【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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甘いと激甘の間かな?


優と雲雀とディーノ

 優が去った病院ではディーノがリボーンから話を聞いていた。

 

「性格は問題なさそうだな」

「ああ。だからこそマフィアに進んで入る理由がわからねぇ」

「復讐者に異の者と呼ばれ、あいつと関わった者が死ぬか……」

 

 ポツリとディーノが呟いた。悪い奴ではなさそうだが、厄介な件なのは間違いない。

 

「お前は随分と気にいってるが、オレはあいつを知らねーからなー」

「ちげーぞ」

「ん?」

「ツナがあいつのことを気にしてるんだ」

 

 ちゃんとお礼を言えなかった。どうして助けてくれたのかも聞けなかった。苦手な戦闘をして辛い思いをしてないのだろうか。

 

 事件を思い出すたびに、復讐者に連れて行かれた骸達だけではなく、助けてもらった人のことをツナは心配していた。少し落ち着けば、自分のことでいっぱいで逃げちゃって今回も話せなかったといって落ち込むだろう。

 

「まっなんとかなるか」

 

 ツナの兄貴分として力になりたいと日ごろから思っているディーノは、軽い口調でこの件を引き受けた。

 

「助かるぞ。ちょうどお前が家庭教師を頼もうと考えているヒバリはあいつの正体を知ってるしな」

「なら、そっちからも探ってみるぜ」

「ヒバリは手強いぞ」

 

 いくらリボーンが言っても雲雀は話さなかった。借りがあるのもあるだろうが、雲雀が獲物と言ったとおり、雲雀が戦っても満足できる申し分のない相手である。余程いい条件を出したのだろうとリボーンは推測していた。……完全にリボーンは獲物という言葉を履き違えている。

 

「優からは話を聞いてるが、まだヒバリっていう奴と会ったことがねーんだよな」

 

 かなりの変わり者ということは聞いているので、困ったようにディーノは頭をかいた。

 

「どうしてもやべぇ時は優を頼れば何とかなるぞ。ヒバリは優に甘いからな」

「そういや、言ってたな」

「あいつら最近付き合い始めたしな」

 

 そうなのかとディーノは感心したように言った。優は自覚がなさそうだったが、リボーンの話ではありえなくはないと思っていたので驚きはなかったのである。

 

「それとヒバリの相手をする時に、優のことも気にかけてくれ」

「なんかあったのか?」

「少し前から様子が変なんだ。ツナと距離を置こうとしている」

「そんなわけ……ってお前がこういう冗談は言わねーよな。わかった、任せろ」

 

 忙しくなりそうだぜと呟きながら、ディーノは気合を入れたのだった。

 

 

 

 家に帰り京子達と連絡を終えた優は、制服に着替えて再び応接室にやってきていた。

 

「ただいま戻りました」

「おかえり」

 

 キョトンとした顔で優は雲雀の顔を見た。

 

「なに?」

「おかえりなんて初めて言われたのでちょっとビックリしました」

 

 優は嬉しそうにはにかんだ。雲雀はそれを見て、自分のもとに戻ってくるなら、言い続けるのもいいかなと思った。

 

「あの、雲雀先輩をもう1人の私の連絡先にしちゃったんです……」

「……何があったの?」

「またツナ君が巻き込まれていたので、助けただけですよー」

 

 ストレスを感じているようには見えないので、雲雀は気付かれないように息を吐いた。

 

「僕を連絡先にしたなら、話したんだ」

「リボーン君と少し」

 

 せっかくの機会をしくじったらしい。

 

「雲雀先輩に迷惑をかけますが、リボーン君が探し回ることはなくなりそうです。……すみません」

「僕は気にしない」

 

 優はホッとしたように息を吐いた。勝手に決めてしまったので嫌われたらどうしようと思っていたのだ。

 

 何を考えているのかを察した雲雀は立ち上がり、優を抱きしめた。緊張して肩の力が入ってる優に声をかける。

 

「……もっと頼っていいから」

 

 恐る恐ると雲雀の背に手を回して優は言った。

 

「いっぱい頼ってますよ? ……わっ!」

 

 雲雀は抱きしめる力を強めた。自分よりも柔らかく小さな身体を痛めつけない力加減で。

 

 最初は戸惑っていた優だが、あまりにも優しい抱擁に、次第に力を抜き雲雀に寄りかかる。

 

「……雲雀先輩、大好きです」

 

