【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
「これ」
「は、はい」
雲雀の言葉に優は現実に引き戻される。経験の差なのか、どうも雲雀の甘ったるい雰囲気に流されやすい。慌てて返事をし、雲雀を見上げればポケットから匣兵器を出しているところだった。
「優の匣兵器」
雲雀は3つも持っていたので、驚きながら受け取る。争いが苦手だと自覚している優は必要最低限の量しか持たないだろうと思っていたのだ。そのため優の中では3つは多い。
「これはあまり使わなかったよ」
「そうなんですか?」
雲雀が指した1つの匣兵器を見つめながら、首を傾げる。使わないのなら、なぜ作ったのだろうか。疑問に思うが、開けてみればわかるかもしれないと匣兵器と向き合う。
「開け方、教えたよね?」
「はい。頑張ります」
匣兵器を睨みつけるように見ている優の姿に雲雀は愛おしそうに見つめる。そこまで気合を入れなくても、優の才能ならすぐに開けれるのに、と。
必死になってる姿を見たいが、残念ながら雲雀は用がある。仕方なく、優に声をかけてから雲雀は出て行った。
「何が入ってるだろう」
ムムっと難しい顔をしながらも、口元が緩んでいる。状況が状況なので素直に喜べないだけで、匣兵器には興味があるらしい。
ボウッとリングに炎が灯る。優は大空戦がきっかけで苦労もなく炎を灯すことが出来るようになったのだ。まずは普段から使っている2つの匣をあける。やはり先に手札を確認したい。
「スケボーと逆刃刀かぁ……」
予想範囲内だ。範囲内ではあるが、納得は出来ない。神が最初に説明した通り、雲雀も風の属性は加速と言っていた。レアということで他のマフィアに狙われていることもあり、スケボーは納得できる。逃げるための手札は用意しているだろうと思っていた。問題は逆刃刀だ。もちろん思い入れもあり、使い馴染んでる。だが、属性の加速を考えるとどうだろうか。
「あ、そうか。こうするしかなかったんだ」
全て合点がいき、優は納得したように息を吐いた。白蘭の能力を知っているからこそ、他の武器を使えなかったのだ。全て、ボンゴレ匣のために。
優の予想通り、どのパラレルワールドでも優は刀しか武器を持つことが出来なかった。
ボンゴレ匣は初代の武器に変化する。優の場合は初代の守護者がいないのだから、完全なオリジナルだ。下手に作って攻略されてしまい、本来なら勝利することが出来たこの世界が滅んでしまう事態は絶対に避けたい。
(神様、質問してもいい?)
『なんだ?』
(神様に毒とかを作ってとかはダメだよね?)
『ああ。それは俺が手を出した場合と同じになる』
(まぁそうだよね)
そもそも、神と呼ばれる者が直接殺生に関わるものを渡せるはずがない。そんなことが出来るならば、神が転生者を殺せばいいだけの話だ。つまり武器である刀を渡すような間接的な助けしか出来ないのだ。そしてこれは特殊能力にも同じことが言える。それでも、と優は思う。
(……特殊能力、3つ残して正解だったね)
『だな』
パラレルワールドの優が今まで生き残っているのは、特殊能力のおかげだろう。この3つは使ってもかまわない。過去から来た優が使っている可能性が低すぎる。何より、残していた3つは攻略しにくいはずだ。かぶっているのもあるだろうが、全て一緒とは思えない。それでも倒すことは出来なかったようだが。
優は首を振った。責めることは出来ない。思いつくまま特殊能力を浮かべてみたが、どれも勝率が悪すぎる。過去から来た優が特殊能力のデメリットに気付いているなら、白蘭と対峙している時代の優が気付いていないはずがない。
「刀を選んだのは失敗だったかなぁ」
もし人生をやり直すことが出来るならば、優は逆刃刀を頼んだタイミングに戻るだろう。それぐらい痛いミスである。
やってしまったのは仕方ないので優は切り替える。幸いなことに特殊能力はまだ3つ空きがあり、ボンゴレ匣は作っているだろう。もっともそれよりも先にスケボーを使いこなすべきだろうが。間違いなくツナよりも速くなっている。でなければ、とうの昔に捕まっている。
