンの世界に行く理由は、リボーンの世界がお前を呼んだからだ」
話が見えず、優は首を傾げた。
「あほの神がリボーンの世界に大量に転生させたんだ。好き勝手にしてはいけないことなのにな。そのせいでリボーンの世界に異変が起きてしまった。その穴埋めとしてお前が呼ばれたんだ」
トラックにひかれる前に声を聞いたことが関係あるのかな?と優が考えていると神は頷いた。
「1番の異変がボンゴレリング、マーレリングとアルコバレーノのおしゃぶりが一個ずつ増えた」
再び瞬きをする優。あまり表情には出さないが、心の声が聞こえる神はかなり驚いてることに気付いてる。
「増えたのはいいが、誰も使いこなせなくてお前が呼ばれたってわけだ」
「つまり、その増えたのが私にしか扱えないんだね」
「そういうことだ」
わかったという意味を込めて優は頷く。ちなみに神は気にせずに返事をしていたが、優は心の中でマジかーーーと叫びっぱなしである。
しばらく優の心が落ち着くのを神は待つ。すると、再び優は瞬きをした。
「心配しなくても赤ん坊にはならない。呪いは一応もう受けたから」
赤ん坊は嫌ーーーーと心の中で叫んでいたので、先に神は教えてあげることにしたのだ。
「どういうこと?」
「こっちの世界に無理矢理に来たっていうのが呪いだ」
優は頷く。今度は心が落ち着いてるので、待つ必要はない。
「俺はお前の記憶の内容を知ってるだけだ。たとえ知ったとしても話せない」
決まりというものがあるのだろう。そのため優は深く気にすることなく頷いた。しかし、整理する時間がほしいと思った。
「ちょっとだけ待ってもらえる?」
「ああ」
まず最後まで読んでいない。ツナと炎真の誓いの炎を見たまでだね。流れはわかる。けど、季節ぐらいで日付まではわからない。それに流れと言ってもはっきりとしていないところもある。最初の方なんか、順番も覚えていない。特に1番大事なところはさっぱりだね。リボーンの呪いは赤ん坊になっただけなのかな。原因とかはわからないし、ツナが継いだのかもわからない。
ほぼ手探り状態か……詰んだね。
優は諦めるのが早かった。
「出来る範囲のサポートはするぞ」
「え?」
「こっちの世界でも問題になってる。俺がサポートすることは当然のことだ。お前がリボーンの世界に行くというのは他の神から聞いたからだ。マンガがあるのもオレは知らなかった。つまり、オレは教えても問題ない内容だけを知っている。お前と一緒に手探り状態で進めていく感じだ」
優からすれば、出来る範囲があったとしても、神に一緒というのは心強い。
「ありがとう」
心がこもった優の笑顔に神も笑う。
「困った時はいつでも頼ればいい」
ポンッと頭を撫でられ、優が固まる。
「わ、悪い」
「……んーん、ありがと」
幼かった時のことを思い出しただけで嫌なことではない。むしろ嬉しい。だからまた笑ってもう1度礼を言った。神は優の感情もわかるのでもう1度頭を撫でた。
しばらくの間、和やかな空気が流れる。しかし限度はある。いつまでたっても神が話を戻さないことに優は疑問を浮かべ始める。
神は手を下ろし、1度軽く息を吸って言った。
「……はっきりいっていいか?」
「大丈夫」
隠されるより話してほしい気持ちの方が優は強かった。
「死なないでくれ。……1回で終わらせたいんだ」
直接的な言葉を避けたのは神の優しさだと優は思った。
「私が1番最初……の、犠牲者?」
「ああ」
「わかった。頑張るよ」
優自身は前の世界の未練はなかったので、リボーンの世界に行くことを入れてもそこまで気にしていない。だが、すべての人がそうとは限らない。だからこそ神とは違い、優は言葉を濁さずに聞いたのだ。
「あ! 質問です! あほの神がしたのは転生ですよね? んじゃ原作を知っていれば、私の存在ってすぐにばれるんじゃないんですか?」
空気をかえるための質問だと気付いたのだろう。すぐに神は優の言葉に返事をする。
「その点は問題ない。力は与えたが、原作の知識は全くない」
「へぇ。与えた方が楽なのにね」
「そうだろうな。それだけアレがあほだったということだ」
ついにアレ呼ばわりである。だが、優も深く頷いてるのでそのまま流される。
「オレの予想で話すぞ。異変をなくそうとするために呼ばれたってことは、ツナの守護者という立場になるはずだ。そして転生した奴が敵だろうな。中にはただの一般人として生きている人もいるだろう」
