【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
ツナは気を失ったがそこまで重症ではなく、XANXUSだけが病院に運ばれることになった。
流石に優はついていくことはないが、こっそりと体力を渡していた。救急車に乗り込んだベルに視線を送ると笑っていたので優に言われるまでもなく、これからもXANXUSについていくのだろう。
「またね」
“ああ、また”
ヒラヒラと優は手を振り、見送った。
さて、と優は切り替える。やらなければならないことがある。
『消したぞ』
何度か瞬きを繰り返す。優が頼む前に、神は行動していたようだ。
(ありがと、神様)
大空戦で語った優の気持ちを知っているのはツナ達だけでいい。正体もわからない怪しい人物……チェルベッロにまで優の心の中を知られたくはなかった。そのため、忘れてもらった。
自分勝手だなーと優は笑う。正体がバレないように神に手を回してもらったのは今回が初めてではない。だからといって慣れるものでもない。人の記憶を操作しているのだから。
「ヴェント」
“ん? 出れたのか”
赤外線センサーから出ることが出来たらしく、振り返った先にはディーノがいた。
「……ったく」
“わっ、止めろ。脱げるっ!”
ガシガシと勢いよくフードの上から頭を撫でられ、優は必死にフードを押さえる。
「言いたいことはいっぱいあるんだ。これぐらい我慢しろ」
心配させたと感じた優はされるがままになる。
“……悪い”
「これで許してやるか……」
口だけの謝罪じゃないと感じたディーノは手を離す。優に怒ってもあまり意味がない。雲雀以外にも大事に思っている人がいると少しでも認識させなければならないため、必要以上に頭を撫でたのだ。
「体調は本当にもう大丈夫なのか?」
“ああ。いつも通りだ”
優もディーノも無意識に風のリングに目が行く。
“……ディーノ、スクアーロは?”
「ん? ……ああ。あいつも大人しくなってな。部下に任せた」
納得したように優は頷いた。スクアーロも今は休むことを選んだのだ。次にXANXUSが動いた時に力になれるように。
“じゃ、話がしたいといっても大丈夫か?”
ディーノはジッと優を見た後、ポンポンと頭を撫でて言った。
「『したい』なら今すぐじゃなくてもいいんだろ? 明日連絡するから今日は休むんだ」
“わかった。待ってる”
「ああ」
優はディーノと別れ、帰ろうとしていたクロームに声をかける。
“クローム、またな”
コクリと頷いた姿に優は自然と笑顔になる。相変わらず可愛いものに弱い。
優もそろそろ帰ろうと思い、ツナが乗り込んでいる救急車へと向かう。すると、獄寺と了平が救急車の外で立っていて、山本がツナを背負って出てくる。獄寺達は邪魔になるので一旦離れていたのだろう。
“傷に響くだろ。僕が運ぼうか?”
「わりぃ。したいんだ」
山本の顔を見て、優はあっさりと引き下がる。優が動いたせいで、大空戦の内容が変わり山本は悔しい思いをしているはずだ。
「……にしても、いつまで寝てやがるんだ」
獄寺の言葉はもちろんツナに対してではない。獄寺が仕方なく抱いているランボに向かって言っているのだ。ちなみに、獄寺なりの山本へのフォローでもある。大空戦でずっと眠りっぱなしで本当にランボは何もしていないからだ。
“僕はルール説明が終わる前に気を失ったからな。恐らく身体が小さく病み上がりのランボには負担が大きかったんだ”
ジッと視線を向けられ、優は首を傾げる。特に獄寺はツナとランボを見て、グッと何かを堪えているようだ。
“どうした?”
「……次にオレらを庇って、てめぇの身を差し出そうとするのは許さねぇからな」
“あー……気をつける”
「そこは『わかった』だろーが!?」
眠っている2人のために無茶した優に怒鳴ることを我慢していた獄寺だったが、結局怒鳴る羽目になった。
ツナを家に入るまで見送った後、優は家に帰るための寄り道をはじめる。
(凄い1日だったなぁー)
確かに眠っているとき以外は、内容の濃い1日だった。
(最後まで、賑やかだったしね)
ツナに体力を渡し後、獄寺達もあげようとすれば断られたのだ。自分の分をツナに回してほしいと言ったので、優が『彼が知れば気に病む。君達の顔色も悪かったのに、と言うぞ』と教えれば、3人から『お前が言うな』というありがたい言葉を頂いたのである。ちなみにそれでも優は半ば強引に獄寺達に体力を渡していた。
思い出したように優は笑い、見晴らしのいいビルの屋上に立つ。ここに寄ったのは見たかったものが1つあったからだ。
距離はあるが大きな土地で、優はそこから通ったことがあるため、すぐに見つけることが出来た。
(もう寝ちゃったかな。……お大事に。おやすみさない)
真っ暗な雲雀の家を見て、優は気が済んだかのようにビルから飛び降りる。傍からみれば悲鳴ものだが、風を操ることが出来る優には危険は一切ない。
風を感じるように優は目を閉じる。
チェルベッロが正式に発表した途端、雲雀は学校から去っていった。
雲雀らしいといえば、雲雀らしい。が、優に目で合図を送ることもなかった。
優は首を振る。雲雀が差し伸べた手を掴まなかったのは優だ。雲雀が見限るのも当然のことで、優が泣き喚くのもおかしな話だ。
地上に降りたときには、いつものように優は笑っていた。
いつもの窓から家へと戻った優は、雲雀が普段座っているソファーに一瞬だけ目を向ける。誰もいないことを確認した優は、何事もなかったかのようにニコリと笑う。
