【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
寝ぼけながら優はベッドに雲雀がいないことにホッと息を吐く。この前のようなことがあれば、朝から心臓に悪いからだ。約束を守ってくれたんだと優の中で警戒レベルが下がる。
雲雀の思惑など知らない優は、のそのそと起き上がりリビングに向かう。すると雲雀がソファーに座って本を読んでいた。そこでパチリと目が覚めた優は声をかけてすぐさま動き出したのだった。
簡単な朝食しか用意できなかったが、雲雀は文句を言うこともなく手を伸ばし、優はオニギリを食べはじめる。
「……それしか、食べないの?」
困ったように優は笑う。雲雀の気持ちがわかるのだ。だが、食欲が戻らない。これでも無理に食べている。
「しばらく安静だよ」
病院に連れて行ってもいいが、根本的な解決にはならない。なぜなら原因は制限をといたからだ。以前、雲雀に体力をあげた時には食欲は落ちなかったので心当たりはそれしかない。
「あ、でも今日は予定が……」
雲雀は僅かに眉間に皺を寄せる。
「ディーノさんと話をする予定なんです。出来れば、リボーン君とも……」
「話?」
「あ、はい。報告したほうがいいかなーという内容のことが起きまして……」
「報告ってなに」
「雲雀先輩は聞かない方がいいかなー……なんて……」
徐々に雲雀の機嫌が悪くなっていくので、優は恐る恐る話すしかない。
「それって本当に僕は知らない方がいいってこと? まさか優が僕に気をつかって話さないとかじゃないよね?」
「そんなことないですよ」
しれっとウソをつき優はニッコリと微笑み、オニギリを食べる。
「……食べた後でいいから全部話しなよ」
しかしあっさりとバレたので優の笑みが引きつったのだった。
食事が終わり、一息ついたところで優は昨日の出来ことを話す。
「リングを嵌めた時に、使命を聞いたんです」
「使命? 聞いた?」
「はい。私に守って欲しいものがあるって」
雲雀は優を睨んだ。そんな大事なことを黙っているつもりだったのかと。
「こ、壊されると世界のバランスが崩れるって言ってました!!」
慌てて優は説明する。そして優は雲雀の顔をジッと見た。こんな大きな話、信じることが出来るのだろうか。
「優はその話、本当だと思うの?」
コクリと頷けば、雲雀は話を進める。
「何を守ればいいの? リスクが高くなるけど、知らなければ守ることが出来ないから」
「え……。信じちゃうんですか……?」
「その使命を信じたわけじゃない。でも優が信じてるなら、僕は優と一緒にそれを守るだけだ」
優が守れなかったと傷つかないように。
「……雲雀先輩」
雲雀の優しさに触れて自然と微笑む。先程とは違う、本当の笑顔だ。
「あのですね、守るのは全部で3つです。おしゃぶりとボンゴレリングとこのリングです」
ゴソゴソとポケットから優はマーレリングを取り出す。
「それ、どうしたの?」
「貰ったんです。このリングが私の役に立てるかもって……」
「誰に?」
「すみません。綺麗な女の人しか……」
わからないと優は首を振る。本当に優は知らないのだ。十中八九ユニの母親だろうと予想しているが、名前まで覚えていない。
「それで跳ね馬と赤ん坊?」
「はい。マフィアが関係している可能性が高いですから」
優の口からは知識として覚えていたγの名前などを出すことは出来ない。だが、このリングを見せることは出来る。優の予想ではディーノが知らなくてもリボーンは知っているはずだ。
「……行くの?」
「いいえ、行きません」
きっぱりと優は否定する。そして優は雲雀から目を逸らさず言葉を続けた。たとえ出所がわかっても、行かない理由を知ってほしくて……。
「あの人は、私が行けば悲しみます。……あの人はわかっていたんです。連れて行けば、私の選択肢が狭まることに。一度でも連れて行けば、もう並盛に戻ることは難しいと……」