神の言葉に納得したように優は頷いた。覚えていなければ、その可能性の方が高いだろう。自分の才能に気付けるのは一握りだ。
これには少しばかり優の気が楽になる。優は良く言えば、争うくらいなら身を引き譲ることができる。悪く言えば、誰かを傷つけるならば、自分が傷つく方を選ぶ。育った環境のせいで、自身の価値が低いという意識が根本にあるからだ。
神はもう1度優の頭を撫でた。初めは不思議そうに見つめる優だったが、次第に笑顔になる。
「はい! 質問です! 私にしかリングが扱えないなら、戦わなくても私の物じゃないんですか?」
本音で話せるのが大きいのだろう。優は取り繕うのをやめた。子どもっぽく手を上げて質問する。
「俺にもわからん」
「それだよねー。元々なかったもんねー。ってか、私は何の力?」
わからなければ、わからないと返事をすると知ったので、遠慮なく質問し始める優。神も笑ってるので問題ないと思ったのもあるが。
「アルコバレーノの力は風だ」
「風?」
「ああ。風を操れる力だ。炎の色は水色で性質は加速」
大好きな空を飛べる可能性に優は目を輝かせる。
「問題なく飛べるだろうな」
「やった!!」
思わず優は立ち上がり飛び跳ねる。呆れるような顔を少しでも神がすれば優はすぐさま座りなおしただろう。しかし、神は見守るような目を向けていたので、優は気の済むまで喜んだ。
「えへへ、ごめんね」
気まずくなったところで、優は謝った。
「気にするな、時間はある」
「神様、ありがとう!」
神にむかって初めて神様と優は呼んだ。ありのままで居ることを許して、さらに見守ってくれる心の広さに優は信じたのだ。目の前に居る人物が神だと。
「ああ。じゃ、まず出来るだけサポートってことで、身体能力アップだな」
「素早さとか?」
「そうだ。雲雀よりいいぞ」
後々のことを考えると頷くしかない。それでも……と優は口を開く。
「あの、神様。力? 攻撃力? そういうのを減らしたい……」
優は誰かを傷つける力を持つことを怖がったのである。
「苦労してもいいのか?」
神の言葉に優は笑顔になる。絶対に反対されると思っていた。
「うん! だってさ、そうすれば当たったとしても致命傷にならないんでしょ。避けたり受け流したりするよ!」
「お前が納得するならいい」
「ありがと。……実はね、女なのに力がすっごく強いっていうのも嫌だったんだ」
言わなくてもわかるのに、ちょっと恥ずかしそうに話した優に、神は笑いながら頭を撫でた。
「女性の一般より良くする程度でいいか? 後、頭も良くしておくぞ」
「うん!」
優の言葉をきき、神は指を鳴らす。
「金銭面や住む場所とかはこっちで用意しているから問題ない」
「はぁい」
「困ったことがあれば、念じると俺と話が出来るぞ」
優は嬉しそうに頷いた。本音で話せる神との会話が好きになったのだ。
「で、特殊能力は何にする?」
「特殊能力ーー!?」
「ああ。出来るだけサポートって言っただろ? まぁ5つまでだけどな」
「サポートのレベル高っ!?」
ツッコミはしているが、優の頭の中は特殊能力のことでいっぱいだ。
「んー……風を操る能力を使ったらすぐにバレるかな?」
「思いっきり使わなければ大丈夫だろう」
隠す能力はいらない、と。いつかバレてしまうことに力を使うことを優は無駄と判断する。
「やっぱり治癒能力かなぁ」
争いが苦手な優らしい考えである。
「あー……すまん。特殊能力っていっても、特殊能力によってお前の身体が特異体質に変わると思ってくれ」
「体質が変わって私の回復力をあげる、とかは?」
「出来なくはない。ただ、与えたものは戻ってこないんだ。お前の回復力がどんどんなくなっていく」
いくら優でもその能力を選ぶことは出来なかった。争うなら身を引くが、自殺願望者というわけではない。
「じゃぁ、自分の体力は?」
「それなら大丈夫だ。体力は寝れば回復するからな」
「それにしよう。終わった後に分けてあげれば楽になると思う。それに死ぬ確率も減ると思うし」
「使う時は自分の体力が減るから気をつけろよ?」
神の言葉にしっかりと優が頷いた。それから最終確認をし、再び神は指をパチンと鳴らした。優は身体を見る。指を鳴らすだけで変わると気付いたからだ。しかし、特に変わった様子はない。だが、頭に体力を送る方法が流れた。
神から聞いていた通り、体力を渡すには相手に触れることが条件だった。
「次は、幻覚封じだね」
「まぁいるだろうな」
