【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
遅刻することなく入学式に出た優は、話を真面目に聞いているフリをしクラスメイトを確認する。ツナと山本、さらに京子と黒川の姿があった。もしかすると転生者がクラスメイトにいるかもしれないが、主要メンバー以外は覚えていないので、考えるのをすぐに止める。
入学式が終わると、教室移動になる。雲雀から場所を教えてもらっていたので先に行っても良かったが、優は後ろから観察することにした。
山本は元気そうな男子と歩いていたので、野球部関連なのだろう。京子は黒川と一緒に居た。ツナはというと、優と同じで後ろの方で歩いていた。チラチラと京子を見ているので、一目ぼれなのか昔から好きだったのかは知らないが、原作通り進んでるようだ。問題はツナを抜かすついでのように体格のいい人物が小突いていくことだろう。見ていて気分が良いものではない。優はツナの被害が減るように隣を歩くことにした。
教室に着くと好きな席に座るようにと担任が言った。普通ならば、出席番号順になりそうなところである。おのずと小学校グループで別れていく。知り合いの居ない優は場所を優先しさっさと席に座った。
(おー、そうくるか)
暇つぶしで空を見ていると、優の前の席にツナが座ったのだ。
(やっぱり関わるようになってるんだねー)
この世界の流れを感じた瞬間だった。
入学式から数日たったが、優は未だにツナと会話がない。ただしそれはツナに対してだけじゃなく、他のクラスメイトもだ。必要最低限で当たり障りのない内容しか話していない。人見知りというわけじゃないが、後々のことを思えば、巻き込まれるのは原作キャラだけでいいという考えなのだ。
というのは、半分建前である。優にはとある懸念があった。
(また雲雀先輩と会ったよーー! 目が合うたびに軽く頭を下げるけど大丈夫なのかな……。まさか狙われてる!? 強いかもしれないって疑われてるのかも!?)
移動教室や、トイレへ行くときに雲雀と会うのだ。距離が離れているので会話はない分、何を考えているのがわからず優は怖かったのである。
内心ビクビクしながら優はゴミ捨てに向かっていた。今日はもう3度雲雀と会っていたので教室から出るのを極力避けたかったが、ジャンケンに負けてしまったのだ。これは自分の運の無さを嘆くしかない。
「よいしょっと」
そこまで重いわけでもないが、癖で声を出してゴミを捨て、手をパンパンと叩く。後は戻るだけと方向転換した時、優の耳にツナの声が届く。悲鳴に近い声だったので、風を使って周囲の声を拾う。
(……いじめられてる?)
知ってしまったからには無視することが出来ない優はツナが居る場所へ向かう。
「あれ? 何してるの?」
キョトンとした態度で声をかける。優の性別が女子で、さらに容姿がいいこともあり、気まずそうにツナをいじめていた生徒は去っていく。その時にツナに話すなよと睨みつけていたが、優は気付かないことにした。
完全に足音が去ったので、優はツナの前に屈む。
「大丈夫? 沢田君」
(うわー、ツナって呼びたい! あーでもツナ君だろうなー。現実では男の子の呼び捨てってあんまり好きじゃないし)
声をかけられ、女子に手を差し伸べられたことにツナは驚く。まさか優が仲良くなる気満々だと露ほども思っていないようだ。
恐る恐る手を出し、ツナは立ち上がる。すぐに手が離れたが、ツナからすれば感動ものである。
「次は保健室だね」
「えっ」
「歩けないほど痛いの……?」
「だ、大丈夫」
心配するような目で見られ、ツナは必死に首を振った。当たり前のように自身の隣を歩く優に、ツナは驚きっぱなしだった。
一方、優は京子とハルと話しているツナのイメージが強く、いったい何を仕出かしてるのか気付かず、ただツナの怪我を気遣っていた。
「失礼します。……あれ?」
「せっ、先生居ないのかな」
「とりあえず、沢田君座りなよ」
「う、うん」
風で人の気配がないと気付いているが、優はベッドの方も覗く。もちろん誰もいない。
「うーん……」
どうしようかと悩ませる。そもそも保健の先生は居るのだろうか。優はDrシャマルのイメージしかない。
ツナはツナで、優が困ってるのを見て、これぐらい大丈夫と言おうか、言うまいかと悩んでいた。実際いつもより、怪我は少ない。
「まっ、いっか。沢田君は怪我してるところを水で洗って」
「う、うん」
ガサゴソと何かを探してる優を横目で見ながら、ツナは言われたとおりに動く。
「イテテ……」
「それは我慢してね。水で流さないとダメなんだ」
「だ、大丈夫。消毒より痛くないし……」
「ん? 擦り傷に消毒しちゃうと怪我の治りが遅くなるよ?」
「そうなの!?」
「うん。ガーゼとかもダメみたい。だから普通の絆創膏じゃないのを探してるんだ。……あ、あったあった」
救急絆創膏をはりながらも、怪我した時の対応のために最近読み出した本の内容を優はツナに教える。ツナが素直に驚くので、話すのが楽しいのだ。
「これで終わりかな?」
「ありがとう!」
「どういたしまして」
治療が終わるころには、ツナは優に緊張しなくなっていた。
「風早さんって無口だから何考えてるかわからなかったけど、優しいんだね!」
「褒めたって何も出ないよ」
ツナの言葉に優は笑みをこぼす。
「笑った!」
「へ?」
「笑ったほうがいいよ!」
前の世界ではいつも笑っていた優だが、興奮が抜けると新しい生活に不安を抱き、最近は笑うことが少なくなっていた。ツナに言われてそのことを自覚し、さらに真っ直ぐな目で褒められ、優は頬に熱があつまる。
「あ……ありがとう……」
優の顔が赤くなったことで、ツナも自分が何を言ったのか気付く。互いに真っ赤になり、しばらく沈黙が流れる。
この事態を終わらすために優は口を開いた。
「だ、大丈夫。ちゃんとわかってるよ。沢田君は笹川さんのことが好きってね」
「えええええ!?」
ツナの悲鳴のような叫びに優は首を僅かに傾げながら言った。
「後ろの席から見ていれば、何となくわかるよ? 沢田君、良く見てるし」
(原作を知らなくても、すぐにわかるレベルだったし……)
ツナは口をパクパクと動かすだけである。
「心配しなくても誰にも話さないよ」
「ほ、ほんとに?」
「うん、約束する」
優の笑顔にツナはホッと息を吐く。
「そろそろ教室戻ろっか。HRが始まりそうだし、怒られちゃうよ」
「そうだね」
イスから立ち上がる時にまた優に手を差し伸べられる。ツナは驚きはしたものの、すぐに優の手をとった。
「あ、あのさ……」
保健室を出ようとした優にツナは声をかける。
「どうしたの? 沢田君」
「ツナでいいよ。みんな、オレのことツナって呼ぶし……」
「ツナ君でいい?」
「う、うん!」
「じゃぁ私のことは優って呼んでいいよ。あ、本当に急がないと」
ツナの返事を待たずに、優は歩き出す。慌ててツナは声をかけた。
「ま、待って……優!」
ツナの声に優は置いていきそうだったことに気付き、立ち止まる。自身をバカにしたりしないで、耳を傾けてくれる優にツナは笑顔になる。
「ごめんね、ツナ君」
「オレこそ、遅くてごめん」
2人は笑いあい、並んで教室に向かったのだった。