【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
グラウンドに移動した神は優のフードをとった。
「あ……」
「俺はそんなミスしないぞ」
周りから見えないように神が手を回してると知った優は、我慢できず抱きついた。
「神様、私……もう少しでみんなを……!」
神は手を背に回そうとしたが、結局いつものように頭を撫でた。
「優は、この世界は好きか?」
恐る恐る優は顔をあげた。情けないような顔をしているが、優は泣いていない。
「なら、大丈夫だ」
心を読んだ神は優を安心させるような笑みを浮かべ、そっと優の腕を離そうとした。だが、優は決して離れようとしなかった。駄々をこねるかのように。
「大丈夫だ。優は同じ過ちを犯さない」
「でも……!」
「神の俺が言うんだ。間違いない」
その言葉を聞いた優は、ゆっくりではあるが離れた。
「……神様、ありがとう」
「気にするな」
再び神は優の頭を撫でた。いつものやり取りに優は安心する。
「手のかかる弟子でごめんなさい」
「優でそれを言ったら、あいつはどうなるんだ……」
若干遠い目になった神に優は首をひねる。
「……昔、優の前にも似たようなことをしたことがあるんだ。初対面で殴りかかってきたり……まぁあれは俺が悪いのもあったけどな」
へぇと言いながらも優は驚いていた。目の前にいる神が認めるほどのミスをするイメージがなかったのだ。
「神様ってそういう担当なの?」
「俺の世界で起きた問題だったからな」
納得するように優は頷いた。
「まぁ神に遠慮する必要はない。出来ないことは出来ないと俺は言う」
「……またこういう風に会えるの?」
「会えなくはないが、俺は優以外の手助けは出来ない。世界が壊れる。手を出さないようにするために精神世界で会うようにしているんだ」
「わかった」
リング争奪戦で優はその気持ちをよく理解できたのだ。それでも怖くなったときに会えると知れたのは嬉しい。
「俺より適任が居るだろ?」
そう言われ、優は雲雀の顔を浮かべた。神には悪いが、素直に頷く。
「それでいい。おっと、そろそろか……」
優は首をひねった。
「時間間隔を狂わせてるんだ。今からでもまだ優に出来ることはあるぞ」
結局何も出来なかったと思っていた優は、神の言葉に笑顔になった。
「ありがとう、神様! 行ってくる!」
「行ってこい」
フードをかぶり優は屋上に向かって駆け出した。
屋上に着いた優は、死ぬ気が切れるツナを抱えてXANXUSの攻撃を避けた。
「い、1位の人!」
“……悪い。僕が不甲斐ないばかりに君が手を出す形になってしまった”
ツナを地面におろし、避雷針が倒れるのを見ながら優は言った。
「ううん。これで良かったんだ。オレ、1位の人が無理するのもイヤだから」
優に向かって笑いかけた後、ツナはXANXUSを睨んだ。ツナは正体を気づいたわけではないが、隣に優がいることで不安が減り震えることもなかったのだ。それにツナは珍しく怒っていた。ランボの件もだが、隣にいる人物を追い詰めようとしたことに。
「オレはこの戦いで、仲間を誰も失いたくないんだ!!」
優は思わず目を閉じた。ツナの言葉は響く。胸の中にある小さな炎がいつまでも消えそうにない。
XANXUSの手に炎がともった雰囲気を感じ取った優は再び目をあけた。そして止めようとしたチェルベッロに攻撃を加えようとしたが、XANXUSの攻撃は当たらなかった。優がチェルベッロを風で浮かせて避けさせたのだ。
「……てめぇの仕業か」
“なんのことだか”
返事をかえした時点で認めてるのだが、優は気にしなかった。するとXANXUSが笑った。ツナも優も9代目に似ているからだ。絶望を味わわせるのが楽しみになったのだろう。
結局、雷のリングだけでなく大空のリングもヴァリアーに渡り、9代目の身に不穏な気配を残しながらもXANXUSは去っていった。
真っ先にランボへと駆け寄ったツナに、優も続く。
“彼を僕に貸してくれ。多少は良くなるはずだ”
「え?」
“僕は自分の体力を相手に渡す能力がある”
「そうだ! オレも極限楽になったぞ!」
獄寺は反対しようとしたが、ランボの様子を見て口を閉ざした。
ランボの手を握りながら、優は口を開く。
“ベルは強いぞ。彼と戦ったわけではないが、身のこなしでわかる”
「うるせぇ! 相手が誰であろうとオレは勝つんだ!」
“……君はそれでいいんだ。黙ってるなんて君らしくもない”
「ケンカ売ってんのか、てめぇ!?」
ランボに体力を渡してるので、殴りたくても獄寺は殴れなかった。ブチブチと怒っている獄寺だったが、ランボが何か言ったことに気付き、意識がそっちに向く。
「ゆ、優……」
名を呼ばれ思わず優は力を込めた。決してランボが痛くならない力加減だったが。
「ランボの奴……こんな怪我なのに優と遊んでる夢でも見てるのかな……」
ツナの言葉に優は我慢できず目から溢れ落ちた。
「え……?」
“僕に出来ることはした。後は頼む”
逃げるように優は去った。これ以上は我慢できない。
「ツナ?」
ジッと優が去った方向をツナは見ていたので、山本は声をかけた。
「泣いていた……」