(お風呂入りたいなぁ)
風戦後に雲雀が使ったかもしれないと浴室へと向かう。使った形跡はあるが、シャワーだったようなので浴槽にお湯を溜めるスイッチを入れる。その後うがいをし、顔を洗った優は再びリビングへと戻る。リビングに戻る時に、冷蔵庫が目に入る。
(整理しないと……)
2日も放置していれば、怪しいものもあるだろう。しかしやる気が出なかった優は明日にしようと決める。
「喉かわいた」
「あ、はい」
慣れた手つきでお湯を沸かし、優はお茶を入れる。
「……間違った」
「なに?」
「2人分入れちゃいました」
「いいよ、僕が飲むから」
「助かりま……す?」
聞き慣れた声に優はもう1度ソファーを見る。……やはり居ない。しかし首をほんの少し動かせば、ソファーではなく椅子に雲雀が座っていた。
「え!? 雲雀先輩!? なんで?」
お茶を放り出し、パタパタと優は雲雀に駆け寄る。すると、雲雀に頬を撫でられ、くすぐったいように目を細める。
「やっと笑った」
そういって雲雀が笑ったため、見惚れた優は真っ赤に染まる。
「あの、どうして……?」
「前に怪我をしたら優に言うって言ったでしょ」
なぜすぐに声をかけなかったのかなど疑問が残るが全て放置し、優は勢いよく頷いたのだった。
雲雀の怪我を診ると優は感心したように息を吐く。致命傷になるような傷は1つもない。それでも無理して動かしたせいで血を流しすぎてしまってるようだが。
「今日は私の家に泊まってくださいね」
「そのつもりだよ」
返事が早かったので雲雀は初めからその予定だったらしい。
「お腹は減ってます?」
「僕はいらない。でも優は食べなよ」
「私もあまりお腹が減ってないんです」
雲雀は僅かに眉間に皺を寄せる。点滴をしていたのもあるだろうが、やはり制限をとくと食欲が減っているように感じる。
「……雲雀先輩?」
「なんでもないよ。寝ようか」
「わかりました。おやすみさない」
雲雀が話してくれないと思ったので優はあっさりと引き、寝ようとする雲雀を見送った。
「何言ってるの? 君も一緒に寝るんだよ」
「え? 私は和室で寝ますよ」
グイッと優の手首を握り、雲雀は寝室へ移動する。
「ひ、雲雀先輩!?」
「……2度目だし、諦めなよ」
確かに2度目だが、1度目は記憶がないのだ。ふるふると真っ赤になりながら、優は首を振り言葉をひねり出す。
「お、お風呂!! お風呂に入りたいです!」
優の言葉に雲雀は足を止める。そして確認するように手を離し、優の顔を覗き見た。
「先に眠っててくださいね」
手を離したことで諦めてくれたと判断した優は満面の笑みを浮かべて逃げるように去っていった。
「はぁ……」
とことん鈍いことを忘れて期待してしまったのが失敗なのか、手を離したことが失敗なのか、雲雀の溜息が部屋に響いた。
お風呂から出てサッパリした優の目に入ったのは、待ち構えたようにいつもの場所に座っていた雲雀の姿だった。
「……まだ起きてたんですね」
「行くよ」
「ヤです。恥ずかしくて寝れません!」
「覚えておきなよって言ったよね?」
「そんなーーー!?」
和室に行こうとする優の腕を容赦なく雲雀は引っ張り、半泣き状態で自身の寝室に入る優。雲雀が無理矢理ベッドにいれても、隅で体育座りをし迂闊に近づけば噛みつきそうな勢いである。ただし全く怖くない。顔が真っ赤だから。
「……病み上がりなんだ。心配だから、入って」
数秒葛藤した後、優は大人しく布団の中に潜り込む。
「半分よりこっちに来ないでくださいね! 恥ずかしくて寝れませんから!」
「わかったから」
雲雀の言葉に優はパッと顔を輝かせる。そして安心したかのように人形に抱きついて眠る体勢に入る。
「……ねぇ。それ、なに?」
「あれ? 見たことがありませんでした?」
優は可愛いでしょ!と自慢するかのように恐竜の人形を見せる。しかし雲雀が聞きたいのはそれではない。人形は何度か見たことがある。なぜ抱きついて寝ようとしているのかと聞きたいのだ。
雲雀が再び質問する前に、自ら優が答える。
「実は私、普段は何かに抱きつかないと眠れないんです」
「ふぅん」
優は不思議そうに瞬きを繰り返す。今のは機嫌の悪い方だ。雲雀にはこの可愛さがわからないのかなと思いながら、優はぎゅうぎゅうと人形に抱きつく。
面白くない……と人形を見ていた雲雀だが、優の瞼が落ちそうになっていることに気付き声をかける。
「おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
電気を消せば、あっという間に優は眠りに落ちたようで規則正しい寝息が聞こえ始める。本当に先程までの抵抗はなんだったのだろうか。
ムクリと雲雀は起き上がり、優を抱き寄せる。優が示した半分をあっさりと超えたが、眠るときには超えていないという言葉のスキをついて侵入しているのだ。そして優自身が半分より超えれば、雲雀が好きにしても問題ないだろうと更なる言葉のスキをつく。
「…………」
しかし1つだけ雲雀の思い通りにならなかった。優がしっかりと人形を抱いているので、引き離すことが出来なかったのだ。
仕方がないという風に雲雀は人形ごと抱きしめ、優に声をかける。
「おかえり、優」
自身の腕の中にいることに安堵し、雲雀はやっと眠りに落ちることが出来たのだった。
ほぼ伏線を張り終えたかな?
でもまぁ未来編までもう少しあります。