最優先はスケボー。優の中で方針が決まり、最後の匣兵器に手を伸ばす。匣の中から出てきたのはボールを撃ち出す銃だ。
「おもちゃ?」
優が思わず確認してしまうのも当然だった。見た目からしてランボが持っていても違和感がない子ども用の銃。撃ち出すボールもスポンジのように柔らかい。
『なるほどな。練習用なのか』
(わざわざ作ったんだ……)
若干遠い目になる優。このボールは壁にぶつかれば跳ね返るだろう。スケボーを短期間で使いこなせればならない優のために用意したようだ。どうせ用意するならばマトモな武器を用意して欲しい。ボンゴレ匣を作った時点で、攻略されていない世界だとわかるこの時代の優は好きに作れるのだから。そこまで考えたところで優はとある事実に気づく。
「って、そっか。……そうだよね」
つい微笑む優。この匣兵器は過去から来た優のためだけに作られたものではなかった。未来の自身の気持ちがわかった。
ほっこりしていた優は気付かなかったが、意外と銃という武器は優には向かない。属性の加速という点では合うが、風使いという点では微妙なのだ。メリットはあるがデメリットも大きい。片方の長所が損なうならば、移動手段としてスケボーをつかい、使い馴染んだ刀を武器にするというのは強ち間違いではないのだ。
切り替えて優は立ち上がる。スケボーの練習をしなければならない。しかし勝手がわからない。
「雲雀先輩、どこかなぁ」
練習場所がないかと確認したいが、雲雀はこの場にいない。部屋を出て隣の部屋をノックしてみるが、返事はなかった。優が好きに出入りしてもいいのは10年バズーカで最初に飛ばされた部屋だろう。
刀とおもちゃの銃は匣に入れ、スケボーは抱えてその部屋へと向かった。
「失礼しまーす」
軽くノックをしてから、ひょこっと顔を出せば、草壁と目が合う。なぜか初めて雲雀の膝枕をしているシーンを目撃した時ぐらい驚いている。知識として知っているのもあるが、草壁は老け顔だったので、優は間違うはずがない。だが、あまりの驚きっぷりに優は念のために確認する。
「草壁さんですよね?」
「はい。……風早さんですか?」
「そうですよー」
互いの反応から2人は納得したように頷く。
「雲雀先輩から何も聞いてなかったんですね」
「……はい」
悲しい確認である。
「えーと、10年バズーカに当たったみたいで、本当なら5分で元の時代に戻るはずなのに戻らなくて……今の私は中学2年生です」
「そうでしたか……」
草壁はそう答えるしかないだろう。幼い頃の優が目の前にいるのだから。
「原因解明とボンゴレ狩りのことで、ツナ君のアジトへと向かうと聞きました」
「……わかりました」
草壁の返事がほんの一瞬返事が遅れたのは、優を気遣ったからだった。この時代の草壁は優の立場を知っている。知っているからこそ、何も声をかけないことを選んだのだ。優に関しては全面的に雲雀を信用している。
優が草壁に雲雀の居場所を聞こうとしたところで、扉が開く。現れたのは雲雀だった。
「雲雀先輩」
「なに?」
「私のこと話してなかったんでしょ。草壁さんが驚いてましたよ!」
「そう」
興味さなそうな返事である。いくら言っても無駄だと判断した優は話題をかえる。
「スケボーの練習がしたいです」
「……沢田綱吉のアジトで借りればいいよ」
どうやらこのアジトにも雲雀のアジトにもそういう場所はなかったらしい。
「そもそもここってどこですか?」
よくよく考えれば、このアジトが知識で知っている雲雀のアジトの可能性もある。優の影響で雲雀の性格がかわったのだから、アジトの雰囲気が変わっていても不思議ではない。もっとも和風から洋風にかわるほど影響があるとは思えず、その線はないだろうと優は予想しているが。
「ここは並盛にある優のアジト」
「えー!? ここって私のアジトだったんですか!?」
「そうだよ。優が寄りたいって言ったから寄ったんだ。でもちょうど良かったよ。確かこのアジトには優の中学生の頃の服も置いてたはずだから」