いかにキャバッローネとボンゴレが特殊なのか。優の力を大々的に使えば、マフィア同士の勢力争いもマフィア内の派閥争いだって有利に働くことが出来るのだから。
「だからあの時……全部あの人の独断だったと思うんです。連れて行こうと思っていたのにやめたのも、名も言わずにそのまま去ったのも……」
恐らくボスの決定だけで押し通すのは不可能だと判断したのだ。
「多分このリングも封印されていました。私が触ったことで開きましたから……」
「もういい、わかったから……」
そういって雲雀は優を抱き寄せた。
優自身に注目が集まり、一歩間違えばすぐに争いが起こる。周りに恵まれ回避できているがいつまで持つかわからない。……力がない。雲雀が優を守るには力が足りなすぎる。
「雲雀先輩、ありがとうございます」
安心することが出来たと優は笑って礼を言ったが、本当のところは雲雀がまだ手の届く範囲にいることを認識したかっただけだった。
報告が終わり学校へ行く雲雀と別れ、優はツナの家へと向かう。ディーノからはまだ連絡がないので、リボーンに会いに行くことにしたのだ。
呼び鈴を鳴らせば、ツナの母である沢田奈々が顔を出す。優の姿を確認するとツナを起こそうとしたので、慌てて優が声をかける。
「あ、今日はリボーン君に用事です」
「そうなの? 珍しいわね」
誤魔化すように優は笑ってツナの家にお邪魔する。すると、玄関にリボーンがいた。優が来たと知り、顔を出したのだろう。
「ちゃおッス」
「おはよう、リボーン君。ちょっと話があるんだ」
「わかったぞ」
ぴょんぴょんと階段をあがっていくので、優は沢田奈々に頭を下げてからリボーンの後をついていく。
「いっでーー!」
聞きなれた叫び声に優は恐る恐るツナの部屋を覗く。リボーンに蹴られたのか、ツナが頬をおさえていた。
「いきなり何すんだよ!?」
「ご、ごめん……。ツナ君……」
「や、優は悪くないよ!! って、優!?」
申し訳なさそうに優が謝ったので、反射的に返事をかえしたツナだが、優がツナの家にいることに驚く。
「朝からごめんね……。こうなることを予想するべきだった……」
心配そうに優がツナの顔を覗き込むので、ツナの体温が上昇していく。いつもより距離が近い。
「だ、大丈夫だから!」
必死にツナが手を振りアピールするので、優はふわりと笑う。その笑顔を見て、ツナも笑う。いつもと一緒だ。この流れる空気は優がヴェントと知っても、アルコバレーノと知っても何も変わらない。
その光景を見ていたリボーンもニッと笑った。
「それで優、どうしたの?」
ほわほわとした空気が流れていたが、思い出したかのようにツナが声をかける。
「ちょっとリボーン君に話があったの」
「そうなの?」
「うん。まぁディーノさんにも同じ話をする予定なんだけどねー」
「今すぐツナん家に来い」
優とツナはそーっと振り向く。案の定、リボーンが電話をかけていた。ディーノを呼び出したようだ。
「……今度からもうちょっと考えて行動することにするよ」
理不尽な扱いを受けるボスコンビのことを思い、優はポツリとつぶやいたのだった。
慌てて駆けつけたディーノに優が頭を下げ、ディーノが気にするなというやり取りを何度かした後、リボーンに促され本題にやっと入る。
「ツナ君も本当に聞くの? マファア関係の話だよ?」
「うん。オレも知りたいから」
もう何も知らなかったことに悔しい思いをしたくないと考え、継ぐとかは別としてツナは向き合うことにしたのだ。
ツナの覚悟を感じ取った優は、雲雀に話した時と同様に使命のことなどを話す。話し終わった後に沈黙が流れたのは、やはり世界のバランスが崩れるという問題だろう。
「……まいったな」
「すみません……。こんな話信じられませんよね。信じたとしても、話が大きすぎますよね」
「いや、そういう意味じゃないんだ」
思わず呟いた言葉に反応した優に、ディーノはすぐさま否定する。