厄介と考えていたのは同じだった。
「ただ目の色が変わってしまうんだ。それでもいいのか?」
「いいよ。こだわりないし」
水色から薄い緑に変わると聞いても、優は何も思わず了承した。すると、再び神が指を鳴らす。
「これで幻覚と幻覚じゃない景色が見える」
「わかった」
鏡がいるか?と聞かれたが、首を振る。優は鏡を見るのが苦手だった。茶色というより赤に近い髪の色が好きではなかったからだ。かといって、髪の色をかえるために特殊能力を使うのはバカらしい。
ちなみに、優の容姿はかなり良い。ただ本人が自覚していないのもあり、異性からの好意には気付かなかった。優の中では自分の価値が低すぎて、嫉妬や悪意に気付いても、好意には恐ろしいほど鈍感なのだ。
「ん-……思いつかない」
「後で決めるか?」
「え? いいの?」
相談するつもりで言えば、まさかそんな選択があるとは優は思いつかなかった。
「ああ。俺も念のために1つは残せと言うつもりだった」
「そっか」
特殊能力の話はまた今度と決まったので、優はジッと神を見る。神が心を読んでも、お願いしてもいいかなと考えているだけで内容がわからない。
「どうした?」
「出来れば、アルコバレーノってすぐにバレないようにしたいなぁ……」
「それぐらいなら大丈夫だ。ただマーモンの鎖と一緒で力は少し抑えることになるぞ」
弱まることに抵抗がない優はすぐさま頷く。
「他にはないか?」
「じゃぁ武器とかほしいです!」
「希望は?」
優は困ったように笑う。普通の武器がほしいと願ってるわけじゃないと気付かれているとわかったからだ。
「るろ○に剣心に出てくる逆刃刀がほしいんだ」
普通の刀とは違い、刃と峰が逆向きの刀。少しでも殺傷能力が低くしたくて、優は数ある武器の中からこれを選んだ。棍棒なども一瞬よぎったが、やはり刃はあったほうが便利だからだ。
「……お前らしいな」
「えへへー。長さとかは神様に任せてもいい?」
「ああ。身長にあうものを用意する」
「うん、ありがと」
「他には?」
優は首を振った。これ以上、欲しい物は思いつかなかった。それにいつでも頼むことが出来る。
「私って、出来るだけ原作の流れにするために呼ばれたんだよね?」
「まぁそうだろうな」
言動には気をつけなければならないが、はっきりと覚えているわけではないので、気に病むほどではないと判断した。……どうしようもないとも言う。
「ちょっと待って! 私って行くタイミングはいつ?」
「中学入学前日だな。ツナと同じ歳になる」
ホッと息を吐く。バタフライ効果が生まれる可能性は少ない方がいい。
「場所は家でいいだろ?」
「違う場所でも出来るの?」
もちろん優は神の提案に賛成である。ただの興味で聞いただけだ。神は面倒な雰囲気を出すこともなく、説明する。
「まぁオレが調節しないと、どこに行くかわからないからな」
「ええ!?」
「並盛の可能性は高いと思うぞ?」
優の中で疑問が生まれていく。金銭面や住む場所とかはこっちで用意しているから問題ないと神は言った。もし神のサポートがなければ、どうなっていただろうか。
神に目を向ければ、ゆっくりと頷いた。優の考えは間違っていないと意味する。
「神様、ありがとう!!!」
土下座する勢いで頭を下げる。無一文で放り出されることを考えれば、それぐらいどうってことない。むしろもっと礼を尽くさなければならない。
「……元々はオレと同じ神のせいって忘れてないか?」
「それとこれは別! 神様が悪いわけじゃないし」
「あー、わかったわかった。頭をあげてくれ」
困ったように神が言うので、優は素直に頭を上げた。
「恐らく向こうの世界に行けば、アルコバレーノのおしゃぶりはすぐにとんでくる。後は……戸籍とかは作ったが、親を作ることは出来なかった」
「いいよー」
気をつかうだけ、1人の方が楽。
優の言葉と本音の差が1番大きかった瞬間だった。
「……優」
「あれ? 名前で呼んでくれるの?」
「……呼んでもいいのか?」
瞬きした後、笑う。
「もちろん!」
「よろしくな、優」
「うん。神様、これからよろしくー」
キリが良くなったので、優は立ち上がる。
「大丈夫か?」
「多分。何かあったらすぐに念じるよ」
「そうか。いつでも大丈夫だからな」
「じゃ、行って来ます」
「おう! 行ってこい!」
頭を撫でながらパチンと鳴らせば、優の姿はそこにはない。
独りになった神は自身の手を見つめる。優を撫でた感触がまだ残っていた。