【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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ちょっと遅れた。すみません


暴走

 目を開けるとまたテントの中だった。昨日はあのまま眠ってしまったらしい。優は少し悩み、ズボンを脱いで顔を出した。その方がいいと思ったからだ。

 

 コソコソと顔を出すと、雲雀と目が合った。慌てて両手で優は顔を隠す。

 

「あっち」

 

 雲雀が指した方向へと優は駆け出した。

 

 顔を洗って戻るとロマーリオが氷を用意してくれていた。やはり腫れているらしい。

 

「うぅ、すみません……」

「水分もしっかり取るんだぜ」

 

 甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるので、優は恥ずかしいやら情けない気持ちになる。太陽がもう傾き始めているので、寝すぎたことも気まずい要員の1つだ。

 

「悪いな。歳をとると、可愛くてつい構いたくなるんだ」

 

 優は必死に首を横に振った。嫌ではないのだから。

 

「ロマーリオさん、あの……」

「君、邪魔」

 

 雲雀の言葉に反射的に自分に言われたと思った優は、慌ててどこかに行こうとする。

 

「優はそのままでいいから」

「え? あ、はい」

 

 ゴロンっと優の膝に寝転び、雲雀はスヤスヤと眠りはじめた。戦いっぱなしで寝不足だったのだろう。あまりにも落ちるのが早い。

 

「……恭弥」

「す、すみません」

 

 慌てて優は謝った。さっきまで戦っていたのに、急に寝始めるのだからディーノは振り回されっぱなしだろう。

 

「いや、優は悪くないだろ」

「いいえ、私のせいですよ。雲雀先輩は、私が話したいと思ってると感じ取ったと思いますから」

 

 先程優はロマーリオにいつごろディーノと話せるかと確認しようとしていた。恐らく雲雀は今までの経験からわかったのだろう。

 

「……そうか」

 

 ディーノは腰を下ろし、優の言葉をじっくりと待ったのだった。

 

 

 

 

 

 目を覚ました雲雀は、優の顔を見てからディーノに向かって言った。

 

「……話しなよ」

「ん?」

「良かったですね、ディーノさん。雲雀先輩はリングについて話を聞きたいそうですよ」

 

 そうきたか……と、ディーノは疲れたように息を吐く。この反応は雲雀が折れたわけではなく、勝っても負けても聞く羽目になることを嫌い、それならばディーノが諦めていたであろう、雲雀が自分の意思で聞くことを選択したと気付いたからだ。本当に一筋縄でいかない性格である。

 

 結果的に良かったものの、負けた気分になるディーノだった。

 

「優はどこまで話したんだ?」

 

 今日の試合は間に合わないかもしれないと思いながら時間を見ていた優だったが、ディーノの言葉に顔をあげ答える。

 

「何も話してませんよ」

 

 まぁそうだろうな……と思い、ディーノは雲雀に今までの流れを話した。

 

 話を聞けば聞くほど雲雀の機嫌が悪くなっていく。当然だろう、優との勝負を邪魔されることになるかもしれない内容だ。

 

「……どうして話さなかったの。僕、言ったよね? 優の助けになるかならないか」

「その時はまだ知らなかったですし、雲雀先輩の協力がなくても何とかなるかなって」

 

 誤魔化すように笑う優に、雲雀は睨んだ。

 

「それに……私のせいで雲雀先輩が縛られるのは嫌だったんです。ツナ君の守護者になっちゃうじゃないですか」

「……今回だけ協力する形だってあったよね?」

 

 ポンッと優が手を叩く姿を見て、雲雀は溜息を吐いた。本当に肝心なところが抜けている。

 

「んーでもやっぱり言えませんよ。群れてほしいなんて」

「……わかった」

 

 雲雀の意思を優は尊重するから、気に食わないと思わない。だから優が頼まなかったことは許した。

 

 ホッと息を吐いてる優の顔に手を添える。まだ腫れている。

 

「雲雀先輩?」

「優を泣かせたのは彼らなんだね」

 

 返事をする前に雲雀は優にキスをした。今回はディーノ達は呆れていたが、優の様子がおかしいことに気付く。雲雀を怖がっているのだ。優のペースにあわせたものじゃない。

 

「恭弥!?」

 

 力づくでも止める直前に、雲雀は優を解放した。ディーノは崩れ落ちそうな優を慌てて抱きとめ、雲雀を引き止めるために声をかけるが、去っていってしまう。ロマーリオに雲雀を追いかけるように指示を出そうとすれば、雲雀から殺気が届く。

 

 優がビクリと震え上がったことを感じたディーノはロマーリオに目配せしながら首を振った。今追いかければ、優が悪化する。

 

「大丈夫だ、優。恭弥はお前に怒ったわけじゃねーよ」

 

 恐る恐る優は顔をあげた。雲雀に嫌われたと思ってる優は、僅かな希望にすがりたかったのだ。

 

「あれはこの戦いに対して怒ってるんだ。勝敗によっては優がヴァリアーに行っちまうかもしれないからな。……ちょっと待て。今から恭弥がムチャクチャにしそうじゃねーか!?」