 自然と出た言葉。そのため口にした優の方が驚いた。

 

 恐る恐る離れ、優は雲雀の顔を見る。

 

「……ぁ」

 

 捕られると思った。だが、以前のように怖くはなかった。雲雀ならいいと思えたのだ。だからもう1度口にした。

 

「雲雀先輩、大好きです」

 

 優は雲雀の目から逸らすことも、恥ずかしがることもなかった。ただ事実を述べただけだから。

 

「わっ」

 

 雲雀はもう1度抱きしめた。我慢できなかったのもあるが、翻弄された姿を見られたくなかったのだ。

 

 優は雲雀の心をかき乱す。

 

 初めて会った時からそうだった。ただの気まぐれだけで雲雀が案内などするわけがない。書類で目を通したの時には何も思わなかった。ただ髪と目は生まれつきということを覚えていただけなのに。

 

 それでも不快な気持ちにならなかったため咬み殺さなかったが、極力近づかないようにしようと思っていた。だが、見つけてしまうと目が追う。雲雀がジッと見ていれば、目が合うのも当然だった。雲雀の噂を聞いたのか慌てて頭を下げる姿が、面白くなかった。今まで気にしたことなんてなかったのに。

 

 すれ違っても雲雀をすぐ視界から外すのが気に食わない。こんなにも雲雀は心をかき乱されるのに。

 

 だから振り回した。そして雲雀の言動に振り回される姿を見て満足することは出来た。だが、結局振り回されるのは雲雀の方だった。

 

 優の言葉を聞いた瞬間、雲雀は一生優には勝てないと悟ったのである。

 

 だからといって、やられっぱなしは雲雀のプライドが許さない。これからも優を振り回すのをやめる気はさらさらない。

 

「僕もだよ」

 

 抱き寄せた優にだけ聞こえるように囁く。赤くなった耳が、雲雀を満足させる。

 

 雲雀が敗北を認めてるなど、優に絶対気付かせない。敵わないと思わせて、主導権を握る。雲雀は負けているが、勝ち続けるつもりなのだ。

 

「優」

 

 名を呼べば、真っ赤な顔をしながら優は雲雀を見つめる。あまりにも楽しい勝負なので、自然と口角が上がった。

 

 次はどうやって振り回そうと雲雀が考えていると扉が開く。ハッとしたように優が離れてしまった。

 

「し、失礼しました……!!」

 

 パタパタと真っ赤な顔を手で隠しながら優が去っていく。

 

「…………」

 

 逃げられたのはカギを閉め忘れた雲雀が悪い。楽しみすぎてノックに気付かなかった雲雀が悪い。

 

 しかし残念なことに第三者が見れば雲雀が悪いと判断される内容でも、悪いのは雲雀ではない人物になる。

 

「い、委員長……」

 

 無言のまま雲雀は邪魔をした草壁を咬み殺した。

 

 

 

 

 

 

 次の日には平常心を取り戻した優は朝から応接室に居た。書類をしながらチラっと視線を向けると雲雀がリングを持っていた。

 

「これ、何か知ってるよね?」

 

 視線に気付き、リボーンと話したと言ったこともあり雲雀が優に聞いてきた。

 

「ちょっと聞きました。雲雀先輩が興味あるなら説明しますよ?」

 

 多少ツナを認めたので興味がないと言い切れないが、ツナのために動く気はない。

 

「優は持ってるの?」

「持ってますよ」

「これがなければ優を助けれない?」

 

 優は悩んだ。呪いに関して他言無用である。つまり未来の内容を迂闊に話すのも危険ともとれる。今までに言ったことがあるものや、ある程度推測できる範囲までいけば言ってもいいだろうと優は思っている。

 

 例えばリボーンをアルコバレーノと呼んだことがあるので、おしゃぶりを持つものはアルコバレーノと教えるのは大丈夫だと判断した。それすらダメなら、この世界に来たタイミングで制限されているはずだからだ。

 

 力や権力に狙われるという話は雲雀にしていた。だが、マフィアの勢力図が変わると断言するほど情報を掴んでいたわけではなかった。そのため一言付け加えてから話した。

 

 この考えで判断すると、リングに炎を灯し戦うことになるということはこの時点では言えない。全く情報を掴んでいないからだ。

 

「んー、大丈夫と思いますよ」

「それならいらない」

 

 ポイッとゴミ箱に捨てたのを見て、優は苦笑いするしかなかった。

 

