【改稿版】リボーンの世界に呼ばれてしまいました 作:ちびっこ
優達の移動予定日の早朝、過去の世界からやってきた京子はコソコソとアジトから出て行こうとしていた。
「ちょっと、京子。よしなよ」
そんな京子に向かって声をかけながらも、心配でついていく人物が一人。
「ちょっと行ってくるだけだから、大丈夫だよ。花はここに残ってて」
黒川だった。それも過去の世界から来たらしく、幼い。
本来ならこのアジトにいるはずがない黒川だったが、京子達と一緒に探していたため、10年バズーカに巻き込まれたのだ。誰を探していたかというと、当然友達である優だ。ツナ達のためにそこまでする義理は黒川にはない。
そもそもこの事態を誰も想定していなったのは、過去から来た優は自らの意思でこの時代に来ると想定して立てた計画だからだ。未来の優が断言し、実際未来の優が子どもの時に入江の存在に気付き手伝いをしている。そして優が自らの意思で来たなら、何らかの形で雲雀には行ってくると伝えている。そしてこの優の意見に雲雀も頷いた。そういう約束だったからだ。
想定通りツナ達とは違い、優は雲雀に向けた手紙を書いてからいなくなった。つまり以前のように雲雀は片っ端から優の交友関係に聞き回ったりはしない。たとえ探しまわったとしても極秘に動いている。優がヴェントで行動している可能性を考えれば、正体のバレる確率があがるようなことを雲雀は絶対にしない。
しかし、黒川達は気付いた。優もいなくなっていることに。
まずツナを探すためにハルが優に電話したのだ。当然、優は出れない。それぐらいならたまたま優が気付かなかったと流せることだ。何日もというならおかしな話だが、ツナを探して京子達が飛ばされるまで1日もない。実際京子がハルに聞いた時はそう思った。確かに昨日学校で会わなかったが、リング争奪戦のころから優は一度も教室に行かない日も多々あった。他にも雲雀の彼女として狙われることもあり、カツラをかぶって隠れるように登校していることが多い。優が消えても、数日気付かない可能性の方が高かった。
だが、京子とハルが優と連絡がとれなかったため黒川に連絡したのだ。これは京子もハルもツナのことは優が一番知っているという認識が強かったからだ。そして黒川はツナ達のことは知らないだろうが、優のことなら知ってるかもしれないという流れで起きたのである。
おっとりしている京子は気付かなかったが、黒川はいつもより学校の雰囲気がピリピリしていたことに気付いていた。もっともこれは察した黒川を褒めるレベルである。
元々優がいないことを知っていたのは極限られた人物だけだ。つまりそれほど雲雀に信頼されていたと意味する。漏らすわけがない。だが、そこまで雲雀に信頼されているということは、風紀委員で上の立場にいる人物だ。学校を雲雀がいる風紀委員が管理しているからこそ生まれた僅かな違和感だった。
そこからは話が早かった。雲雀に聞けば一番はやいが、黒川がなんとなく察した程度なこともあり、表向きはいつもと変わりない。つまり雲雀に聞いても素直に答えてくれる可能性は低い。何より何もわからずに咬み殺されるパターンは嫌だ。そのため黒川達は優の家に向かったのだ。
家に誰も居ないものの、戸締りはしっかりしていて、新聞がポストに入れっぱなしということもない。一見何も問題はない。しかしハルが違和感に気付いた。
「おかしいです。優ちゃんは絶対にこんなことしません! お花がかわいそうです!」
外の花壇に指をさしながらハルは訴えた。優がいなくなったことを隠蔽している前提で観察しなければ気付かなかっただろう。雲雀の指示の元、ちゃんと水やりもしていたのだが、知らなかったようだ。花びらに水をかけてはいけない品種があるということに。1つならたまたまと見逃されていただろうが、その一角全てダメだという品種が揃えているのだから、気付いてしまえば決定的になる。こうして、優もいないのならと黒川も捜索に加わったのだった。
