【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
月日は流れ、ダメツナと呼ばれるツナと可愛く男子から人気のある優が、一緒にいてもクラスメイトが疑問に思わなくなった頃、ついに原作が始まる日がやってきた。
全くそのことに気付いていない優は、登校してすぐにツナの姿を探す。見当たらないのでまだだと判断し、本を開く。
「風早さん」
声をかけられ、顔をあげる。クラスメイトの男子というのはわかるが、名前は出てこない。
「聞いた? ツナがパンツ一丁で笹川さんに告白したって」
「そうなんだー」
彼は優に好意を抱き、ツナの好感度を落とすためにわざと教えたのだが、肝心の優は原作が始まったのかと思っただけである。
「え? ツナが変態とか思わないの?」
「えっと、特に。ツナ君はツナ君だし」
「そう、だよな……」
肩を落として去っていたクラスメイトに首をひねっていた優だが、深く気にしないことにした。ツナと一緒に居ることで変わり者と思われてるから今更だと考えたのだ。哀れ、名も無き男子。
教室が騒がしくなったため、優は本を閉じ立ち上がる。ツナが登校したからだ。
目が合い、優はいつものようにツナの方へ行こうとしたが、先にツナは他の生徒によって道場に連れて行かれてしまう。
(関わるなってことかなぁ……)
そう思ったとしても、優はツナが心配なため道場に向かうのをやめるつもりはなかった。ただ、人ごみを避けるため、少し時間がたってから向かうことにした。ツナが死ぬ気になるまで時間があることを優は覚えていたのだ。
人が減り、静かになった優は廊下を歩く。
「あっ」
慌てて口を押さえる。雲雀が見え、つい優は声をあげてしまったのだ。雲雀は声に反応してしまったので、目が合った優は慌てて頭を下げる。
雲雀は気にした風もなく、何事もなくすれ違った。
優はホッと息を吐く。あれから数ヶ月たっても、未だに雲雀と良く会うので、どうしても緊張してしまうのだ。優は先程より少し速度をあげ道場に向かう。
途中で振り返った雲雀が後姿をジッと見ていたことに優は気付かなかった。
死ぬ気になったツナが現れたタイミングで到着した優は、後ろの方で背伸びをしながらツナを見る。
(おー原作通りっぽい。ツナ君、怪我してるけど元気そうで良かったー)
すぐに声をかけようとしたが、京子と話してる姿を見て、優は教室に戻ることにした。せっかくの交流の邪魔をすれば可哀相である。それにメールを送っていれば、応援していたことは伝わるだろう。
(友達が取られて、ちょっと寂しいかも)
苦笑いしながらメールを打つ。前の世界では当たり障りのない付き合いしかしていなかったと気付いたからだった。
バレーの試合も応援はしていたが、優は深く関わることをしなかった。
だが、一昨日までずっとリボーンにつけられていた。風では人の判別は出来ないが、リボーンの動きは一般人と違うので、わかりやすかったのである。
(ツナ君に私のことを聞いたのかな? まぁ昨日は何もなかったし、問題ないって思ったのかな? まぁどう思ってるかはすぐにわかるか……)
ツナの友達なので、近いうちに接触があるだろうし、強さに気付いていればファミリーに誘い、一般人と思っていれば京子と同じように扱いになるだろうと判断したのだ。……面倒なので悩むのを放棄したともいう。
(それに……今はこっちの方が重要だし……)
優は教壇に目を向ける。
「イタリアに留学していた、転校生の獄寺隼人君だ」
優はこれから起こることを思うと、ツナが心配だったのだ。
「ツナ君、大丈夫!?」
ガッとツナの机が蹴られたので、慌てて優は声をかける。ここまでは覚えてなかったのである。
「だ、大丈夫だよ」
「何かあれば、すぐに言ってね?」
「……うん」
ツナは曖昧に返事をするしかなかった。女子である優にかばってもらうのはあまりにも情けないからだ。ただでさえ、心配性の優に変な赤ん坊が家にきて、マフィアのことなどを話せていないのだから。
ツナが教室を出て行くと、その後を追いかけるように獄寺が出て行ったことに優は気付いた。
(心配だなぁ……)
悩んだ末、優は屋上に向かったのだった。
屋上に来たものの、リボーンがいるので覗くことも出来ず、結局は風で音を拾うことしか出来ない。
(堂々とすればいいのに、自分勝手だよねー……)
獄寺がツナについていくという声を聞き、優は風を操るのをやめて思ったことだった。怖いのも痛いのも嫌で、転生者が現れツナがピンチにならない限り、手を出そうとしない自分に嫌気が差したのだ。
空を見上げる。リボーンが来る前までは夜中に何度か飛んでいたが、最近はさっぱりだった。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムの音にハッとし、優は教室に向かおうとする。が、動きを止める。
(いつから居たのー!? で、でもダイナマイトの音が聞こえないみたいだし、ついさっきだよね!?)
