【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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プール

「優! お願い!」

 

 ツナに手を合わされ、優は半歩下がる。いつもなら喜んで手伝うのだが、今回だけはすぐに頷くことが出来なかった。

 

「えーと、山本君が手伝ってくれるじゃないの?」

「うん。それで山本がさ、みんなで教えた方がオレがわかりやすいかもしれないって言って。オレ、泳げないってバレるのが恥ずかしくて……」

 

 つまり優なら笑わないと思い、声をかけたということだ。そこまで信頼されてることには喜びたいが、優にとって水着は鬼門である。おしゃぶりをさげているからだ。

 

「ダメ、かな……」

 

 ツナに弱い優は、咄嗟に「大丈夫だよ!」と答えてしまった。

 

 家に帰った優は早速タンスをひっくり返し水着を探す。去年のプールの授業の時は学校を休んだり、サボッたりしたので、1度も着たことがないのだ。

 

「さすが神様ーー!! パーカーがある!」

『当然だろ』

 

 プールでも使えるラッシュガード・パーカーを発見し、優は叫んだ。もちろんピッチリしたものではなく、ふわりとしたものだ。学校の授業なら許可が下りないだろうが、今回はプライベートである。着ていても問題ない。

 

 問題が解決したので、待ち合わせ場所である市民プールに向かったのだった。

 

 

 

 

 

「え? 手を引かれるのは恥ずかしい?」

「……うん」

 

 山本の感覚指導では厳しいと判断し、優を頼ろうとしたツナだが、優自身も泳ぎを教えることは初めてなので子どものように教えるような感覚で行こうという曖昧なものだった。

 

「ちょっと考えるから待ってね」

 

 周りの目があることで恥ずかしいといったツナの意見を聞き、優は他の案を考えはじめる。

 

 その間にハルが来て、結局手をひかれることになるのだが、これは断れなかったツナが悪い。そして獄寺も合流したが、どれも微妙な結果に終わってしまう。

 

「……優」

 

 助けを求められる目を向けられ、優はポンっと手を叩く。

 

「まず浮くことから始めようかな」

「浮く?」

「そう。水の上で仰向けに寝転ぶの」

 

 躊躇した様子のツナに優は笑いかける。

 

「大丈夫。私が絶対助けるから。他のみんなもいるしね」

 

 周りを見渡した後、ツナは勢いよく寝転がる。

 

「うわぁ!」

 

 優が慌ててツナの背中を手で押し、声をかける。

 

「大丈夫、怖くないから。ほら、空を見て。とっても気持ち良さそうだよ」

 

 ツナの力が抜けていくのにあわせ、優は支えてる力を弱くしていく。

 

「これで泳げるよーになるのかよ」

「ならないかな。でもツナ君は水を怖がってるから、まずそこからだと思う」

 

 しばらくするとツナが立ち上がり、興奮した様子で「オレ、水に浮いてた」と言った。

 

「だね! じゃ、次はうつ伏せだよー。泳ごうとしなくていいから、水の中を見よう。水の中の景色も綺麗だよ?」

「う、うん!」

 

 先程よりも随分早く、ツナは力を抜くことが出来た。息が切れる前にツナは立ち上がり、優の顔を見た。

 

「オレ、初めてちゃんと水の中を見た」

「綺麗だったでしょ。それにね、手や足を動かさなくても浮いたよね? 焦る必要はないんだよ」

「そうだったんだ……」

 

 後は山本達に任せて優はプールからあがる。するとリボーンが近づいてきた。

 

「さすがだな」

「そんなことないよ。ツナ君が知らなかっただけだよ」

 

 なんてことのないように、優は座りバスタオルに包まった。その様子を見て、リボーンはツナよりも優は自分に自信がないのだろうと思った。

 

「ツナにはおめーが必要だぞ」

「だったら嬉しいかな」

 