ちなみに、いつでもどこでも行きたいと思っている優は、自らの意思で植えることはない。ここに来た当初から花は植えられていたので、手入れしていたのだ。そして枯れてしまえばそれはそれでそこが寂しくなる。周りの目を気にして続けていたことだった。
はっきり言ってかなりの誤算だった。入江は黒川がこの時代にくると想定していない。10年バズーカに撃たれたものが、入江が作った装置によってこの時代の人物が分解されて分子レベルに保存される。そこに元々想定されていない黒川がきたことで、1番最後にくる予定の了平の分の空きがない。黒川を解放出来れば話は簡単だが、残念なことに一人解放してしまえば全員が解放される。これは個人個人で解放出来るようにすれば、ツナ達の強さが半減してしまうため、あえてそういうシステムを組んでいたからだ。
不幸中の幸いは、何事も絶対はないといろいろと用意していたことだろう。黒川を解放することは出来ないが、今からでも手を加えれば了平の空きが出来る。ただ手を加える入江の胃がやばいことになっているが。そこは気合で乗り切るしかない。
巻き込まれてこの時代に飛ばされてしまった黒川だが、京子達と比べると運は良い方だった。まず黒川はボンゴレ狩りの対象ではなかった。黒川が仲が良かったのは優であって、ツナ達とはクラスメイトとの付き合いでしかない。優がヴェントであることがバレていない以上、黒川の身は安全なのだ。そしてボンゴレ狩りが始まった時点で雲雀と優は手を打った。優がヴェントとバレた時に用意していた策を。
つまり、ボンゴレ狩りの対象にはなっていないが、黒川は保護対象に入っていて雲雀の部下がついていたのだ。またその部下が同じクラスの人物だった。言うまでもないが、その部下は風早さんの笑顔を守り隊のメンバーの一員である。
陰ながら守っていた部下は、突如幼くなった黒川に接触した。
「どうなってんのよ……」
「俺だって知るかよ」
軽く言い合えるぐらいの仲だったのも、黒川は運が良かった。もっともヴェントの正体がバレた場合、黒川に被害が行く可能性が高かったため、スムーズに話を進むためにも黒川と接触した人物が担当になるのは必然だった。
一方、部下はどうすればいいか頭を悩ませていた。雲雀の部下ということで10年バズーカの存在は知っていた。だから当初は5分保護すればいいだけの話だった。しかし5分たっても戻らない。このまま保護は続けるが、どこに保護するのか。このまま家で住むのは論外だ。かといって黒川がこの街からいなくなれば、不審に思われるだろう。そうなると家族ごとの保護になる。しかし今の黒川をこの時代の家族に会わせて、説明を求められても困る。部下だって黒川が戻らない理由がわからない。
さらに難しいのが、雲雀に緊急連絡を入れるほどでもない内容なのだ。一見、緊急事態に思えるが今のところ命の危機はない。保護しなければいけない人物が大量にいて、ミルフィオーレとまともに戦えるのは雲雀と優だけなのだ。もしここで緊急連絡を入れて、他の緊急連絡を潰してしまうのは避けたい。報告はしても、緊急連絡を入れて指示をもらうほどの案件でもない。
「……黒川」
「何よ」
10年後に飛ばされたにも関わらず、比較的冷静な黒川を見て、マフィア云々を抜きにしてこの時代の状況を教えた。
「京子は!? 優は無事なの!?」
「……今のところ風早さんは無事だ。笹川はツナのところが保護してるはずだ」
「沢田が?」
「ああ。ツナにも俺のような部下が居るんだよ。そいつらが動いたって聞いた。詳しく知らねーのは俺は雲雀さんの部下でツナの部下じゃねーから」
ギョッとする黒川。目の前にいる人物が、どこをどう成長して雲雀の部下になる道を選ぶようになるのか。あまりにも想像出来なかったので、黒川は警戒し始める。
