【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
「……少しだけ考える時間をもらってもいいですか?」
顔をあげた優が発した内容に雲雀は目をつぶった。この時代の優と同じ反応をしたからだ。今の優と違い、この時代の優の時は誰も噂を信じていなかった。雲雀もその1人でディーノからの情報を得て、優にそのような噂が立つ心当たりがないかというただの確認だった。不安そうな瞳で時間がほしいと告げられるなんて思いもしなかった。
「わかった」
そう言って雲雀は優の隣に移動し手を握った。驚いたように見上げる優の頬を撫でる。この時代の優は時間をかけた後、雲雀にある質問をした。雲雀の返事によって、優はこれを受け止めることが出来た。それでも、食が細くなった。
恐らく今の優は雲雀には聞けない。過去の自身の行動を思い出す限り、優にストレートな愛情表現はほとんどしていない。愛されているという実感がまだ少なく、優は聞く自信がないだろう。何より問題なのが、雲雀がこの時代の優に向かって言った言葉を伝えても意味がない。
だから少しでも優の精神が安定するようにと雲雀は手を握った。それぐらいしか、出来ないのだ。
「……ありがとう、ございます」
ぎゅっと握り返し、優は目をつぶった。そして心の中で神の名を呼んだ。
(……神様。私以外にいません)
『そうだろうな』
やっぱりという気持ちと神に断言されたことで僅かな可能性もないと知りショックも受ける。
『言っておくが、俺は初めにちゃんと説明したぞ』
(え……?)
『増えたのはいいが、誰も使いこなせなくて優が呼ばれたって』
(波動をもってないからってことだったんだ……)
それだけのヒントで察しろというのは厳しすぎる。優が見抜けなかったのも当然だ。
(…………神様、ありがとう)
『そこは怒るところだろ……』
出来るはずがない。優はわざと神はわかりにくいように言ったと気付いたから。
(最初から知っていたら私は多分生きてなかったから、ありがとう。この時代の私も感謝してたよ、絶対)
『……そうか。それならこの時代の俺はこの時代の優に救われてるだろうな』
(あれ?)
『俺は優についてる神と言ったろ?優が未来へと飛べば、俺も飛ぶ』
そうだったと優は頷く。優には神がついている。
『大丈夫そうなら戻れ。……心配しているぞ』
嫌々ながらも教える神に優は笑いそうになる。少し元気が出た優は、神にもう一度礼を言ってから目を開けた。
「……すみません。お待たせしました。もう大丈夫です」
顔をあげた優はそこまで無理して笑っているわけではなかった。だが、優は雲雀の手を離して、距離を取ろうとした。当然、雲雀は許すはずがなかった。
「雲雀先輩……?」
不安と怯えが入り混じった瞳。今なら少しわかる。優が異のものと呼ばれた意味が。
雲雀は優を抱き寄せる。いつもと違う小さな身体。それでも雲雀にとって大事な存在だ。幼くても優なのだ。
「優、1人で泣いちゃダメだよ」
「大丈夫ですよ?」
「今は僕がそばに居るんだから」
戸惑ってる優の額にキスを落とす。
「わかった?」
「は、はい」
強引に約束をつけ、腕の力を緩め離れた。見上げれば満足そうに雲雀が微笑んでるので、優は真っ赤に染まるしかない。優の熱が収まった頃に雲雀は他に質問は?と声をかけた。もっとも、手は握ったままだが。
「アルコバレーノが消えた理由って非7³線と聞きましたけど、どうして私は無事だったんですか?」
「袋のおかげだよ」
納得したように優は頷いた。未来のことなので詳しく話せなかっただけで、神は手を打っていたらしい。
「非7³線と呼ばれる意味がわかりました」
優も影響を受けていれば、非8³線と言われていたはずだ。
「では、普段の私は何をしてたんですか?」
「僕の手伝い。匣の研究と調査をしていたんだ」
優は何度も頷く。感心したように見えるが、実はそんな感じだったと納得していただけだった。もっとも雲雀はヴェントの噂の出処も探っていたのだが。
「僕達が調べた結果では、匣兵器ができたのは全て偶然だよ」
「それは白蘭……さんっていう人の能力が関係してそうですね」
偶然は何度も起きるものではない。そもそも何度も起きるなら偶然とは言わない。優の考えに雲雀は肯定した。
