【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
あれ?と優は首を僅かに傾げた。
未来に飛ばされるのはわかっているが、どこの場所に飛ばされるかはわからない。そのため警戒しながら未来にやってきた。しかし今優がいる場所は、ソファーの上だ。目の前に飲みかけのコップがあることを考えると自身が先ほどまで飲んでいたのだろう。棺桶スタートで体調が最悪ということも覚悟していた優にとってこの展開は拍子抜けである。
それでもまだ気を抜くことが出来ない。実は敵のアジトだったという可能性もある。すぐさま風を操り周りを探る。
(……居る。真後ろに)
優の警戒レベルが最大になる。風で探らなければ、気付かなかった。つまり優の後ろに立っている人物はかなりの腕の持ち主だ。
「優、僕だよ」
それだけ十分だった。気の抜けた優はソファーにもたれかかる。声が低くなっているが、優は確信できた。間違うわけがない。自身の名を呼ぶだけで、神以外に優が求めているものを埋めてくれるのは彼しかいないのだから。
「……雲雀先輩ですか? 私達を未来に呼んだのは……。入江君が私にバレて真っ青になってましたよ?」
「そうみたいだね」
雲雀が肯定したことで、この時代の入江から話を聞いていることがわかる。
「どうして協力したの?」
この時代の優にも聞いていないのだろうか。飲みかけがあるが自身のではなく、聞けなかったのだろうか。それとも、過去の優の行動を問い詰めたいのだろうか。今の段階ではわからない。だから素直に優は協力しようと思った理由を2つ挙げた。
「私だってちゃんと考えているんですよ?」
「僕に相談しなかったこと以外は納得できるかな」
雲雀の言葉に肩をすくめる。話さない方がいいと判断した理由も話したのだから、そこは納得してほしい。だがまぁ、優にそこまで不満はなかった。別のことに気を取られていたからである。
10分ほど会話しているにもかかわらず、未だに顔を合わせていない。雲雀がその場から動かないのだ。優は優で、緊張から振り向くことが出来ずにいた。
「あの、雲雀先輩」
「なに?」
「こっちに座らないのですか……?」
雲雀の雰囲気からこの時代でも仲が良さそうと勝手に判断していたのだが、雲雀が頑なに動かないのであれば、優の勘違いかもしれない。その場合は仕方がない。10年近くあればいろいろあるだろう。
それでも随分前だが雲雀の修行内容について話していたとき、優はポロっと将来的に全て雲雀に頼るつもりと言ったことがある。優はたとえ学校に通えなくなっても、いつか雲雀と過ごす日がくると思っていた。そして雲雀もそれを了承した。
子どもの口約束と言えばそれまでの話だが、優がうつむいてしまうのも仕方のないことだ。
優のネガティブ思考を感じ取ったのか、雲雀が動く。躊躇する気配もなく、ストンと優の隣に腰を下ろした。そして雲雀は微動だにしない優へと手を伸ばし、フードを取る。
それでも下を向いたまま固まってる優の額に雲雀は口付けを落とした。
「ぇ……?」
すぐに離れたが、驚きのあまり思わず優は顔をあげる。そのため、目が合ってしまった。
……雲雀の目は優が愛おしいと物語っていた。
優はすぐさま下を向く。今度は先程と違って、恥ずかしさのあまり顔をあげられないのだ。
「真っ赤だよ」
そういって雲雀は優の頬に触れる。いつもと違う大きな手に優はどうすればいいのかわからない。
「怖い?」
意味がわからず、触れていた雲雀が気付く程度で首を傾げる。
「……僕が怖い? 過去から来た優からすれば、僕は知らない人と一緒だ」
ハッと顔をあげ、雲雀の目を見て優は言った。
「違います! 恥ずかしいだけです!!」
「……そう」
優の言葉に雲雀は少し驚いた顔をした後、笑った。過去の世界でも数回しか見たことがない雲雀の笑顔をまともに優は見てしまった。破壊力は凄まじく、優は再び下を向きカチコチに固まる。
「……この時代の優が説明するのは次の日にしてと言った理由が今わかったよ」
どこか楽しそうに雲雀はそう口にした。優は忠告したこの時代の自身に偉いと褒めたくて仕方がなかった。今話をされても頭に入りそうにない。
今の優は知らないが、雲雀の立ち位置を決めたのはこの時代の優だった。飛ばされてすぐ大人になった雲雀を見て、まともに話せるわけがないと予想していたのだ。最悪の場合は心臓が止まるかもしれないと判断し、10分は動かないようにと雲雀にしつこいぐらいに念を押していたのである。
「優が慣れるまで、このままで居ようかな」
カチコチの優を見て、雲雀は手を下ろす。真っ赤な姿を見るのは楽しいが、目もあわせてもらえないのは嫌だったのだ。
