【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
優の言葉にいち早く反応したのはリボーンだった。元々この暴走に違和感を覚えていたリボーンは状況を把握するのが早かったのだ。
「ツナ、その中に人がいるぞ!」
モスカを殴り飛ばしちょうど距離をとっていたツナにその言葉は届いた。そのため機械仕掛けと思っていたので、遠慮せずに攻撃していたツナの手が止まる。
「くっ」
ツナの葛藤にモスカは配慮することもないため、再びモスカは標的であるツナに襲い掛かった。そのためツナは逃げ続けるしかない。モスカはもうボロボロで下手に手を加えると、爆発する可能性もある。
「どうすれば……!?」
「のけ」
ツナが躊躇していると、XANXUSの手に炎が宿る。
「XANXUS、止めろ! あの中に人がいるんだ!」
「知るか。オレはモスカの暴走を止めるだけだ」
その言葉に違和感を覚えたのは数人いた。獄寺もその中の1人だ。優が邪魔さえしなければ、勝敗に関係なくモスカの暴走で皆殺しにするつもりで雲雀を挑発したと推測できたからだ。それでもXANXUSはあくまでもモスカの暴走を止めるためだと言い張る。
「やめろー!!」
躊躇のない炎の宿りにツナはXANXUSを止めるために動き始めた。
「……何を考えてんだ」
ポツリと呟いたのはリボーンだった。当然頭のいいリボーンはXANXUSの行動に違和感を覚えていたのだ。そもそもモスカの標的はいまだツナで、XANXUSはスキを見てモスカを倒すことは出来るはずだ。確かにモスカの装甲を破るには大きな炎が必要だろう。だが、それにしては手に炎を宿すには時間がかかりすぎている。そして、宿した炎は跡形もなく風化させるほどの威力を放すほどの量だ。
“っ!?”
「ヴェント?」
その中、優は全てを悟り息を呑んだ。原作を知っているからこそ、誰よりも早くXANXUSの行動が理解できたのだ。
優の言葉でツナはXANXUSの行動を防ごうとしていた。モスカの構造は人の生命エネルギーを動力源にしている。つまりモスカが停止した時、9代目の生命エネルギーがほとんど残されていないことを意味する。
もし9代目が亡くなった場合、暴走を止めようとして動いたXANXUSを妨害したツナの責任にすることが出来る。
「っ!」
優から数秒遅れて、リボーンが理解する。記憶の底からモスカの構造を思い出し、9代目が中に入っている可能性にたどり着いたのだ。そこまで悟るのは難しいようにも思えるが、誰が入っていれば最悪の事態になるのかと考えれば答えはすぐに出る。
リボーンは銃を構えて撃った。争奪戦に手を出す気はなかったが、9代目の救出ならば話は別だ。一刻も早く9代目を解放しなければならない。
日本に送られたモスカは非常スイッチがないため、暴走しても止めることは不可能だ。だが、決して方法がないわけではない。モスカの中に人を入れることが出来ることを考えると、当然外にスイッチがある。モスカの構造を知っていたリボーンはそこを狙ったのだ。
狙いは完璧だった。しかしリボーンが撃った弾は空を切った。
今まで暴走していたモスカが倒れながら停止し、当たらなかったのである。
「チッ!」
舌打ちしてリボーンはモスカに駆け寄る。そしてモスカの中から現れた9代目を見てツナ達が驚いたとき、XANXUSは口角をあげていた。
「9代目……?」
「……やべーな。生命力が落ちている」
見たところ大きな怪我はないが、脈拍を測ったリボーンが呟いた。
「どーして……!?」
「どーしてじゃねーだろ! オレはモスカを止めようとしたのをてめーが邪魔をしたからだ」
その言葉に動揺したのはツナだけじゃなかった。優も肩を揺らすほど動揺した。優は人がいるとツナに教えた。そのことで変わった展開にも気付いたのに、止められなかった。
優を支えている雲雀は、身体が触れていることで優が何を考えているかすぐに察することが出来た。息を呑んだタイミングで優はリボーンと一緒で気付いていたのだろう。しかしあのタイミングで気付いたとしても止めることは不可能だった。そもそも優がツナに教えなければ、自身かツナがモスカをボコボコにしていただろう。優に責任はほとんどなかった。
ただし、たとえそれを優に説明しても、雲雀は優が納得するとは思えなかった。だから上手く声をかけることが出来なかった。
「……ちがう、悪いのは……私だ……」
9代目の声に優は顔をあげた。ツナに向かって言った言葉だったが、その言葉は優も救い上げる。
「……眠りなよ」
もう大丈夫だと判断した雲雀は、優に声をかける。揺りかご事件の話まで聞く必要はない。どうしても知りたければ、後で雲雀が教えればいい。自分が悪いと責めなくなったなら、少しでも早く眠るべきだと思ったのだ。