ちょうど良かったのではなく、そのために寄ったのだろう。雲雀もわかっていながら言ったのだ。この場には草壁がいるため。
「ここのセキュリティは高いけど、そういう設備は置いていないんだ」
実は服のことよりも、最もセキュリティが高いために雲雀はこのアジトに向かったのだ。この時代でも解明されていない技術がふんだんに使われている。この世界の状況が何もわかっていない過去からきた優を迎えるには最も相応しい場所だった。
「明後日にはこのアジトを出て、沢田綱吉のアジトの近くにある僕のアジトへ向かうからそのつもりでいて」
用意しておくようにという意味の言葉に優は頷く。ある程度は準備しているだろうが、10年後の自分が過去の下着のサイズまで覚えているかは怪しい。服はヴェントの姿で過ごすことも多いだろうし、多少のサイズ差ならば気にならない。しかし下着はなければ困るしサイズが合わないともっと困る。
「その様子だと何も確認してないようだね」
「はい。すみません」
「謝る必要はないから。この時代の優が使っていたケイタイとかも見ておきなよ」
「わかりました」
部屋に戻ろうとする優の腕を雲雀は掴む。
「優、さっきも言ったけど移動は明後日だから」
焦りすぎて周りが見えていないと気付いた雲雀は、一度優の動きを止めたのだ。雲雀の意図に気付いた優はショボンと肩を落とす。
「恭さん、そろそろ昼食はいかがでしょうか?」
「そうしようかな」
ドアの近くにいる雲雀達に気付かれず席を外すことができない草壁は食事の提案をしたのである。当然雲雀は賛成する。草壁が部屋から出て行ったところで、雲雀は優を抱き上げる。昨日と違い、普通の抱っこである。
「沢田綱吉達は知らないけど、僕はもう動いている。優が想像しているより被害は格段に少ないよ」
「でも……」
入江と繋がっているとバレてはいけないため、雲雀はすぐに動けないはずだ。それ以前にボンゴレ狩りが始まると入江が話しているかも怪しい。
「元々、僕達は対策を立てていたんだ。ヴェントの正体がバレた時のために」
ハッと息を吸い込んだ優を落ち着かせるように、雲雀は優の背をポンポンと叩く。
「……保護したのですか?」
「保護というより逃げる手伝いかな。深く知らない方がいいと判断した」
追手から逃げれるように陰ながら手を回したのだろう。そしてほぼ間違いなく今も陰で守っている。
「迷惑とか謝る必要はないよ。あれらは僕の指示よりも、優のために動いている」
「私のため……?」
「そうだよ。僕が目を離したスキに口説こうとするぐらいあれらは優が好きだから」
雲雀の言葉に優は笑った。雲雀が和ませるために冗談をいったと思ったようだ。もちろん冗談ではない。スキあらば優と話そうとして、雲雀がいなければ絶対に口説こうとしているだろう。答えは簡単で、なんと雲雀の部下の中に風早さんの笑顔を守り隊のメンバーがいるのである。地味に大きな変化だが、本人達が幸せそうなので良しとする。
「……ありがとうございます。もう大丈夫です」
優の顔を覗き込み、言葉通り大丈夫だと判断した雲雀は優をおろす。もちろん、今だけが大丈夫で度々気にかける必要はあるが。
「ご飯を食べてから確認します」
ちょっと恥ずかしそうにしながらも、優は雲雀にそう宣言したので、雲雀はよく出来ましたというように額にキスを落とした。
この時、優は自分のことでいっぱいいっぱいで気付かなかった。過去の世界で自分がいなくなったことにより、大きな変化が生まれたことに。もっとも、いっぱいいっぱいじゃなくても気付かなかった可能性が高かったが。なぜなら優だけでなく、この世界のツナや雲雀、そして入江も気付かなかったのだから。
この大きな変化で多忙な入江がさらに寝る間を惜しんで研究室にこもる必要になるが、現時点でそれは神以外誰も知らない。
やっぱり4話は長かったですね。
3話にまとめるべきでした。すみません。
作者の独り言。
雲雀さんを書いていると、別作品で犯罪だと思って我慢した人物を思い出す。
……この差はなんだろう。人柄なのか不憫属性がなせる技なのか。
とりあえず、ごめん。