「雲雀さんの部下になった方が風早さんの力になれるからな」
雲雀のため、または黒川が心配だから助けたと言われば、疑っていただろう。ただ悲しきことかな、目の前にいる人物は10年たっても優のことで頭がいっぱいらしい。もっともそのおかげで黒川は救われているのだが。
「それでお前はどうする? 俺の案内について行くか、ツナのところに行くのか」
「……あんたについていけば、どうなるのよ」
「雲雀さんがこういう時のために用意していたアジトに逃げ込む予定だ。そこでジッと耐えることになる。この場合、お前の両親も一緒だな」
「……沢田のところは?」
「俺が沢田のところに案内した後、お前は両親に電話して夜逃げを促す。その夜逃げを俺が陰で守る。お前は笹川と一緒で沢田のところで守ってもらう」
「どうして陰なのよ」
「話せるのはさっき黒川に話したところまでが精一杯だ。聞かれても俺は勝手に答えられない」
「…………任せても大丈夫なの?」
「努力はする。死ぬ時は俺が先だ」
大丈夫という言葉は使えなかった。そして黒川は気休めの言葉よりも現実的な言葉の方が信じることが出来るタイプだった。
「沢田んところに案内して」
葛藤はもちろんあった。ただ両親と一緒に過ごしても、幼くなってしまったことを説明することは出来ない。それにツナの方を選んだ方が、この状況に陥った理由がわかるかもしれない。さらに京子達も幼くなってる可能性が高い。正直な話、10年後の両親と何を話していいのかわからないため、京子達と一緒の方が精神的に楽なのだ。
こうして黒川はツナのアジトで過ごすことを選んだ。
結局ツナのところに行っても、詳しい話はわからなかった。だが、黒川はツナのところを選んで正解だと思っていた。京子が無謀なことをしようとしていたことに気付けたのだから。
「外はかなりヤバイって。京子を探し回ってる人、いっぱい居たわよ。送ってもらわなければ、私だってやばかったわ」
「でもお兄ちゃんが……それに花だって子ども達のオヤツがあった方がいいでしょ?」
うっ。と言葉に詰まる黒川。蕁麻疹が出るくらい子ども嫌いの黒川は、イーピンは何とかなってもランボの扱いに困り果てていた。すぐにワガママをいい、泣き喚く。そんなランボが大好きなお菓子の有無はかなり大きい。
ここでツナに相談するという提案をしないのは、反対されると目に見えているからだ。黒川が言いに行っている間に、京子は外へ出てしまう。
「……わかったわよ。私も一緒に行くわ」
「え!?」
「私は狙われていないみたいだし、誤魔化せる可能性は高いわ」
京子は黒川の顔を見て、言葉を飲み込んだ。黒川が無茶をするのは京子のためなのだ。反対するなら、行くのを諦めればいい。
「さっさと行くわよ」
そんな京子の背中を黒川は押した。今諦めたところで、また無茶をするのはわかりきっていたため背を押したのだ。
「それとヤバいと判断したなら、すぐに戻るわよ」
「……うん。ありがとう、花」
黒川はポケットに手を入れる。そこには自身が使っていたこの時代のケイタイと、ここまで送ってくれた人物に渡されたメモ用紙が入っていた。
「今が使い時よね……」
「花?」
「よくわかんないけど、ここに電話すれば守ってくれるらしいわ。多分あいつみたいな雲雀恭弥の部下が他にもいるのよ。外に出てからかけてみるわ」
黒川がアジトまで来れた経緯を聞いていた京子は素直に頷いた。今すぐ連絡すればツナ達に止められてしまう可能性があるが、黒川は外に出てからと言った。それに自分だけならまだしも黒川にまで危険が及ぶのだから、少しでも無事に戻れるように確率をあげたい。
京子と黒川は頷きあった後、危険な外へと出た。
そして予定通り少しした後、黒川は電話をかけたのだった。
……主人公が一言も話さなかった。