【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
「次はオレだ!」
ランボに挑発されたのか、獄寺が言った。
優は不安になった。たいてい獄寺が張り切るとロクなことがない。
「風早がファミリーの一員になるためには……」
「却下」
そのため、珍しく優は口を挟んだ。
「なんでだよっ!」
「まだファミリーに入る気ないから。ツナ君が正式に継いでから考えるつもり。それまではマフィアとか関係のない、ただの友達だもん。まぁ継がなくても友達だけどね」
「……優」
ツナは感動した。優にまでファミリーだからなどと言われたら、ツナの心の平穏がなくなってしまうところだった。さらに継がない場合の話もした。優は今まで通りツナが継がないと言い張っても問題ないと言っているのだ。
「私はツナ君のことをわかってるつもりだよ?」
「……うん、そうだね!」
ほわほわとした空気が流れる中、我慢できない人物がいた。
「オレの方が10代目のことをわかってるぞ!!」
「まだまだ負ける気はないよー」
そういって、優は笑った。
ツナは優が獄寺をからかってることに気付いた。多少話す機会が増えていると思っていたが、ツナの想像以上に仲が良くなっているらしい。
「そういや、風早っていつからツナの友達なんだ?」
「んー入学してちょっとしてから? 話をしてすぐに好きになっちゃったの」
「えーーー!?」
ダメダメな姿しか見せてなかったはずなのに、どこに好きになる要素があったのだろうか。そう思いながらも、真っ赤になるツナ。子ども達に笑われているが、なかなか熱が引きそうに無い。
「ダメツナのどこを好きになったんだ?」
リボーンがかなり失礼なことを言ったが、ツナも疑問に思っていたので文句は言わなかった。
「ツナ君の言った言葉がすごく心に刺さったんだ」
笑ったほうがいい。そう、ツナは言った。その言葉のおかげで優は今でも不安に押しつぶされずに笑えている。
「へぇ。ツナはなんて言ったんだ」
「ヒミツ♪」
山本に聞かれたが、優は教えなかった。大事にしたいのだ。だが、フゥ太にキラキラした目でお願いされ、優は心が揺れる。相変わらず、弱い。
「……大事にしてるから私からいいたくないんだ。だからツナ君が覚えていれば教えてもらって?」
「ツナ兄!!」
ツナの顔を見て優は正確に読み取った。これは覚えてない。……もしくは覚えてるかもしれないが、あの言葉が優を救ったと気付いてないのかもしれない。
困ってるツナを見かねて、優は話を変える。そもそもの原因は優だ。
「久しぶりに思い出して嬉しくなっちゃった。きっかけは獄寺君と山本君だね。2人とも10点!」
「おっ、ラッキー!」
「さすが10代目!! ありがたい言葉を残してるおかげスよ!!」
「それもそうだね。ツナ君も10点だね」
準備していないとわかっているので、ほいほいと10点をあげる優。
「って、みんな満点じぇねぇのか?」
山本の疑問に優は心の中で頷く。狙ってやったのだから当然だ。だが、結局リボーンの思惑はわからなかった。
「まだ終わってねぇぞ」
「へ?」
諦めモードに入った優に、リボーンが声をかける。
「オレも優からチョコを貰ったからな」
ポンっと手を叩く。だが、リボーンからのプレゼントは怖い。
「今日はリボーン君のおかげで楽しかったから、別にいいよ?」
「そうか」
あっさりリボーンは引いた。逆に怖い。
「じゃリボーン君も10点!」
「まだだぞ。今日オレがこれを開いたのが点数になるなら、まだ終わってねぇぞ」
リボーンの言葉に首をひねる。後は誰に渡しただろうか。京子、ハル、黒川からはもう貰っている。
ヴオオオオン……と外から聞こえてくる音に顔が引きつった。そして、近づいてきていた音がツナの家の前で止まった。
「やあ」
予想はしていたが、窓から現れた男を見て優は固まった。
「ヒ、ヒバリさん……どうしてここに……」
「君たちと遊びに来たんじゃないんだ。赤ん坊が僕に借りを返さなくていいのかって言われて来たんだけど……」
そういって周りを見渡した雲雀と優は目があった。しかしすぐに逸らし、雲雀は優の膝の上にいるランボを見る。本能で危険と察知したのか、ランボは優の膝から降りてツナにしがみつく。優は怖がってるランボに手を伸ばそうとしたが、雲雀から視線を感じ手をおろす。理由はわからないが、今それをすればまずい。
ツナがガタガタと震えるランボをあやしていると、雲雀は優からリボーンに視線を向けた。