 ツナ達の様子を見て、表情がやわらいだ。一歩引いてるので、どこか羨ましそうにしているようにも見える。

 

「ヒバリだっておめーを必要としてるだろ」

「……そうかもしれない」

 

 リボーンは表情には出さなかったが驚いた。今までの優なら「雲雀先輩は私なんかいなくても大丈夫だよ」と言っていたはずだ。

 

「……間違った。私が雲雀先輩を必要とし始めてる、が正しいの。だから怖い」

「なんでだ?」

「私は一箇所にとどまることが出来ない」

 

 いくら神に言われても、家具を増やすことが出来なかった。栞など持ち運びやすいものしか物を残せない。大きな物をプレゼントされれば、困ってしまう。

 

「どこかにいる冷静な私がいうんだ。ツナ君のところは居心地がいいから続いてるだけってね。ツナ君が困っていれば助けに来る感じになると思うんだ」

 

 リボーンはツナ達を見ながら話していたが、予想すらしてなかったことを言われ、優だけを見た。膝をかかえた姿は、自分を守っているようにも見える。

 

「雲雀先輩はそれをブチ破りそうで怖い」

「いいじゃねーか。それでも」

「ダメだよ。雲雀先輩が重荷に感じた瞬間、私は折れてしまう」

「ヒバリは優ぐらい背負える男だぞ」

「……そう思えるなら苦労しないよ」

 

 アルコバレーノじゃなかったら。何度もそう思った。でもアルコバレーノにならなければ、雲雀に会えなかった。

 

「私はリボーン君みたいに強くなれないからねー」

「オレはウルトラつえーからな」

「本当に凄いよ」

 

 優が空気をかえるためにいったと思い、リボーンはそれにのった。しかし返ってきたのはあまりにも実感のこもった言葉だった。

 

 声をかけようとしたが、リボーンを見て優は笑った。話す気はないよという意味の笑みだ。

 

「……ウルトラつえーオレが協力してやってもいいぞ。ヒバリに軽く頼ってみろ。それでビビるような男ならオレがビシバシと鍛え直してやるぞ」

「すっごく強くなりそうで私が怖いよ」

 

 思わぬリボーンの提案に優は笑った。

 

 近づいてくる足音に気付き、リボーンと優は会話を終える。

 

「泳げたんだ! 優、オレ泳げたよ!!」

「ほんとに!? おめでとう!」

 

 プールから上がり、嬉しそうに報告しにきたツナに癒され、優は一緒に喜んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 次の日、優は学校をサボった。プールの授業に出れないからだ。

 

「掃除でもしよーと」

「体調不良じゃないみたいだね」

 

 聞きなれた声がして、恐る恐る振り返る。

 

「あはははは」

 

 雲雀が怒ってるので笑って誤魔化してみたが、通用しなかったようだ。

 

「何してるの」

「サボったのは悪かったと思ってます。でも、水泳の授業は受けたくなくて……」

「泳げないんだ」

「あ、泳げますよ。どっちかというと得意です」

 

 溜息を吐いて雲雀はソファーに腰をかけた。理由があるとわかったのだろう。

 

「……そういえば、焼けるのが嫌いだったね」

「覚えてたんですね」

 

 以前、暑い時期にも体操服の上着を着ていたので聞かれたことがあり、いつも通りのいいわけをしたことがあった。それを雲雀は覚えていたらしい。

 

「今回サボったとしても次はどうするの」

「雲雀先輩から呼び出される私は、授業を抜けても誰も何も思いません。去年は休んだり、サボったりして乗り切りました。今年も乗り切れると思ったんですけどねー」

 

 ばれたなら仕方ないと、堂々と答えた。去年の今頃はちょうど雲雀に呼び出され始めたころだった。まだ家に雲雀が出入りしていない。だから気付かれなかった。

 

「……君がそこまでするんだ。出たくない本当の理由は何?」

 

 ウソつきと言ったこともしっかりと覚えてるようだ。

 