 人の気配がしたので、会話を終える。優だけでなく雲雀も口を閉じた。もう1人の優の話は誰にも聞かせてはいけないので、雲雀は気配を読むことが上手くなっているのだ。

 

 扉が開き、雲雀は現れた人物に目を向ける。優は少し遅れてから顔をあげた。

 

「ディーノさん!」

 

 優は立ち上がりパタパタとディーノに駆け寄る。

 

「優、元気だったか?」

 

 頭を撫でられ、優はえへへと照れたように笑う。当然、雲雀は面白くない。そこまで優の警戒を解くのにいったいどれだけかかったのか。

 

 パシッと雲雀はディーノの手を弾いた。優はキョトンとした顔で雲雀を見ているので、絶対にわかっていない。そのため手を引っ張り雲雀の後ろに隠してから聞いた。

 

「誰?」

「オレは……」

「君に聞いてない」

 

 ディーノは思わず頬をかいた。想像していた以上に雲雀の中で優の存在が大きい。リボーンに優のことを頼まれたが、迂闊に手を出せば雲雀の機嫌が最悪になる。変わり者と聞いているのもあり、雲雀の機嫌を損ねるわけにもいかない。絶妙なラインを狙わなくてはいけなくなりそうだ。

 

「えっと、ディーノさんです。いつも日本に来たときにお土産を頂くんです。雲雀先輩も食べていますよ?」

 

 見かねて優がディーノの印象が良くなるように声をかけた。しかし、大事なことは言わなければならない。

 

「それでリボーン君の知り合いで、ツナ君の兄弟子なんですよー」

「……へぇ、赤ん坊の」

 

 呟いた通り、最初に反応したのはそれだった。しかし今はツナの兄弟子という言葉にしか反応していない。目の前にいる人物が、優が頼る相手。

 

「そういうことだ。雲の刻印のついた指輪の話をしたい」

「なにそれ」

「お前に届いてるはずだが……」

 

 こそーっと優は指をさす。ディーノが視線を追い、たどり着いた場所を見て引きつった。

 

「……まじかよ」

「す、すみません……」

 

 優は謝った。雲雀がリングにここまで興味がないのは優が言ったせいだからだ。

 

「いや、優は何も……」

 

 悪くないと言おうとしたが、言えなかった。避けなければトンファーが当たっていたからだ。

 

「……なるほど。理解した。その方が話が早いな」

「ついてきなよ。……優もね」

 

 ディーノがゴミ箱からリングを回収している間に、優はクイッと雲雀の服を引っ張る。

 

「なに?」

「あまり無茶しないでくださいね?」

 

 優が頼ろうとしているディーノの実力を見るために原作より無茶する気がして声をかけた。雲雀は答えることが出来なかったが、無視することも出来なかった。そのため、優の頬を撫でる。

 

 仕方がないですねというように、優は息を吐いた。

 

 

 

 

 しばらくの間、大人しく優は2人の戦いを見ていた。

 

「ヒマ……」

 

 最初は怪我をするのでハラハラと見ていたが、途中で呆れ始めたのである。気にするのをやめた優は手持ち無沙汰になったのだ。

 

「本でも読めばいいよ」

「図書室に行ってきます!」

 

 優の呟きに反応したらしく雲雀が提案してきたので優は喜んでそれに乗って図書室に向かった。

 

「最近の優はどうだ?」

「どうって?」

「……元気か?ってことだ」

 

 リングについては全く聞こうとしないのに、優の話になると雲雀は反応する。ディーノはちょっと呆れていた。

 

「……あまり良くはないかな」

 

 ツナ達なら答えなかっただろう。だが、目の前にいる人物は別だ。雲雀から話してでも協力させなければならない。このままでは優が学校に通えなくなる。

 

「理由はわかってるのか?」

「わかってるけど、僕には解決することが出来ない」

 

 ディーノはジッと雲雀の顔を見た。諦めるタイプには見えなかった。

 

「これは外から内に入ってもらわないと解決しない」

 

 そういうことかとディーノは息を吐いた。初めから受け入れられていた雲雀には助けたくても出来ないことだとわかったのだ。

 

「最後に1つだけ聞くぜ。オレはどっちだ?」

「……外」

「なら、やることは1つだな」

 

 ニッと笑ったディーノを見て、また優との時間が減りそうだと雲雀は溜息を吐いた。

 

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