【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました   作:ちびっこ

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風戦 1

 照明に照らされた場所を見て、僅かに優は眉を寄せた。光の方向からしてコの字のなっている校舎の中庭ということは予想していた。だが、その中庭の地面が掘られ、水らしきものが溜まっている。水らしきというのは、視線をあげると校舎間で太めのワイヤーが張られているいるので、落ちてはいけないと判断できるからだ。それに僅かだが臭いもする。

 

 他にも屋上部分や校舎の壁をみるとワイヤーではなく、有刺鉄線が張り巡らされている。風は通るが、人が通るほどの隙間はない。下手に触れば感電する仕掛けかもしれない。もちろんコの字の中庭なので校舎がないところは鉄筋が組まれ、そこにも有刺鉄線が張り巡らされている。

 

 風で空を飛べることが出来る優はワイヤーの上で戦えと言われても、不利なところはない。だが、逃げ道をふさがれているようなフィールドを見て、優は不快に感じたのだ。

 

「これが今回の勝負のための戦闘フィールドです。試合が始まると四方八方に張り巡らされている有刺鉄線には強力な電流が流れ始めますので触れぬようにご注意を。また地面にある液体は特殊な薬品です。触れれば死に至ります。他にも特殊装置が仕掛けられています」

 

 大方は優の予想通りだが、問題は最後の一言である。今言わないということは了平の試合の時のように後々に発表されるということだろう。

 

「ちょ、そんな……!」

「どうやって戦えっていうんだよ!?」

「ワイヤーには何も仕掛けはありません」

 

 ツナ達の言葉に動揺することもなく、チェルベッロは淡々と答えた。

 

「ラッキー。見習いあの上に立つだけで精一杯じゃん」

「喜ばないでくださいよ、先輩!」

「なんで? お前、死ぬじゃん」

 

 ベルの言葉に優は頭が痛くなった。死んでほしいと思われているほど、嫌われているらしい。反応が違いすぎる。

 

「い、1位の人……!」

“僕はあの上で寝ることも出来るぞ”

「そ、そうなんだ……」

 

 気を張ることなのでやりたくはないが、ツナを安心することには成功したようだ。……もっとも、安心より驚きが勝ってるかもしれないが。

 

「では、風の守護者は戦闘フィールドへ。なお、この橋は開始から10秒後に爆破されます」

 

 チェルベッロが指す場所を見ると、校舎と鉄筋からワイヤーまで延びる板が二箇所あった。そこを渡ってワイヤーの場所まで行けということだろう。

 

 顔色の悪そうな対戦相手を見て、優はこっそりと溜息を吐いた。ベルの言うとおり、立つだけで精一杯なようだ。

 

「よし、では円陣いくぞ!」

“断る”

 

 さっと了平から優は避ける。

 

「なぜだ!」

“暑苦しいのが苦手だから。これならいいぞ?”

 

 優は片手を上にあげた。ハイタッチなら妥協出来たのだ。

 

「仕方がない」

 

 パンっと叩く大きな音がし、優は山本の方へと向かっていく。

 

「ハハッ。こっちもいいよな」

 

 再び音がし、次は獄寺に目を向ける。

 

「……負けんじゃねぇ。10代目のために!」

 

 拒否されるかと思ったが、獄寺は優の手を叩いた。そして、ディーノに目を向ける。

 

「いいか? 相手の心配より自分のことを優先しろよ?」

 

 若干目を逸らしつつ、優はタッチした。少し悩み、バジルにも手を出す。

 

「ありがとうございます!」

 

 互いに遠慮したような音が鳴った。そして、ツナが視界に入ったが優はクロームに目を向けた。

 

“嫌か?”

 

 クロームがフルフルと首を振り、手を出したので優しく叩いた。

 

“君はいいか……”

 

 優は雲雀に軽く手を振っただけに留めた。その手は雲雀が口付けした方だった。

 

 そして、振り返った優はツナへと視線を戻す。だが、その前にツナの足元にいるリボーンに目を向けた。リボーンの手にはランボの服のシッポが握られている。叩いた時は互いに無言だったが、何も言わなくても気持ちは伝わった。

 

“さっきは悪かった。最後は君と決めていたんだ”

「そうだったんだ」

 

 ホッと息を吐き、ツナは手をあげようとしたが出来なかった。その手を握られたからだ。

 

「え?」

“……悪いな。僕の中で君は特別なんだ”

 

 想像していたよりも小さな手にツナは驚き、思わず手を握り返した。

 

“懐かしいな……”

「え? 懐かしい?」

 

 優はつい呟いてしまった。そのためツナの疑問の声を聞き、慌てて手を離す。何もなかったように行こうとしたが、優はツナの疑問の声を無視することは出来なかった。

 

“素顔の時、君と初めて話した日のことを思い出しただけだ”

「オレと?」

“ああ。印象に残ったからよく覚えてるんだ”

「ご、ごめん……! オレ、両方で迷惑をかけてたんだ……」

 

 普段からダメダメな記憶がしかないツナは悪い想像しか出来なかったらしい。イジメられていたところを助けたので間違ってはいないが、助けたのは優の意志である。それに悪い印象だから記憶が残ったわけではない。

 

