【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
日本に帰ってきた優は、さっそく雲雀の姿を探す。空港に迎えに来てくれるという話になっていたのだ。
「やぁ」
「ただいまです!!」
優は嬉しそうに雲雀に駆け寄り服を掴む。珍しく素直に甘えてきたことに雲雀は驚きながらも、場所が場所なので家に帰るように声をかけたのだった。
無事に家についた優は軽く伸びをしてから、雲雀にもう1度向き直った。
「雲雀先輩、迎えに来てくれてありがとうございました」
「問題ないよ」
えへへと優は照れたように笑った。いつもと違って頭を下げなかったので、少しだが雲雀に甘えている。
「何があったの?」
優が素直になったのは何かきっかけがあるはずだ。
「町は凄く良かったですよ。でもその前にすっごく疲れちゃって……」
「疲れた?」
「はい。簡単に説明すると……王子という人に拉致されて姫と呼ばれ、王子の知り合いの声の大きい人とオカマの人は常識があったみたいで解放されました」
「……何してるの」
「いやぁ、私にもさっぱり……」
はぁと大きな溜息をつくしかない。目を離してる間に事件に巻き込まれるとは思いもしなかった。
「……もう一人旅は禁止ね」
「はい! 今度は雲雀先輩と行きます! 雲雀先輩と一緒なら安心できますもん」
雲雀は黙り込むしかなかった。信頼されるのはいいが、信頼されすぎるのはあまり良くない。いつまでも我慢できるわけがないと雲雀自身が1番わかっている。
「雲雀先輩?」
「……今はそれでいいよ」
不思議そうな顔をしている優を誤魔化すために頬を撫でる。嬉しそうに目を細める姿は随分と子どもっぽい反応だ。
「明日の放課後、あけといてね」
「いいですけど? 何か用事ですか?」
休んでる間に何かあったのだろうかと優は真面目に背筋を伸ばす。それを見たいわけじゃない。
「用事はないよ」
「へ?」
「優と一緒にいたい」
ボフンと優の顔が赤くなった。その反応を見たかった雲雀は、迷わず優の口に触れた。
「……今日はもう帰るよ。疲れてると思うし」
恥ずかしく目を合わせることは出来ないようだが、コクンと頷いたのを見て以前より耐性がついていることがわかる。だが、これ以上はまだ早いと判断し、雲雀は帰っていったのだった。
ちなみに、雲雀が帰ってしばらくしてからお土産を渡すのを忘れたと優は気付き嘆いた。
次の日。久しぶりの学校だが、優は放課後のことで頭がいっぱいだった。
「優! おはよ!」
「よお! 風早!」
「ちっす」
教室に入るとすぐに声をかけてくれたので、優は放課後のことは一旦横に置き、ツナ達がいる方へ向かった。
「久しぶり! おはよー!」
「優、旅行どうだった?」
「んー……いろいろ巻き込まれて大変だった……」
思い出すとどうしても渋い顔になってしまう。
「ははっ。その方が思い出に残るぜ!」
山本のポジティブすぎる発言に優は思わず笑ってしまう。
「どうせ風早のことだからあほなことしたんだろ」
「だね。拉致された場合の対処法を考えておけば良かったよ」
ポロッと言った優の言葉にツナ達はギョッとする。
「お前何してんだよ!?」
「私もこれには困って、心の中で雲雀先輩に助けを求めちゃったよ。彼氏がいるって言ってるのに、王子に姫って呼ばれ続けるし、王子の仲間に常識があって本当に良かったよ」
しみじみと優が頷いているが、困ったというレベルの話ではない。
「優が無事に帰ってきて良かった……」
「心配してくれてありがとう! あ、お土産あるから食べてね」
当たり前のように優は出したが、お土産どころではないだろう。危機管理能力がかけているとツナ達は改めて思った。