しばらく会話もなく静かに過ごす。緊張している優はともかく、雲雀はヒマのように思えるが、恥ずかしがってる優をジッと見ているだけで問題ないらしい。ただその視線を感じて優が更に緊張するのだから、慣れさせる気がないようにも思える。
それでもずっと緊張状態を続けられるわけがない。戦闘ならば何とかなっただろうが、緊張の種類が違う。経験の少ない優がいつまでも保てるわけがない。ずっと下を向いていた優の姿勢が真っ直ぐに戻っていく。
「優」
「……はぃ」
モジモジしながらも、時折雲雀と目を合わせる優。完全に乙女である。
「可愛い」
「きゅ、どっ……ええぇ!?」
やっと慣れてきたところで雲雀の爆弾発言である。サラっと言ったところから、この時代の雲雀にはたいしたことがない発言かもしれないが、優からすれば恥ずかしかったり舞い上がったりと忙しい。ちなみに優は「急にどうしたんですか!?」と言いたかった。
「優の反応が面白いから」
正確に読み取った雲雀は理由を教える。雲雀はこの状況を心の底から楽しんでるようだ。当然、優は喜んだこともありガクリと肩を落とす。
「ウソはついていないよ」
その一言で優のテンションが急上昇だ。単純である。
振り回されっぱなしの優はいっぱいいっぱいで思わず口を開いた。
「……そういうことは言わないでください」
「可愛いのに?」
「雲雀先輩ーー!」
今のはからかうために言ったと確信した優は、雲雀に怒った。
それでも雲雀が楽しそうに笑っているのを見ると、許すしかない。雲雀の笑顔はそう見れるものではないのだから。
イメージと違う雲雀に成長したのは優の影響だろう。他の人がどう思うかわからないが、優は好ましく思える。それに雲雀の手の感触や筋肉のつき方から、根本は変わっていないのがわかる。切り替えれば、このような甘い空気は出さないだろう。
「……雲雀先輩」
「なに?」
「…………ごめんなさい。呼んだだけです」
「そう」
雲雀が変わったのを見て、優はずっと雲雀に聞きたかったことを口に出そうとした。だが、寸前のところでやはり言えなくなってしまう。怖くてどうしても聞けないのだ。結局笑って誤魔化してしまう。
優の笑顔から感じ取った雲雀は、話題をかえる。
「その呼び方、懐かしいよ」
「え?」
「優に先輩呼びされるのは久しぶり」
優は雲雀の言葉を理解するのに数秒かかった。想像できなかったからだ。
理解した途端、聞くべきか聞かざるべきか悩む優。気にはなるが、聞いてしまえば後戻り出来ない気がする。結局、無意識に逃げ道を確保しようとした優は、聞かないほうを選んだ。
優の気がそれたのをみて、雲雀は満足そうに頷く。出来れば今日は無理して笑ってほしくないのだ。
「お腹減ったよね?」
「あ、大丈夫です」
優の拒否に雲雀は眉をひそめる。随分わかりやすくなったなと感心していた優だが、ハッと思い出したようにブンブンと手を勢いよく振る。
「その……緊張しすぎで食欲が……」
この返事に雲雀は驚いた。話せるようになったので、もう緊張は収まったと思っていた。だが、食い意地の張っている優が食べれないというのだ。想像以上にいっぱいいっぱいだったようだ。
「話が明日でいいならもう寝たいです……」
疲れ切っている優は、珍しくワガママを言った。元々話は明日する予定だったこともあり、雲雀は反対する理由がない。そのため部屋を移動しようと立ち上がる。
雲雀が立ったことで、許可を得たと判断した優はソファーの上に寝転がる。
「……そこで寝るのは身体に悪いから。部屋に案内するよ」
「す、すみません」
優は恥ずかしさからか、勢いよく起き上がった。雲雀が呆れた気配もなく、愛おしいように見ているので恥ずかしさが増して行く。再び下を向いてしまった優を見て、雲雀は抱き上げる。手つきからみて慣れているようだ。
「え? えええっ!?」
お姫抱っこに驚き優が声をあげても、雲雀は気にすることなく歩いていく。そしてそのまま部屋の前まで連れて行った。
「僕は隣の部屋に居るから。何かあったら言って」
優をおろした後、指をさした方向を見て優は頷いた。だが、ほんの少し違和感を覚えて首を傾げる。
「一緒に眠ってもいいけど、僕はもう境界線を守らないよ」
必死に優は首を横に振り続ける。だが、恥ずかしがってるだけで本当の意味に気付いていない。察してはいるが、雲雀はあえて何も言わない。それは過去の自分の役目だからだ。
「おやすみ」
再び優の額に口づけを落とし、雲雀は隣の部屋へと入っていく。 優はポーっとしたまま、ベッドに潜り込んだのだった。
お年玉企画・連続更新はいかがだったでしょうか。
私は大変でしたww
やっと明日が休みなので……w
次の更新はいつだろう。
とりあえず風邪を治してからですね。では。