「気のせいじゃないスか? オレにケンカ売ってたんスよ」
思い出しただけでイライラするが、ツナが一向に視線を逸らさないので獄寺は少し考えて口にした。
「あほ牛が……慕ってるようでしたからね。くるものがあったんじゃないスか?」
「……そうかも」
10年後と20年後のランボの様子を思い出し納得したツナは、ランボを病院に連れて行ったのだった。
病院からの帰り道。獄寺達と別れた後、ツナはリボーンに話しかけた。
「なぁ、リボーン。お前、本当に1位の人の正体がわからないのか?」
「確証がねぇ」
もしかすると……と思っている人物はいる。だが、リボーンはその人物の前でアルコバレーノの話をしたことがなかった。獄寺はアルコバレーノのことを知っているが詳しく知るわけでもないし、わざわざ話さないだろう。山本とハルは全く知らない。ツナが話すわけがない。それでも今までの言動から考えれば、当てはまる人物である。
「……今から確認するか」
「え?」
「優のところに行くぞ」
「なんで優のところに?」
疑ってる人物が優とは思いもしないツナは、不思議な顔をしているだけだ。
「……優は知ってるはずだからな」
「でも、優は顔を見ていないって言ってたよ」
ウソではないだろう。自分の顔は見れないのだから。
リボーンは優の考えそうな言い回しを思いつく。何度も頭をつかった勝負をした。わからないはずがない。
「それにもう遅い時間だし、優に迷惑はかけれないよ」
「行くぞ」
「おい、リボーン!!」
慌ててツナはリボーンの後を追いかけて行った。しかしツナが優の家に着いた時にはもうリボーンは呼び鈴を鳴らした後だった。どーしよーとツナは頭を抱える。が、一向に出てくる気配がない。
「もう寝ちゃってるのかな」
ツナの呟きにリボーンは返事をかえさず、電話をかけた。
「ちゃおッス。そっちに優はいるのか?」
「誰にかけてるんだ?」
「ディーノだぞ」
ツナは納得した。ディーノが雲雀に修行をつけているはずだ。だからその場に一緒に優がいてもおかしくはない。
「そうか。サンキューな」
「どうだった?」
「一緒らしいぞ。優はテントで眠ってるみてーだ」
「そうなんだ」
ただ眠ってるだけならいいが、何かあって出れなかった可能性もあった。優は迷惑をかけずに知れたのでツナは心の底から安心した。
リボーンはというと、もしあれが優ならばあの試合を見て眠ることが出来るとは思えなかった。だが、もしディーノがウソの報告をしているなら、わからなくなる。しかしリボーンにウソの報告をディーノがすると思えない。
結局、リボーンはツナを鍛えることを優先した。正体を知ればディーノから連絡があるだろうと信じて……。
少し時間がさかのぼる。
優は必死に零れ落ちそうなものを我慢し、雲雀のもとへ向かった。無性に会いたくなったのだ。
「こんばんは」
3人の姿が見えたので、ホッと息を吐き優はいつも通り挨拶した。ディーノもいつもと変わらない優の様子に安心し、声をかけた。だが、雲雀だけはジッと優を見ていた。
「こっちにきて」
不思議に思いながらも、雲雀の言うとおりに動く。周りを見渡した後、雲雀は優のフードをとった。
「……今から休憩ね」
「恭弥?」
「どうかしたんですか? 雲雀先輩」
グイっと優の手を引っ張り、2人の疑問の声を無視し雲雀は何も言わずにテントへ入っていった。
「雲雀先輩?」
「もう我慢しなくていい」
その言葉を聞いた途端、ポロポロと零れ落ちる。雲雀はゆっくりと肩に押し付け、あやすように背を撫でた。すると、恐る恐るだが優も雲雀の背に手を回した。
「……何があったの?」
首を必死に横に振るだけで、優は何も答えようとしない。仕方ないと雲雀は息を吐き、ポンポンと背を叩き優からそっと離れる。
見捨てられたような顔をしている優に、大丈夫という意味で目尻に唇を落とす。
「この服、脱いでも大丈夫?」
コクンと優は頷けば、雲雀は上着を脱がしはじめた。この服のおかげで正体を隠せているが、今はこの服が鬱陶しくて仕方がなかったのだ。流石にズボンを脱がすことは出来ないが、上着を脱がせただけでも雲雀は満足だった。
そしてもう1度抱き寄せてから言った。
「僕はこっちの優の方が好きだ」
もう1人の優を雲雀は否定しなかった。無理はしているが、あれも優なのだ。否定してはいけないのだ。
優は涙腺崩壊した。後一歩のところで雲雀が好きだと言った自分を捨てるところだったのだから。
「ごめん、なさい……」
「大丈夫だよ」
何について謝ってるかはわからないが、雲雀は優が眠るまで背を撫で続けた。
テントの外では、ディーノとロマーリオが見守っていた。優が無理していることに気付かなかったのだ。見守るしかなかったのである。
他にできることがあったのは、リボーンの電話にウソをついたぐらいだった。いくら恩のある師匠であっても、優が泣いていると報告することは憚れたのだ。雲雀がいなければ、気付けなかったのだから……。
何より優のすすり泣く声は、ディーノ達の胸にくるものがあった。
「ボンゴレと同盟を組んでいて後悔したのは初めてだぜ……」
「……そうだな」
今回の件に手出しできないディーノはテントを見ながら手を握り締めるしかなかった。