「見られたくないものがあります。体操服は上着を着ないと見えます。水着もダメなんです。誰かに着替えられるところを見られるわけにはいけませんので、恥ずかしいと言ってこっそり着替えてます」

「わかった。書類整理で水泳の授業は免除するよ。制服に着替え終わったら、応接室にきてね」

「……あの、いいんですか? 私のワガママですよね?」

 

 帰ろうとした雲雀に思わず声をかける。こんなにもあっさりと許してもらえるとは思わなかったのだ。

 

「君がワガママを言う時は、本当に困ってる時だからね」

 

 優は誰かのために動くことが多い。その優がワガママを言うのだ。雲雀からすれば、優はわかりやすかった。

 

「……見られたら、狙われるんです」

 

 ポツリと呟いた優の言葉に雲雀は振り返った。

 

「誰に」

「……たくさんの人。権力や力のある人に……」

 

 スッと雲雀の目が細まった。怒ってると気付いた優は一歩ずつ後ずさりながら、早口で言った。

 

「ご、ごめんなさい! 爆弾なのに学校に通ってて! 頼れそうな人は見つかってますし、今すぐ並盛から出て行きます! ごめんなさい!」

 

 話してる途中で背中が壁に当たってしまった優は、しゃがみこみ身体を縮めた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 

 ガタガタと震えだして言った優の目は雲雀を見ているようで見ていない。この症状に雲雀は心当たりがあった。トラウマだ。

 

 ピキッと窓が割れそうな音が聞こえ、雲雀は走った。優に対して怒ったわけじゃないと時間をかけて説明したいが、そんな時間は無い。急がなければ優が怪我をしてしまうかもしれない。

 

「やっ!」

 

 抵抗する優を無理矢理向かせ、雲雀と目をあわさせる。

 

「学校、行くよ」

「……どう、して」

「僕が許可したから」

 

 フッと優の力が抜けた途端、窓に限界が来る。学ランをつかって破片から優をかばいながら、割れた窓から流れてくる強風に飛ばされないようにしっかりと優を掴んだ。

 

 数秒後には、何も無かったように落ち着いた風に雲雀はホッと息を吐く。

 

 すぐに被害を確認しなければいけない。が、優を置いて行くわけにはいかない。

 

「ごめん、なさい……」

 

 今の強風の原因は自分の暴走だと優は気付いたのだ。

 

「大丈夫だから。君は休んだ方が良い」

 

 手で涙の後を拭った後、光が見えないに目を隠す。疲れていた優はすぐに眠ってしまった。

 

 雲雀はすぐさま被害状況の確認とこの家にも派遣させる指示を出す。そして優を抱き上げ、学校に向かったのだった。

 

 

 

「……あ、れ?」

 

 目が覚めると応接室のソファーで寝ていたことに優は驚いた。

 

「まだ眠ってなよ」

「いえ、大丈夫です」

 

 まだどこかグッタリしている優をみて雲雀は溜息を吐いた。そもそも顔を洗ってないと騒いでない時点でおかしい。だが、話が終わらなければ眠らないだろうと思い、仕方なく濡れタオルを優に渡す。

 

「ありがとうございます」

「しばらく君の家は使えないから」

 

 薄っすらとした記憶の中、風を暴走させ窓を割ったことを思い出す。自分の仕出かしたことに頭が痛い。

 

「なんとかしますので、大丈夫です。そんなことより、他の被害は?」

「……君はしばらく僕の家で過ごすこと」

「え!?」

「君のところが1番被害が大きい。今回の強風で怪我人もいないし、学校もプールの周りにあるフェンスが倒れただけだ」

「あの、今日のプールは……?」

 

 雲雀の家で過ごすように言われたことは衝撃だったが、プールの方が気になった。

 

「しばらくは中止が決まったよ」

 

 昨日必死に練習したツナの姿を思い出し、優は心の中でツナに向かって土下座した。

 

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