「ああ。ヤバイぜ、ボス。時間も時間だ」

 

 試合方法によっては、雲雀が真っ直ぐ向かえばツナ達と会う可能性がある。

 

「場所は言ってねぇが、嫌な予感しかしないな……」

「車の手配をしてくるぜ!」

 

 ディーノ達の焦りっぷりを見て、2人には悪いが優はホッと息を吐いた。

 

「あの、もう大丈夫です」

 

 冷静になった優はそっと離れた。ディーノのことは好きだが、腕の中の居心地がいいわけではない。ディーノもそれは察しているようで優が大丈夫なら引きとめはしない。

 

「ディーノさん、テント借りますね」

 

 今回の雲雀の行動は、あの戦いに対して怒り、優がついて来ないようにし内側に入ったディーノにフォローを任せたと取れる。つまり優が頼み込めば雲雀は止まる可能性がある。

 

「それはいいが……」

「空から向かった方が早いですから」

 

 ディーノは納得した。直線距離で行くことができるのは大きい。

 

 着替え終わった優にディーノは声をかける。

 

「オレ達もすぐに向かう」

「はい。待ってますね」

 

 ふわっと空を飛び上がり優が見えなくなった途端、ディーノは息を吐いた。今まで何も気付かなかった自分に腹が立っていたのをずっと我慢していたのだ。

 

「軽々しく『背負うリスクの高さ』なんて言葉を使うんじゃなかったぜ……」

 

 もちろん背負うことを後悔しているわけではないし、全て背負うつもりで言った。

 

 しかしその言葉を聞いた優が、どんな気持ちになったのか。ディーノはマフィアのことをわかってるからこそ、言葉の選択ミスを理解しているのだ。

 

「ボス、反省するなと言わねぇが車の中でしてくれ」

 

 やるべきことは山ほどある。ロマーリオの言葉にディーノは頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 嵐戦が終わり、校内に侵入者が現れた。

 

「あいつが修行から帰ってきたんだ」

 

 リボーンはディーノから修行具合を聞いてくることもあり、殴りこんでくるだろう人物を予想するのは簡単だった。だが、もしあの正体が優ならば、雲雀の怒りを静めるのは簡単なことではない。ツナに譲り再戦する機会をなくした雲雀に骸と戦えることが出来ると教えても、耳を貸さないだろう。

 

「雲を止めれるのは風か……」

 

 ポツリと呟く。ますますあの正体が優にしか思えない。

 

「ツナ、気合を入れろよ」

「へ?」

「オレの予想では今までで1番キレてるはずだからな」

 

 誰が?と聞こうとしたところで、雲雀の姿が見えた。強い雲雀が来てくれたことに喜びそうになったツナだが、リボーンの言葉が不吉でしかない。

 

「……校内への不法侵入。及び、校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから」

「やっぱりーー!?」

 

 突っかかってきたレヴィを雲雀はあっさりと転がし、トンファーを振り下ろす。慌ててこれ以上の行為は失格にするとチェルベッロが叫んでいるが、当然雲雀は聞く耳を持たない。

 

「ちゃおッス」

 

 レヴィの前に立ち、リボーンは雲雀に声をかけた。ヴァリアーを助ける必要はあまりないが、咬み殺してしまえば雲雀は失格になってしまう。

 

「……止めようとしても無駄だよ、赤ん坊。僕は君にも怒ってるんだ」

「ディーノから全部聞いたんだな。悪かったな、オレもこうなるとは思わなかったんだ」

 

 雲雀はやっとまともにリボーンを見た。正体に勘付いているのかもしれない。

 

「リボーン、何の話?」

「ツナ、お前も知ってるだろ。あいつはヒバリの獲物だからな」

「それって1位の人のこと?」

「そうだぞ」

 

 雲雀はツナを睨んだ。目の前の人物と友達でなければ、優の無茶をする回数が少なかったはずだ。そもそも未だ気付かないことにムカツキしか感じない。

 

「リ、リボーン……。ヒバリさん、すっげーオレに怒ってない……?」

「おめーに巻き込まれて、この戦いでヒバリの獲物が奪われそうだからな」

 

 ガーン……とショックを受けるツナ。巻き込まれてるのは自分も一緒だとツナは思ってる。それでも、ツナは雲雀には言いたいことがあった。

 

「あの、ヒバリさん。1位の人は戦いに向いてる性格じゃないし、ヒバリさんに挑まれるのは困ってるかなぁ……なんて、ひっ!」

 

 それならばなぜ優に守られているのだと雲雀は殺気を送ったのだ。

 

“彼を責めるのは間違ってるだろ”

 

 あ!とツナは声をあげる。今日は来ないんだと思っていた人物が窓からやってきたのだ。

 

“僕は自分の意思で彼の手助けをすると選んだんだぞ。君が怒りを向ける相手は僕だろ”

 

 出来るわけがない。雲雀が責めてしまえば、優は行き場がなくなってしまう。

 

“一応、僕の弁解も聞いてくれ。僕は君との約束を破る気はない”