「こ、こんにちは。雲雀先輩」
(うお。自分でもビックリ! 焦って言葉が詰まったよ!)
心の中は忙しいが、冷静に「あ! 教室に戻らないと……」と逃げる口実を呟き、歩き始める。
「し、失礼しました」
何も言われずにすれ違う。そのことに安心し肩の力を抜いた瞬間、腕をとられる。
「えっ」
急に後ろから引っ張られる形になったが転ぶことは無い。身体能力があがったのだから当然だ。しかしあがったからこそ、振り返る余裕が出来、雲雀と目が合う。
「……うん。君だったらいいかな」
「へ?」
「そこに座って」
咬み殺されたくはない優は、言われたままに座る。何が起こるのだろうと不安に思いながら、ジッと待つっていると、ゴロンと雲雀が寝転がった。
「えええええ!?」
「ふぁ、何?」
「な、なにって……」
(これって膝枕じゃん!!)
アワアワとするだけで、優は言葉が出てこない。そのため、雲雀は何事もなかったように目を閉じた。
(えーーー)
完全に眠る体勢に入ってしまった雲雀に、優は何も言うことが出来ず、大人しく枕代わりになるのだった。
「本当に寝ちゃったし……」
スヤスヤと雲雀が寝息を立て始めたので呟く。悔しいことに寝顔は可愛い。気付けば、手が雲雀の頭に伸び、撫でていた。今まで膝枕をしたことがない優は、手持ち無沙汰だったのだ。
(しまった! 小さな音でも起きんじゃなかった!? 咬み殺されるじゃん!!)
詳しいところは覚えていない優だが、一番好きなキャラだった雲雀のことは細かいところまで覚えていたようだ。
(……あれ? 起きない?)
不思議に思い、再び優しく撫でる。やはり一向に起きる気配が無い。
(なんだ、全然起きないじゃん。……って、起きなかったらずっとこの状態なの!? 影にいるけど、暑くないのかな? あ、そっか。風を送ればいいのか)
真っ先に思うのが雲雀の心配である。優の性格のズレが良くわかる。
しばらくすると風の心地よさに優もウトウトし始める。まぶたも落ち、もう眠る寸前だ。
「委員長!」
「ひゃっい!」
雲雀の頭から手を離し、優は胸を押さえる。心臓が飛び出るかと思うほど驚いたのだ。その証拠に、わけも分からず返事をしていた。
「…………なに」
不機嫌そうな声を出しながらムクリと起き上がり、雲雀は草壁に目を向ける。
その草壁はというと、あんぐりと口を開け、銜えていた草が落ちていた。
(うん、うん。わかるよ。……キャラ崩壊してるもんね)
草壁の気持ちがわかる優は心の中で相槌を打つ。
「草壁哲矢、用もなく僕を起こしたの?」
「っ! い、いえ! その少々問題が……」
雲雀は殺気を感じ、取り繕いながら草壁は言葉をかえす。
「そう。君、もう行っていいよ」
(私はただの枕か……)
文句を飲みこみ、優は立ちあがる。
「またね」
雲雀の言葉に瞬きを繰り返す。
(また? またってなに!? 草壁さんもこっち見ないで! 私の方が意味わかってないから!)
精神的に疲れた優は、教室に戻る気になれず、その授業時間だけサボった。次の授業の時に怒られなかったのは、草壁が手をまわしたんだろうなと優はボンヤリした頭で思った。