“もう、少し”
はぁと雲雀は溜息を吐く。こうなった優は9代目の話が終わるまで絶対に寝ないだろう。優にとって自分の身体より9代目の言葉の方が大事だからだ。9代目の言葉のおかげで救いあげられているので、雲雀も無理に寝かせにくい。ヴェントの時はいつものように出来ないのも大きい。
「……君が風の守護者だね」
優は僅かに反応した。
「リボーンから君の事も聞いていたよ……すまない。私の判断のせいで君に注目するような形になってしまった……」
恐らくリボーンは黒曜の戦いで目をつけていた。しかしいくら探しても見つからないことから、9代目は表に出たくないと感じ取ったのだろう。
だが、優は9代目が悪いとは思わない。風の守護者の情報がないため、大々的に発表するしかなかったはずだ。
“たいした問題じゃない”
軽い口調で優は言った。正体を隠したいのは優のわがままなのだから。
「綱吉君、力をかしてあげなさい……。君の力が必要だ……」
「でも、いつもオレの方が助けてもらって……」
「会ってわかったよ……。彼に必要なのは……綱吉君のような温かさだ……」
優の不安定さをボンゴレの超直感で9代目は見抜いたのである。そしてその判断は間違っていない。雲雀が細心の注意を払いながら優に接しているのに対し、ツナは自然体で優が望んでいるものを与えることが出来る。優にはツナが必要なのだ。
「……うん。わかった」
ツナはチラっと優を見てから返事をした。ツナも自身に温かさがあるとかはわからない。それでも優の側に居続けることは出来る。ツナは優のことが好きなのだから。
「君で……よかった……」
9代目はその言葉と共に指に炎を灯し、ツナの眉間に炎をあてた。優はモスカに生命エネルギーをとられ、炎を出すことは出来ないと思っていた。9代目は命を削って炎を出したのかもしれない。
徐々に小さくなっていく炎に優は息を呑む。展開がかわったので原作通りに助かるのかはわからない。間近で優は誰かを亡くなるところを見たことがない。
「君は何も悪くない」
雲雀の声が聞こえ、優は頷いた。9代目が責任を感じないように、無理をしてでも伝えた言葉だ。責任を感じて立ち止まってしまえば、9代目の気持ちを無にしてしまう。
9代目が目を閉じたところで、XANXUSが優の予想通りの行動を起こした。チェルベッロが全て記録しているという発言から、ツナ達の立場が不利になる。
「……XANXUS、そのリングは返してもらう。おまえに9代目の跡は継がせない!!」
ツナの覚悟に優も続こうとしたが、残念なことに力は入らない。
“支えなくていい、君も怒ってるんだろ?”
「…………動かないでよ」
“ああ。風よ、僕を守ってくれ”
そっと雲雀が手を離しても優は倒れることはなかった。足手まといにならないように、自分の身は守ることは出来そうだ。
次々とツナの言葉に続き、獄寺達は武器をかまえた。そして、雲雀も続く。
「個人的に」
もの凄く低い声で。
雲雀の中で相当のムカツキが溜まっていた。それもそのはず、雲雀もXANXUSに利用されていたのだから。そのせいで優に無茶をさせてしまった。
しかし、チェルベッロの言葉で止められる。ムカついていたが、雲雀は我慢した。ツナの強さを引き出している状況というのもあるが、このまま戦えば優に負担を強いることになる。
XANXUS達が去ったのを雲雀は無言で見送ったのだった。
ドサッという音が聞こえ、雲雀は慌てて振り返る。去ったことを確認したところで、優は気力が切れたのだろう。眠ってしまった優を抱き上げようと雲雀は手を伸ばす。
「ヒバリ! ヴェントは寝たのか?」
「…………」
心配する獄寺の言葉に雲雀は答えることが出来なかった。
「おい! ヒバリ!」
獄寺の怒鳴る声で自然と注目が集まる。
「落ち着け、お前ら。どうかしたのか?」
ディーノは9代目の手配を部下に指示を出していたが、騒ぎのもとへ駆けつけ仲裁するように声をかけた。今のツナには難しいと判断し駆けつけたのもあっただろう。
そして駆けつけたことでディーノは教え子である雲雀の様子がおかしいことに気付く。
「恭弥、どうしたんだ?」
「熱……」
「袋をとったのか!?」
素直に答えようとした雲雀の態度にも驚いたが、ディーノは優が無茶したことを知り、思わず声をあげた。しかしすぐに冷静になり、雲雀の様子がおかしくなるほどの熱が出ていることに気付いた。
「恭弥! 病院へ運ぶぜ!!」
ディーノの言葉にハッとしたように、雲雀は優を抱き上げた。緊迫した空気に獄寺達は息を呑み、ツナもこの事態に気付いた。
病院につくまで、誰もが無言だった。