 

 たとえ向こうが勝ったとしても、優は雲雀のもとには来ると言った。

 

「……本当に?」

“よく思い出せ。あの約束は僕から言い出したんだぞ。僕が出来ないことを提案するはずがないだろ”

 

 全て納得したわけではないが、雲雀の気が少し晴れる。優は捕まえようとしても簡単に捕まるタイプではないのだ。気を抜けばどこか行きそうな優が、大人しく居るはずがない。

 

“校舎の破損は直るんじゃないのか? 幻覚で誤魔化してるところはあるが、直ってる場所も僕は見たぞ”

「はい。我々チェルベッロが責任を持って」

「……そう。気が変わったよ。じゃぁね」

 

 ヒラヒラと優は手を振った。もう1つの約束は厄介だが、こっちはして正解だったと自分を褒めた。

 

「すごい! あのヒバリさんを止めた!」

“彼が引いて助かった。正直、僕もあそこまで効果があるとは思わなかったからなぁ”

 

 ディーノから怒っている原因を聞いて、もしかすると……と思って言っただけなのだ。相変わらず雲雀の気持ちがわかっていない。

 

 ツナに尊敬の目を向けられ、気まずそうに優は過ごしているとスクアーロの大声が流れをぶった切った。

 

「う゛お゛ぉい!! てめぇの腕なら数秒で終わらせるぞぉ! 明日が貴様らの命にちだぁ!」

 

 去っていくヴァリアーを見ながら優は僅かに首をひねる。スクアーロは山本の実力を知らないことに疑問を感じたのだ。

 

「どうしたんだ?」

“彼の身体能力を考えるとナメていて大丈夫なのかと思っただけだ”

「やっぱてめぇは敵だ!」

 

 立てないのにも関わらず、優の発言を聞き獄寺はケンカを売った。

 

“……すまない。決して君達に負けてほしいと思って言ったわけじゃないんだ”

 

 素直に頭を下げたので、獄寺は舌打ちした。雷戦の時といい、思うことがあればちゃんと反応を返す。つまり今までは獄寺があまりにも的外れなことを言っていたので、反応を示さなかっただけだと獄寺は気付いてしまったのだ。

 

「オレは気にしないぜ」

「うん。オレもわかってるし」

「だな! 極限に問題ない!」

 

 ホッと優は息を吐く。いくらなんでも先程の発言はまずいと思っていたのだ。素直に認めるのは癪で、獄寺はツナ達のように返事をすることは出来なかった。そんな時、優が声をかけた。

 

“僕が怪我を診るのは嫌か?”

「あったりめーだろうが!」

“……そうだよな、すまない”

 

 やっちまったと獄寺は思った。敵と繋がってると警戒しているのが的外れだとわかった今、かける言葉を間違えたと思ったのだ。円陣の時にツナが誰もかけてほしくないと言った中に、この人物も入っているとわかっているのに。

 

「オレは男はみねーから」

 

 獄寺の心境を察したのか、Drシャマルは一声をかけて去っていった。そもそも死ぬほどじゃない限り、獄寺でも診る気はない。

 

「獄寺君……。その、1位の人に診てもらったほうがいいよ」

「10代目がそうおっしゃるなら……。おい! 10代目のためにオレを診ろ!」

“君がいいなら”

 

 渋々という形でしか、獄寺は結局頼めなかった。それでも仲が改善したように見えたツナは嬉しそうに笑った。

 

 獄寺の怪我を診ていた優がピクリと反応する。ちょうど触れていた獄寺は感じ取った。

 

「なんだ」

“人の気配がしただけだ。恐らくディーノとロマーリオだ”

 

 2人分の気配が急いで向かっているので間違いないだろう。

 

「ほんとだ! ディーノさん達だ!」

「ん? ああ、あいつが予想したのか」

 

 優の姿を見て納得したようにディーノは言った。そして周りを見渡し声をかけた。

 

「どうやら恭弥はまだ来てねぇようだな」

「さっき来ましたよ。1位の人が止めてくれました」

「……そうか」

「はい。優以外で怒ってるヒバリさんを止めれる人がいるとは思いませんでした。やっぱり1位の人は凄い!」

“……どうも”

 

 返事をかえしたものの、気まずくなった優だった。本人でもあるし、優は雲雀を止めれるとは思ってもないのだ。

 

 そのやり取りを見ていたディーノは笑うしかなかった。そして答えを言ってるようなものをリボーンが見逃すわけがない。

 

「ディーノ、正体を知っていたのに黙ってただろ」

「げっ」

“あー、ついにバレてしまったのか……。結構頑張ったと思ったんだけどな”

「まったくだぞ」

 

 相手が優でなければ、もっと簡単だったとリボーンは思ったのだった。

 

「え? 誰なの?」

「自分で考えろ」

「えーーー!」

 

 近くにいる獄寺がフードを取ろうとしたが、簡単に逃げられる。

 

“これ以上の治療は病院に行け。じゃぁな”

 

 すぐさま逃げた優にディーノとリボーンはそろって溜息を吐いたのだった。

 

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