「えーっと、無事に帰ってきたってことで、今日の放課後一緒に遊ぼうよ!」
「おっ。ツナ、いいこというじぇねーか」
「ごめん! ツナ君! 今日の放課後は先約が……」
せっかく誘ってくれたのにと思いながら優は頭を下げる。
「10代目の誘いを断るとは……」
先約があるなら仕方ないとツナは獄寺を抑える。その様子を見て優が言った。
「許してくれるなら、また誘ってくれれば嬉しいかなぁ……」
自信がなさそうに話すのは、ツナが怒ってるように優は思ったのかもしれない。だが、ツナ達はこの反応に少し違和感がうまれた。ツナのことは優が1番よくわかっているはずだ。これぐらいでツナが怒るはずないと優が知らないわけがない。
「優、どうしたの?」
「へ?」
「ああ。風早らしくねぇじゃねーか」
「変なものでも食ったのか?」
なぜツナ達がそんなことを言ったのか、優はわからなかった。しかし心配そうなツナ達の顔を見て、口が勝手に動いた。
「あ! 雲雀先輩に呼ばれていたの忘れてた……。本当に変なもの食べたかもー。応接室に行ってくるね。ごめんね!」
ウソだった。雲雀から呼び出しはなかった。
優が去った後、ツナ達のもとに黒川と京子がやってきた。
「ツナ君、ちょっといい?」
「京子ちゃん! ……と、黒川花」
「あんた達に聞きたいことがあるのよ。あの子が変になった心当たりはない? 具体的に言うと雲雀恭弥と付き合ってから数日してからかしら」
うーん……とツナは考え始める。
「あのね、ツナ君とは話をしてるの。でも私達とは回数が減ったんだ」
シュン……と京子が落ち込んだ姿を見て、ツナは慌てて必死に考える。が、わからない。
「ごめん、京子ちゃん……。オレもついさっき変だなって思ったんだ」
「あの子はあんたと話すのが1番好きだから、気付くのが遅れたのかもしれないわね」
ふぅと黒川が息を吐いた。ツナが1番気付く可能性があったが、親しすぎるものほどわかりにくいパターンだった。
「風早さんの笑顔を見守り隊のオレらの出番だな!」
ツナ達が振り向くと、集まってるのは優のことが好きな男達である。いつの間にか、妙なファンクラブまで出来ているようだ。
「黒川の言うとおり、雲雀恭弥と付き合って数日してから風早さんはおかしい。ツナは気付かなかったかもしれないが、風早さんはお前とも距離を置いていたぞ」
「え!? ほんとに!?」
「ああ。ツナと会話している時の距離が今までと比べて10センチ離れていた! それでもこのクラスの中ではツナとの距離が1番近い!」
自信満々に話す男の言葉に何人も頷いているのをみて、ツナ達はドン引きした。ちょっとどころではない。かなり怖い。
「1番の問題は笑顔の回数が減った!」
「そこでオレらは雲雀恭弥が原因かと考えた!」
「だがしかし、雲雀恭弥に呼び出された時は嬉しそうなのだ!」
くそぉと嘆きだした男達を見て、ツナ達はスルーした。情報は助かったが、慰める気にはならなかったのだ。
「ヒバリさんに聞いてみようかな……」
咬み殺される可能性が高いので出来るだけ近寄りたくないと思ってるツナだが、優のことがわかるならと行く気になったのだった。
「急にごめんなさい……」
「いいよ。優に頼みたいことはいっぱいあるから。……草壁」
「はい。では、こちらをお願いします」
「わかりました」
書類整理をし始めた優を見て、雲雀は悩み始めた。理由が何であれ、優が雲雀のもとに来るのはいい。問題は優が徐々に学校が居心地が悪いと感じ始めていることだ。優は油断すればすぐに逃げ出す危うさがある。
今は雲雀がなんとか優を引き止めている状況だ。これでは少しでも優が逃げ出さないようにとツナ達と群れていいと許可を出している意味がない。