「そうだね。でも風の匣兵器だけは作られなかった」
「はい?」
「他の匣兵器は偶然が頻繁に起きて開発されたのに、風の匣兵器だけは開発されなかった。……少し違うかな。開発しようとさえしなかった」
「えっと……つまり私は匣兵器はないんですね」
雲雀の言い方に気になるところはあるが、優はまず先に自分の手札を確認した。袋が外せないのだから、かなり厳しい戦いになりそうだ。
「あるよ」
「え!?」
使える手でどれだけ動けるかと優が真剣に考えていたこともあり、思わず大きな声をあげてしまう。
「……僕は優の師匠が作ったって聞いたけど?」
若干不機嫌なオーラを出しながらも、優の反応を確認する雲雀。気に食わないのもあるが、今の雲雀の情報網でも何もつかめていない謎の人物でもあるのだ。
雲雀の言葉に優は納得したように頷く。神が作れないはずがない。
「優以外には作る気がないって聞いたけど」
「そうでしょうね。私以外は作らないですね」
「僕はその人にも物凄く興味があるんだけど」
「……時間の無駄になりますよ」
未来の優と同じ反応だったため、雲雀は溜息を吐くしかなかった。優からすれば雲雀のためを思って言っているのだ。雲雀であっても神のことを調べるのは不可能だ。話せない内容に関わってくるので、優からは何も言えない。たとえギリギリのラインをついて話して雲雀が理解したとしても、雲雀の記憶が消されるだけだろう。そんな気がする。
これ以上この話題を続けても無意味なので、優は次の質問に移ろうと頭を働かせる。
「あれ……? なんか変じゃないですか?」
「気付いたみたいだね」
雲雀の言葉から、優の考えは間違いではないようだ。なので、優は違和感をそのまま口にする。
「どうして白蘭はヴェントの正体を知らないのですか……?」
「それも優に話すと決めた理由の1つ」
どうやら様々な要因が絡んで、過去からやってきた優に話すことになったようだ。
「ヴェントは……私はまだ捕まってないんだ……」
「間違いないだろうね。あの噂が立った時、真っ先に動いたマフィアは白蘭のところだった。唯一動けるアルコバレーノを抑えるためとも取れたけど、入江正一から白蘭の能力を聞けば、風早優の時に行動している時に狙えばいいだけの話だ」
コクリと優は頷く。優の時に襲われれば、護身術以上の動きをするかを咄嗟に判断出来るとは思えない。
「じゃぁボンゴレ狩りは……」
「ボンゴレリングを狙ってるのもあるから」
隠された言葉に気付かないはずがない。白蘭の1番の狙いはヴェント。誘き出すためだけに行われたのだ。
思わず力を込めた優の手に応えるかのように雲雀も手を握り返す。
「もう一度いうよ。勝手に動かないで。この世界だけの問題じゃないんだ」
全て話したのは優に罪悪感を持ってほしいわけではない。白蘭を倒せば、全てのパラレルワールドの白蘭も亡くなると知らない雲雀達からすれば、優の力に頼らずに倒すべきと考えるのは当然だろう。たとえ知ったとしてもリスクの高さを考えると、優は力を使わない方がいいのだ。もっとも全てのパラレルワールドで白蘭に捕まってないことを考えると、全く力を借りないというのは下策だ。雲雀達もそれはよくわかっている。
「優の力が必要になる時は必ずくる」
「……私1人が動けばいいだけじゃないんですか?」
「わかってて言ってるよね?」
優だけで解決できれば、他の世界は白蘭に攻略されていない。そうでなければ入江正一の話に雲雀は乗らなかった。攻略されていない世界がこの世界だけとわかってしまったから、雲雀は群れてこの作戦を立てた。
「これも僕が言わなくてもわかってると思うけど、可能性がある限り、何があっても優は最後まで逃げ延びなければならない」
優はかなり時間をかけたが、頷いた。いろんな葛藤はあるが、どの世界でも優は最終的にそれを選んでいる。そうでなければ、とうの昔に白欄に正体がばれているだろう。優が守っている3つの重要性もそれだけ理解しているのだ。
「何があってもだよ」
「はい?」
「約束だよ」
頷いてはいるが、ちゃんと意味を理解していないだろう。雲雀は気付いていながらも、優の頬を撫でて誤魔化した。気付くような事態に陥らないようにと覚悟をしたのだ。