“違う。あの日、君は僕を救ったんだ”

「救った? オレが!?」

“笑ったほうがいい、そう君が言ったんだ。君の言葉がなければ、僕はとっくの前に折れていた”

 

 表には出さなかったが、優の言葉に1番反応したのは雲雀だった。雲雀は無理に笑わなくていいと優にいい、距離を置かれたことがあった。呪われてると知った今、その言葉を糧に生きていた優にとても残酷な言葉をかけたと知ったのだ。

 

“だから僕は君に弱いんだ。……彼にも弱いけどな”

 

 雲雀の方にも視線を向けてから、優は試合のためにその場を去った。

 

 優から話を聞いているディーノは目を閉じた。なぜ選ばれたのが優だったのか。それこそ本人である優が1番思っているだろう。……恐らく自身の師であるリボーンも。

 

 だから力になって欲しいとリボーンに言った。選ばれてしまった者にしかわからないこともあるだろうと考え。

 

 そしてディーノは霧戦でアルコバレーノは呪われていると知った。リボーンの呪いは他のアルコバレーノから推測し、もしかしてと思う内容はある。だが、優の内容は想像できない。それでも呪われているとディーノが知ったことをわかっていながらも、リボーンが口を噤んだままの内容を優から無理に聞き出すことは出来なかった。

 

「リボーン」

「なんだ?」

「お前に言うのは間違ってるかもしれねぇが、あいつのことを頼むぜ」

 

 雨戦後の内容とは似ているようで違う。問いただそうとしたが、ディーノはジッと優を見ていた。チェルベッロの言動から察するに、制限を取らなければならないことが起きる可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

 優は緊張することもなく、ワイヤーの上に立っていた。だが、対戦相手を見て緊張が走る。危なっかしいので気が気でないのだ。

 

「それでは風のリング。デュランVS……」

 

 スピーカーから声が聞こえ、対戦相手の名前を始めて知ったとのんきに思っていた優だが、自分の名を呼ばれなかった理由を思い出す。チェルベッロが観覧席にいるのもあり、息を吸い込む。

 

“ヴェントだ!”

 

 実はこの時のために黙っていたので、ほんの少し優は胸を張って言った。

 

「……それでは風のリング。デュランVSヴェント。勝負開始!!」

 

 チェルベッロからの反応はない。偽名なので未来では違う名の可能性もあったが、これではわからない。何のために1位の人という呼び名で我慢していたのだろうか。

 

 こっそりと溜息を吐き、優は動き出す。対戦相手のところまで何本ものワイヤーを飛び移らなければならないが、風を使わなくても優は簡単に移動できる。

 

 対戦相手はバランスを取るのに必死で飛び移る余裕がないようだ。それを横目に優は一つ目のワイヤーに飛び移った。すると、ワイヤーにまで渡る時に使った板が爆発すると同時に窓の割れる音がした。

 

「ああ!?」

 

 ツナの叫び声だけは耳に届いた。が、安心させるほど優に余裕はなかった。

 

“ざけんな……!”

 

 イラっとしながらも優はワイヤーを掴んでいた。手を離せば、落ちてしまう。もちろん優がドジったからではない。

 

「校舎からフィールドに向かい、嵐戦に使われたハリケーンタービンが仕掛けられています。ただし、嵐戦とは違いランダムではなく、熱に反応し突風が発生します」

 

 ツナ達はなぜバランスを崩したのか理解できた。

 

「これではヴェント殿でなくても、落ちてしまう!! 守護者を決めるどころの話ではない!!」

「風の守護者に相応しくなかったまでです」

「熱に反応するなら、なんであいつは無事なんだよ!?」

 

 獄寺は対戦相手を指をさし、チェルベッロに向かってほえた。

 

「我々は何もしていません」

「ふざけたことを抜かすんじゃねぇ!!」

 

 ハッとしたようにリボーンとディーノかがチェルベッロの言葉に対戦相手ではなく、優……ヴェントに視線を向ける。

 

「ヴェントの仕業だな」

「ああ。余裕はねぇだろうに………」

 

 余裕があれば、自分に向かって来る突風を抑えるのにつかっているはずだ。だが、止めろと叫んでも、止めないだろう。

 

「手を離せ! ヴェント!」

 

 ディーノの言葉にツナ達はギョッとした。しかし、その道しか残されていなかったのだ。優ならば壁に叩きつけられるか落ちる前に、制限をとくことが出来る。今のままでは両手がふさがれ、袋を外すことが出来ないのだから。

 

 風の音でディーノの声は聞こえなかったが、優もそれしか方法がないと頭ではわかっていた。それでも感情が邪魔をする。

 

 新たなアルコバレーノが知られれば、ディーノに迷惑をかけることになるだろう。

 

 それに……と、優は今まで学校で過ごした日々を思い浮かべた。

 

 まだ通いたい。少しでも通える確率はあげておきたい。神のおかげでフードはこの突風でも脱げないのだ。他に方法があるかもしれない。

 

「死ね」

 

 しかし無常にも、優が助けている対戦相手が刀を振るい、風の斬撃が優を襲う。

 

 優に向かってくる突風の影響で斬撃がズレ、当たることはなかった。だが、ブチッと優が掴んでいるワイヤーが切れた。

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