雲雀はリボーンのこともあったが、時間が立てばこうなると予想していたので旅行の許可を出した。残念ながら忘れてしまうほどの気分転換にはならなかったらしい。そのため、今回の旅行で雲雀に少し甘えるようになったのは運が良かった。
「閉じ込めることが出来れば楽なのに……」
ポツリと呟いたが、それは無理だと雲雀が1番わかっていた。そんなことをすれば、優は逃げ出す。優が風使いと知り、雲雀はますます閉じ込めるのは不可能という気持ちが強くなった。
「何の話です?」
「欲しいものがあるけど、簡単に全部が手に入らないんだ」
「へぇ。雲雀先輩が手こずるって珍しいですね」
「そうだね」
「雲雀先輩なら出来ますよ」
「当たり前だよ。まぁだけど……全部手に入れても満足しそうにないけどね」
ふと悪寒を感じた優は肌をさする。
「どうしたの?」
「ちょっと寒くなったかなーと」
「冷房、止める?」
「んーちょっと温度あげさせてもらいますね」
「いいよ」
優は温度をあげてから書類整理に戻る。空気を読んでずっと黙っていた草壁が、気の毒そうに優を見ていた。
放課後になり優は一度家に帰った。ご飯は家で食べるということになったので、先に仕込みをしてから出かけるという話になったのだ。
応接室で優を待っていた雲雀が扉に目を向ける。コソコソと動いている気配がするので、優やリボーンではない。
「誰?」
「し、失礼します……」
声をかければビビリながらも現れたツナの姿に僅かに眉が上がる。ツナが周りを見渡したので、優に用事かと思ったが、ツナは優がいないと知るとホッと息を吐いた。
「あの、ヒバリさんに優のことで聞きたいことが……」
「なに」
内容は予想しているが、雲雀はあえて聞いた。
「優に何かありました? 少し前から、オレ達に遠慮してる感じがして……」
予想通りの内容だったので雲雀は息を吐いた。話してしまえば死ぬと知り、優はツナ達と関わるのが怖くなっているのだろう。雲雀は知っていて優を避けないので、雲雀のところに来るのだ。つまり優は雲雀に会いたいと思ってきてるわけではない。
「僕は理由を知っている。でも、僕から君達に話す気はない」
「そんなぁ!」
「僕が教えれば意味がないからだ」
ツナはぐっと言葉が詰まる。雲雀は優のために話さないと気付いたからだ。
「……機会はめぐってくるよ」
優のことだ。雲雀が止めようとしてもツナがピンチになれば、また正体を隠しながら助けるだろう。その時にツナが優の存在を拒否しなければ、根本的な解決にはならないが多少は改善するはずだ。
「本当ですか!?」
「僕は与えたくはないけどね」
嫌そうに、心底嫌そうに雲雀は言った。優が正体を隠し動く時は、無茶する可能性が高いからだ。しかし与えなければいつか優が逃げてしまう可能性がある。
「ははは……」
独占欲という意味で捉えたツナは苦笑いを返すしかなかった。
「失礼しまーす。ってあれ? ツナ君?」
「優!」
「ここに居たからだったんだね。獄寺君がダイナマイトを持って駆け出そうとしてるのを山本君が必死に止めていたよ」
「えーー!? もうーー!?」
一人のほうが安全だからといってツナは乗り込む気だった獄寺を抑えてきていたのである。優の話を聞くと、もう限界のようだ。
「ごめん! 優、ちょっとオレ行って来る! ヒバリさん、ありがとうございました!」
雲雀は溜息で返事をし、ツナ達を見逃した。
「ツナ君、どうしたんですか?」
「僕に優を独占するなと文句をいいに来た」
「うそーー!? ツナ君はそんなこと言いませんよー!」
解釈は間違っていない。もしツナ達が知れば、すぐに優を受け入れ、怖がらなくていいと態度で示すために一緒にいる時間を増やすだろう。つまり雲雀との時間は減るということだ。
優のために必要なことだが、何とも言えない気持ちになる雲雀だった。