「僕は赤ん坊に借りを作った記憶はないんだけど……何かあったかい?」
「優に借りがあるだろ?」
「な、ない!! リボーン君、ないよ!!」
必死に優は首を振った。だが、これを開いたことが点数になると優が言ったのだ。リボーンが手を抜くわけがない。
「ヒバリは優からバレンタインチョコを貰ってねぇのか? ツナ達はさっきその分の返しをしたぞ」
部屋の中が静まる。雲雀から流れる空気に誰も何も言えなくなったのだ。
雲雀が優に目を向けたので、慌てて口を開く。
「あ、あの……雲雀先輩はあれをバレンタインのチョコと思って食べてなかったと思いますし、それに私はそういうのを望んでるわけじゃないので……」
両手を振りながら問題ないと優は説明する。すると、雲雀の目が細まった。
「す、すみません」
思わず謝る優。
「手……出しなよ」
「あ、はい」
雲雀に言われるがまま、優は手を出した。
「え……?」
手の上には包装された袋があった。
「借りは返したよ。じゃぁね」
去っていく雲雀に声をかけることもせず、ただ呆然としたまま見送った。
「……優! 優!」
ツナに肩をゆすられ、我に返る。雲雀の姿はない。夢かと思ってしまいそうだが、手には雲雀が置いていったものがある。周りに目を向ければ、ランボだけでなくフゥ太も半泣き状態だ。
「ご、ごめん。みんな、私のせいで……」
「おめーのせいじゃねーだろ」
「そうだよ! 獄寺君の言うとおりだよ!」
「なぁ風早、それ何なんだ?」
空気をかえるような山本の言葉で、全員が優の手の上にある物に目をむける。
「……袋?」
「それは見ればわかるだろーが」
「……だね、開けてみるよ」
袋から出てきたものは、ブレスレット。優の髪に合う色だった。
「ブレスレットだよな?」
「……女物に見える」
「つけてみねーのか?」
驚いてる声があがる中、リボーンが淡々といった。
「わ、私がつけていいのかな……」
「ヒバリが優に渡したんだ。問題ねーだろ」
「う、うん」
恐る恐るつけると、サイズがぴったりだ。
「優?」
ツナははっきり見た。いや、見てしまった。この時の優の顔を。
「……リボーン君に10点以上あげたい場合はどうすればいいの?」
「またチョコくれ」
「う、うん! 絶対あげるね!」
「じゃ、これでおしまいだな。優、帰ってもいいぞ」
リボーンの言葉に優は素直に頷いた。雲雀に礼を言っていない。
「みんな、今日はありがとう!」
頭を下げ、ツナの部屋を出ようとしたところで、優は立ち止まり振り返った。
「ツナ君。京子ちゃんとハルちゃんにもお返しした方がいいと思うよ。2人から貰ったよね?」
「う、うん」
「みんな、またね!」
階段を駆け下りながら、優はリボーンの思惑がわからなかったことに気付いた。が、今は雲雀が喜ぶ料理を作ることしか考えれなかった。
(今回は私の負けでいいや!)
優は買出しに走ったのだった。
優が出て行った部屋では、ツナがリボーンに怒っていた。
「リボーン! ヒバリさんが用意してるの知ってたなら、言ってくれれば良かったじゃないか! 知ってたらオレだって……」
優の喜ぶ顔をはっきりと見てしまったツナは、何の準備をしてなかったことに後悔していたのだ。今から何かを買って渡しに行っても優はもう貰ったといって受け取ってくれないだろう。
「知らねーぞ」
「え……?」
「優の性格だとオレがこれを開いただけで10点をもらえるのはわかっていたからな。さらに優が喜ぶとすればまたチョコが食えると思ってな。ヒバリに賭けただけだぞ」
「んなーー!? チョコが目的だったのー!?」
驚いてるツナの反応を無視し、リボーンは話を続ける。
「ツナ、京子達に返さなくていいのか?」
「あ……」
優の顔が再び頭をよぎる。京子とハルもちゃんと返しをすれば、優みたいに喜ぶのだろうか。……否、喜ぶ。優のあの顔が答えだ。
「……うん。行ってくるよ」
何しよー!?と悩みながら出て行ったツナ達を見て、リボーンはニッと笑った。今日1番の目的を達成できたからだ。
「やっぱりヒバリに賭けて正解だったな」
誰もいなくなった部屋でポツリと呟く。
優の喜ぶ顔を見て、ツナが自らの意思で京子達にお返しをする。これがリボーンの思惑だった。
ちなみに。
「君もチョコ貰ってたんだ」
「い、委員長……」
律儀な草壁はこっそりとお返しをしたのだが、優が世間話のように雲雀に話したので、努力もむなしくバレてしまった。