「優がリスクを背負ってでもオレ達に話そうとした理由に気付いたんだ」
「え?」
優の話した内容についていくのが必死だったツナは、よくわからない反応を示した。
「そうだな……。まず優が持ってるリングがボンゴレリングのように代々受け継がれている可能性があるだろ? おしゃぶりとボンゴレリングだけマフィアに関係していて、そのリングが関係していないと言い切るのは難しい」
ディーノに言われ、ツナは納得したように頷いた。
「そうなると、ボンゴレリングだけじゃなく、このリングも大空や他の種類もあると考えられる」
「そうなんですか?」
「よく考えろ、ツナ。風関係を抜きにしてもおしゃぶりとボンゴレリングは対のようにあるんだ。優が持ってるもう1つのリングもあると考えたほうがいい」
うーん……と考え込んだツナにディーノは追い討ちをかける。
「早い話、あるんだ。実際に見たことはないが、大空や他のリングがあるのをオレは知っている。風のリングがあったのは知らなかったけどな……」
ディーノが知っていたことに驚き、優は何度か瞬きを繰り返し口を開く。
「知っていたなら、私の意図に気付きますよね」
「まぁな。……いいか、ツナ。優が持ってる3つに世界のバランスを保つ力があるなら、ツナ達が持ってるリングにも何か力があるかもしれないと疑うことが出来るんだ。XANXUSの氷を溶かすレベルだけではすまない。それこそ世界に影響するレベル力だ」
「え……。えーーーー!!」
驚いてるツナを尻目に、優とリボーンはディーノの意見に賛成するように何度も頷く。
「問題はオレ達が知らないってことだ。ボスにだけ受け継がれている可能性もあるが……」
9代目の性格ならば、ないだろうとディーノは予想し首を振った。リング争奪戦がなければ、当初の予定通りボンゴレリングは3年後まで保管されていた。もし9代目がボンゴレリングに世界に影響する力があると知っていれば、もっと時間をかけていただろう。期限をつけずに、然るべきその時まで保管するはずだ。
「リ、リボーン、どうしよう!?」
「情けねぇ声を出すんじゃねぇ。おめーはまだいいだろ」
「え?」
パニックになり半泣きになっていたツナが、不思議そうにリボーンを見た。
「各リングに力があるのかまではわからねぇが、優の話から推測すれば全て集めなくちゃいけねぇんだ。おめーが持ってるのは大空のボンゴレリングだけだろ」
ハッとしたようにツナは優を見た。
「おしゃぶりは身体から離れないし、ツナ君達は意図して集めない限り揃うことはないよ」
優は安心させるようにツナに笑いかけた。しかし安心出来るわけがない。この中でもっともリスクを背負ってる状況にいるのは優だ。
「まぁ私のことは置いといて……頭の隅にでも覚えておいてほしいの。知ってると知らないではいろいろと違ってくると思うんだ」
ツナは時間をかけて頷いた。優のことを置いておくことなんて出来るわけがないが、優がここまで話したのはツナ達に気をつけるようにと促すためだと気付いたからだ。
「良かった。……それで、その……」
「そっちはオレの方でうまくやっておくぞ」
「ありがとう、リボーン君」
優はマーレリングを代々受け継いでいるマフィアにも、全てを話さなくてもそのリングを狙う人物が現れる可能性があると伝え、どうにかして注意を促したいと思っていたのだ。
「……ツナ、いつまでその格好で居るつもりだ?」
「え?」
リボーンに言われ、ツナは視線を下げる。パジャマだった。そして周りと自身の格好を見比べる。1人だけ浮いていた。
「き、着替えてくる!」
慌ててツナは服を引っ張り出しドタバタと1階へと向かう。ツナの部屋だが、優の前で着替える気は起きず、かといって優を外で待たせることが出来なかったのだ。
ツナが部屋から去ると、リボーンとディーノが視線で会話をする。そのため優は困ったように笑った。ツナを追い出すようにリボーンが声をかけたと気付いているからだ。
仕方なく、優は2人と向き合った。